2011年5月7日 (土) 掲載

◎大阪の客船15日に函館寄港、震災後初

 日本クルーズ客船(大阪)の大型客船「ぱしふぃっくびいなす」(2万6594トン)が15日、函館港に寄港する。東日本大震災後、クルーズ客船が道内に入港するのは初めて。外国船を中心に寄港のキャンセルが相次ぐ中、函館市は「函館が安全で、元気であることを知ってもらいたい」と歓迎している。

 同社が震災前に企画した「春探訪日本一周クルーズ」の一環。9日に横浜を出港し、神戸を経由して九州や北陸の港を巡り、15日午前9時に函館港西ふ頭に接岸する。函館では函館山からの夜景を楽しむ乗船客向けのシャトルバスが運行され、翌日午前零時に八戸に向けて出港する。

 同社によると、震災の影響で100人ほどがキャンセルし、現時点では約310人が参加予定という。福島第一原発事故の影響で、函館の次の寄港地、八戸から横浜港に戻る際、同原発から約180キロ離れた海域を航行することになり、八戸での滞在時間が短縮された。

 函館港には本年度予定された11隻のうち、半数以上の6隻が寄港を中止。特に5月は5隻中4隻がキャンセルとなった。市港湾空港振興課は「風評被害や自粛ムードが広がる中、本年度1隻目の客船入港が決まってうれしい。函館や国内のクルーズの安全性のアピールにつなげたい」と今後の巻き返しに期待する。

 当日は岸壁での歓迎セレモニーや船内で「いか踊り」実行委による見送りイベントなどを予定している。同社は「函館も一部被災している地域なのに前向きに受け入れていただけることに感謝したい。お客さんにもその気持ちは伝わるはず」と話している。(森健太郎)



◎満開の夜桜にうっとり

 函館海洋気象台は6日、函館でサクラが満開になったと発表した。五稜郭公園にある標本木で80%以上のつぼみが開いているのを、この日の午後に同気象台職員が確認。平年より1日、昨年より4日早かった。

 今年のサクラは、4月中に開花が期待されたが、同下旬に雨が続き、気温も低くなったため5月2日に開花。大型連休後半に入った3日からも雨や曇りとなったが、同公園によると5日から花見客が増え、この日も朝から混雑したたという。

 夜になると電飾の下でシートを広げる人が増え、満開の夜桜を楽しんでいた。友人と訪れていた五稜郭町の主婦、西川文子さん(68)は「家が近いので夜桜を楽しみに来てみたが、ジンギスカンをやっている人が多くて楽しそう。自分も一緒に中に交じりたい」と話していた。(山崎純一、平尾美陽子)



◎ユッケ集団食中毒、市内の焼き肉店からも疑問

 焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」で発生した集団食中毒で、全国的に生肉のユッケの提供を取りやめる店が出ているが、函館では今のところ客の注文数は大きく変わってはいないようだ。市内や近郊の焼き肉店からも同チェーン店の衛生管理に対し、疑問の声が聞かれる。道は厚生労働省からの通達を受け、生食用食肉を取り扱う飲食店などを対象に衛生基準などの緊急調査を行う予定だが、店数の把握など、実施には時間が掛かりそうだ。

 ユッケをメニューにそろえる函館市内のある焼き肉店では、問題の発覚後も注文数にほとんど変化は見られないといい、事故が起きた店の管理状態を疑問視する。同店店主は「基準が定められているわけではなく、店の判断にゆだねられている。好きな人には欠かせないメニュー。店を開けるからにはお客さんの要望に応えたいし、そのために徹底管理している。管理をきちんとしていれば、起こらなかったのでは」と話す。

 北斗市内の焼き肉店でも、ユッケは創業以来の人気メニュー。多い日で20〜30食の注文があるという。同店代表は「メニューボードからは外したが、お客さんからの要望もあるので提供しており、今も注文数に影響はほとんど見られない。包丁やまな板を素材ごとに変えるなど、徹底管理すれば問題は起きない」と指摘する。

 厚生労働省は5日、各都道府県に対し、生食用食肉を取り扱う飲食店などを対象に衛生基準などの緊急監視を行うよう通知した。渡島保健所(函館市美原4)では本庁からの連絡が届き次第、具体的な対応策を図るとしている。早ければ9日以降からとなるが、管内には飲食業として1000軒以上あり、焼き肉店以外の居酒屋などの生肉提供店をすべて把握するのには時間がかかるという。

 市立函館保健所でも今後、生食用食肉を提供していると確認できた店の立ち入り検査などを行うとしているが、店数を把握していないことや、店側も提供を自粛することが考えられるため、「あくまでも店が提供していることが確認できてから動く」と慎重な姿勢だ。


◎函館市議会、会派再編大詰め

 改選された函館市議会は、会派再編に向けた水面下の動きが大詰めを迎えている。各会派は今月11日に会派構成や役職を市に提出するが、改選のたびにささやかれる保守一本化は今回も困難な情勢。現職を破り初当選した工藤寿樹新市長への対応や、5月23、24日に予定される臨時会で選ばれる新議長をめぐる動向が焦点となっている。

 改選前の会派構成は保守系の新生クラブが10人、民主党系の民主・市民ネット9人、保守系の市民クラブが6人、公明党5人、共産党4人、無所属が2人。今回は定数が38から30に削減。現職は出馬した24人が全員当選し、元職1人と新人5人(うち政党所属3人)が当選した。

 選挙直後には保守系の大同団結に向けた動きがみられたが、「過去には任期途中に保守会派が分裂したケースがあり、その時からいる議員も多い」(市幹部)ことから、一本化は困難との見方が強い。

 関係者の話を総合すると、改選前最大会派だった新生クラブが、市民クラブに在籍した一部議員や新人と接触しており、現段階では11人で構成し、最大会派となる見通し。市民クラブ系は3〜4人とみられ、新人にも参加を呼び掛けている。

 民主・市民ネットは8人が有力。工藤市長は主に保守層から支持を集めたが、民主系の一部も支持に回ったことから、「是々非々の姿勢で臨むことになる」(ある市議)としている。

 また、最大会派からの選出が慣例となっている新議長をめぐる動きも調整が進められている。複数の関係者によると、保守系のベテラン数人の名前が挙がっているが、ある市議は「議長ポストに関する駆け引きはまだこれから」と話す。(千葉卓陽)