2011年8月31日 (水) 掲載

◎フランスの技術 母校で披露…ピアニスト・岡田さん演奏会

 函館出身のピアニストで、2010ショパンコンクールに出場した岡田奏さん(20)が30日、母校の函館鍛神小学校(藤井良江校長、児童465人)で演奏会を開いた。フランスに留学中の岡田さんは、後輩たちに本場の音色を届けた。

 同小学校の創立130周年記念事業として実施。岡田さんは中学校まで函館市で過ごし、その後フランスに留学。国際コンクール出場やリサイタルなど、精力的に演奏活動を続けながらパリ国立高等音楽院で研さんを積み、今年9月から同音楽院大学院修士課程に進学することが決まっている。

 この日は「子犬のワルツ」でスタート。軽やかな音色に子どもたちは「すごいね」「どうやって弾いているの」と身を乗り出していた。「ラ・カンパネラ」や「黒鍵のエチュード」のほか、子どもたちの歌声に合わせて校歌を演奏する場面も。

 演奏を聴き終えて6年生の吉田凪沙さん(12)は「夢をかなえた先輩の姿に刺激を受けた。夢に向けて私も頑張る」とにっこり。3歳からピアノを習っているという水島さくらさん(12)は「今は東京にも定期的にレッスンに行っている。ピアノの道を歩むのが夢。私もいつか海外で学びたい」と希望に胸を膨らませた。

 一方、岡田さんは「子どもたちの素直な反応がうれしかった。心が温かくなる特別なステージで、貴重な経験となりました」と笑顔を浮かべた。 (堀内法子)



◎工藤市長が大間原発初視察

 【大間】函館市の工藤寿樹市長は30日、青森県大間町を訪れ、福島第一原発事故を受けて建設中断中の大間原子力発電所を初めて視察した。事業主体の電源開発(東京)の現地責任者から説明を受けたほか、大間町役場を訪問。同市長は「国が全体のエネルギー対策をどうしていくかが問題。今の時点で無期限凍結を求める姿勢は変わらない」と述べるとともに、現在は半径10キロとなっている緊急時計画区域(EPZ)の対象範囲拡大が必要との認識を示した。

 視察は大間原発の安全対策を確認するのが目的。当初は道と合同で訪問する意向だったが道との調整がつかず、市単独での視察となった。

 工藤市長は市議会の能登谷公議長らとともに、午前9時半発のフェリーに乗船して大間入り。現地では電源開発の林耕四郎大間現地本部長、浦島彰人大間原子力建設所長らから建設の経緯や、福島第一原発事故を受けての防潮壁設置、高台への非常用発電機設置などの安全対策について説明を受けるとともに、敷地内を視察して回った。

 また、原発視察前には大間町役場を表敬訪問し、金沢満春町長や石戸秀雄町議会議長と懇談。しかし原発に関する直接の意見交換はなく、函館市議会が議決した無期限凍結を求める意見書を、能登谷議長が手渡すにとどまった。このほか市長は、函館—大間フェリー航路に関し、財政支援も含めて検討している旨を伝えた。

 工藤市長は視察後「函館との距離が非常に近く、さえぎるものもない。(工事は)想像していたよりもはるかに大掛かりだった」と印象を語った。そのうえで「福島の津波にも対処できるというが、それだけで済むのか。想定外のこともあり、視察したから了解したとはならない」とし、建設工事の無期限凍結を求める姿勢を強調した。

 た同市長は、EPZが原発から半径10キロ圏内にとどまっていることに疑問を呈し、「函館は大間原発の30キロ圏内に入る。説明だけでなく、同意まで広げなければ福島の教訓にはならない」と主張。野田佳彦新首相下での新規、計画中のエネルギー政策議論を注視するとした。(千葉卓陽)



◎企画「命見つめて」うつ病編E…原因多様 対策道半ば

 自殺対策防止法が施行されて今年で丸5年を迎えようとしている。自殺予防策の一つとしてうつ病予防の啓発を続けてきたが、1998年から続く3万人超の状況は改善されていない。

 昨年1月には、厚生労働省の所轄で自殺・うつ病等対策プロジェクトチームが立ち上がった。職場のメンタルヘルス(心の健康)、就労対策や認知行動療法の普及、治療を中断した患者のフォロー体制の確立などを進め、これらを受け、道内や市町村でもゲートキーパーやメンタルヘルスなどの研修会が開催され、啓発や専門職の人材育成が行われている。厚労大臣の交代で同プロジェクトの活動は宙に浮いた状態で、政策の実行は政権運営に左右される様相をはらんでいる。

 「メランコリー親和型」という言葉がある。真面目で几帳面、責任感が強いなど、うつ病になりやすい性格を指す。成果や利益に走る厳格的な職場環境が重圧となり、うつ病を招いていると指摘する声もある。改行 「うつ病」は多様で、あまりに幅広い。過労や対人関係のストレスで発病し、深い悲しみ、悩みが癒やされないまま病化することもある。生活・仕事環境の変化や人生の挫折、老化、身体の病気など発病するきっかけはさまざま。誰にでもなり得る病気として、メンタルヘルス対策の重要性が高まっている。

 精神保健福祉士の川越昌彦さんは「企業や地域、教育機関などを巻き込んだメンタルヘルスの啓発とともに疾患した後のキャリア支援が大事。知識を持つことで早期支援につなげることができる」と話す。改行 また、日本障害者・高齢者生活支援機構の能登正勝理事長は「うつ病は目に見える疾患ではないので、偏見や誤解が患者を苦しめている」とし、精神疾患に対する小中学校からの教育や精神科救急の24時間化などを提起している。

 精神保健福祉などを専門とする道教育大の森谷康文准教授は、うつ病の原因に「過労」「金銭問題」など日本社会が抱えるさまざまな問題が絡んでいると指摘する。「症状のみを取り除いても、なぜそうなったのか、根本にある問題を探す必要がある。経済・雇用対策など地域社会が抱える問題を解消していかないと、解決にはならない」と語り、医療や経済、就労など多種多様な分野とつながった相談窓口を提起する。

 うつ病の問題は、殺伐とした今の社会にどう対峙していくかが問われている。(第3部おわり)

 第3部は鈴木潤、田中陽介、長内健、堀内法子、後藤真、小杉貴洋、平尾美陽子が担当しました。

 ◆自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム

 当時の長妻昭厚労大臣が2010年1月に立ち上げた。医療や雇用、精神障害などの担当部局、自殺予防に取り組むNPO「ライフリンク」代表ら8人で構成。@普及啓発の重点的実施Aゲートキーパー機能の充実と地域連携体制の構築B職場におけるメンタルヘルス対策・職場復帰支援の充実Cアウトリーチ(訪問支援)の充実D精神保健医療改革の推進—の5項目を柱とする重点対策を掲げている。


◎【ふくしまキッズ「笑顔の夏」中】子どもの歓声 地域に活力

 160世帯、住民約330人の小さな漁村、松前町の西の端の原口地域に、久しぶりに子どもたちの笑い声が響いた。ふくしまキッズに参加した子どもたち約¥30¥人が6日から¥11¥日まで同町に滞在し、海を元気に泳ぎ、町の中を歩き回った。「子どもの歓声が響くと、地域の人たちも喜び、笑顔になったのが印象的」と町商工観光課の佐藤祐二主幹(¥52¥)は振り返る。

 松前だけではなく、子どもたちは、弟子屈、むかわ、下川など道内各地を旅した。実行委が事業継続を見据え、大沼を拠点に全道各地をつなげる「ゲートウェイ構想」。各自治体との関係を深める試金石となった。行く先々で温かく迎えられ、その土地でしかできない経験を重ねた。少子高齢化が進む地域も多く、子どもの笑顔が活力を与えた。

 松前町は昨年、地域活性を目的に旧原口小学校(2008年閉校)を宿泊施設「原口交流の里づくり館」として整備。農漁村体験や民泊受け入れの体制づくりに着手し、都市部から移住した2人を「地域おこし協力隊」として常駐するなどの準備を進めた。

 今回のふくしまキッズが民泊受け入れの第1号。準備のかいがあり、¥12¥軒の一般家庭が手を上げたほか、住民も食事の用意などに加わり、地域を挙げて迎え入れた。近江武さん(¥62¥)は「何も変わったことはしてあげることはできないが、松前の自然を空気を十分に吸って帰ってほしい」と男子児童3人を家に招き、楽しい時間を刻んだ。

 道内各地で行われた民泊は、親元を離れた経験が少ない子どもたちに家庭の温かさを再確認させ、好評だった。実行委は「多くの大人と接することが社会教育になる」と位置付ける。活性化の手応えをつかんだ佐藤さんは「楽しい思い出を作ったのは子どもばかりではない。地域も笑顔と希望をもらった」と話す。

 一方、七飯町大沼地区では、¥11¥日に十数年ぶりとなる盆踊りが復活。地元有志が協力し、子どもたちを喜ばせようと、やぐらを組み、準備に汗を流した。大沼地区連合町内会の若松時彦会長(¥64¥)は「長く途絶えていたが、昔ながらの地域の絆や良さを確認できた。住民から継続を望む声も届いた」と喜んだ。

 七飯大沼国際観光コンベンション協会堀元会長(¥59¥)も「大沼地域のパワーを実感した。子どもたちも好印象を持ってくれたようで、福島との縁ができたことは将来、きっといい影響をもたらしてくれるはず。もうひとつの地元として2度、3度と遊びに来てくれたら」と話す。

 東日本大震災と原発事故という未曽有の災害、悲しみが事業のきっかけとなっているが、大勢の子どもたちの輝きは、この夏、道内各地の人たちと福島の気持ちを結びつける確かな絆となった。(松宮一郎、今井正一)


◎函館市が補正予算発表 1億6019万増額

 函館市は30日、9月6日開会予定の第3回定例市議会に提出する、総額1億6019万円を追加した本年度の一般会計補正予算案を発表した。市の介護給付費の事務処理ミス問題で、市職員でつくる函館市役所職員厚生会の寄付金で介護保険事業特別会計の欠損を補てんする補正予算案や、市税条例の一部改正案などを議案10件を提出する。

 一般会計は補正後の総額で1330億8696万円となる。介護給付費問題で市負担分として同特別会計に繰り出す厚生会から寄付金2441万円を計上したほか、赤川中の暖房改修費3000万円や、10月にも整備計画をプロポーザル(提案)方式で公募する函館アリーナ(仮称)の整備推進費230万円を盛り込んだ。

 このほか、来年度から函館ハーフマラソンの参加者を4000人規模に倍増するためのコース変更経費として283万円を計上したほか、東日本大震災を受け、消防団員の公務災害補償などの共済基金を積み増しするため、2935万円を盛り込んだ。介護保険事業特別会計では震災の避難者向けの介護サービス支援事業費として341万円を計上した。

 条例の一部改正では、地方税法の改正に伴い、市税の不申告に対する過料3万円以下を10万円以下に引き上げる。たばこ税の不申告の過料規定も新設し、寄付金の税控除の対象も現行の5000円以上から2000円以上に引き下げる。(森健太郎)