2011年7月28日 (木) 掲載

◎箱館奉行所あすでオープン1年、入館者33万人に

 国の特別史跡「五稜郭跡」に復元された「箱館奉行所」は、29日でオープンから1年を迎える。約140年の時を経て再現された奉行所の注目度は高く、入館者は33万81人(26日現在)と好調に推移している。2年目を迎え、観光名所としての存在にとどまらず、独自の体験事業を増やしていく考えで、関係者は「歴史、文化の発信基地としての性格をさらに強めたい」と話している。

 箱館奉行所は1864(元治元)年、北方警備の拠点として設置され、旧幕軍降伏後の71(明治4)年に解体された。復元工事は総工費約28億円で、2006年から4年かけて実施。総面積の3分の1に当たる約1000平方メートルが復元されている。

 開館当初から好調な入り込みを記録。3月には東日本大震災の影響で団体客のキャンセルが相次いだが、昨年度の入館者は22万9489人と、当初目標値の14万7000人を大きく上回った。

 市教委によると、本年度は4月が1万1462人と低調だったが、5月は大型連休で持ち直し4万4824人。6月も2万4111人と堅調。5月3日には1日当たり最多の4658人が入場し、昨年8月14日の4116人を更新した。観光客はもとより、被害の大きい東北を避けて函館にシフトした修学旅行生などの入場が目立つ。

 同奉行所では1周年を機に、29日には琴奏者による演奏会を行うほか、30日には市中央図書館で記念フォーラムを開き、今後の有効活用策について探る。また8月1日からは隣接する兵糧庫を2年ぶりに一般公開し、1986〜87年の発掘調査で出土した美術品などを展示する。

 市教委は「周辺施設が行う各種イベントと連携し、奉行所を五稜郭のシンボルとしてアピールしていきたい」と話している。(千葉卓陽)



◎全国初、市電6台にAED設置

 函館市企業局交通部は27日、市電の営業車両6台にAED(自動体外式除細動器)を設置した。地元企業からの協賛広告費を設置費用に充てる試みで、同部によると、路面電車にAEDを設置するのは全国で初めて。今後もスポンサーを募り、本年度内に全30両への搭載を目指す。

 市電が安心・安全な乗り物であることをアピールし、不測の事態に備える狙い。全乗務員が2004年から市消防本部の普通救命講習を受講し、AEDの使用法などを訓練してきた。近年は運行中に救急車を手配するケースが年間10件ほど発生しているという。

 AEDは警備会社から5年契約でレンタルし、乗客にも分かりやすい車内の乗車口横か運転席の後部に各1台設置。設置車両の乗車扉の内外には「AED搭載車」であることと一緒に協賛企業名の広告を表示する。現在、市内の医療機関や食品販売業などを中心に8社がスポンサーとして名を連ねている。

 設置費用は年間で約9万円。スポンサーの協賛費としては月額1万円弱になるという。同部事業課は「沿線での交通事故や沿線住民に何かあった場合にも対応できる。多くの人に安心してもらい、市電の存在価値を高めていきたい」としている。協賛広告への問い合わせは同課TEL0138・32・1730。(森健太郎)



◎子供らダム見学、水の大切さ学ぶ

 「森と湖に親しむ旬間」(7月21〜31日)にちなみ、道は27日、函館市亀田中野町の新中野ダムとダム公園で「第25回水と緑の祭典」を開いた。夏休み中の子供ら50人がダム見学などを通じ水の大切さを学んだ。

 小学生の夏休みに合わせ、水や緑の大切さ、ダムの役割を学んでもらおうと毎年開催。開会式で、渡島総合振興局の佐藤義広副局長が「ダムは大雨のときは雨をため、水道水を届け、米や野菜を作る水がめの役割を果たしている」と強調した。

 参加者は早速3班に分かれ、ダム見学、ペチュニアとブルーサルビアの花植え、コースターや本立てなどの工作、サクラマス稚魚200匹の放流に臨んだ。

 ダム見学では、函館建設管理部職員から同ダムが洪水対策や、市内の主要な取水施設となっていることなどを聞いた後、専用エレベーターでダム2階にある監査廊に入った。気温約10度とひんやりした通路を歩き回り、子供たちが歓声を上げていた。

 函館中央小4年の斉藤秦生(じんせい)君(10)は「エレベーターの下がすごく寒かった」、同小4年の高倉阿透(あすく)君(9)は「ダムの仕組みや働きが分かって楽しかった」と笑顔を見せていた。(山崎大和)


◎道南自治体職員対象に新幹線建設工事見学会

 【北斗、七飯】道南の自治体職員を対象にした北海道新幹線建設工事見学会(道新幹線建設促進道南地方期成会、渡島総合振興局主催)が27日、北斗市と七飯町の現場で開かれた。同振興局と渡島管内7市町の職員17人が参加。普段は体験できない高架橋の床板(しょうばん)の上から新函館駅(仮称)方面に向けて本線を見るなどして、新幹線の開業間近を実感した。

 2015年に開業予定の北海道新幹線の現状について認識を深め、今後のまちづくりに生かしてもらおうと企画。工事は今夏から来年にかかてピークを迎える。

 一行はまず、渡島大野駅(同市)の駅舎で同市新幹線対策課の梅田一生課長から新駅周辺の土地区画整理事業計画について説明を受けた。

 続いてきじひき高原(同市)、函館総合車両基地(同市、七飯町)、飯田高架橋(同町)を訪れ、鉄道・運輸機構北斗鉄道建設所の坂本成良所長から新幹線工事の現状を聞いた。

 この中で、坂本所長は木古内—新函館の新設区間にある6カ所のトンネルのうち4カ所が貫通、残る新茂辺地トンネルは東工区の掘削が終わり、西工区の掘削が9月から始まることや、万太郎トンネルは9月1日に貫通式を行うと報告。また、車両基地では、新幹線の留置線が新函館までなら4本だが、札幌まで延伸される場合は12本必要とした。

 函館市新幹線対策室の中村幸信主査(36)は「目に見える形で開業が実感できるようになってきた。市民に対する説明の機会も設けてほしい。道南一体で機運の醸成を図っていければ」と話していた。

 28日は、桧山振興局と桧山管内各町担当者を対象に実施する。(山崎大和)


◎ひやま漁協、気仙沼に漁船を無償提供

 【乙部】東日本大震災で漁船を失った、宮城県気仙沼市大島の漁業者に向けて、ひやま漁協(乙部町、市山亮悦代表理事組合長)は、江差、上ノ国、乙部の3支所に所属する漁業者から提供された、小型漁船27隻を無償で提供することを決めた。桧山管内から被災地の復興を支援するため漁船が送られるのは初めて。

 大島は気仙沼湾に浮かぶ面積約9平方キロの島。20メートル規模の大津波に襲われ漁港施設や漁船の大半を失った。気仙沼市大島災害対策本部を通じて提供の要請があった。宮城県漁協気仙沼支所大島出張所では、中古を含む漁船の確保が進まず、700隻もの漁船が不足した状態にあるという。

 ひやま漁協が、各支所を通じて、提供可能な和船や磯舟の数を確認したところ、27日現在で江差4隻、上ノ国12隻、乙部11隻の計27隻を確保。乙部町では、被災地の漁業復興を願い、船外機の提供を申し出た漁業者もいるという。

 早ければ29日にも輸送を開始。トラックで函館港まで運び、台船に乗せて気仙沼市に送られる予定。大島では、特産の三陸ワカメの養殖や、ウニ・アワビなどの沿岸漁業に活用される。ひやま漁協の田畑貴照総務課長は「被災地では、漁船の不足が深刻で、ようやく確保した漁船も抽選で割り当る状態。漁業の復興を通じてマチの再生に役立てて欲しい」としている。同漁協は、岩手県宮古市の田老町漁協からも漁船提供の打診を受けており、被災地の漁業者への支援を続けていく方針だ。(松浦 純)