2011年5月25日 (水) 掲載

◎台湾チャーター便再開

 東日本大震災後に運航を停止していた台湾からの団体観光客を乗せたチャーター便が24日、約2カ月半ぶりに函館空港に着陸した。降り立った180人の乗客を、函館市内の関係者ら約15人が歓迎した。

 団体観光客を乗せたチャーター便は3月11日の到着以来、途絶えていた。この日運航したのは復興航空。台北発の182人乗りの航空機に、複数の旅行会社のツアー客ら180人が乗り込みほぼ満席となった。

 午後1時15分ごろに函館空港に着陸。到着出口では函館市や函館商工会議所、函館運輸支局などの職員らが「熱烈歓迎」の横断幕を掲げて出迎え、「ようこそ」の声をかけて観光パンフレットやさきいかなどをプレゼントした。

 同社は今後、函館間では6月は11便、7〜9月は各16便を運航することを決めている。同社は台湾からの観光需要が戻りつつあるとし、「道内観光は台湾客にとって魅力的。6月中旬までは8〜9割の搭乗率を確保している」という。

 この便を利用した旅行会社、豊年旅行社は、函館市内や大沼、登別、札幌を5日かけて回るツアーを組んだ。ガイドの謝名儀さんは「函館は津波が来たので危ないと思われていたが、今は安心という見方が戻った」と話していた。(小泉まや)



◎企画「命を見つめて」糖尿病編D 誰もがなりうる病気

 「不規則な生活になった」—。函館市内で飲食店を経営する男性(33)は昨年、会社員から転職した。忙しくなると食事もままならず、終了が深夜に及ぶこともある。

 会社勤めのころ、健康診断で異常がなかったが、30歳をすぎたころから太りやすくなり、腹回りのぜい肉が目立ち始めた。生活習慣病の予防に気を配り、自転車か徒歩で移動を心掛け適正体重の維持に努めているが、「今の生活で運動に時間を割くのは難しい。何とか時間を作って習慣にしたい」と運動不足を気にする。

 一方、同市の女性(68)はここ数年健康診断を受けていない。市から通知が来るたび「行かなくちゃ」と思うが、行動につながらない。一時期、体重が急激に増加し、病院で「糖尿病になりかけている」と言われ、その時から病気には気をつける。

 女性の姉も糖尿病と診断された。姉の場合、初期だったため、食事のコントロールと運動で体重を減らし大事には至らなかったが、「何事も管理される毎日は本当につらそうだった」。姉の苦労が脳裏に浮かぶ。

 国内の糖尿病患者は1955年の35倍に膨れ上がった。糖尿病を語るうえで良く言われるのが、「車の登録台数と脂質摂取量の増加に伴い、糖尿病の患者数が比例して増えている」だ。戦後、豊かになった証しではあるが、運動不足と過食気味の生活スタイルになっていることを物語る。

 国立病院機構函館病院の管理栄養士、木幡恵子栄養管理室長は「現代は脂肪、炭水化物が過剰に摂取されミネラル、ビタミンが不足。昭和30年代と全く逆の食生活」と語る。

 稜北内科・小児科クリニックの内山清医師は「糖尿病はあたかも自己責任の病気と言われがちだが、現代社会が招いた病気でもある。誰もがなりうると認識し、予防教育に力を入れていかなければ増え続けるだろう」と予測する。

 糖尿病そのもので亡くなるケースは少ないが、恐ろしいのは合併症の誘発だ。症状が進むと、死亡三大疾患の脳血管疾患や心臓病、がんなどを発症するケースが多く、大病の起点となる病気とも言われている。

 患者が増加の一途をたどる中で医療現場でも専門医や認定看護師が少ない課題がある。函館、道南も例外ではなく、専門医とかかりつけ医、さらに病院同士、病院〜診療所との連携の構築が提起されている。高橋病院の筒井理裕副院長は「非専門の医師に対する指導や啓発を進め、地域全体で患者を見ていく体制づくりが必要」と話す。(第2部おわり)

 第2部は鈴木潤、長内健、堀内法子が担当しました。



◎函館市幹部職人事発表

 函館市は24日、5月25日付の部長・次長級の幹部職人事を発表した。特別職への昇格に伴い財務部長に大竹教雄議会事務局長(56)、企業局交通部長に藤田光福祉部次長(53)、土木部長に杉本勉同次長(56)を充て、経済部に新たに中心市街地等再生担当の参事1級(部長職)を置き、入江洋之経済部次長(53)を起用した。今回の異動は昇格者を含めて24人で、4月1日付の13人を含めると過去10年で最多の異動規模となった。

 工藤寿樹市長の就任後初の幹部職人事で、優先政策で掲げる「大門再生」の具現化に向け、経済部内にJR函館駅前・大門地区や、五稜郭地区など中心市街地の振興策を推進する専従ポストを新設。このほか、福祉部次長に下中修子企画部計画調整課長(54)を昇格させるなど女性の登用も拡大した。部長職の平均年齢は56・4歳、次長職は55・2歳。

 定年退職に伴い4月以降、空席となっていた市民部長に高橋良弘港湾空港部長(54)が回り、環境部長に小柳辰夫同次長(58)が昇格。高橋氏の後任には妹尾正白市教委生涯学習部長(58)が就く。公立はこだて未来大の事務局長を務める企画部参事1級に鈴木敏博観光コンベンション部長(56)が回り、鈴木氏の後任には布谷朗経済部労働政策室長(56)が昇格する。

 行政職から就任した山本真也教育長(56)を支える市教委生涯学習部長には教育畑の長い種田貴司競輪事業部長(53)を充て、種田氏の後任には沢田寛之選管事務局長(58)が回る。このほか、選管事務局長には田中俊弘会計部長(58)、田中氏の後任には未来大事務局長を務める西浜晴二企画部参事1級(57)が就く。議会事務局長は小上一郎同次長(55)が昇格する。

 課長から昇格した次長職では、財務部次長に高橋正幸港湾空港振興課長(57)、経済部次長に佐藤友則農林水産部企画調整課長(52)を充てる。記者会見した中林重雄副市長は「行革や財政再建、経済界との関係を重視して企画や総務、経済など経験者もある程度留任させた」と説明した。(森健太郎)


◎函館市議会の議長・副議長会見、議会改革に意欲

 函館市議会の能登谷公議長(61)=市政クラブ=と板倉一幸副議長(60)=民主・市民ネット=が24日、就任会見を開いた。能登谷議長は、改選前から議論を進めている議会報告会の開催について「年2〜3回開けるように、細部の検討が必要」と述べ、市民に開かれた議会改革の実現に意欲を示した。

 能登谷議長は報告会について「ただ開いたというアリバイ作りではいけない」とした上で、他都市の視察を踏まえ「報告会で要望したものは実現できると思われていることや、スムーズな会の進行などの問題点をクリアする必要がある」と語った。さらに「市民の負託を受けた中で議員自身が条例を作ることが必要」と述べ、議員からの条例提案を推進したいとした。

 板倉副議長は「市民に信頼され、安心して任せていただける議会を作ることが基本。不安や不信の払しょくに取り組みたい」とし、関心度の向上に向けて情報公開を積極的に進める考えを示した。

 4月に就任した工藤寿樹市長に対して、能登谷議長は「ある時は後押しし、時にはブレーキをかけながら是々非々の立場でチェックしたい」、板倉副議長も「二元代表制をわきまえ、チェックする視点を忘れずにやりたい」と述べた。

 このほか、市の現状や課題として大間原発への懸念や、政治への関心度向上、議員報酬・政務調査費などを挙げた。大間原発に関しては「イデオロギーがあり一つにまとまるのは難しいが、原発への関心は高い。市議会の意見を大間や青森にどう伝えるかが問題」(能登谷議長)、「われわれの役割は市民の命を守ること。関係する行政や議会に声を届けながら協議することになる」(板倉副議長)とした。(千葉卓陽)