2011年8月11日 (木) 掲載

◎再開誓う笑顔の交流 はこだて国際民俗芸術祭閉幕

 函館市元町公園を主会場に5日から開催されていた「はこだて国際民俗芸術祭」(一般社団法人WMDF主催)が10日、閉幕。最終日は荒天でステージ公演は中止となったが、夜には出演者やスタッフ陣らが市内に集い、「来年も会いましょう」と再会を誓った。

 4回目の今年は、東日本大震災の影響で海外アーティストの来日が危ぶまれたが「日本は大丈夫。安心して来てほしい」と主催者側の熱意に10カ国計約150人が共演。主催者によると、期間中の来場者数(延べ)は例年の1・5倍の2万6150人。7日の元町公園会場には期間中で最多の7200人が訪れ、熱気に包まれた。

 ステージ公演の中止は初めてだったが、急きょ市地域交流まちづくりセンターで交流の場を設けた。WMDFのイアンフランク代表理事は「いつも頑張ってくれているスタッフに神様が与えてくれたコンサートと思って、みんなで楽しんでほしい」と無事な成功への感謝を示した。

 スタッフで運営に携わった、公立はこだて未来大2年の東頭伶衣さん(20)は「初めての参加だったが、多くの出会いと感動を味わえたことが何よりで毎日がとても貴重な経験だった」と笑顔で話していた。(田中陽介)



◎戒名録を恒久平和の礎に 終戦記念日前に妙見寺の岡住職が供養

 終戦記念日の8月15日を前に、各地で追悼式や法要が営まれ、多くの人が平和への思いを新たにしている。函館市日乃出町10の妙見寺でも、犠牲者の冥福を祈り、国内外の戦地で尊い命を落とした先人を供養している。岡真行住職(63)は「多くの犠牲の上に今日の社会が成り立っていると思う。先人の労苦を忘れず、この思いを未来に伝えていくことが我々の使命」と恒久平和を願う。

 葬儀の記録を伝える妙見寺の戒名録には、太平洋戦争が終わる2年前の1943年ごろから、フィリピンやニューギニア、バス海峡など南方戦線で没した人々の戒名が連なる。同寺によると、34(昭和9)年3月21日発生の函館大火を乗り越え、成人を迎えたころに徴兵された住民も少なくなく「大火に戦争と、人生においてこのうえない絶望を味わい、なおかつ遠く離れた地でむごい最期を遂げた者の悲しみは想像を絶する」(岡住職)。

 盆時期になると、檀家回りで過去帳に触れる機会が増す。そこでも、海外で亡くなった檀信徒の名前を多く目にする。

 先代住職で14年前に他界した父親の岡行秀さん(享年92)も、40代で中国北部へ出兵した。岡住職は、幼少から戦地でのむごい様子を時おり聞き「父親はつらい記憶を思い出したくなく、語るのも嫌だったようだが『戦争は人間の嫌な側面、目にしたくはない醜いところばかりだった』と話していた」と回想する。その重い言葉が忘れられない。

 「戦死戦没公務殉難之英霊」—。先代の遺志を継ぎ、同寺では盆時期に限らず毎朝、戦没者への祈りを欠かさない。

 岡住職は「戦争の犠牲者は戦没者だけではなく、家族や知人など関わる者すべてにつらいを思いを与える。何が悪い良いでもなく、戦争という歴史から平和の尊さを見い出さなければ」と強調し、「戦没者の供養も含め、朝のお勤めでいつも考えるのは、自分が生きているのではなく、生かされているということ。先人への感謝の思いは尽きない」と語る。(田中陽介)



◎大震災きょう5カ月 義援金1億円間近 函館市「引き続き協力を」

 東日本大震災の発生から、11日で5カ月を迎えた。函館市を通じて市民や団体から寄せられた被災地への義援金はこれまで計1億円に達しようとしている。受け付けは9月30日までで、市は善意への謝意を示すとともに「被災地の復興にはまだ時間が掛かると思うが、これからも復興を願う気持ちを持ち続けることが大切」と話し、引き続き義援金の協力を呼び掛けている。

 義援金は震災発生直後から、日本赤十字社北海道支部函館市地区事務局が受け付けを始めた。3月18日からは市が口座を開設し、東北地方向け分は市を通じて同事務局に送っている。

 金額は5日現在、東北被災地向け、市内被災者向けを合わせて912件、9465万9754円が寄せられた。このうち東北被災地向けは875件、8578万5393円、市内被災者向けは37件、887万4361円となっている。

 寄付は団体では市内企業が最も多く、ほかにも町会、学校単位など多岐に渡る。個人でも幅広い世代から寄せられている。銀行振り込みでも募っているが、市へ直接現金を持参するケースがほとんどだ。

 市福祉部の川越英雄部長は「震災発生後、すぐに小さい子どもからお年寄りまでたくさんの人が届けにきてくれた。金額の大小ではなく、できることを一生懸命やってくれた結果。とても感謝している」と話している。

 受け付けは市内各支所の窓口でも対応している。寄付は現金のみで、物品の受け付けはしていない。銀行振り込みの口座名は「東北地方太平洋沖地震函館市義援金」。口座は@北洋銀行函館中央支店普通預金=4156404A北海道銀行函館支店普通預金=1456941。問い合わせは同事務局(福祉部社会課内)TEL0138・21・3255。また、函館新聞社でも寄付を受け付けている。(後藤 真)


◎北海道ハウスが新築部門で道内最高賞

 住宅設備などの総合メーカーLIXILが実施する住宅施工例コンテスト「第21回トータルハウジング(TH)大賞」で、北海道ハウス(函館市美原1、小林市男社長)が新築部門の地域最優秀賞を受賞し、道内一に輝いた。設計者の三箇透さん(34)は「当社で自由設計の施工例は多くないが、今後はハウスメーカーとしての強みと設計を上手に組み合わせた事業展開をしたい」とする。

 TH大賞は会員工務店を対象に毎年開催しており、今回は全国から1012作品の応募があった。2部門あり、783作品の応募があった新築部門ではTH大賞と同準大賞を各1作品、審査員奨励賞3作品、エコロジー賞6作品を選考。地域別で最優秀賞9作品を選んだ「地域最優秀賞」の北海道地区の賞を同社が受賞した。道南からの受賞は、2009年受賞の今建設以来9社目で、表彰式は7月5日に行った。

 受賞した住居は三箇さん宅で、2009年10月に着工し10年3月に完成した。函館市湯川町2の不整形な土地に、高低差を利用して地下1階を駐車スペースと玄関に、1、2階に居住スペースを集めるなど工夫した。1階には大きな窓を配置し、景色と中庭が見える開放的な雰囲気を作り出し、キッチンで家事をしながら家じゅうを見渡せる作りに。これらが評価を受け、初出品で初入賞につながった。

 三箇さんは「自分の家ということもあり自由に設計し、思い通りの形になった」と振り返り、今後は設計の要望に応えるハウスメーカーとしての事業展開を考えている。小林社長(65)は「『お客様が求めるものを形にする』という社の姿勢が評価された」と受賞を喜び、今後も発注者の希望を最大限受け止める姿勢を大切に励む考えだ。(小泉まや)


◎新造船 豪快に海へ 函館どつく本年度3隻目の進水式

 函館どつく函館造船所(函館市弁天町、大村靖夫社長)が建造中の本年度3隻目の新造船「エルビラ・バルカー」(1万9850トン)の進水式が10日、同造船所で行われた。夏休みとあり、会場には小さな子どものいる家族や近所の住民らが多数訪れ、船が海に滑り出す様子を見守った。

 同社は本年度8隻の新造船を予定している。今回の船主はデンマークの海運会社ローリッツェン・バルカーで、船籍はマン島。船は喫水を浅くして船体の幅を広くした木材兼ばら積貨物船「スーパーハンディ32」で、同社の同型船としては49隻目となる。船体全長は約176メートル、最大幅は約29メートル。

 式には船主関係者らも立ち会い、船をつなぎとめていた綱を切断すると船首のくす玉が割れてハトやカラーテープが飛び出した。大音量のサイレンが鳴り響く中で船が函館港に進むと、たくさんの見学者が駆け寄っていった。

 同船は今後内装工事などを行い9月下旬に引き渡される。次回の進水式は9月26日の予定。(小泉まや)