2011年7月30日 (土) 掲載

◎被災親子 活イカに歓声

 函館に滞在中の東日本大震災の被災家族を招いた朝食会「朝イカを楽しむ!」が29日、湯の川プリンスホテル渚亭(湯川町1)で開かれた。親子57人が活イカの刺し身を味わったほか、実物に触れたりして歓声を上げた。

 親子は被災地復興を目指す函館の市民団体「函館・むすびば」(丸藤競代表)の事業「あたりまえの夏休み」の参加者で、26日に福島、宮城、茨城から来函。協力団体である函館湯の川温泉旅館協同組合(金道太朗理事長)が「ここでしか楽しめないイカ刺しを堪能してほしい」と準備した。

 午前8時に朝食が始まると、子どもらは早速刺し身に手を伸ばし「コリコリしてる」「甘みがある」などと旬の味覚を堪能。調理人がイカをさばく様子にも、顔を近付けたり手でつかんだりして大喜びしていた。

 福島市の桜井美織さん(39)は長女の優芽さん(7)を連れて参加。「おいしくてびっくり。函館では気軽に外出や遊泳もできるし、娘にも良い思い出になっていると思います」と笑顔。金道理事長は「イカの味を思い出していつかまた函館に来てもらえれば」と話していた。改行 被災家族は8月23日まで、湯川町のホテルに滞在する。(長内 健)



◎道南食材 世界の空へ、ANA国際線の機内食に

 函館特産のガゴメコンブや道南限定栽培の超大粒大豆タマフクラなどを採用した中国料理メニューが、全日空(ANA)の国際線ビジネスクラスの機内食で提供されている。人気中国料理店の脇屋友詞シェフ=札幌出身=がほれ込んだ厳選素材で監修。採用された食材の地元生産者の喜びもひとしおだ。道南・函館育ちの農水産物が世界の空で飛躍≠フときを迎えている。

 脇屋シェフと道南の食材を結びつけたのは、昨年7月に開かれた渡島総合振興局主催の「道南食のブランドフェア」。道産食材のブランド化を支援する「食のサポーター」に委嘱されているシェフ自ら市内南茅部地区で漁船に乗って養殖のガゴメを視察したり、渡島の生産者らと加工品について意見交換したりして、料理への活用を決めた。

 コンブには、厳選された尾札部産のガゴメとマコンブを採用。脇屋シェフの監修のもと、市内にあるコンブ加工販売の道南伝統食品協同組合(大船町)に素材の提供や製造加工を依頼し、道立工業技術センター(桔梗町)や北大大学院(港町3)の技術協力による産学官連携で食材として魅力を最大限に引き出した。

 機内食にはガゴメ独特の粘りとうまみを生かした「おつまみラー油」をはじめ、トロロコンブを低温でじっくりと乾燥させ、パウダー状にした昆布粉を加えた「牛テールのチャイナポトフ」、マコンブとガゴメに、かつお節や白ゴマを織り交ぜた「がごめ昆布ふりかけ」などが並ぶ。

 一方、国内最大級の粒が特徴の黄大豆タマフクラも、脇屋シェフが商品開発から携わってレシピを考案。市内で大豆製品を製造販売するだるま食品本舗(西桔梗町)が手掛ける水煮の甘酢漬けを「白身魚の黒酢風味」にたれのように添えたり、むき身加工した枝豆をサラダに入れたりと、料理の重要な役目を果たす。

 機内食は第1弾として、6月から成田発の北米5路線で提供。9月から欧州4路線、12月からアジア3路線へと移行する。ANAによると、機内食で中国料理をセットメニューに取り入れるのは初めて。同社広報室は「シェフの出身地である北海道の旬の食材をふんだんに取り入れ、当初予定の販売数を上回る人気」という。

 道南伝統食品協同組合の原田靖参事は「コンブの価格が下落する中、地域の食材に光を当ててもらい、作り手として大きな自信になる。尾札部という地元発のこだわりで、付加価値を高めて成長する起爆剤にしたい」とし、9月にもふりかけを市販化する予定だ。

 だるま食品本舗の工藤哲也常務も「機内食には情報発信力もあり、地域食材のブランド化にも大きな弾みとなる。一流の料理人に認められたことで、生産者の励みにもなり、タマフクラの消費や販路、作付けの拡大にもつながるはず」と期待している。(森健太郎)



◎落部―森ICが11月26日開通

 道央自動車道の落部インターチェンジ(IC、八雲町)―森IC(森町)間(20.2キロ)が11月26日に開通することになった。用地買収や、鷲ノ木遺跡の地下トンネル工事が完了するなど工事が順調に進み、開通が予定より1年早まった。道南圏と道央圏がさらに一歩近づくことになり、観光の広域化に貢献するほか、物流や緊急輸送路としての機能強化が期待される。ネクスコ東日本北海道支社函館工事事務所が担当する、残りの森―大沼公園間(9.7キロ)は2012年度開通に向け、工事進ちょく率が49%(6月末現在)となっている。

 同事務所によると、開通区間は国道5号と並行し、噴火湾に沿って走る。1999年から用地取得、2000年から工事に着手。現在は土工工事がほぼ終了、舗装工事と、照明やスノーポール、料金所などの施設工事が最盛期を迎えている。工事進ちょく率は92%(6月末現在)。

 今回の開通により、札幌―函館間の所要時間は約4時間20分と、落部までに比べ約5分早まり、すべて一般道を利用した場合より約80分短縮される。

 また、国道5号は集中豪雨や津波の影響による通行止めが発生し、国道227号などを使い大きく迂回する例もあったため、高速道は災害時の代替路線として使うことができる。

 森―大沼公園間は現在、土工工事が最盛期に入り、仮設アスファルトプラントを建てるための敷地造成が行われている。

 開通日決定を受け、渡島総合振興局の永井正博局長は「道南圏と道央圏が一歩近づくことは大変喜ばしい。観光や経済の面で結びつきを強め、多くの方々に来ていただきたい」と話している。

 大沼公園から函館側に向けては、国と自治体の負担による「新直轄方式」で整備が進められる。

 道央自動車道は、01年11月に長万部―国縫間(11.1キロ)、06年11月に国縫―八雲間(22.2キロ)、09年10月には八雲―落部間(16キロ)が開通した。(山崎大和)


◎五稜郭メンタルクリニックのデイケア、精神疾患者の就労支援

 五稜郭メンタルクリニック(函館市杉並町、多田直人院長)内の精神科のデイケア「ふれんず」はこのほど、通所患者に対する就労・復職支援プログラムを始めた。自己分析から個々の適職や可能性を引き出すことに主眼を置いた内容で、合わせて面接の受け方や履歴書の書き方などの指導も行う。

 精神科のデイケアは精神疾患者がグループ活動を通して社会復帰を目指す外来治療の一つで、同クリニックでは対人行動や認知行動療法、リラクゼーションなどのプログラムを用意している。

 年々、うつ病などの精神疾患で仕事を休職、退職するケースが増えている。一方で、病状が良くなった通所者からも就職を望む声が寄せられたことから就労支援プログラムを導入した。

 就労支援の民間資格、キャリアカウンセラーを取得した精神保健福祉士の川越昌彦さんと臨床心理士の野坂倫代さんが主に担当する。現在、17人が他のプログラムと組み合わせながら利用をしている。

 プログラムでは適職検査やロールプレイによる面接トレーニング、就労場面を想定したコミュニケーショントレーニングなどを行い、ハローワークと連携した指導も行う。

 川越さんは「就職を最終目標とするのではなく、病気で失った人生を取り戻すことがまず大切。その人らしい生き方でできるようサポートしていきたい」と話す。

 同クリニック以外に通院している患者も主治医の許可があれば利用できる。就職支援プログラムは毎週月曜、水曜の午前10時から午後零時半。  問い合わせはふれんずTEL0138-31-7776。(鈴木 潤)


◎アリーナ建設費増加で懸念の声

 函館市が2014年度末のオープンを目指して素案をまとめた新体育館「函館アリーナ(仮称)」に関し、29日の市議会総務常任委員会で質疑が行われた。各委員からは建設費の上昇をめぐり、財政負担を懸念する声が相次いだ。

 新体育館は工藤寿樹市長が政策に掲げ、メーンアリーナとサブアリーナ、柔道場などを現在地(湯川町1)建設する。総事業費約63億円で、合併特例債を活用。現体育館を残す以前の計画(約35億円)からは1・8倍。市教委は8月3日からパブリックコメント(市民意見)を募集する。

 市教委はこの日の委員会で、新たな計画素案が6月28日に開かれた政策会議で了承されたことを明らかにしたが、これに阿部善一氏(民主・市民ネット)は「以前は40億円が限界と言っていたのに、財政面の議論をしていないのでは」と指摘。種田貴司生涯学習部長は「一定規模の建設事業は毎年あり、体育館を優先的に取り組むものと認識している」と述べた。

 また茂木修氏(公明党)は計画の一新について「これまでの議論は何だったのか」とただした。同部長は、前計画の策定前に設置した「あり方検討懇話会」の委員に説明したとし「12人中8人から建設費が膨らむが、いいものが作れれば問題ないとの意見をいただいた」として理解を求めた。(千葉卓陽)