2011年8月16日 (火) 掲載

◎胸に刻む恒久平和…終戦の日 各地で催し

 【函館、七飯】終戦記念日の15日、函館市内や近郊では、戦没者をしのび平和を願う催しが行われた。参加者は、二度と戦争が繰り返すことがないよう、それぞれの心に平和への思いを刻んだ。

 ■本願寺函館西別院

 ○…本願寺函館西別院(函館市東川町12)では、「平和の鐘をならそう!」(函館ユネスコ協会主催)が行われた。会員やその家族、一般市民など約50人が参加。1人1人が境内の鐘をつき、平和への願いを響かせた。

 同協会(関口昭平会長)が市民を対象に2001年から毎年行っている事業。称名寺(船見町)や萬年寺(万代町)、カトリック教会(宮前町、元町、湯川)など、市内11か所で午後11時半から同時に行われた。

 同協会員の案内に従い、参加した子どもから順に鐘をついた。関口会長(82)は「毎年この時期になると鬱々(うつうつ)となり、思い返すたびに涙が出る。戦没者への祈りに加え、ことしは震災で亡くなった方々にも鎮魂の音色を届けられたら」と話す。

 数年前から何度か参加しているという大室明加さん(昭和小6年)は「普段は戦争について考えることは少ないですが、今日は昔戦争で亡くなっていった人たちに感謝の思いを込めて鐘を鳴らしました」と笑顔を浮かべた。 (堀内法子)

 ■トラピスチヌ修道院

 ○…トラピスチヌ修道院(上湯川町346)では「世界平和のための祈りの集い」が開かれ、市民ら31人が修道女とともに恒久の平和と、東日本大震災からの復興への祈りをささげた。

 2008年から毎年、終戦記念日に開催。聖堂と隣り合う信者聖堂を一般市民に開放した。厳かな雰囲気の中、約50人の修道女が詩編を唱和したり賛歌を歌ったほか、共同祈願として「戦争・大地震と津波などの災害や、民族、宗教間の紛争によるすべての犠牲者を心に留め、永遠のいのちの喜びと平和で満たされますように」などと唱えた。最後に修道女が「平和の鐘」を150回鳴らし、参加者も一緒に黙とうしていた。

 市内乃木町の主婦、小松俊子さん(64)は「今年は災害や原発被害もあり、祈ることも大事だと感じた」。青木秀子修道院長は「これからも、市民の方々と一緒に祈ることを続けていきたい」と話していた。(千葉卓陽)

 ■七飯・平和祈念之碑

 ○…七飯町では、平和祈念之碑前で平和祈念祭が執り行われた。中宮安一町長、冨原亮道議をはじめ、関係者約100人が参列。すべての戦没者のみ霊に哀悼の意をささげるとともに不戦と恒久平和の誓いを新たにした。

 式辞で中宮町長は「戦没者の方々がかけがえのない命で示した戦争の悲惨さと平和の尊さを、21世紀を担う若い世代にしっかりと語り継いでいかなければならない」と述べた。

 また、9日に長崎市で開かれた「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」に出席した町平和大使の中学生6人も参列。6人は「戦争という過ちを再び繰り返さないこと、恒久の平和をここに誓います」と宣言し、被爆地の長崎、広島の平和への思いを伝えた。

 大沼中学校2年生の高田啓太君(13)は「長崎の原爆資料館の展示物を見て、あまりのひどさに驚き、言葉が出なかった。戦争や核兵器の恐ろしさをみんなに伝えていきたい」と話していた。(今井正一) 



◎咸臨丸のまち熱く…木古内で山車パレード

 【木古内】幕末の軍艦「咸臨(かんりん)丸」終えんの地木古内町で15日、「きこない咸臨丸まつり2011」が開幕し、恒例のパレードが行われた。咸臨丸の山車や彩り豊かな花が飾られたオランダ花山車が町内をゆっくりと練り歩いた。沿道の住民らは盛んに拍手や声援を送り、歴史的な風情を楽しんでいた。

 今年は咸臨丸が同町沖合で沈没してから140年の節目ということもあり、パレードは盛大に行われた。函大有斗高マーチングバンド部の軽快な演奏を先頭に、咸臨丸や花山車など計5基と400人が行進。咸臨丸には乗組員に扮(ふん)した大森伊佐緒町長らが乗り込み、町民に手を振り、祭りの雰囲気を盛り上げた。また、役場駐車場では歌謡ステージなど多彩な催しも繰り広げられた。

 乗組員の子孫でつくる咸臨丸子孫の会のメンバーも来場。勝海舟のひ孫にあたる東京都の五味澄子さん(87)は「咸臨丸のことを思って、毎年祭りを開いてくれることに感謝したい」と話していた。(松宮一郎)



◎チビッコ剣士 白熱の攻防…函館八幡宮例祭剣道大会

 函館市谷地頭町の函館八幡宮(中島敏幸宮司)で15日、毎年恒例の例祭が開かれた。少年剣道大会には函館・近郊を中心に道南の11道場から児童70人が出場。チビッコ剣士≠フ白熱した攻防が繰り広げられた。

 函館八幡宮奉賛会、同瑞垣会が主催。2年に1度のみこし渡御(とぎょ)は昨年開かれたため、今年は谷地頭保育園園児による相撲大会や大吉抽選会を行ったほか、飲食物を出店、大勢の市民らでにぎわった。

 剣道大会は、雨のため函館潮見中体育館に会場を移して個人・団体戦を実施。子どもたちは相手の間合いをつかむと一足飛びに面や小手を連発。鮮やかな1本が決まると「お見事」などと盛んな拍手が沸き起こっていた。

 園児の相撲大会ではまわし姿の男の子が登場。保護者らの声援を受けながら精いっぱい体を動かしていた。(長内 健)


◎一流演奏家の技に触れる…ミュージックキャンプ開講

 一流演奏家がピアノや室内楽などの公開レッスンを行う「イカール国際ミュージックキャンプ 2011 in Hakodate」が14日、函館短期大学(函館市高丘町)を主会場に始まった。14、15の両日は函館の小中高生ら28人が受講し、一流の技と人柄に触れた。

 函館国際室内楽アカデミー(岡田照幸代表)が、音楽教育によるまちづくりや音楽文化の発展を目的に今年初めて開催。全国から参加者を募り、15日までが小中高生、16日〜21日は一般市民30人のレッスンを実施。函館など道南からは計19人が参加しているほか、関東や徳島などからの参加もある。

 14日の講師はパリ国立高等音楽院ピアノ科准教授の上田晴子さんら9人で、約30分〜1時間のピアノ、室内楽のレッスンを実施。上田さんが「空の色が少しずつ変化していく光景をイメージして」と独特の言い回しで音色について指導。最初は緊張していた受講生も、少しずつ生き生きとした音に変化していった。

 また、チェンバロ体験講座も行われ、函館のチェンバロ奏者、森洋子さんが楽器の構造や歴史を紹介。試奏した子どもたちは「軽やかに弾けて面白かった」と満足していた。

 北斗在住の猪股希実さん(14)は上田さんのレッスンを受け「演奏のイメージの例えが分かりやすかった。その通りに弾いたら音が変わってびっくり。貴重な機会になりました」と話した。

 レッスンは午前9時〜午後5時で、1日1000円で市民も聴講できる。希望者は直接会場へ。(長内 健)


◎高橋知事が漁業被害の2町視察

 【八雲】高橋はるみ道知事は15日、東日本大震災で漁業被害に見舞われた、噴火湾沿いの八雲町と長万部町を視察に訪れた。首長や漁業関係者らと今後の課題について会談し、知事は復旧・復興に向けて「さらなる財政措置を検討する」と述べた。

 両町では津波でホタテ養殖施設が流されるなど被害を受けた。道によると、8月11日現在の漁業被害額は八雲が74億1500万円、長万部が10億200万円。震災発生後、知事が両町の視察に訪れたのは初めて。

 このうち八雲では漁港を視察。震災当日の津波の状況などについて説明を受けた後、町役場で川代義夫町長、八雲町漁協の大林弘志組合長、落部漁協の碇貞一組合長らと意見交換。川代町長は、国の特別交付税が東北の被災地に回っている状況を受け「(復興は)道の財源でやることになる。配慮をお願いしたい」と財政支援を求めた。

 これに対し、知事は「要望に対してどこまで応えられるか検討する」とし、「漁協からホタテ養殖を守りたいと話を聞き、心強く思った。主力魚種でもあり、しっかりサポートしたい」と述べた。

 大林組合長は「施設は7割まで復旧しているが、耳釣りの時期がかなり遅れている。3次補正では共同利用施設の取得に向け、道に支援をお願いしたい」と話していた。(千葉卓陽)