2011年6月10日 (金) 掲載

◎震災後道内初、外国クルーズ船が函館寄港

 東日本大震災後初の外国クルーズ客船が9日、函館港西ふ頭(函館市弁天町)に寄港した。震災後に外国客船が道内に入港するのは初めて。岸壁では市民や港湾関係者が横断幕を掲げて歓迎し、乗客らは次々にバスツアーなどで函館観光に出かけた。

 寄港したのは、函館初入港となるドイツの船会社が所有する「ブレーメン」(6752トン)。5月30日に中国・上海を出港し、九州や大阪、広島を回って函館入りした。9日夜に青森に向けて出港し、11日に小樽で完結する。函館に寄港する外国客船は本年度最初で最後となる。

 乗客はドイツからが最も多く、オーストリアやメキシコなどから計78人。船会社によると、震災の影響でキャンセルした人も多く、定員の半数ほどにとどまり、航路も当初は被害を受けた太平洋側を回るルートだったが、急きょ日本海側のルートに変更したという。

 この日は船内で歓迎セレモニーがあり、函館側からドイツにゆかりのある七飯町産のリンゴ100%のスパークリングワインや花束が船長らに贈られた。乗客らは午前9時ごろから貸切バスや船に備えられた自転車などで五稜郭や朝市方面に向かった。

 スイス人乗客のエイドリアン・サルトマンさん(66)は「路面電車や函館山からの景色が楽しみ」と話し、震災や原発事故の影響については「函館が福島から遠く、安全であることは分かっている。何も心配していない」と笑顔だった。船は同日午後8時ごろ、市民らの「いか踊り」の見送りを受けて函館港を離れた。(森健太郎)



◎Tシャツ着て復興支援、渡島管内商工会青年部連合会が販売

 渡島管内商工会青年部連合会(澤田暁会長)は、東日本大震災復興を願い、オリジナルチャリティーTシャツの販売を開始する。1着2000円で販売し、収益の1000円を全国商工会連合会を通じて被災地への寄付とする。北斗市商工会青年部長の澤田会長(38)は「被災地では青年部の仲間も亡くなった。できることは小さいが、長い目で活動を続けていきたい」と話している。

 同連合会は、管内12商工会の青年部員約260人で構成。形に残る被災地支援の在り方を模索し、Tシャツの販売を決めた。繰り返し着用できるように生地にもこだわり、各サイズを取りそろえた。3000着を作製し、完売すると300万円の義援金となる。先行販売した長万部町内では既に300枚が売れたという。

 デザインは函館市内のデザイナーから無償で協力を得た。胸の部分にはフランス語で「希望」を意味する「L’ESPOIR」(レスポワール)、ローマ字で「GANBARO NIPPON」と記載。背中には地球のイラストと心を一つにする願いを込めて「One Heart」(ワン・ハート)、震災発生日の「3・11」を入れた。

 澤田会長は「震災から3カ月となり、だんだん気持ちも離れがちになってくる。まだまだ復興していないことを忘れてはいけない」と末永い支援の継続を訴えていた。

 Tシャツは各商工会で取り扱うほか、商工会がかかわる各イベント会場で販売。今月は11日に函館市の臼尻漁港で開かれる「ひろめ舟まつり」や八雲町本町商店街で21日に行われる八雲神社例大祭協賛の「八雲まつり歩行者天国」でも販売される。

 問い合わせは事務局(商工会連合会道南支所)TEL0138・43・0086。(今井正一)



◎稚ナマコ育成にアゴハゼ有効

 桧山北部地区水産技術普及指導所(せたな町)と同町大成水産種苗センターは、中国需要の拡大に伴い全道的に注目が集まるナマコの人工種苗生産について、アゴハゼ(通称・ゴダッペ)を利用すると体長1ミリ以上の稚ナマコへの食害がなく、大量へい死の主因となるコペポーダ(ほふく性小型甲殻類)の駆除能力も高いとする試験結果をまとめた。アゴハゼがコペ対策に有効であることを確認、今後、さらに実証試験で効果が確認できれば漁業者や漁協に報告する。

 中華料理の高級食材で、経済成長著しい中国では需要が増大するナマコ。道南でも種苗生産が盛んで、同センターでは採卵や幼生管理技術は確立されているが、初期育成段階(稚ナマコ)での大量へい死について有効な対策がなく、深刻な課題となっていた。そこで、青森県でコペ対策としてアゴハゼを利用している点に着目、その効果を検証した。

 両者は2010年度、10リットルのプラスチック水槽を使い飼育試験を行い、アゴハゼのサイズの違いによる稚ナマコへの食害やコペの駆除能力を調べた。アゴハゼは同町の海岸で捕獲した。

 検証試験では、6つの試験区を設け、各水槽には体長1ミリの稚ナマコを10個体付着させた。@は体長7センチのアゴハゼ1匹、Aは3センチのアゴハゼ1匹をそれぞれ投入、コペはどちらも入れなかった。Bは7センチアゴハゼ1匹、Cは3センチアゴハゼ1匹をそれぞれ入れ、どちらもコペ2100個体を入れた。Dはアゴハゼは入れず、コペ2100個体のみ。Eはアゴハゼ、コペともに入れなかった。

 結果によると、@とAは稚ナマコが100%生きていてアゴハゼが稚ナマコを捕食しないことを確めた。Bはコペを84%駆除、稚ナマコの生残率は72%。Cはコペを98%駆除、稚ナマコの生残率は100%だった。Dはコペが2倍に増え、稚ナマコは4割死んだことから、コペによる稚ナマコの食害を確認した。Eは稚ナマコが9割生きていた。駆除能力は大型魚(7センチ)よりも小型魚(3センチ)の方が高いことが分かった。

 同指導所の森伸行専門普及指導員は「アゴハゼを入れると、稚ナマコの生長が良く、大量へい死も起こらなかった。アゴハゼ以外のコペ対策として行っている水槽替えやコペ駆除用メッシュの洗浄などの作業負担も解消される。今後はアゴハゼを入れる時期を検証したい」と話している。

 桧山北部ではナマコを主にタモで漁獲しており、09年の漁獲量は42トン、生産額は1億6621万円。中国の富裕層を中心として需要が高まり、人気がある道産ナマコの価格が高騰。漁業関係者からナマコ増殖への要望が高まっている。道南ではせたなのほか、八雲町熊石、上ノ国、奥尻などの各町で種苗生産に取り組んでいる。(山崎大和)


◎クジラの恵みに感謝、称名寺で供養慰霊祭

 道南近海のツチクジラ漁(5月25日〜6月30日)に合わせ、「第7回鯨族(げいぞく)供養慰霊祭」が9日、函館市船見町の称名寺本堂で開かれた。約30人がクジラの恵みに感謝するとともに、御霊(みたま)に祈りをささげた。

 函館水産連合協議会(石尾清廣会長)の鯨普及部会(利波英樹会長)の主催。ことしは同日現在、道南近海でツチクジラ6頭が捕獲、水揚げされ、赤肉などが店頭に並んでいる。捕獲枠は10頭。

 同寺の須藤隆仙住職による読経の中、参列者が焼香し、祭壇に手を合わせた。須藤住職は函館西中生徒が2日、近くにある「鯨族供養塔」で清掃活動に励んだことに触れ「心温まるニュースで本当にうれしい。自然に対する謙虚さを改めて心の中に刻んでほしい」と話した。

 利波会長は「捕鯨を取り巻く環境は厳しい状況だが、この食文化を若い世代にも普及させたい」とあいさつ。慰霊祭後、参列者が供養塔前で記念撮影し終了した。(山崎大和)


◎函館—新函館間利用、1日に5000〜6300人と予測

 北海道新幹線の札幌延伸に伴い、JR北海道が函館駅—新函館駅(仮称)間17・9キロを経営分離する方針を示している問題で、道は9日までに同区間の需要予測を公表した。1日あたりの利用者を5000〜6300人と推計している。

 需要予測は05年に国が行った、全国幹線旅客純流動調査を基準に算定。新幹線利用者と乗り継ぎ客を2600〜3900人、函館—渡島大野間のローカル線の利用客を2400人と推計している。

 また、札幌延伸時の新函館駅利用客を同8900〜9700人と予測。在来線からの転換輸送量や航空路線からの転移、新規の需要誘発を見込むとともに、09年に行ったアンケート調査から、新函館駅乗降客の3〜4割が函館駅まで乗り継ぐと推計した。

 道によると、国鉄民営化時の基準で1日あたりの利用が8000人以上で収益が見込め、4000人未満は廃止対象路線と位置付けられている。今回の需要予測はその中間にあたり、道は一定程度の需要が見込めるとして、JR北海道に同区間の経営分離を再考するよう要請した。「現在はJRからの返答待ち」(渡島総合振興局)としている。(千葉卓陽)