2011年7月8日 (金) 掲載

◎殉職者800人の冥福祈る…青函連絡船慰霊法要

 1945年7月14日の米軍機による攻撃や、54年9月26日の洞爺丸台風(台風15号)などで犠牲になった青函連絡船の乗組員を慰霊する法要が7日、函館市青柳町の「青函連絡船殉職者慰霊碑」前で行われた。遺族や関係者70人が参列。約800人の冥福を祈り、安全で平和な世界の実現を願った。

 法要は、青函連絡船殉職者遺族会(渋谷武彦会長)の主催。大惨事を風化させず、地域の発展を築いた連絡船の功績とそこにある殉職者の思いを後世に伝えようと、毎年この日に実施し、函館市仏教会やJR北海道、函館市などが協力している。

 読経の中、参列者は793人の殉職者の名前が刻まれた碑前で、焼香して合掌。暴風雨による沈没で伯父を亡くした市内の女性(84)は缶ビールを祭壇に置き「どうぞ皆さんで飲んでください」と銘板を両手でなでていた。

 渋谷会長(77)は「遺族会のメンバーは正確に把握できていないが、関係者は全国におり、報道などを通じて少しでも多くの人が供養していただけることを願っている。遺族の高齢化が課題だが、健康に努めて法要を続けていきたい」。松川町の住吉恵子さん(82)は「供養とともに戦争の恐ろしさや平和の尊さを改めている。この思いを子供たちにも分かってもらいたい」と話していた。

 同遺族会は9月26日午前10時から、北斗市七重浜の慰霊碑前でも法要を営む。(田中陽介)



◎市民体育館全面建て替え 「函館アリーナ」に

 函館市教委は7日、市民体育館の全面建て替えに向けた新たな整備基本計画の素案を明らかにした。スポーツのほか、コンベンション(会議や大会)対応型を印象づけるため、仮称を「函館アリーナ」とし、現体育館(湯川町1)を解体して大小のアリーナを新設する。総事業費は以前の案の1・8倍となる約63億円。10月からプロポーザル(提案型公募)を実施、来年1月から実施設計に着手し、合併特例債の活用期限となる2014年度末の完成を目指す。

 以前の素案では、現体育館をサブアリーナとして残し、新たにメーンアリーナを増設、建設費を約35億円とする方針だったが、工藤寿樹市長はこれを見直し、コンベンションにも対応できる多目的アリーナとしての再整備を打ち出している。

 新しい案では、メーンアリーナの広さが約2900平方b(65メートル×44メートル)と、以前の案(2400平方メートル)から拡大。観客席は大規模コンベンションに対応するため、固定席と可動席に加え、アリーナ全体に椅子を並べた場合で最大5000席を確保する考え。このほかにステージも設置する。

 一方、サブアリーナの面積は約1000平方メートル(25メートル×40メートル)とし、現体育館(1720平方メートル)からは狭まる。このほか武道場やトレーニング室、間仕切りで部屋を分割できる多目的会議室などを整備する。

 また、体育館に隣接している湯川公園(1.6ヘクタール)は場所の確保が困難になるとし、敷地内に0.2ヘクタール規模の街区公園を新たに配置。駐車場は以前の案で300台収容の立体駐車場としていたが、市民会館の将来的な改築も視野に、平面で250台以上を確保する方針へと変更した。

 合併特例債は事業費の3分の2が国から交付されるため、市の自己負担額は約21億円。活用期限まで期間が短いため、施工業者を決めた後、通常行う基本設計を行わずに実施設計のみとし、13年7月から新築工事に着手する。現体育館は14年9月から7カ月間で解体工事を行い、この間市民のスポーツ活動の場が大幅に減少することから、市教委は「できるだけ工事期間を短縮する工法を検討する必要がある」としている。(千葉卓陽)



◎10月にも法定協設立へ…中心市街地活性化

 函館市議会第2回定例会は7日、個人質問を継続し、5氏が質問に立った。この中で市が進めている中心市街地活性化について、工藤寿樹市長は、国から重点的な補助金を受けるための基本計画案を話し合う法定協議会を¥10¥月にも設立し、来春までに計画案を策定する意向を明らかにした。来年度中の計画認定を目指し、北海道新幹線開業に向けたコンパクトなまちづくりが本格化する。

 松宮健治氏(公明党)の質問に答えた。

 市は中心市街地の対象地区にこれまでのJR函館駅前・大門地区に本町・五稜郭地区も加え、昨年から両地区の商店街の代表者やまちづくり団体などでつくる中心市街地活性化懇話会を開催。「拡散した市街地をコンパクトに集約する必要がある」(工藤市長)として、今年5月末からは庁内に専任組織も立ち上げた。

 中心市街地活性化法に基づき、事業に対する国からの補助率を上乗せするためには、市が策定する計画を協議する法定協の設立が条件。松宮氏は「計画の策定が遅れている原因は何か」とただし、入江洋之市経済部参事は「本町・五稜郭地区の(法定協に加わる)代表委員の選出に時間を要した」と説明した。

 今後、今月下旬にも市や函館商工会議所、両地区の商業団体などでつくる準備会を開催し、計画に盛り込む再開発事業の具体施策を検討していく。工藤市長は「認定を受けてから取りかかっては新幹線開業までに間に合わない。並行しながらできることは独自にやっていきたい」と述べた。(森健太郎)


◎ろうそく使い環境考えて…渡島総合振興局が七夕でイベント

 渡島総合振興局は7日夕、渡島合同庁舎前で、七夕にちなんだイベント「灯(あか)りを消して七夕を」を開いた。多くの子供たちが訪れ、函館の風習であるお菓子と一緒に、地球温暖化防止を考えるきっかけとしてろうそくと啓発チラシをもらった。

 道が定めた「クールアース・デー」の一環で、昨年に続き実施。二酸化炭素の排出量を減らし、地球温暖化防止を考える契機として、自宅で少しでも電気を消し、ろうそくの明かりでの家族だんらんを呼び掛けた。

 会場では「ろうそく1本ちょうだいな」の声が響く中、午後5時半のスタート時には子供たちが行列をつくった。用意された約450人分のろうそくとチラシを受け取り、お菓子ももらってにっこり。道教育大附属函館小学校6年の坂井暉(ひかる)君(12)は「お菓子をたくさんもらってうれしい。ろうそくをつけて環境のことを考えてみます」と話していた。

 このほか、節電を訴えるため、函館市環境部のキャラクター「環境戦隊クリーンフォース」とフロンティア君(ヒグマの着ぐるみ)との寸劇も披露され、会場を盛り上げた。また、同庁舎は同7時に一斉消灯された。(山崎大和)


◎車で海に転落…脱出第一に 冷静に対処を

 函館港内では先月から今月5日にかけて、車の海中転落事故が立て続けに3件発生し、2人の尊い命が失われた。警察などは注意を呼び掛けるとともに、「転落してしまったら、まずは落ち着いた行動を」と話す。また、車での海中転落の場合、沈むまでの短時間に脱出することが命を守るカギとなる。対応法などを専門家に聞いた。

 市消防本部と函館海保によると、ことしは6日現在で前記3件の事故が起きた。うち6月中の2件では男性2人が死亡。5日に海岸町の岸壁であった事故では、割れたガラスから自力で脱出した男性1人が救助され、大事には至らなかった。

 生死の分かれ道は「いかに早く車内から脱出するか」に掛かっている。「ドアやガラスが開くようであればすぐに車外に」と市消防など。それが困難な場合には窓ガラスを割ることが先決という。また、近くにいる人たちもクーラーボックスなど浮きやすいものを投げ入れ、消防などに救助を要請することが大事と訴える。

 ジャンボイエロー港店(港町3)で取り扱う商品「ブレイクハンマー」(1480円)は、緊急時に車の窓ガラスを瞬時に割り、車外への避難を手助けする。車の横転や土砂災害時などの脱出用として効果が期待されている。商品はハンマー型で、無理な力を入れなくてもすぐにガラスを割ることができ、シートベルトを切断するカッターやライトの機能も備える。

 後藤崇生店長(41)は「手ごろな値段で購入でき、一生使える。万一の備えに、大事な命を守るものとして車に置いておくのを勧めたい」と紹介。同海保などは「海に出掛ける機会が多い人には特に手の届きやすいところに、1本は持っていてほしい」と促している。(小杉貴洋、田中陽介)