2011年7月1日 (金) 掲載

◎マイカ漁解禁1カ月、漁獲・型が回復傾向

 函館の名物である道南近海のスルメイカ(マイカ)漁解禁から1日で1カ月。函館市内の店頭では出回り量が増え、ようやく夏の風物詩として市民の食卓を彩り始めた。水揚げ量は6月下旬でみると前年並みの水準となり、魚体の大きさも回復してきた。漁業関係者は「これからが本番」と手応えを感じている。

 6月3日の初水揚げでは、函館市水産物地方卸売市場の競りにかけられたマイカは45匹(2キロ弱)で、記録的に少ないスタートだった。解禁直後は型が小ぶりで市場価格も低迷、出漁を見合わせた漁業者も多かった。

 はこだて自由市場(函館市新川町)のイカ専門店「富田鮮魚店」(富田貞雄社長)では30日、いけすイカが4匹1000円(小型)、3匹1000円(大型)で店頭に並び、市民らが次々と買い求めていた。魚体の大きさは20aほどが多いという。多い日で1日に70〜80キロ売れるといい、富田社長は「型も大きくなったし、量も増えてきた。値段も安くなってきたので、商売はこれからが本番」と笑顔を見せていた。

 函館市農林水産部によると、6月1〜29日の同市場でのマイカ取扱量は117トンで、前年の約半分。ただ、6月21〜29日では76トンと前年(79トン)並みに回復。マイカ全体の平均市場価格は1`当たり377円で前年比5円安。いけすイカは同731円で同104円安。6月下旬からは、1箱(6キロ)25〜30匹入りも入荷していて、魚体は大きくなってきた。単価安について同部は「魚体が小さいことに加え、東日本大震災の影響で函館の観光客入り込み数が落ち込んでおり、ホテルや飲食店での需要減が影響しているのではないか」とみる。

 函館市漁協によると、現在の漁場は松前町沖の松前小島付近が中心だが、前浜でも捕れ始めたという。同漁協は「前浜に漁場が形成されれば、燃料代もかからず、手取り収入が増えてくる。漁業者の体の疲労度も軽減される」と期待を寄せる。1日からは、漁船に使うA重油(組合員価格)が1円80銭下がり1g当たり83円30銭となる。通常の年だと70円台なので、80円台はまだ高いが「漁業者にとってはプラス材料」と同漁協。

 函館水産試験場の沢村正幸研究主任は「今季は日本海全体の資源量はそれほど多くないが、遅れていた群の来遊が見られたので、道南日本海側を中心にしばらくは漁獲が続く。太平洋側の群はまだ来遊していないので、太平洋側での本格化はもう少し先になるだろう」と話している。(山崎大和)



◎小原さんの絵画が仏の展覧会で入賞

 函館市で元町画廊(元町23)を開く画家の小原雅夫さん(63)が、国際的な展覧会として知られるフランスのサロン・ドートンヌ2011年展で入賞を果たした。作品は、自身が初めて描いたという抽象画で、このほど入選を知らせる通知が手元に届いた。小原さんは「初めて挑戦した抽象画が入選するとは信じられないが、通知が届きやっと実感が湧いてきた」と話している。

 同展(サロン・ドートンヌ協会主催)は100年以上の歴史を持ち、ピカソやセザンヌなどの歴代の作家から、多くの実力派日本人作家たちも登竜門として挑戦してきた国際的サロンのひとつ。年に1回開かれ、具象作品や写実作品、ポップアート作品など多彩な作品が世界各地から寄せられる。10月初旬にはパリのシャンゼリゼ大通りで展覧会が行われ、入選作品約400点が展示される。

 小原さんは昨年末、東京で偶然見たという映画「ハーブ&ドロシー」から刺激を受け、これまでの油彩、水彩とは違う新たな絵画に挑戦しようと決意。自身初挑戦というアクリル画材を用い、抽象画「凝視された扉(存在と非存在)」を制作した。西部地区の倉庫の扉をモチーフに、扉のサビや色合いなどリアリティーを追求し、ドアの中にドアが存在するという不確かな世界を表現。50号のキャンバスに描かれた迫力ある作品で、見た人を絵の中に引き込む。白い部分だけを目にすると「回」という漢字が現れ、常に変化し合うという不思議さ、独特の世界観が魅力の作品になっている。

 「何かの作品展やコンクールに公募したのは約20年ぶり。構成を練るのに3冊分のスケッチをした。デッサンが一番大変だったと思う」と振り返る。その上で「趣味で絵を始め30年以上がたつ。今回の受賞を機に、この作品を元により深く進化した世界を描いてみたい」と来年の同展に向け、意気込みを新たにしている。(平尾美陽子)



◎函館市議会開会、工藤市長が執行方針

 函館市議会の第2回定例会が30日、開会した。工藤寿樹市長が市政執行方針、山本真也教育長が教育行政執行方針を述べ、工藤市長は経済再生と市財政の再建を最重要課題として取り組む意向を示した上で、「市民の主体性を前面に押し出す行政へと転換し、自立した都市経営を確立する」と、新たな発想によるまちづくりに当たる決意を語った。会期は7月20日までの21日間。 

 工藤市長は、@躍動する経済都市A日本一の福祉都市B子どもたちと若者の未来を拓(ひら)くまちCガーデンシティ―の4点をまちの将来像に据え、「活気に満ちて、だれもが幸せに暮らせるまち・函館」の実現を目標に掲げた。 

 東日本大震災を受け、経済や産業活動で非常に厳しい局面が続くとし、その上で「福祉の充実や教育振興を図るためにも、市の財政再建を何としても果たさなければならない」と力説。 

 主要施策として、有識者で構成する経済再生会議の設立をはじめ、大門地区再生に向けた「子どもおもしろ館」の開設、職員給与・退職金の見直しのほか、各種公共施設の廃止も含めた整理統合の早期着手、東部4支所管内の高齢者を対象にした新たな交通機関乗車料金助成制度の創設を打ち出した。 

 医療費助成対象を小学生から中学生に引き上げることや、日吉4丁目団地跡の福祉コミュニティエリアとしての整備、旧函館北高跡地をスポーツ公園として整備することにも触れた。 

 また、対岸の青森県大間町で建設中の大間原発について「安全性の検証がなされない状況下では、建設中や新規の計画は無期限凍結すべき」と改めて主張。近隣自治体や道と協議し、安全確保に関する国への要請とともに、クリーンエネルギーへの転換に向けて「住宅用太陽光発電システム設置を支援する」とした。 

 一方、山本教育長は重点目標に@豊かな人生を支援する生涯学習の充実A子どもの「生きる力」を育む学校教育の推進B子どもの健やかな成長を支える環境整備―を挙げ、「学校、家庭、地域社会が一体となり、地域ぐるみで子どもたちの育ちを支える教育を推進する」と述べた。 

 具体施策では縄文文化交流センターの10月オープンとともに、市民体育館は「基本計画を策定するなど、新たな整備に向けて取り組む」と述べ、既存方針の転換を表明。さらにフルマラソン実施の検討を進めるとした。 

 学校教育ではインターネットへの不適切な書き込みを監視するネットパトロールの継続、あらゆる災害を想定した危機管理マニュアル、地域安全マップの見直し、弥生小学校新校舎に学童保育所専用施設を併設することなどを挙げた。(千葉卓陽)


◎ロシア文化フェス、ボリショイサーカス開幕

 日本とロシアの文化交流拡大を目指す「ロシア文化フェスティバル2011 in Japan」の函館オープニングイベント「2011国立ボリショイサーカス函館公演」(実行委主催、函館新聞社など後援)が30日、函館市民体育館で開幕した。愛らしい犬やネコの登場や、空中ブランコなど、手に汗握る演技の連続で、観客の目はステージにくぎ付けとなった。

 人と犬、ネコが抜群の呼吸で繰り広げるショーや熊の綱渡りなど動物サーカスのほか、絶妙なバランスを保って額に乗せた棒に人が立ったり、サーカスの花形、空中ブランコなど、鍛えられたアーティストの技が次々と演じられたほか、演技の合間にはユーモアたっぷりのピエロが観客と交流し、客席は常に熱気に包まれ、拍手と歓声が起こっていた。

 市内日吉町から訪れた主婦、小山厚美さん(66)は「男性はたくましく、女性は妖精のように、動物は愛らしく、とても感動した。友人に薦めたい」と話していた。

 同公演は3日まで。公演時間は1日@午後2時半A同6時、2〜3日@午前10時A午後1時半B同4時半。

 同フェスではこのほか、ロシア・アニメーション映画祭「チェブラーシカとロシア アニメーション」(1〜3日、道立函館美術館)、ロシア連邦文化省所蔵「明治古写真展『失われた日本』」(1〜10日、市芸術ホール)が無料で観覧できる。2日は関係者のみを対象とし、ニコライ渡来150年記念慰霊祭、オープニングセレモニーなどを開く。(山崎純一)


◎9月にHAKODATE黒船イベント

 9月4日に函館市大町の緑の島で開く音楽とファッションの融合イベント「HAKODATE黒船2011」の成功に向けて、主催する函館黒船地域活性化協議会(小林一輝会長)が着々と準備を進めている。6月30日には函館市役所で小林会長らが記者会見に臨み「地域振興、経済活性化、人々の交流など函館の無限の可能性を引き出したい」と意気込みを語った。

 同協議会は飲食店や服飾店などで働く20〜30代の若者が、郷土愛を持って各種イベントを展開し、まちの盛り上げ役に徹している。野外フェスは、2年前の開港150周年事業がきっかけで、昨夏に続き今年で3回目。今回も人気アーティストのET―KINGやモデルの小森純さんらとプロデビューを狙うオーディション合格者(近日発表)が共演する。

 また今年は、フェリーの東北パックツアー、道南近郊と全道からのバスツアーも企画。最大観客収容1万人を目標に「子供から年配者まで幅広い世代が集い、全国へ元気を発信していきたい」と同協議会。

 ツアー客らに函館朝市や市内観光を積極的に勧め、「大震災の影響を心配している。少しでも地域経済に貢献したい」とする。

 小林会長と浅水耕太副会長(31)は「準備は大変だが、夢を持って生きる大切さや、古里に愛情を寄せることの素晴らしさを多くの人と共有したい。『やればできる!願いは叶う』を合言葉に頑張りたい」と意気込んでいる。

 チケット販売や出演予定者など詳細は公式ホームページ。問い合わせは同協議会0138-35-7033。(田中陽介)