2011年8月27日 (土) 掲載

◎函館バス、来月からボンネットバス路線デビュー

 函館バス(函館市高盛町)は9月1日、昭和34(1959)年に製造されたボンネットバス「函館浪漫號(ろまんごう)」を初めて、路線に投入する。市電の五稜郭公園電停付近から五稜郭を循環し、市電のハイカラ号にも接続。五稜郭公園を訪れる観光客の利便性を向上させると同時に、新たな観光需要につなげたい考え。

 函館浪漫号はいすゞ自動車製。四国などで送迎バスとして使われた後にイベント用に転用され、2007年に同社が取得した。排気量は6000cc、定員57人。塗装や窓枠など変更した部分はあるものの、エンジンや席などは製造当時のまま。車体の前部にエンジンを積んだ部分が突き出した形状が特徴で、車体から出る方向指示器など現在では使われなくなった装備もある。

 これまでは貸し切りやイベントなどに対応していたが、さらに活用を進めようと、同じくレトロ感のあるハイカラ号と接続した路線で運行する。運行日は毎週月、木、金、土、日曜日。停車するバス停は、函館信金五稜郭支店前の「五稜郭信金前」、「五稜郭シダックス前」「五稜郭公園」の3カ所で、信金前の始発は午前10時半、最終は午後4時40分。初運行は9月1日で、今年の運行期間はハイカラ号に合わせ10月31日までとした。

 区間内は200円(大人)で乗ることができる。現金や乗車券、1・2日乗車券、回数券は使えるが、定期券とバス・市電共通乗車カードは不可。乗車した人には記念切符を発行する。同社は「函館の街並みに合う車両。観光客や市民に幅広く利用してほしい」と期待する。(小泉まや)



◎函館への行政視察、昨年の2割

 全国の市町村議会などから函館市を訪れる行政視察が減少している。本年度は7月末現在で、前年同期の約2割にとどまっており、市議会事務局は「東日本大震災とともに、今年が統一地方選の年だったことも影響している」と話している。

 市議会事務局によると、行政視察は市町村単位の会派や委員会単位で訪れるケースがほとんど。青函博覧会が行われた1988(昭和63年)に243件、2076人が訪れたのをピークに、ここ数年は100件台で推移。07年度は129件1082人、08年度は136件988人、09年度は145件1143人。10年度は164件1266人と年々増え続けてきた。

 例年は6月定例会後の7月と、9月定例会後の10月に集中する傾向にある。しかし、本年度は震災発生後の4月に1件もなく、5、6月も1件ずつと低調。7月は15件99件と増えたが、前回統一地方選が行われた07年度と比較しても件数、人数ともに下回る。

 視察目的では市地域交流まちづくりセンターが多く、市民活動のサポートに特化した独特な性格を持つ面から、具体的な活動内容や運営面を見ようと訪れている。また、昨年復元オープンした箱館奉行所や、移住施策を担う定住化サポートセンターへの関心が高い。市議会事務局は「人口減少の時代に、函館がどういう取り組みをしているか調べるケースが多い」と分析している。(千葉卓陽)



◎高丘町会とデイサービス高丘が防災協定締結

 高丘町会(武下秀雄会長)と老人福祉施設・エムズジャパンデイサービス高丘(丸藤秀幸代表)による防災協定の調印式が26日、同町会館で開かれた。関係者や地域住民ら10人余りが出席し、和やかな雰囲気の中で防災面での連携を約束した。

 函館市内の町会の先駆けとして、地域ぐるみで防災意識を高める取り組みを行う同町会は、2009年に同町会内の5つの老人福祉施設などと防災協定を結んできた。今回の締結は6カ所目。災害時における相互の連携協力や迅速な救急活動などを目的にしている。

 調印式では、武下会長と丸藤代表が協定書にサインし、握手を交わした。あいさつの中で2人は、東日本大震災で学んだ地域連携の大切さや孤独死など高齢者の問題について語り、地域と企業との互助の大切さを訴えた。

 武下会長は「災害時に高齢者や体が不自由な人の力になれるよう、今後も町会員の防災意識を高める働きかけをしていきたい」と意気込み、丸藤代表は「互いに連携し、地域に密着した支援を今後もしていきたい」と抱負を語った。

 参加した主婦は「これをきっかけに、町会員同士の交流がより深まれば」と話し、期待を寄せていた。(平尾美陽子)


◎インドカレー専門店「シタール」が来月20日閉店、30年の歴史に幕

 函館市梁川町22で本格派のインドカレーを提供するカレー専門店「カレーレストラン シタール」(鈴木登代表)が、集客減のため来月20日で閉店する。函館のインドカレーの草分け的存在として匠の味を提供し続け今年で30年。鈴木さん(62)は「感謝の思いしかない。老舗として、最後まで精いっぱいお客さんに尽くしたい」と話している。

 鈴木さんは函館出身。名古屋の専門学校を卒業後、22歳で東京の観光企業に就職。10年後に料理人になろうと決意し、東京・銀座のインド料理専門店「ナイルレストラン」に入り、インド人から1年間、カレーの手ほどきを受けた。

 鈴木さんによると、1980年代の本道にはインドカレーを提供する店がなかったという。「故郷で開業すれば他店との差別化ができる」と81年9月、函館市内の旧西武百貨店にオープン。8年前の同店閉店に伴い、現在地へ移転した。

 同店の「インド風カレー」は、みじん切りにして炒めたタマネギの甘みやコクが絶妙の一品。81年の開業当初から幅広い世代がその味を求めた。百貨店内の集客効果で固定客をつかみ、店舗移転後も本町・五稜郭町のサラリーマンらを中心に好評を得てきた。

 しかし数年前からそうした常連客が減少した。近隣のビルに空き店舗が目立ち始めた昨年は特に顕著で、これまでの昼食時には多い日で30人訪れたが、今年は10人を切るように。「コンビニエンスストアで食事を済ませたり、外食を控えたりと食生活の変化は否めないし、リピーターも高齢になればどうしてもお客さんは少なくなる」と鈴木さん。今年に入って閉店を決断した。

 そうした中でも、毎週通う人を含め10〜70代のリピーターは約50人いる。味や価格、店の雰囲気などサービス全般に関するアンケート調査に労をいとわなかった結果だ。

 鈴木さんは「お客さんに喜んでもらうには生の声を反映させなければ。試行錯誤の日々だったが、そうした苦労がなければ30年も続けられなかった」と感慨深げに振り返り、「時代にはあらがえないが、最後の一日までおいしいカレーを作りたい」と意気込んでいる。

 ランチは正午〜午後2時半、ディナーは同6時〜10時。不定休。問い合わせは同店電話0138・54・8712。(長内 健)

 


◎街歩き20コース収録、函館市がマップ本作製

 函館市は、10月10日まで実施しているまちあるきイベント「てくてくはこだて特別版」の参加者に配布するマップブックを作製した。希望者には、市内の協力店でクーポンとして使えるリストバンドと合わせて販売しており、市観光振興課は「ガイドを付ける人も付けない人も、マップを参考に街歩きを楽しんで」と話している。

 マップブックはA4判46ページのオールカラー版で、3000部を作製。市がこれまでにつくった20のまちあるきコースを収録しているほか、世界的な観光ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で三つ星の評価を得た函館山の特集も。各コースごとに、まちあるきの達人が語る楽しみ方やお薦めポイントを紹介している。

 「てくてく—」の参加者にはマップブックのほか、市内の飲食店など約80店舗で提示すると割引サービスが受けられるリストバンドを500円で配布。観光ボランティアガイドなしでの街歩き希望者には、ブックとリストバンドを350円で販売しており、市内観光案内所(元町、駅前、五稜郭)と市内ホテル11カ所で購入できる。

 同課は「てくてく—は実施日が限られており、いつでも参加できる仕組みを増やした。街歩きルートをたどるだけでなく、自由に歩いてみてほしい」とPR。問い合わせは同課電話0138・21・3383。(千葉卓陽)


◎企画「命見つめて」うつ病編B…若者の発症 近年増加

 厚生労働省が3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると、うつ病などの気分障害の総患者数は約104万人(2008年)で、1996年の約43万人に比べ、2・4倍にもなっている。ただ、うつ病患者の医療機関への受診率は低いことが分かっており、実際にはこれより多くの患者がいるとされている。

 函館でも同様の傾向で、富田病院(函館市駒場町)の岩窪昭文精神科部長は「やはり患者は増えている。若者の患者が目立つ」と語る。改行 近年、新しいタイプのうつ病が増えている。「現代型うつ病」「新型うつ病」などと呼ばれ、医学的には正式な病名ではない。症状や患者の性格などが従来のうつ病に当てはまらないうつ病で、特に20代、30代の若者に多いと言われる。

 主な特徴として、うつ病特有の気分の障害や身体的な症状が軽いケースが多い。仕事中、うつ状態に陥るが、休日に元気になるという患者もいるという。自ら病気と認識して精神科を受診する傾向がみられる。

 なぜ、新型うつ病がみられるようになったのか。06年に成立した自殺対策基本法を受けて、国を挙げてうつ病の啓発が行われるようになったのが一つの契機だ。

 日本国内の自殺者は1998年から3万人以上で推移している状況で、調査の分析でうつ病が原因の一つに挙げられ、早期受診を呼び掛ける啓発が強まった。そのためうつ病治療の敷居は低くなり、うつ病を自ら疑って受診する人が増えたとするのが大方の見方だ。

 いわゆる新型うつ病も従来型のうつ病と一緒くたに治療されていたが、薬物療法や休養による治療では症状が治まらないケースが多くみられた。いつまでたっても快方に向かわないから、治療薬を増やすことになり、多剤処方の傾向にも陥っている。

 啓発が進む一方で情報もはんらんしており、函館渡辺病院(同市湯川町)の三上昭広名誉院長は「うつの概念を改めて整理していく必要がある」と語る。

 受診者が増えたことで診療所や精神科病院では、じっくり話を聴く診察ができない弊害も出ている。同市内の精神科医は「症状を聞くだけでなく、病気の原因となっているストレスや悩みにも耳を傾けるだけでも治療の効果はある。現状はそこまで十分聴けていない」と悩みを口にする。(医療問題取材班)

 ◆自殺対策基本法 年間の自殺者数が3万人を超える国内の状況に対処するため2006年10月施行。主として内閣府が所管。自殺防止のための調査研究や教育広報活動、職場・学校・地域の体制づくり、医療の整備など、社会的な取り組みを国や地方自治体の責務として行う。