2011年8月30日 (火) 掲載

◎ソバ収穫 近づく秋

 【知内】道南有数の作付面積を誇る知内町で29日、ソバの収穫が始まった。大型コンバインがソバの穂を次々と刈り取り、ひと足早い秋の訪れを告げている。

 JA新はこだて知内基幹支店によると、同町内のソバ作付面積は88ヘクタール(昨年65ヘクタール)。輪作体系の一つにソバを組み込んでいることや、戸別所得補償制度が畑作物にも対象が拡大され、ソバ栽培もメリットが受けられるようになり、面積が増えた。

 生産者は6月に播種(はしゅ)。同町豆類機械作業受託組合(玉森健組合長)が収穫、乾燥、調製を行った後、JAに出荷する。新ソバはAコープ知内店(重内)でソバ粉として販売されるほか、町内の飲食店「川波」でも新ソバを使ったメニューが味わえる。

 この日は同組合のコンバイン4台を使い、重内の圃場で刈り取り作業をした。玉森組合長(42)は「作柄は平年並み。ことしは昼夜の気温差が大きかったので、香り、味の良いソバができるのでは」と話していた。

 同組合は圃場の適期を見ながら、順番に刈り取っていく。収穫作業は9月いっぱい続く見通し。(山崎大和)



◎道南財政界 期待と懸念

 菅直人首相の後継を決める29日の民主党代表選挙で、野田佳彦財務大臣が新代表に選出されたことを受け、道南の政財界関係者からは新たな政権運営に期待する声とともに、「財政規律」を重視する野田氏が新首相になることへの懸念や注文も相次いだ。

 民主党道8区選出の逢坂誠二衆院議員は、1回目に鹿野道彦農水大臣に投票し、決選投票では海江田万里経済産業大臣を選んだ。逢坂氏は鹿野氏について「いま何をやるべきかという大局感を持った人」とし、決選投票では「北海道という地域を考えた場合、財政や新幹線への影響を勘案して海江田氏に投じた」と説明した。

 その上で野田氏については「ユーモアがあり、機転も利く。財務大臣と違って首相になれば広く意見を聞く人だと思う。『ノーサイド』の言葉を信じ、実行してもらいたい」と期待感を示した。現在務める総務大臣政務官の役職については「まったく白紙の状態」と語った。

 一方、野党側には不安や不満もくすぶる。自民党8区支部幹事長の佐々木俊雄道議は「代表選を戦ったメンバーの中では順当に落ち着いた結果という印象だ。本道が直面する課題である景気回復や道新幹線の札幌延伸などに否定的だと聞いており、期待が持てる政権にはならない」と切り捨てた。

 東日本大震災の復興支援など菅政権のスピード感に不満のあった公明党。函館総支部長の茂木修函館市議は「新たな体制のもとで、被災者が望むことにスピーディーに取り組んでほしい」とし、合意形成型の国会運営を望む。共産党函館地区委員会の高橋佳大委員長は「民主党は普天間基地問題など公約を投げ捨てて、自民党と変わらなくなっている。自民との大連合に進むのであれば、政権交代の意味も問われる」といぶかる。

 道南の自治体の首長らの反応もさまざまだ。工藤寿樹函館市長は「誰が代表でも、まずは震災の問題をきちんと対応してほしい。原発やエネルギーなど課題は山積みで、国としての明確な方向性や国民に勇気と希望を与える政治を望む」と注文を付けた。

 一方、高谷寿峰北斗市長は「5氏の中で野田氏は地方財政に厳しい印象。将来の増税に余地を残した発言もあり、景気の悪化につながるのでは」と懸念。中宮安一七飯町長も「野田氏が掲げる歳出削減の方針は道新幹線の札幌延伸が遠のくのではないかと心配している」と不安視する。

 道町村会長の寺島光一郎乙部町長は「民主党は挙党一致でぶれない政治を早急に実現し、迅速な復興対策や経済対策に取り組むことができる、実務的な顔ぶれによる組閣が行われるかどうか注目したい」とコメントした。

 経済界からは厳しい経済状況を背景に、増税を待ってほしいとの声が寄せられた。函館商工会議所の松本栄一会頭は、「増税の時期はよく考えてほしい」としながら、外交手腕に期待し、「社会不安をどう終結させるか」見守る考え。



◎ナマコ密漁許さぬ! 道など合同パトロール

 【乙部】暴力団など、組織的な密漁グループの脅威にさらされている、桧山沿岸のナマコ資源の保護に向けて、桧山振興局が主催する大規模な合同パトロールが29日、乙部町を中心に行われた。道、警察、海保、漁協、町役場などの関係機関が一堂に会した初めての取り組み。現地の漁業者から得た、犯人グループの潜入ルートや犯行現場などの情報共有を図り、徹底した摘発作戦に乗り出す構えだ。

 道水産林務部漁業管理課の密漁取り締まりチームをはじめ、江差署、江差海保署、乙部町、ひやま漁協などの関係者約40人が参加した。元町みなと交流館で開いた対策会議で、山崎峰男局長は「漁業者から生活の糧を奪う行為を許さない。密漁者と闘い徹底的に摘発する桧山の意志を示したい」と強調した。同漁協の工藤智司代表監事は「このままでは資源が枯渇する。1グループでも多く検挙する体制を取って欲しい」と訴えた。

 パトロールは、八雲町熊石相沼から、江差町五厘沢までの約15キロ区間で、密漁グループの目撃情報があったり、漁場への潜入ルートになっている海岸を巡回。地域の漁業者から、犯行の手口や資源減少の実態を聞き取った。漁業者からは「暴力団風のグループがいて怖くて近づけない。脅された住民もいる」「現場には見張りの車がいて警察や漁業者を監視している」などの情報も寄せられた。こうした現場では「密漁の影響でナマコだけでなくウニやアワビもいなくなった」との悲鳴も相次いだ。パトロールに参加した藤田修江差署長は「漁業者の窮状や悪質な犯行の手口を実地で学ぶことができた。情報を基に強力な取り締まりを進めたい」と話していた。(松浦 純)


◎開業間近 HPで実感を

 道新幹線開業に向けた道民の機運を盛り上げようと、渡島総合振興局は29日、同振興局ホームページ(HP)内に道新幹線の建設工事状況を紹介する専用サイトを開設した。月に1回のペースで更新、建設状況を写真などで見て開業間近を実感できる。

 2005年5月に着工した道新幹線新青森・新函館(仮称)間は、15年度末の開業に向け、順調に建設工事が進んでいる。本道側では新設トンネル6本のうち、4本が既に貫通、5本目の万太郎トンネルも9月1日に貫通式が予定されている。また、橋梁(きょうりょう)や高架橋などの明かり工事(トンネル以外の工事)が進み、開業が実感できるようになってきた。

 こうした状況を目に見える形で情報発信しようと、専用サイトを開設。サイトでは、新青森・新函館間の事業費ベースの進ちょく率が約47%(11年度までの累計)など建設工事の状況が分かるほか、写真で渡島当別トンネル(木古内町、北斗市)や万太郎トンネル(同市)、大野川橋梁工事(同市)、飯田高架橋(七飯町)などを掲載。

 同振興局新幹線推進室は「『これまでの経過』を説明するサイトはあったが、さらに建設状況を載せることで開業が近いことを実感してもらえれば」としている。

 閲覧は、同振興局HPの中段右側「渡島ガイド」の「北海道新幹線」をクリック、「渡島総合振興局新幹線推進室のページ」を表示。目次の中から「1北海道新幹線建設状況発信サイト」をクリックする。(山崎大和)


◎函高専 将棋で全国V

 第18回全国高等専門学校将棋大会がこのほど、富山県中小企業研修センターで行われた。団体戦には全国から28校が出場。函館高専が第14回以来2度目となる優勝に輝いた。

 同大会では1チーム3人で戦う団体戦と、個人戦が行われる。函館高専は斎藤航輔君(1年)、岩崎祐輔君(4年)、三島裕生君(5年)が団体戦に出場し、強豪揃いの予選を勝ち抜いてベスト4入り。おととし、昨年の優勝校で連覇をねらう鈴鹿高専(三重県)を下し、見事優勝の座を勝ち取った。

 一方、個人戦では斎藤君が2位、女子の部では金澤智美さん(3年)が2位、中村美南さん(5年)が3位に入賞。ほか、市川徹君(5年)がベスト8、岩崎祐祐君(4年)、三島君がベスト32にまで進んだ。

 函館高専将棋部顧問の竹花靖彦准教授は「みんな想像以上に頑張ってくれた」と生徒たちの健闘を賞賛。「来年の全国大会は函館で行われる。連覇を目指して、ますます頑張ってほしい」とエールを送っている。(堀内法子)


◎【ふくしまキッズ「笑顔の夏」上】放射能に負けない力を

 「明日からこうして草の上で遊ぶこともできないのか」−。約3週間の滞在を終えて福島市に帰郷する前日の8月11日、小学6年生の桜庭丈君(12)は名残惜しそうに話した。激しい揺れを経験した東日本大震災、そして、福島第1原発事故…。あの日から5カ月が経過していた。「福島では公園も立ち入り禁止だった。マスクをしなくても遊べる北海道は楽しかった」と日焼けした顔をほころばせた。

 この夏、福島の子どもたちを対象に放射線からの解放を目的としたさまざまな支援活動が全国各地で行われた。中でも「ふくしまキッズ夏季林間学校」はいち早く始動した最大級の事業。放射線に対する強い懸念を持った保護者の関心が集まり、参加者は当初予定の200人から約480人まで膨れあがった。

 実行委員長の進士徹さん(54)=福島県鮫川村、NPO法人あぶくまエヌエスネット理事長=は「8割の子どもは、親に言われて参加しただけ。本当に来たかった子は少ない」とする。1〜5週間と滞在期間の違いはあるが、道内各地の海や山でさまざまな体験をした。「普通に外で遊べる喜びを知った子どもたちは、次第にその気になり、本気になり、元気モードになった」とし、子どもたちの笑顔が何よりの成果だ。

 福島市から小5の長男(11)と小2の長女(8)とともに3週間を過ごした母親(44)は「伸び伸びと過ごすことができ、すごく楽しそうだった。帰りたいけれど、帰りたくない気持ちはある。これからの現実は心配です」と涙をぬぐった。県内は、避難対象区域外でも、局地的に放射線値が高い場所が数多く点在する。生活の基盤がある地元を簡単に離れることはできず、この母親のように懸念を抱えつつも現実と向き合い、暮らしている人は多い。

 進士さんと同じNPOの三瓶稔さん(57)は「震災前や自然界の放射線値より県内の数値が高いのは事実。放射線を浴びる量の1年間の積算を考えれば、この夏に1週間でも、1カ月でも福島を離れることができたのは大きい」と話す。進士さんは「北海道で過ごした時間は子どもたちの大きな自信になり、逆境をはねのけるパワーを与えることができたはず」と自負する。

 4週目まで帰郷する子どもたちを送り届けた副実行委員長の吉田博彦さん(59)=NPO法人教育支援協会理事長=は福島の各駅で、親との再会を喜ぶ笑顔がマスクで覆い隠されてしまったことにやるせなさを感じた。「福島の問題は1年や2年で解決しない。最低でも5年間は続けなくては意味がない」とする。

 ふくしまキッズの目的は福島県の現実と、子どもたちに対する継続した支援の目を向けてもらうこと。既に冬休みや規模を拡大した来年の夏に向けての取り組みが始まっている。

 7月25日から8月28日まで35日間に渡り、七飯町東大沼を拠点に全道各地で行われた「ふくしまキッズ夏季林間学校」。福島県の子どもたちが過ごした北海道の夏を振り返る。(今井正一)