2011年5月4日 (水) 掲載

◎チューリップ色とりどり サラキ岬でフェア開幕

 【木古内】80種5万本のチューリップが植えられている町亀川のサラキ岬で3日、「チューリップフェア」(実行委主催)が開幕した。岬に立ち寄った観光客らは、色とりどりのチューリップに見入り、盛んにカメラのシャッターを切っていた。また、東日本大震災で被害を受けた宮城県の特産品も販売し、被災地応援のムードを盛り上げた。

 同フェアはゴールデンウイークの3〜5日と15日までの土日に開催。「ふるさと物産展」と題し、町の特産品を販売しているほか、町内の飲食店が出店し、焼きそばやカレーライス、焼きガキなどを提供している。

 開幕日の3日は5月らしいさわやかな天気となったが、チューリップの開花は全体の1割ほど。実行委によると、8日ごろに見ごろを迎えるという。

 ゴールデンウイークを利用し函館市に帰省している札幌市の吉田博紀さん(31)と妻の美穂さん(31)は「普段はなかなか見ることのできないチューリップを見ることができたので楽しめた」と笑顔で話していた。

 被災地支援として宮城県白石市の物産を販売するコーナも設置した。同市の名産、温麺や漬物が並び、来場者が復興に役立ててもらおうと、買い求めていた。8日午前11時から「被災地応援ライブ」を開く。(松宮一郎)



◎花や行楽地 人、人、人 GW後半朝市に活気

 春の大型連休は3日、後半に入り、東日本大震災の影響で客足が少なかった函館市内の行楽地や、花見のスポットに大勢の市民や観光客が詰めかけた。震災で甚大な冠水被害に見舞われた函館朝市にも大勢が足を運び、売り場では店員が威勢良い掛け声を響かせ、にぎわいをみせていた。

 朝市は4月上旬に営業を再開できたが、人はまばらな状態が続いていた。書き入れ時である大型連休でさえ「人出は例年より減少するのでは」と不安視されていたが、各店でこの日は例年通りの盛況となった。函館朝市協同組合連合会(井上敏廣理事長)によると、この時期は道内から車で訪れる人が多く、駐車場の利用は臨時を含め約800台で満車状態が続いた。

 東京から大学の友人3人と卒業旅行で訪れた三上優奈さん(22)は「震災の影響で出発が遅れたが、暖かい時に来れて良かった。夜景やおいしいものを楽しみ、函館で思い出をたくさん作りたい」と話していた。

 同連合会の松田悌一事務局長(36)は「にぎわってくれて良かった。ホテルなども格安プランを提供しているで、旅の予算が余った分を土産購入につなげてくれればうれしい」と話していた。人出のピークは4日を見込んでいる。

 前日にサクラの開花宣言が発表され、函館公園や五稜郭公園ではシートを広げ、弁当やバーベーキューを囲みながら花見を楽しむグループや家族連れでにぎわった。

 五稜郭公園では午前8時ごろから場所取りの人が多く集まり、同10時ごろには周辺道路の混雑が始まった。函館市海岸町の会社員、井沢春樹さん(32)は「風が収まってくれたが、まだ寒い。でもこれが函館の花見」と笑顔。

 多くの露店が並ぶ函館公園では、食べ物を片手にサクラを見上げながら「きれいだね」「満開はまだかな」と話しながら花見を楽しむ人が見られた。友人と来ていた市内の主婦、竹谷正子さん(58)は「公園内の建造物とサクラの両方を楽しみに来た。満開でないのは残念だが、気温や天気はちょうどいい」と話していた。(山崎純一、小杉貴洋、平尾美陽子)



◎企画「試練の春〜大震災・函館観光のいま4」観光施設/客足に戻り、模索続く

 大型連休に入り、函館市内の観光地はようやくにぎわいを回復してきた。しかし、震災が観光施設に落とした影はあまりに大きい。函館山ロープウェイ(同市元町)は、3月は前年の半分ほど、4月は同3割ほどの客数に激減。例年数十台の車両が並ぶ登山道路の開通日も、関心の薄さからいつもの車列はできず、寂しげな風景となった。

 時にはカラの箱を動かさざるを得ないほどの客数減で、4月下旬までは通常より運転間隔が長い20分間隔で対応した。同社の小笠原忠専務は「最も落ちたのは国内の団体旅行と海外客」。海外客は皆無の大打撃となったが、それでも中華航空が4月中旬に実施したマスコミ向けPR活動が一定の成果を見せたのか、同下旬以降は若干の戻りが見られるという。「当面は今来ているお客さんを大切にしのぐしかない」状況。今後のV字回復に向けて模索が続く。

 この春は、2015年予定の道新幹線開業を見据えた動きを開始した。「目立たず分かりにくい」と言われた山麓駅の整備をはじめ、従業員の制服を一新。函館山をイメージした深緑のブレザーなどで、女性職員は「気持ちが引き締まるよう」と意識を新たにしていた。

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 同市が新たな観光施設として期待する、五稜郭公園の箱館奉行所も試練の時だ。昨年7月に開館した同施設は3月、初めての春休みを迎えた。同1〜11日までの入館者は3067人。人の動きが活発になる中旬から月末にかけてはこれを上回るペースの来館を見込んだが、結果は5379人。1カ月の合計は、日数が少なく動きが鈍いとされる2月にも届かなかった。

 函館市教育委員会生涯学習部の妹尾正白部長は「連休には道内客を中心に、このような時でも大勢が訪れるだろう」と初のゴールデンウイーク(GW)に期待を寄せる。しかし一方では、つらい現状を前に「市民が足を運ばない観光施設ではいけないのかもしれない」とも感じている。

 本州や外国からの観光客が落ち込み、函館の関連事業者は一時的とはいえ、道内客や市民に頼らざるを得ない状況となった。「内需をも取り込んだ足腰の強い観光のあり方を議論する時が来ている」(観光関係者)との声があり、震災が問いかけた教訓と課題でもある。(小泉まや)(おわり)


◎朝鮮人労働者を追悼

 【松前】戦前から戦時中にかけ旧国鉄松前線建設工事に従事させられて亡くなった朝鮮人労働者を追悼する「殉難者慰霊法要」が3日、松前町唐津の専念寺で営まれた。参列者は同寺の境内にある慰霊碑の前で、犠牲者の冥福を祈るとともに、悲惨な歴史を語り継ぎ、平和な世界を作ることを誓い合った。

 戦時中、軍需物資の運搬を目的とした旧松前線の工事では、国内の労働力不足を補うため、朝鮮人らが強制連行され工事に従事させられた。厳しい自然環境の中、過酷な労働を強いられ、犠牲者の数は1000人を超すともいわれている。

 慰霊法要は、慰霊碑が完成した85年から毎年憲法記念日の5月3日に開かれている。今年で27回目。この日は在日韓国、朝鮮人や地域住民ら約80人が参列。境内に設置された「韓国鐘(しょう)」が鳴らされ法要が始まった。

 前田一男町長が「異国の地で家族を思いながら亡くなった方々には慰めの言葉もない。尊い犠牲の上に完成した松前線は北海道は発展のため大きな力になった」と追悼文を読み上げた。僧侶らが読経する中、参列者が一人ずつ焼香し、静かに手を合わせ犠牲者の冥福を祈った。

 法要に参列した在日本大韓民国民団函館支部の李勇光支団長(54)は「日本の人たちが20数年も先祖の人たちのために手厚い慰霊法要を開いてくれることに感謝したい」と語った。

 また、犠牲者の調査を行い、碑の文章も書いた七飯町の浅利政俊さん(80)は「今の世の中が世界の多く人々の犠牲の上に成り立っていることや平和について、憲法記念日に考える必要があるのではないか」と話していた。(松宮一郎)