2011年8月24日 (水) 掲載

◎思い出たくさん 別れ惜しむ 被災家族が帰路に 函館・むすびば

 被災地支援に取り組む団体「函館・むすびば」(丸藤競代表)が福島県などから受け入れた家族が23日、約1カ月の滞在日程を終了し、帰路についた。子どもたちは列車が発車する直前まで、世話をしてくれたスタッフらと抱き合ったり、手を振りながら別れを惜しんだ。

 同団体の支援事業として、先月26日から19家族58人が来函。29日間の期間中には、木古内町での地引き網み体験、花火観賞、大沼を1週するサイクリングなどさまざまな企画を楽しんだ。

 JR函館駅からは約40人が古里に向け出発した。滞在していたホテルから駅に到着するまでの間にも、これまでの出来事を振り返り、保護者と支援スタッフが涙する場面もあったという。列車に乗り込むと子どもたちは「一緒に行こう」「冬休みにまた来るね」と大きな声で手を振り、スタッフもそれに応えるように手を振り続けていた。

 娘の杏優さん(9)と訪れていた福島県いわき市の伊藤愛子さん(49)は「すばらしい思い出ができた。家は半壊してしまい落ち込んでいたが、元気をもらった」と笑顔だった。(小杉貴洋)



◎大正期の建物解体へ「北海洋裁学院」来月にも 市都市景観審が指定解除を決定

 函館市都市景観審議会(岩田州夫会長)が23日、函館市役所で開かれ、市の景観形成指定建築物等に指定されている「北海洋裁学院」(末広町18)について、同建物の指定を解除することを決めた。現在の所有者が老朽化によりこれ以上の建物の維持や補修が困難なためで、9月にも解体される見通し。西部地区の歴史的な建物がまた一つ姿を消し、街並み保全のあり方にも議論を呼びそうだ。

 「北海洋裁学院」は1923(大正12)年、函館無尽本店(後の北洋相互銀行函館支店)として建設され、49年に前所有者が洋裁学校併用住宅として購入。鉄筋コンクリート造2階建てで、延べ床面積は723平方b。2005年から現在の所有者が個人住宅として活用している。

 築87年が経過し、壁や天井のコンクリートのはがれや亀裂が目立ち、鉄筋も腐食や膨張して「居住空間として日常の使用に耐えないほどの支障が生じている」(市都市建設部)のが実態。市は所有者から解体の意向を受け、都市景観条例に基づく指定解除について23日の同審議会に諮問した。

 市内の学識経験者らでつくる審議会の委員14人は同日、この建物の内部も含めて視察したうえで「指定解除はやむを得ない」と結論付けた。だが、委員からは「ここまで老朽化する前に何か手だてはなかったのか」「建築的にも重要で、外観の一部でも残せないか」「資金面など根本的な解決策を考えなければ」と慎重論も相次いだ。

 この制度は1989年に始まり、現在49件が指定されている。指定建築物は補修費の8割、最大600万円が助成され、年間7万円の維持管理費補助制度もあるが、「老朽化した古い建物を維持するには賄えない額」(建築関係委員)という。荒井俊明都市建設部長は「制度も20年以上が経過し、見直し時期に来ている」とし、来年度に景観条例の改正案を提案する方針を示した。

 所有者の男性(58)は「コンクリート造りは夏は暑く、冬は寒いため、灯油代だけで年間30万円以上かかる。耐震補強すれば億単位の費用もかさみ、個人の負担では限界に来ている。今後もここで暮らすには建て替えるしかなかった」と話し、9月にも解体し、新築住宅を建設する予定という。(森健太郎)



◎藤岡眼科病院 石川町へ来年4月移転へ

 藤岡眼科病院(函館市大手町18、藤岡達彦院長)が来春、同市石川町162の区画整理地区に新築移転する。民間の眼科専門病院では道内初という電子カルテの導入を進める一方、病床を40床から19床に減らし診療所に転換する。9月にも着工し、来年4月中旬のオープンを目指す。

 同病院は1925(大正14年)、JR函館駅前で開業し、76年、現在の建物に移った。近年、大型機器の導入などで院内が手狭になったことなどから近辺での移転、増改築を検討していたが、東日本大震災による津波で駐車場が冠水し、建物も浸水。患者の安全面など総合的に判断した結果、石川町への移転を決めた。

 新しい建物は鉄筋2階建て延べ床面積1500平方メートルで、現在の4階建ての建物の2倍の広さとなる。駐車場も約70台分を確保し、バリアフリー化も行う。

 オール電化システム、太陽光発電を導入し、院内は視覚障害者が認識しやすい色や素材を使った室内空間とする考え。スタッフ間の情報共有化や待ち時間の短縮を図るため電子カルテも導入する。

 診療所への転換は、技術の進歩で日帰り手術が増え、移転新築を機に実情に合わせた。現在通院中の患者の交通手段を考慮し、送迎バスの運行も検討している。

 藤岡院長は「今まで通り実践してきたスタッフのチームワークで質の高い優しい眼科医療を提供していく」と話している。(鈴木 潤)


◎新島襄の生き方学ぶ 同志社大「函館キャンプ」始まる

 海外の新知識を求めて函館から渡米した新島襄の足跡をたどる宿泊研修「函館キャンプ」(同志社大学生支援センター主催)が23日、函館市谷地頭町の市青少年研修センターで始まった。同大学生26人、教職員4人の計30人が参加。海外渡航の地碑(大町)などの訪問、地元卒業生との交流会などを通じ、新島の生き方を学び、自己の人生を見つめ直す。

 同大創始者として知られる新島は1864(元冶元)年、幕府の禁を犯して函館から脱国。同キャンプはことし29回目となる同大の伝統プログラムで、同志社校友会函館クラブ(浜谷信彦会長)が全面的に支援している。

 一行は22日にJR京都駅を出発し、23日函館入り。27日まで5泊6日(1泊は車中泊)の日程で函館に滞在する。期間中はアウトドア、ディスカッション、レクリエーション、イベントの4班に分かれ、学生主体で企画を立て実行する。

 23日は同センターで開会式を行い、学生、教職員が一人一人自己紹介をした。引率の川満直樹商学部専任講師は「普段は他学部の学生と話す機会がないので、この機会に良い交流ができれば。積極的に声をかけて」と話していた。

 25日夜には、函館山ロープウェイ山頂で地元卒業生との交流会がある。(山崎大和)