2011年7月27日 (水) 掲載

◎義援船に感謝「笑顔戻る」…久慈市長らお礼来函

 東日本大震災で被害を受けた岩手県久慈市の漁業者へ磯舟228隻を無償提供した函館市内5漁協(函館市、銭亀沢、戸井、えさん、南かやべ)にお礼するため、久慈市の山内隆文市長と同市漁協の皀(さいかち)健一郎組合長ら6人が26日、来函した。一行は函館市役所や各漁協を訪れ、「漁が再開でき、漁業者に笑顔が戻った」(山内市長)と最大限の謝意を示した。函館市側も変わらぬ友情を誓った。  南かやべ漁協本所では、函館市内5漁協組合長連絡協議会の鎌田光夫会長(南かやべ漁協組合長)、同漁協の小川正毅専務、中村正俊常務、漁船集約を支援した南かやべ定置漁業協会の野村譲会長が応対した。

 山内市長は「函館市の漁協の皆さんから大きな力をもらった。おかげで義援船を活用しコンブ、ウニ漁が始まった」と感謝を述べた。鎌田会長は「資源調査を兼ねながら漁が6月23日に始まったと聞き、私たちの船が少しでも役に立っているのかなと思う。改めて来函に感謝するとともに、一日も早い復興を願うばかり」と応じた。また、鎌田会長は「当初は100隻の確保を目標にしていたが、倍以上の船が集まり、漁業者の熱い思いを感じた。用が足りないことがあれば、遠慮なく申し出て」と固い友情を強調、山内市長は「皆さんのおかげで久慈市は復興の歩みは早い方。さらに力を入れていきたい」と決意を述べた。

 山内市長が、市長と皀組合長名の感謝状を鎌田会長に贈ったほか、久慈特産の琥珀(こはく)を使った両市の友情を表す記念盾などを手渡した。

 この日は呼び掛け役となった函館市役所、えさん漁協、戸井漁協も訪れ、謝意を伝えた。市役所では片岡格副市長と懇談し、感謝状などを贈った。27日は海上輸送を担当した菅原組、銭亀沢漁協、函館市漁協を訪問する。

 久慈市では、津波で市内登録漁船数の93%に当たる575隻が失われた。函館市は77年前の函館大火の際、久慈市から義援金などの支援を受けたことがきっかけで、久慈市からの要望を受け漁協で使っていない船を無償提供。6月上旬に函館から現地へ運ばれた。



◎放射線から解放 毎日が見えぬ恐怖「ほっとした」…ふくしまキッズ夏季林間学校参加者

 「放射線量の高い郡山に1時間もいたんです。お風呂に入るのは放射性物質を洗い流すためなのに」|。「ふくしまキッズ夏季林間学校」の参加者が到着した25日夜、入浴時間が取れないとの説明に、同行している保護者の佐藤唯さん(35)=福島県いわき市=が不安を口にした。入浴は、汗ではなく、体に付着した見えない恐怖を落とすため。心情を察した実行委側は、即座に隣接する温泉と調整を図り、入浴時間を設けた。

 この日、入浴の予定がなかったのには実行委側にも事情があった。道南入りした最後の班が「ネイパル森」に到着したのは午後6時過ぎ。夕食の時間や全体説明の時間も必要だった。約200人の児童が荷物から風呂道具を取り出すだけでも時間がかかり、大きな混乱を避けるための選択だった。温泉の協力が得られたことも幸いし、冒頭のやりとりの後、1時間ほどで入浴が完了した。

 実行委員長の進士徹さん(54)は「近くに温泉もあったので臨機応変に対応できた。これからも参加者の声を聞きながらつくりあげていきたい」とした。また、副委員長でNPO法人教育支援協会代表理事の吉田博彦さん(59)は「保護者の反応を想像できなかったことも事実。ただ、過剰な反応と切り捨てることはできない」と話す。少しでも長く被ばくの脅威から子どもを遠ざけたいとの願いから、事前説明会後に滞在期間を延長した保護者も多いという。

 小学1、2年生と4歳の子ども3人を連れての参加している佐藤さんは、居住するいわき市より出発地の郡山市の放射線量が高いことが気がかりだったという。「いわきは県内でも放射線量が低いと言われているけれど、震災前とは比べものにならない。外出後に服を脱いでシャワーを浴びるのは毎日の習慣」と話し、実行委の迅速な対応に感謝した。

 その郡山市から来た桑名成子さん(38)の3、4年生の子ども2人が通う小学校では、1学期の間に100人以上が転校した。桑名さんは「外出時はマスクに長袖、長ズボン。芝生に触ったり、外で遊んでいる姿なんて久しぶり」と喜ぶ。

 開校式が行われた26日、大沼ふるさとの森自然学校では、子どもたちが今まで外で遊べなかったエネルギーを爆発させるかのように、汗だくになりながら、ボールを追い掛けた。吉田さんは「福島では大人に『放射能』という子どもには理解のできない規制をかけられ、ストレスがたまっていた。昨日は長旅で疲れているなと感じていたが、不安から解放され、今日の子どもらしい姿にほっとした」と話した。

 佐藤さん、桑名さんはともに七飯町に来たことで、自分自身も安心できたと話す。この4カ月半、日々の放射線量や、食べ物の安全性などの情報に気を使いながら暮らしてきた。両家族とも、夏休み後には福島県を離れるという。札幌市へ移住する佐藤さんは「3人育てるのはいわきでも北海道でも一緒。でもいつかはいわきに帰りたい」と笑った。(今井正一)



◎岩船氏一族の資料寄贈…湯浜在住・秋保さん市に屏風など

 函館市湯浜町在住の秋保栄さん(78)が、道内有数の豪商として知られた岩船氏一族から購入した屏風などを函館市に寄贈した。秋保さんは「歴史的価値は高く、市に寄贈することで何かの役に立ってくれれば」と話している。

 寄贈した資料は屏風が2双4架とつぼ1点、和歌の名人を描いた「三十六歌仙鉢」が8点。屏風の箱には「明治三十三年六月 求之 函館弁天町 岩船峰次郎」、「昭和四十四年十月 ふじ万」との墨書きがされている。

 これらの美術品は明治時代、呉服商を営んでいた岩船家に受け継がれていたもの。市内の「ふじ万旅館」で料理長を務めていた秋保さんが1969年、同旅館で使用するために岩船氏一族から購入したという。

 昨年までは元町にある旧相馬邸で展示されていたが、売却話を断って今年4月末に市に寄贈。26日には感謝状贈呈式が行われ、秋保さんが山本真也教育長に目録を手渡し、山本教育長からは感謝状が贈られた。

 資料は今後、市立函館博物館で所蔵される。田原良信館長は「大変貴重なものを寄贈していただきありがたい。館内で大事に保存し、未来へ伝えていきたい」と話している。(後藤 真)


◎函館にも被災者家族到着…函館・むすびば受け入れ支援

 函館や近郊で東日本大震災の被災地復興を支援する団体「函館・むすびば」(丸藤競代表、会員10人)が夏休みに福島などの家族を受け入れる事業「あたり前の夏休み」の参加者が26日、来函した。夕方に到着後、オリエンテーションを行い、関係者があいさつした。

 同事業は8月23日までの29日間、福島などから19家族58人を受け入れる。オリエンテーションで丸藤代表は「皆さんの心が癒やされるように、サポートします」、函館湯の川温泉旅館協同組合の金道太朗理事長は「親子愛が深まる夏休みになりますように」とあいさつした。参加者には函館の観光に関する情報や、子供にはイカの折り紙などが渡された。

 福島県郡山市から子供2人とともに訪れた主婦は「インターネットで“夏休み”“避難”のキーワードで検索し、この事業を知った。広い自然の北海道で夏休みを楽しみたい」。子供たちは函館に来ることが決まった後、インターネットで街のことを学んでおり、「イカを食べたい」と話していた。

 同事業に対し、市内の団体や企業から多数の賛助の申し出があり、随時、参加者にイベント参加などの情報を提供するという。(山崎純一)