2011年6月29日 (水) 掲載

◎新島襄ゆかりの地 函館沸く…NHKドラマ「八重の桜」放送決定で

 2013年のNHK大河ドラマで、同志社大創設者の新島襄の妻八重(1845〜1932年)の生涯を描いた「八重の桜」(綾瀬はるか主演)が放送されることが決まり、函館でも関係者から喜びの声が上がっている。函館は襄が密出国して渡米した記念の地。その妻で、同志社の礎を築いた八重が全国に発信されるとともに、被災地を元気づける原動力になると、関係者は期待を寄せる。

 八重は、福島県会津藩の出身で、同志社英学校(現同大)を創立に協力した山本覚馬の妹。会津・鶴ヶ城を拠点に戊辰戦争で自らもスペンサー銃を持って戦い、「幕末のジャンヌ・ダルク」と称された。明治維新後、兄のいる京都に移り住み、襄と結婚しキリスト教の伝道と教育活動に取り組んだ。襄の死後は遺志を引き継ぎ、全財産を投じて同志社を守った。会津にいたころは八重子とも呼ばれた。

 函館にも、襄と共に1887年(明治20年)7月に滞在したとされる。

 同志社校友会函館クラブの浜谷信彦会長(67)=函館市東山=は「大変うれしいこと。八重の心意気が福島、日本に元気を与え続けてくれるはず」と期待。浜谷会長は同大出版部が73年に発行した「新島八重子回想録」を所有しており、八重の生涯について詳しいだけに喜びもひとしおだ。

 襄が脱国した新暦7月17日(旧暦6月14日)に海外渡航の地碑(大町)前で毎年祭典を行う「新島襄・パトス(純粋な情熱)の会」の千代肇代表(80)=同市花園町=は「八重は北海道ではなじみがない。ドラマになってスポットライトが当たれば、かなり反響があるだろう」と話す。

 襄が脱国する場面の寸劇に取り組む函館水産高校で、生徒に演技指導する我妻雅夫教諭(58)は「襄はすごい人だが、八重も女傑として知られる。八重のことも広く知られるきっかけとなれば」と期待を寄せる。同校は6月12〜14日に函館市内で開かれた「同志社フェアin函館」(同大主催)にも出演、八重役の五十嵐優加さん(3年)が襄と再び函館を訪れるシーンを熱演した。

 函館市観光コンベンション部は「まだ部内で検討していないが、函館で撮影の機会があればうれしいし、全面的に協力したい」としている。撮影は来夏に始まる予定。(山崎大和)



◎観光客数4年ぶり増加…渡島管内10年度

 渡島総合振興局は28日、2010年度の管内観光客の入り込み数と訪日外国人宿泊者数(いずれも速報値)を発表した。観光客数は約953万9000人で、前年度比約29万1000人増、対前年比で3・1%の増加となり4年ぶりに増加に転じた。外国人宿泊者数は1997年の調査以来最多。本年度は東日本大震災で入り込み数が減少しているが、官民連携した安全性PRなどで今後の回復に期待がかかる。

 観光客は現行方法で調査を始めた97年以来、09年度の924万8000人に次いで過去2番目に少なかった。前年度に猛威を振るった新型インフルエンザの影響が見られなかったことや、全国的な景気の持ち直しに伴う観光需要の回復などが要因。

 道外客は470万2000人(49.3%)で、前年比4.8%増と大きく伸びた。函館―関西便が6〜9月に増便されたことや、台湾を中心としたチャーター便が増加したことなどが要因。月別では、震災の影響で3月の観光客数が前年比15.4%減と大きく落ち込んだ。

 前年度を上回ったのは函館、北斗、知内、木古内、森、八雲、長万部の7市町。伸び率が最高だったのは八雲町で16%増の51万人。09年10月に八雲パーキングエリアのオープンにより、ハイウエイオアシスである噴火湾パノラマパーク利用者が増加したためとみられる。函館市は5.9%増の約458万6000人。同振興局は函館競馬場のリニューアルオープンや、箱館奉行所の復元オープン、東北新幹線の新青森駅開業効果が主な要因と分析している。

 一方、前年度を下回ったのは松前、福島、七飯、鹿部の4町。サクラの開花がゴールデンウイーク後にずれ込んだことや、宿泊・観光施設の一時休業が影響した。

 外国人宿泊者数は17万5088人で、前年比21.4%増、実数は3万877人の増加となった。新型インフルの影響がなかったことに加え、東アジアの経済状況好転、台湾からのチャーター便の増加が要因。台湾が8万9390人と最も多く、韓国3万8166人、中国1万2278人、香港1万1034人と続く。特にシンガポール(8941人)とマレーシア(4691人)が高い伸び率を示しており、ここ数年続く北海道ブームが影響しているという。同振興局は「本年度は震災の影響で厳しい状況だが、海外からの旅行会社やメディアによるツアーで安全性をPRしており、台湾からのチャーター便も戻りつつある。後半の巻き返しに期待したい」(商工労働観光課)としている。(山崎大和)



◎職員厚生会が2400万円寄付…介護給付費事務処理ミス

 函館市が国から受け取る介護給付費「財政調整交付金」の事務処理をミスした問題で、市職員でつくる函館市役所職員厚生会(会長・上戸慶一総務部長)は28日までに、市の負担分約2400万円を市に寄付することを決めた。市民負担を生じさせない方法として異例の対応で、市は今後、寄付金で介護保険事業特別会計の欠損を補てんする。昨年3月に発覚した同問題は、今回の寄付で解決に向かう見通しとなった。

 この問題は市が09年度の介護給付費を申請する段階で、計算で使うソフトの運用ミスにより、実際から約1億6000万円少ない額しか国から交付されなかった。

 国はこのうち7割分を救済し、約4800万円の不足額が残っていたが、処理方法をめぐっては市と委託業者で折半し、市の補てん分は職員の任意負担や税負担とする方法を模索していたが、まとまらなかった。

 西尾正範前市長は「(同様の状況になっている)小樽など他都市と連携を取りたい」として具体的な方法を定めず、4月に就任した工藤寿樹市長は前市長らの退職金差し押さえを検討していた。

 厚生会によると、27日に開かれた臨時総会で寄付を決定。財源には、職員への小口貸し付け事業のため運用している約8900万円の一部を充てる。厚生会の運営には市からの交付金も一部充てられているが、貸し付け事業は会員約2500人から徴収している会費で運用しており、公費は含んでいないとしている。

 厚生会が寄付を決めたことを受け、市は今後、寄付金の補正予算への計上や、委託業者と折半するための議決が必要となる。本年度内に処理することで「来年度以降の介護保険料への影響は出ない」(市福祉部)という。(千葉卓陽)


◎41件が「不適切処理」…オンブズマン「知恵の予算」独自調査

 市民団体「道南市民オンブズマン」(大河内憲司代表)は28日、函館市が2007年度〜10年度に実施した創意ある学校づくり推進事業(知恵の予算)について、07〜09年度の調査結果を公表した。それによると、3年間で支出されたうち、小学校34件、中学校7件の計41件、約260万円が不適切な支出だったと指摘している。

 知恵の予算は西尾正範前市長の目玉政策で、市立小、中学校、高校の学校規模に応じて100、80、60万円を配分。4月に就任した工藤寿樹市長は「公務員へのばらまき」と批判し、6月の補正予算で廃止を提案する。

 同オンブズマンは各学校からの報告書に基づき、昨年11月から金額の使途や適正度、費用対効果などを独自に検証。その結果、各小中学校で教職員の視察旅行や研修会、教職員向け講演会の謝礼、町会やPTA用の防犯ジャンパーの作成経費に使われたことがわかり、「予算の趣旨から逸脱している」と指摘した。

 これとは別に、歌舞伎公演やミュージカルの鑑賞経費(高校)、図書466冊の購入(中学校)など4件、約246万円を「執行内容に問題がある」としたほか、3年間の決算額がいずれも、同団体が情報公開請求を使って調査した金額と合致しなかったとしている。

 住民監査請求について大河内代表は「請求する余地はあるが、返還は学校現場の混乱を招く」として消極的だが、「市は使い道をはっきりと決めて交付すべき」と話している。(千葉卓陽)


◎輪禍死ゼロ3000日達成…恵山地区

 函館市恵山地区がこのほど、交通事故死「ゼロ」3000日を達成した。旧恵山町時代の2003年4月から死亡事故ゼロが続いていて、市内では椴法華地区の5000日の節目に次ぐ大記録。28日には同地区の道の駅なとわえさん(日ノ浜町)で記念の街頭啓発が行われた。

 恵山地区では同年3月31日に国道278号で軽トラックが駐車車両に追突する事故が起きて以来、死亡事故がなく、今月17日で3000日を迎えた。函館中央署によると、同地区ではこの間の人身事故が28件で「地域住民の意識が高く、交通安全活動も盛ん」(交通課)という。

 市や市交通安全指導員会、市中央交通安全協会の両恵山支部(ともに佐藤哲三支部長)が主催した啓発活動には、地元のえさん小4年生や恵山中2年生ら関係者約100人が参加。市の三上武一恵山支所長は「悲しい事故が起こらないよう、一人一人の安全意識を高めて数字を伸ばしていこう」と述べた。

 参加者は車のドライバーに後部座席のシートベルト着用を呼びかけるチラシなどを配り「安全運転をお願いします」と訴え、国道沿いではスピードダウンを呼びかける「旗の波作戦」も行った。えさん小の斉藤霞さん(9)は「自分でも事故に気をつけ、事故死ゼロ5000日を目指したい」と話した。

 市によると、17日現在、道内市町村別の交通事故死ゼロの最長はオホーツク管内西興部村の5982日。道南では奥尻町の3639日、知内町の2971日などがあり、市内椴法華地区も5751日と記録を伸ばしている。(森健太郎)(松浦 純)