2011年8月6日 (土) 掲載

◎汗まみれ迫力のけいこ 九重部屋の夏合宿始まる

 【福島】町出身の九重親方(元横綱千代の富士)率いる九重部屋の夏合宿が5日、町福島の横綱記念館で始まった。土俵に力士の体と体がぶつかる音が響き、館内は熱気に包まれた。早朝から多くの町民や相撲ファンが見学に訪れ、汗まみれになりながらぶつかりげいこをする姿を見守った。合宿は20日まで行われる。

 今年の合宿には、部屋頭の十両千代の国をはじめ10人が参加。九重親方は6日に来町し合宿に合流する予定で、この日は佐ノ山親方(元大関千代大海)がけいこをつけた。力士らは午前7時すぎから館内の土俵でけいこを開始。ぶつかりげいこをこなし、昼前までみっちりと体を動かした。

 岩見沢市から訪れた前田忠義さん(60)は「力士はテレビで見るより迫力があり、体も大きい。気迫が伝わってきた」と話していた。

 力士らは13日に町内で開かれる「やるべ福島イカまつり」にも参加し、綱引きなどのゲームで町民と交流を深める。けいこは午前8時から同10時ごろまで見学することができる。入館料大人500円。高校生以下250円。18日は休み。  (松宮一郎)



◎10カ国の音楽踊り華やかに はこだて国際民俗芸術祭開幕

 世界の伝統舞踊や音楽などで交流を深める「2011はこだて国際民俗芸術祭」(一般社団法人WMDF主催)が5日、函館市内で開幕した。主会場の元町公園(元町12)には大勢が来場し、早速盛り上がりをみせている。

 今年で4回目の国内最大級の民俗芸術祭。今回は東日本大震災を受け、海外アーティストの来日が危ぶまれたが「オープン ジャパン!」を合言葉に、10カ国のアーティストが最終日の10日まで共演する。

 初日は、元町公園特設会場で韓国の公演団やオーストラリアの歌手らがステージを披露。通り雨で夕焼け空に巨大な虹が出現する自然美の“演出”もあった。  会場にはパエリアやカレーなど多国籍料理の露店が並び、好評だった。元町公園会場の開演は連日午後5時〜同9時半(8日を除く)。

 神戸市の小坂悠祐君(6)、祥悟ちゃん(3)兄弟は昨年に続いて来場し、「今年もここに来るのを楽しみにしていた」、母の淳子さん(38)は函館出身で「この芸術祭が大好き。涼しい函館の夏が熱気に満ちる」と話していた。

 8日午後6時からは、函館市民会館(湯川町1)で特別公演を開く。前売り一般1500円、学生1000円。当日券は各500円増し。

 主催者側は、特別公演やワークショップなど関連イベントに入場できる「市民スポンサーパス」(2000円、小学生以下500円)購入の協力を呼び掛けている。同パスの益金は同芸術祭の運営資金に充てる。 (田中陽介)



◎太平洋セメント上磯工場フル稼働

 【北斗】太平洋セメント上磯工場(北斗市谷好1、神長俊樹工場長)は本年度の生産計画を見直し、通年でフル稼働体制とすることを決めた。同社の大船渡工場(岩手県大船渡市)が東日本大震災で被災し、各地の工場に生産量が分配されたためで、当初計画と比較し46万d増の386万トンと上方修正した。過去、最も多かった2005年度の391万トンに匹敵する数量で、東北地方向けの出荷量も増加している。

 上磯工場には、セメント焼成用のロータリーキルンが3基あり、年間最大生産量は390万トン。年度当初は11月まで3基体制で生産し、12月〜来年3月までキルン1基を調整休止する予定だった。震災を受けて、点検期間を短縮したり、輸出計画も見直し、国内向けの出荷体制を強化している。

 東北の太平洋側の供給拠点であった大船渡工場は、2基のキルンのうち、1基と主要な生産施設が津波被害を受け、現在、11月の生産再開に向けて復旧作業中。被害を免れたキルンでは、大船渡市や陸前高田市で撤去されたがれきの焼却を行っており、同工場が本格的にセメント生産を再開する時期は未定という。

 そのため、東日本最大の生産拠点でもある上磯工場から宮城県内の出荷基地に向け、これまでに約8万5000トンの製品を出荷。路盤補強を行うための地盤改良材の割合が多いという。さらに大船渡で生産していた使用時の発熱量が少なく、ひび割れしにくい特殊セメント「低熱セメント」も品質の確保ができ次第、上磯工場で生産を開始する。

 現時点で、今後の震災復興にかかわる需要の増加は未知数だが、木伏正克業務部長は「東日本の生産拠点として上磯工場の担う役割は重い。峩朗(がろう)鉱山からの原料供給を含め、安定生産に努めたい」としている。 (今井正一)


◎汚染疑いの牛問題 収拾見えず広がる懸念 

 放射性セシウムに汚染された疑いのある牛肉の流通に歯止めがかからない。汚染の疑いのある牛肉は函館市内の販売店や飲食店にも拡大。5日現在、計8店で約167キロが提供され、その大半が消費されたとみられる。食べても健康に影響するレベルではないが、生食のユッケによる集団食中毒事件もあって牛肉の安全性に関心が高まる中、対応に追われる販売店では消費者の「牛肉離れ」への懸念も広がり、事態は収束の兆しが見えない。

 「お客さまに販売してしまった責任はあるが、(稲わらを与えていない)証明書もあったので防ぎようがなかった。ある意味では店も被害者。とにかくこの問題を一日も早く収拾させてほしい」。汚染の疑いのある牛肉を販売した市内の販売店の担当者は対応に苦慮する胸の内を吐露した。

 道などが7月26日、放射性セシウムを含む稲わらを食べた宮城県産肉牛の一部が市内で販売されていたのを公表して以来、次々と汚染の疑いのある牛肉の流通が判明。これまでに宮城県産4頭、岩手県産3頭、茨城、新潟県産各1頭の肉の一部が5月2日から7月23日までの間に市内6販売店、2飲食店で提供された。道南では北斗市や乙部町、森町、福島町でも一部流通が確認されている。

 函館市内のスーパーの担当者は「(稲わらを与えるような)和牛はもともと取り扱いが少なく、売れ筋は安価な交雑種の『国産牛』が中心。影響はほとんどない」と静観。一方、別の店では「道産牛でも以前は1日2〜3万円の売り上げがあったが、いまは1日1万円前後と半分以下に落ち込み、価格下落も進んでいる」と買い控えを懸念し、小売店によって温度差もみられた。

 市内で販売された汚染の疑いがある肉はほとんどが在庫がなく検査ができないため、放射性物質の含有量は不明だ。ただ、同じ個体識別番号の牛で、他都市で在庫が見つかった一部の肉については道立衛生研究所(札幌)が検査し、いずれも国の暫定規制値(1`当たり500ベクレル)を大幅に下回っている。

 市立函館保健所によると、国内では食品や大気中からも自然放射線を年間平均1.5ミリシーベルト受けているといい、「喫煙や大量飲酒による発がんリスクは、1ミリシーベルトの放射線被ばくの約1000倍に当たる。生活習慣を改善する方がはるかに効果が大きい」と説明する。

 今回の問題はBSE(牛海綿状脳症)問題を受け、2003年に導入された牛の個体識別番号によって処理業者や販売業者など流通ルートが追跡できた。同保健所は「この番号のおかげで被害拡散が一定程度食い止められた。これを機に市民も自分の口に入る食べ物の流通過程や安全性について関心を持つきっかけにしてほしい」としている。  (森健太郎)


◎子ども手当の廃止…相次ぐ制度変更 親は不満

 民主党政権の目玉政策「子ども手当」の廃止と児童手当の復活が、民主、自民、公明の3党合意で決まった。支給額の変更や所得制限などが盛り込まれたが、函館市内の子育て世代からは支給額の変動はもとより、制度が頻繁に変更されることに不満を示す声が出ている。各自治体でもシステムを変更する必要が生じ、事務量の増加が懸念材料となっている。

 現行の子ども手当は9月で失効するため、今国会で特別措置法案を成立させ、来年3月までは暫定的に制度を継続させる。10月以降の支給額は現行の月1万3000円から、3歳未満と第3子以降(3〜12歳)は月1万5000円、3歳から中学生は月1万円へと変更する。新年度から所得制限を設け、対象基準を税引き前の年収960万円程度以上(夫婦と児童2人世帯)とする。

 市子ども未来室子育て支援課によると、函館市では、今年6月に4カ月分を支給した実児童数約2万6500人を基準とした場合、支給額が上がるのは3歳未満の約4800人、第3子以降の児童約1800人となる見通し。

 子育て中の母親からの意見はさまざま。市内大森町の主婦、長谷川淳子さん(37)は「実施するならするで、しっかりとやり通してほしい。制度も平等にすべきでは」と、ころころ変わる国の対応を批判する。一方、7歳の子どもを抱える市内石崎町の女性(42)は「国の予算にも限りがあるので仕方ない。以前の児童手当は月5000円だったので、何もなくなるよりはいい」と理解を示す。

 これまでの一律支給から、年齢や年収で額が変わる方式となるため、市は所得制限の対象となる世帯などの試算を始めている。また、児童養護施設で暮らす子どもの分は、これまで道の「安心こども基金」で対応していたが、10月以降は市の対応となるとみており、市子育て推進課は「市民への周知とシステム変更が必要になる」と話している。 (千葉卓陽)