2011年8月28日 (日) 掲載

◎野球を通じ復興へエール…被災地の少年団と交流試合

 【江差】東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県山田町の野球少年24人が27日、江差町民野球場で、地元の子供たちと交流試合を行い、被災地の早期復興に向けたエールを交換した。

 交流試合は、町内の少年野球チーム・江差フェニックス野球スポーツ少年団(出崎雄司監督)と父母会(工藤好明会長)の主催。桧山町村会と桧山振興局による山田町への支援活動を通じた縁で、被災地の野球少年を地域を超えて励まそうと交流を計画した。

 山田町からは、豊間根(及川明監督)と織笠(福士尚一監督)の2つの野球スポーツ少年団に所属する児童24人が来町。桧山管内からは、上ノ国町の上ノ国石崎ヤンチャーズ(工藤秀人監督)、せたな町の大成ベアーズ(石原広務監督)が参加した。

 開会式では、浜谷一治町長と山崎峰男桧山振興局長が選手を激励。新岡大地(江差)、福士剛喜(豊間根)、山屋和真(織笠)、疋田颯(上ノ国)、光銭太郎(大成)の4主将がエールを交換した。山田町の子供たちは「大人は復興に向けて頑張っている。自分たちの力が必要になる時が必ず来る」と復興への決意を表明。震災に立ち向かう子供たちの勇気をたたえ合った。

 江差フェニックスの出崎監督は「地域の垣根を超え、ボールを通じて子供たちが向き合うことができた。野球を通じた縁を大切に、これからも被災地の復興を応援していくことができれば」と話した。(松浦 純)



◎函館再生へ活路探る…道内外の有識者招き初会合

 首都圏など地元以外の有識者を招いて函館の経済振興策を検討する「函館市経済再生会議」の初会合が27日、函館国際ホテル(大手町)で開かれた。首都圏や名古屋、札幌在住の大学教授やエコノミストら4人が出席。市内の経済概況について視察や説明を受け、地域経済の課題や活路を探った。

 同会議は工藤市長が掲げる最優先課題「経済の再生」に向け、外からの視点や発想、提言を政策に反映させる狙い。有識者6人に、工藤寿樹市長、松本栄一函館商工会議所会頭も加わる。この日出席した4人は会合前に市内の工業団地や大学、市街地なども視察した。

 工藤市長は「広い見識を持つ皆さんに外から見た函館の助言をいただき、実現できるものから取り組みながら函館を経済再生のモデルにしたい」とあいさつ。会議では市の担当者が近年の経済や観光などに関する市の施策のほか、人口や事業所数、観光客数の推移などを紹介した。

 観光分野が専門の清水慎一立教大特任教授は、函館観光について「多様な資源があるのに一部しか使われていない。4年後の新幹線開業を機にステップアップが必要」と強調。観光のPR手法についても「『いか。ないと。』など古典的な語呂合わせではお金の無駄。自信を持って本物で訴える志がなければ」と発破をかけた。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(名古屋)エコノミストの内田俊宏氏は産業統計で急減する市内の卸売業に着目し「デフレで中抜きの産業構造が表れている」と指摘。観光面では中国人の消費額が高いことを紹介し「函館は台湾からの割合が大きい。家電などショッピングの仕掛けも効果的」と助言した。

 一方、札幌でベンチャー企業を経営する土井尚人社長は「ここでしかできない産業の創出が重要」と述べ、先進的な医療ビジネスの可能性を提言。中小企業経営に詳しい植田浩史慶応大教授は「大学や研究機関が充実し、企業の経営環境は整っている」とする半面、「地域内連携で国内外の需要を取り込み、もっと函館ブランドとしてPRしなければ」と訴えた。(森健太郎)



◎企画「命見つめて」うつ病編(4)…自殺防止 取り組み広がる

 「周りの人たちがどんどん離れていった」――。うつ病などを患う函館市内の30代男性は10年ほど前に自殺を企てた。ストレスや悩みを抱えこみ、命を断とうとした。「自殺は愛する家族や仲間も傷つけてしまう」。今も自責の念にかられる。

 精神科の治療を受ける同市内の30代の主婦も6年ほど前、パートの仕事中に上司にとがめられ、むしゃくしゃしてとっさに手首を切った。その後も何度か自傷行為を繰り返し、そのたびに周りから叱責される。「やめたいとは思っているけど…」と口をつぐむ。

 日本の自殺者は1998年から3万人以上で推移し、社会問題となっている。近年の自殺原因は健康上の問題が一番多く、次いで経済・生活問題、家庭問題と続く。健康問題の中でもうつ病をはじめとする精神疾患の割合が高い。

 国は2006年10月に自殺対策基本法を施行し、都道府県や各市町村も対策に乗り出した。函館市も08年に産業、教育、司法など23団体で構成する自殺予防対策連絡会議を立ち上げ、本格的に取り組みを開始。今年6月には、匿名で電話相談できる「いのちのホットライン」を新たに開設し、週2回、午後5時半〜8時半に対応する。

 函館市の近年の自殺者は全国と同様、男性が7割以上と圧倒的に多い。年代別では30〜50代が半数以上を占め、60代以上が4割弱となっている。自殺率(人口10万人当たり自殺者数)は30%前後と全国、全道の平均を上回っている。市立函館保健所は「地域全体で取り組まなければならない喫緊の課題。関係機関とさらに連携しながら取り組みたい」(保健予防課)とする。

 自殺者の多くは1人で悩む傾向がある一方で、半数以上が相談機関にも訪れたというデータもある。自殺の危険性を食い止める「ゲートキーパー」の養成も重要だ。社会福祉士の湯浅弥(わたる)さんは「ゲートキーパーは悩みを受け入れた上で、医療機関や専門家につなぐ役割が求められる」と語る。

 各相談機関でも自殺対策が求められる。自殺の原因で多いのは病気のほか経済苦だ。法テラス函館地方事務所(前田健三所長)によると、費用の援助を受け債務整理をする人の割合が、函館では全国平均よりも10%以上多いという。「金銭的な問題で精神が不安定になる人が多いと推測する。死を選ぶ前に相談してもらうよう啓発したい」とする。

 今年2月には相談業務を行う市民団体が連携し、自殺対策市民ネットワークを設立。当面、専用相談電話の設置や自死遺族の会の設立などを目指している。(医療問題取材班)


◎がん征圧へ支援を…チャリティーイベント 函館初 患者ら24時間歩いて訴え

 がんに負けない社会を目指して、がん患者や家族、支援者らが交代しながら24時間歩き続けるチャリティーイベント「リレー・フォー・ライフ(RFL)inはこだて」(実行委、日本対がん協会主催)が27日、函館市高松町の高松ふれあい広場で始まった。函館では初めてで、道内では室蘭市、石狩市に続き3番目の開催。有志の市民ら約60人がリレー・ウオークに参加した。

 RFLは、がん患者や家族らの支援とがん征圧を目指したイベントで、1985年に米国で始まった。日本では2006年に茨城県つくば市で始まったのを皮切りに、年々各地でも広がり、2010年には20カ所で開かれた。

 この日は午前11時半の開会式に続き、正午にリレー・ウオークが始まり、がん患者4人が先陣を切った。その後、参加者が次々とウオークに参加し、1周約120メートルのコースを歩いて周回した。

 午後5時すぎにはがんで亡くなった人をしのび、闘病者を励ますためのキャンドル(ルミナリエ)約400個をコース脇に並べ点火。紙のパッケージには「がん検診受診を」「絆」などと記され、いくつものほのかな明かりが暗闇の会場を幻想的に照らした。

 星空の下、全国のRFLの会場で演奏活動を行っているサクソホン奏者のTSUBO―KEN(ツボケン)や函館大ジャズ研究会のライブも行われ、歩き続ける参加者を後押し。

 ライブの途中、実行委の計らいで28日が誕生日のツボケンさんに、お祝いのコメントが書かれた寄せ書きがプレゼントされ、ツボケンさんも「感激しました」と感謝しきり。

 リレー・ウオークに参加した函館戸井西小4年の高田葉月さん(10)は「(闘病中の人に)くじけないで頑張ってほしいと思って歩きました」と話した。  実行委の工藤秀彦副委員長は「これをきっかけに輪が広がればいいですね」と述べた。リレー・ウオークは28日正午まで続けられる。(鈴木 潤)


◎実習の成果品、野菜販売…六輪村感謝祭3高校も参加

 【北斗】北斗市内の農家の女性でつくる直売所「六輪村」(東寺百合子代表)と高校生との合同感謝祭が27日、北斗市大工川の同直売所で開かれ、大勢の市民らでにぎわった。

 2008年から毎年この時期に開催している感謝祭で、北斗大野農業高、函館水産高、函館商業高の3実業高も参加。同直売所で収穫した新鮮な野菜をはじめ、3校の実習の成果品が販売された。

 大野農業高校の野菜やパウンドケーキ、函館商業高校のサブレなどが売り場に並び、高校生たちが「丹精込めて作りました。どうぞ」と元気良くPR。函館水産高校の生徒は大沼での環境活動での成果を紹介した。

 同直売所で運営している食堂「休み所 小昼(こびる)」が今季の営業最終日で、パスタやランチを割引サービスで提供。手作りバター体験コーナーなども開設され、来場者が楽しむ光景が見られた。バター作りを体験した函館市内の女性(68)は「感動しました。家に帰ったらパンにつけて食べたい」と話していた。(鈴木 潤)