2011年6月28日 (火) 掲載

◎「ササラ電車」 東京へ里帰り出張

 函館市企業局交通部の除雪車「ササラ電車」が、東京で7月から開かれる都営交通100周年記念特別展(都交通局主催)で展示されるため、市電駒場車庫(駒場町)で27日、車両の搬出作業が行われた。函館から現役車両が出展されるのは初めて。かつて活躍した故郷・東京へ76年ぶりに里帰り出張≠キる。

 都交通局などによると、車両は1903〜04(明治36〜37)年ごろに製造された木造の四輪単車「ヨヘロ型」で、都内を運行していた路面電車のうち今も残る現役車両としては国内最古。車両は全長8.7メートル、幅2.3メートル、重さ10.4トンで、定員は約40人。

 34(昭和9)年3月の函館大火で所有していた路面電車をほぼ焼失した函館市は、レールの軌間が国内で唯一同じだった東京市電気局(当時)から34〜35年にかけて車両を計45両購入。37年には6両を除雪用に車両の前後に竹ブラシを装着した「ササラ電車」に改造し、現在も2両が年に数回活躍している。

 都交通局は7月14日〜9月10日に江戸東京博物館(墨田区)で開く「東京の交通100年博」の目玉展示として車両を借り受けた。この日は午前8時から総勢約30人で作業を開始。製造から100年以上が経過しているため、クレーン2台で慎重に車両を持ち上げ、苫小牧まで陸送するためのトレーラーに3時間ほどかけて積み込んだ。

 車両は28日夜、苫小牧からフェリーで川崎市に向かい、7月4日に会場に到着する予定。都交通局は「これほど長く車両が保持されるのは異例。東京で生まれ、函館で守り育てられた貴重な歴史的車両を多くの鉄道ファンに楽しんでほしい」、函館市交通部も「現役で活躍する姿を見に来てもらえるよう函館をPRしてきてほしい」と話していた。  (森健太郎)



◎サンダンス・リゾート 道内初進出

 会員制ホテルやリゾートクラブなどを運営する「サンダンス・リゾート」(東京)は、函館に宿泊施設「サンダンス・リゾート函館」を確保し、これまで施設を持たなかった北海道に初めて進出する。既存のホテル「HAKODATE男爵倶楽部」(函館市大手町)の2室を借り上げ、7月1日から会員に提供。同社は「会員から北海道や函館への要望が多かった」とし、札幌を視野に入れた今後の道内展開の足掛かりとして期待する。

 同社の会員数は約1万3000組。100万円代から入会できるポイント制で、購入したポイントを使用する形で国内外の施設に宿泊できる。ほとんどが自社施設で、国内は首都圏を中心に26カ所、海外は73カ所を展開する。

 「まずは需要を見極めたい」と、函館では既存ホテルを利用する形態とした。開始に当たり同ホテルの2部屋(3人、4人部屋)を年間を通して借り上げ、会員の予約に応じて利用する。

 同ホテルでは各部屋に冷蔵庫や流し台などのキッチン設備を備え、60代以上の利用者のロングステイ(2週間から2カ月)を支えている。同社は「関東圏居住者が北海道を訪れる時には連泊が多く、滞在型ホテルとしての姿勢を評価した」。予約は順調で、状況によっては契約する部屋数の増加や札幌方面に進出する可能性もあるという。

 今回の契約はホテルにとってもメリットがある。同ホテルの斉藤将嗣総支配人は、借り上げで生じる収入が経営の安定化につながると説明。さらに「これまで利用がなかった新しい客層の開拓にもつながるのではないか」と期待している。 (小泉まや)



◎江差追分で被災者応援

 【江差】心身に大きな痛手を負った、東日本大震災の被災者を江差追分の調べで励まそうと21、22の両日、江差追分会(会長・濱谷一治江差町長)が、岩手・宮城の両県で支援コンサートを開いた。

 第25回江差追分全国大会優勝者の菊地勲師匠、第41回大会優勝者の寺島絵里佳さんが出演をはじめ、東北在住の全国大会優勝経験者が公演に参加した。21日は、宮城県山元町で、22日には岩手県大船渡市のほか、江差町を含む桧山7町と桧山振興局が6週間にわたる人的支援活動を行った縁がある山田町を訪問した。

 参加メンバーは、被災者が3カ月を超える避難生活を余儀なくされている、体育館や公民館などを訪れて、江差追分や東北各地の民謡などを披露。3会場とも大勢の被災者が、本場の江差追分の調べを熱心に聴き入り、会場からは手拍子や声援が贈られた。

 公演に同行した、江差追分会事務局の中川智さんは「長引く避難生活で披露を重ねている被災者の皆さんに喜んでもらうことができた。少しでも復興に向けた力になることができれば」と話していた。  (松浦 純)


◎函館、北斗、七飯 大間原発凍結へ連携

 青森県大間町に建設中の大間原発をめぐり、函館、北斗、七飯の2市1町の首長が27日、函館市役所で初めて意見交換し、大間原発の建設について3市町で共同歩調を取り「無期限凍結」を求めていく方針で一致した。今後、渡島・桧山管内の他の自治体にも連携を呼びかけ、情報を交換、共有しながら要請活動などを展開する。

 意見交換には工藤寿樹函館市長、高谷寿峰北斗市長、中宮安一七飯町長が出席。会合では函館市の防災担当者が、国のエネルギー基本計画の現状や、工藤市長が今月中旬に上京し、経済産業省や事業者の電源開発に対して大間原発の建設凍結や安全対策などの情報提供を求めたことを報告した。

 そのうえで工藤市長は「国の対応があいまいではっきりしない。国民の安全・安心を守るというメッセージを発信してもらわなければ、このまま(原発建設を)進めることにはならない」と強調。早ければ定例市議会終了後の7月下旬にも道と連動して大間原発の建設地や関係自治体などを視察訪問する考えを示した。

 高谷北斗市長も「福島の事故を大間に当てはめると北斗にも影響が及び、農・漁業者も心配している。函館市にリードしてもらいながら同じスタンスでやっていきたい」と同調。また、原子力災害への対策を重点強化する緊急時計画区域(EPZ)の拡大については「原発を容認しているようで、見直しは順を追って求めた方がいい」と述べた。

 中宮七飯町長は「大間原発の半径50`圏内は峠下まで及ぶ。事故後の風向きによっては西洋式農業発祥の地が簡単に吹き飛んでしまう」とし、さらに原発へのテロ対策の必要性も指摘。「本当に安全であれば東京に造ればいい。安全を確保した原発を最低限の数だけ稼働させ、新しく造る必要はない」と足並みをそろえた  (森健太郎)


◎ウインドパワー株主総会 3年ぶり単年度黒字

 【江差】江差町が51%を出資する第3セクター・江差ウインドパワー(社長=森藤次雄・斐太工務店風力発電事業部長)の株主総会が27日に開かれた。風車の修理に対する保険金の支払いで営業外収益が増加したため、4526万円の純利益を計上した2011年3月期決算を承認した。

 単年度黒字を計上したのは07年3月期決算以来で3年ぶり。前期は落雷により15基の風車が羽根を破損。修理に伴う保険金は4530万円。24基ある風車は、落雷による破損や機器の故障が相次いでいたが、本年度までに1基を除き稼働状態に戻ったという。 売電収入は、大半の風車が修理により稼働率を改善した結果、09年度より約3700万円多い1億9968万円だった。売電収入の低迷などを原因とする累積赤字は9億5271万円。長期借入金を含む負債は13億346万円。

 今期の売電額は、前期より1億4200万円少ない1億2000万円(発電量・2万3952メガワット時)を見込んだ。同社は、段階的に売電単価が下がるステップ単価方式で北電と売電契約を結んでいる。01〜06年度には14.7円だった単価は、07〜10年度が8.58円、11年度〜14年度は5.02円、最終段階の15〜18年度は2円台に下がる。稼働状態の風車が、実際に発電を行った出力の割合を示す設備利用率は、前期までの16.6%から、これまでの実績に見合う13%に引き下げた。        (松浦 純)