2011年5月27日 (金) 掲載

◎ツチクジラ「初物」並ぶ

 江差沖で25日に捕獲され、函館港に水揚げされた今季1頭目のツチクジラの肉が26日、函館市内の鮮魚店などにお目見えした。初物≠食べようと、市民が早速買い求めていた。

 捕獲されたのは雄で体長約9b、重さ約10トン。26日朝に市水産物地方卸売市場(豊川町)でせりにかけられ、1キロ当たりの卸値は赤肉1550〜1500円、小切れ肉1150円。市場担当者は「上場数量が約400キロと昨年の半分以下だったため、いい値がついた。昨年より200―300円高いのでは」と話していた。ツチクジラは捕獲枠10頭に達するまで順次、函館港に水揚げされる。

 同市新川町のはこだて自由市場の前鮮魚店(前直幸社長)では同日、赤肉10キロほどを仕入れ、450〜500グラムの大きさに切り分け販売。1パック1000円。前社長は「例年並みに肉の質もいい。鮮度もよく、おいしいツチクジラが今年も楽しめる。ぜひ食べてほしい」と呼び掛ける。

 毎年クジラを購入するという松風町のすし店「鮨処森山」の森山智さん(38)は「店ではつまみとして出すが、家庭での調理は竜田揚げがお薦め。クジラそのものの味が楽しめる」と話していた。

 (平尾美陽子、山崎大和)



◎被災企業に10年間無償で市有地貸与 

 函館市は26日、東日本大震災の被災企業を支援するため、市が所有する工業団地の土地を10年間無償で貸与し、設備投資額や新規雇用者数に応じて現行の助成制度に上乗せすることを決めた。6月1日から適用し、市を挙げて被災地で移転を検討する企業の事業再建や雇用継続を後押しする。市によると「これだけの優遇措置は道内でも最大規模」という。

 函館市は被災した東北地方に道内で最も近く、水産関連でつながりも深いことから、独自の支援策を打ち出した。来年度当初予算で2億〜2・5億円の計上を想定。市や渡島総合振興局、函館商工会議所などの担当者が30、31の両日、青森、宮城、岩手県を訪問し、実態調査しながら現地で周知を図る。

 無償貸与するのは、函館臨空工業団地(鈴蘭丘町・東山町、11区画、約6万平方メートル)と、函館テクノパーク(桔梗町、9区画、約1万1000平方メートル)、港町ふ頭港湾関連用地(港町2、約6万平方メートル)の3カ所で、契約保証金も免除される。震災で社屋や工場が被災した東北や関東地方の企業が主な対象となる。

 市企業立地促進条例に基づく助成制度では、設備投資に伴う雇用の増加数に応じて投資額の一部を補助していて、今回は3カ所の工業団地に立地する場合、土地を含む投資額の15〜35%、3カ所以外の場合、土地を除く投資額の5〜35%をそれぞれ助成し、現行よりも2.5〜12.5%上乗せされる。限度額は3億円。

 このほか、東京電力管内の夏場の電力不足などへの懸念から、一時的に移転を希望するIT(情報技術)関連企業向けに、市産業支援センター(桔梗町)内の4室の使用料を減免する。1室当たり約50平方bで、使用期間は最大5年。通常9万4500円の月額使用料(光熱費を除く)を被災地域などによって9450円〜1万8900円に最大9割引き下げる。

 道内自治体の被災企業向けの支援策では、根室市が条例を制定して固定資産税を最大5年間減免するなどの措置を講じているほか、北見市も市有地を10年間無償で貸し付けている。片岡格副市長は「できる限りの支援策で被災企業に選択肢の一つとして検討してもらい、函館で再建の足がかりにしてもらいたい」と話している。  (森健太郎)



◎南かやべ定置漁業協MELジャパン取得

 函館市南茅部地区の南かやべ定置漁業協会(野村譲会長、11経営体19ヶ統)が、環境に優しい漁業を応援する「マリン・エコラベル・ジャパン(MELジャパン)」の生産段階認証を取得した。定置網として取得したのは全国初で、適切な水産資源管理に貢献していると評価された。付加価値を高め魚価の安定を図るとともに、加工流通業者による「流通加工段階認証」取得の呼び水にしたい考え。30日午後4時から、花びしホテル(湯川町)で認証証書授与式が行われる。

 MELジャパンは、国連食糧農業機関(FAO)のエコラベルのガイドラインに準拠した制度で、2007年12月に発足。水産資源と生態系の保護に積極的に取り組む漁業にお墨付き≠与えるもので、加工流通業者が「流通加工段階認証」を取れば、製品に水産エコラベルを付けられる。大日本水産会(東京)が事務局を務め、審査機関である日本水産資源保護協会(同)が認証。これまでの取得例は日本海かにかご漁業協会(ベニズワイガニ)など計6例。今回は摂津船びき網漁業協議会(神戸市、イワシ、イカナゴ)と同時に今月16日付で取得した。

 同地区は、古くから天然マコンブ産地として知られるほか、北海道大謀網(現在の定置網)漁業の発祥地として知られる。定置網は、沿岸に大規模な網を設置し、箱網と呼ばれる部分に誘導された魚を船で取り上げる漁法。待ち網°剿@と呼ばれ、乱獲をしないため自然に優しい。具体的には、サケの再生産用親魚確保のため海中還元期間を設けたり、網の目合いを期間により調整するなど独自の工夫を凝らしている。

 「将来的に消費者は安全性だけでなく、環境面からも商品を選ぶようになる」(南かやべ漁協)と判断、昨年9月に申請した。

 認証対象魚種はスルメイカやサケ、カラフトマス、ゴマサバ、マイワシ、マサバ、サンマ、スケトウダラの8種。

 野村会長(57)は「これまでは単一魚種を対象にした漁業が多かったが、いろんな魚種に対して認証を取得したのは画期的でうれしい。定置網が魚を取りすぎていない、資源管理ができる漁業だと証明された。認証対象魚種を増やし、定置網の伝統を後世に伝えていきたい」と話している。(山崎大和)


◎「改革」鮮明に…工藤函館市長 就任1カ月

 函館市長に工藤寿樹氏(61)が就任し、27日で1カ月を迎えた。前市長の政権運営を批判して市政刷新を訴え、当選。特別職を一新し、教育長を初めて行政職から登用するなど“改革色”を鮮明に出しながら、最重要課題とする経済再生・市財政再建に向けた基礎固めに余念がない。6月の定例市議会に提出する補正予算案で、どれだけ“工藤カラー”を出せるかが注目される。     (千葉卓陽)

 工藤市長は、前企業局交通部長の山本真也氏(56)の教育長起用について「もともと教員からの起用にはこだわっていない。街のデザインや文化、歴史に知識を持つ人材」と述べた。これまで校長経験のある教員出身者が就いてきた慣例をあっさりと打ち破ったことで、市民に「改革路線」を強く印象付けた。

 副市長も行財政改革を担う中林重雄氏(62)、経済活性化担当の片岡格氏(56)と財務部長経験者で固め、部次長人事も4月1日付を含め、過去10年で最多となる37人を動かした。

 工藤市長が選挙戦から一貫して掲げたのが、地元経済の再生と市財政の再建。6月の補正予算編成に向けて「まずは経済再生から始めたい」と、各種業界団体との公開懇談会を始めた。

 最初に行った市商店街連盟との懇談では、イベント開催に向け、各商店街に対し上限300万円を支給する交付金制度について「6月にも予算計上したい」と述べた。既存の商店街等イベント開催支援事業補助金(1事業につき上限30万円)の10倍で、経済部が制度設計に当たっている。

 一方、前市長の目玉政策で、学校長の裁量で自由に使える「知恵の予算」の扱いが焦点となる。本年度当初予算では5340万円を計上したが、工藤市長は真っ先に廃止を打ち出した。ただ「すでに本年度の事業に組み込んだ学校もあり、すべてなくせるかどうか」(市幹部)との指摘もある。商店街への交付金も知恵の予算と同様、各団体の使い道が問われている。 前市長との間でさまざまなしこりやあつれきがあった経済界との関係は一定程度改善される一方、「根回しはしない」(工藤市長)とする議会との関係も焦点。能登谷公議長は「ある時は後押しし、ある時はブレーキをかけながらやっていく」と、是々非々の姿勢を強調する。

 30日からは補正予算に向けた市長査定が始まる。政策として掲げた医療費助成の中学生までの拡大などを行えば、新たに億単位の財源捻出が必要となり、扶助費などの必要経費と、政策に使える予算とのバランスをどう取るかが課題となる。

 市長給与の50%カットは6月の補正予算に盛り込む意向だが、職員給与、退職金の削減や事業仕分けなど「聖域なき行革」の本格着手はこれから。6月末からは議会との本格的な論戦も待ち構える。「磨けば光る資源をさらに磨き、まち自体を三つ星にする」(工藤市長)ための手腕が問われる。


◎渡島総合振興局長に永井氏 桧山振興局は山崎氏

 高橋はるみ知事は6月1日付発令の道幹部人事で、渡島総合振興局長に永井正博人事局長(55)、桧山振興局長に山崎峰男水産林務部水産局長(53)を起用する。寺山朗渡島総合振興局長は総務部危機管理監、高橋則克桧山振興局長は道監査委員事務局長にそれぞれ就く。

 永井氏は1955年、仙台市出身。中央大法学部卒。79年道庁入り。総合企画部参事(道町村会派遣)、総務部参事、知事室国際課長、企画振興部地域行政局次長(札幌市派遣)などを経て、2010年4月から現職。

 山崎氏は57年、札幌市出身。北大水産学部卒。83年道庁入り。水産経営課参事、漁業管理課参事、水産局次長などを経て、10年4月から現職。

 また、西山宰渡島総合振興局地域政策部長は、農政部農村振興局農業施設管理課指導管理担当課長に転出。後任には三角清志同振興局保健環境部長が就任する。 (山崎大和)