2011年8月9日 (火) 掲載

◎市内AED設置は? 公立学校は完備、幼保は未設置

 元サッカー日本代表の松田直樹選手が練習中に心筋梗塞で倒れ、亡くなったことを受け、AED(自動体外式除細動器)への注目が高まっている。函館市内では市立の小中学校、高校はすべて設置しているが、幼稚園や保育園は未設置。スポーツ施設でも一部に設置されていないケースもある。災害同様、備えあれば憂いなし。市内の設置状況を探った。

 AEDは停止状態の心臓に電気ショックを与え、正常な働きを取り戻す小型の医療機器。自動音声で使い方の手順を指示するため、医師など専門的な知識がない人でも扱うことができる。今回、松田選手が倒れた際に近くにAEDがなかったことから、その必要性が叫ばれている。

 市立函館保健所によると、市内では2003年に市総合保健センター(五稜郭町23)に第1号が設置されたの皮切りに、市内の公共施設には計130基が常設されている。同保健所保健企画課は「1基購入するのに30〜35万円かかり、全施設に設置するのは容易ではない。一時期は寄付も多かったが…」と話す。

 市教委や市福祉部によると、市立の学校では函館高校に3基あるほか、08年に中学校26校に、10年に小学校46校に全校配備した。一方、幼稚園2園や公立保育所7園にはいずれも設置されていない。これまでは「より激しい運動を伴う順番で」(市教委保健給食課)、「危険度の高い高齢者向け施設を優先的に」(同部)設置を進めてきたという。

 また、多くのスポーツ施設にもAEDは設置されているが、千代台公園弓道場(千代台町)や西桔梗野球場(西桔梗町)、根崎公園ラグビー場(湯川町3)などは未設置。市教委スポーツ振興課は「費用面に加え、管理者が常駐していない施設や、防犯管理上、設置場所がないケースもある」として完備の難しさを説明する。

 これまで各施設で実際に使用したケースはないが、「緊急時に誰でも確実に使えるよう一人でも多くの人が使用法を習得する必要がある」(市教委)とし、今後、必要に応じて消防などによる講習会を開く方針。ただ、今後の設置については各所管とも「検討課題」と述べるにとどまる。

 市内のスポーツ関係者の関心は高い。根崎ラグビー場を利用する函館ラグビースクールの薮越敏広校長(74)は「財政的な厳しさもあるが、市も協会も早急に対応しなければならない。器具を使いこなせるよう指導者が講習を受けるのも大事」と指摘。西桔梗球場を管理する函館軟式野球連盟の山内憲治副理事長(64)は「人命に関わることなのでAEDは絶対に必要。市にも設置の要請をしているが、寄付してくれる人がいれば」と話していた。(森健太郎、小林省悟)



◎イカ放射性物質「不検出」

 福島第一原発事故を受け、函館水産連合協議会(石尾清広会長)は8日までに、函館市前浜と道南噴火湾で捕れたスルメイカ(マイカ)の放射性物質検査を独自に行い、放射性ヨウ素、セシウムとも検出されなかったことが分かった。今月中にもう一度、同じ漁場で捕れたマイカを検査する。これとは別に、道と道いか釣漁業協会(札幌)も今月から道南太平洋産マイカの検査を行っており、二重の安全性が確認された。

 同協議会は、函館魚市場や函館水産物商業協同組合など水産関連10団体で構成。卸、加工、小売りと幅広い業種がそろうことから、消費者に安全な食品を提供しようと、独自検査をすることを決めた。

 7月下旬に冷凍イカ2検体(約2キロ)を青森県薬剤師会衛生検査センター(青森市)に送り、調べたところ、結果は「不検出」だった。検査結果は直ちに構成団体に知らせ、周知を図った。

 検査費用や送料など経費はすべて同協議会が負担する。

 関連して同協議会は同日までに、大間原発(青森県大間町)の建設中止を求める要望書を工藤寿樹市長あてに提出。重大事故により「水産業だけではなく、観光業や市民生活に甚大な影響を与え、函館が壊滅する」(同協議会事務局)とし、同原発への反対姿勢を明確にした。(山崎大和)



◎大島中を松前中に統合

 【松前】町教委は8日、生徒数の減少が続く大島中学校を、2015年4月に松前中学校に統合する町立小・中学校適正配置計画を決定した。今後さらなる生徒数の減少が予想され、学習環境の向上を図ることが理由。13年4月に館浜と松前、白神小学校の3校を松城小学校に統合することもすでに決まっており、今回の計画決定で中学校1校、小学校3校の体制になる。

 町教委は昨年1月に計画策定に着手し、町内各地区で説明会を開き、統合への理解を求めてきた。今年3月に保護者や地域住民の理解が得られたとして、館浜小など3校を松城小に統合することを決定。中学校については統合に慎重な意見が上がったことから、引き続き説明会で合意形成を図ってきた。

 町教委は、町内の児童、生徒の減少が今後も続き、小中学校の小規模校化が加速すると予測。計画では統合のメリットとして、多様な教育の展開とコミュニケーション能力の育成を図り、部活動の種類の限定化などの弊害を解消することなどを挙げている。

 中学校統合に向け、13年に統合準備委員会を立ち上げるほか、受け入れ校の松前中の校舎の老朽化、耐震化に対応するため、耐力度調査を実施し、改築もしくは大規模改修を行う。

 一方、小学校については、大島小と小島小は現行どおりとし、松城小の環境整備に着手するとした。また、今後の検討事項として@スクールバスの運行A教育課程の円滑な編成B廃校舎の後利用—などを挙げた。

 森定勝廣教育長は「地域住民の学校への思いや統合への不安があったが、子どもたちの将来を見据え、地域にも理解が広がった。教育環境をしっかり整えていきたい」と話している。(松宮一郎)


◎HaKoCa「ポイント」で虐待防止支援

 タウン情報誌「jam函館」を発行するユウキ広告企画(函館市鍛治2、川崎啓太社長)はこのほど、虐待などで孤立した子どもたちを支援しようと、ポイントカードシステム「HaKoCa(ハコカ)」を活用した募金活動を始めた。付与ポイントの一部が開設した基金に自動的に寄付されるシステムで、集まったポイントは現金化し、一定額に達した段階で、要保護児童対策を行う団体に寄付する。同社は「未来を築く子どもたちのために協力を」と呼び掛けている。

 同社は、全国展開をしているポイントシステム管理運営会社「クラブネッツ」(東京)と連携し、函館市内の店舗でも使えるポイントカード「jam—ca(ジャムカ)」を運営している。

 以前から児童虐待防止に対する取り組みもしていて、その一環として「函館未来創造基金」と称した基金を開設し、ポイントシステムを活用した支援活動に乗り出した。

 ハコカのシステムは、提携店で利用すると、付与されたポイントの50%が自動的に同基金に寄付される。1ポイント当たり0・5円で換算する。

 クラブネッツの加盟店約8000店舗のほか、函館市内、近隣市町の飲食店やパン屋など約30店でも利用できる。

 川崎社長は「地元メディアの責任として虐待防止につながる情報を流通させる取り組みを進めていきたい」と語る。

 ハコカは同社、加盟店で作ることができ、詳細は公式サイトhttp://www.jamweb.jp/hakoca/

 問い合わせは同社TEL0138・55・0800。(鈴木 潤)


◎世界の多彩な音色 市民会館に響く「はこだて国際民俗芸術祭特別公演」

 10日まで函館市内で開催中の「はこだて国際民俗芸術祭」特別公演が8日夜、函館市民会館で開かれた。国内外の音楽の芸術家が唄声や演奏、踊りなどを披露し、国境や言語などを越えた一体感あるステージで大勢の来場者を楽しませた。

 「大地の唄声」「『地球市民』の唄が聞こえる」をテーマに、オーストラリアやノルウェー、ケニア、セネガル、日本のアーティストがステージに立った。

 オーストラリアで活躍するアイドル歌手・マーガレット・ロードナイトさんは弾き語りで力強く歌い上げ、大きな拍手を受けた。アコーディオン、ギター、チェロのアコースティックトリオ「ザッハトルテ」(京都)は、演奏の合間に手品を披露し、すてきな音色とともに観客の笑顔を誘った。

 祖父母と来場した網塚萌さん(7)と藤本月菜(るな)さん(8)は「アコーディオンが好きになった。音楽を始めたいという気持ちにもなった」と目を輝かせていた。

 同芸術祭は9、10両日も午後5時〜同9時半まで、主会場である元町公園(元町12)などで行われる。

 入場無料だが、主催者側は同芸術祭の運営を支える「市民スポンサーパス」(2000円、小学生以下500円)の購入の協力を呼びかけている。(田中陽介)