2011年9月11日 (日) 掲載

◎久々バル酔いしれ はしご酒満喫

 函館市内の西部地区をスペインの立ち飲み居酒屋「バル」に見立て、参加店舗の食べ歩きを楽しむ「函館西部地区バル街」(同実行委主催)が9日、同地区で開かれ、大勢の観光客や市民らでにぎわった。

 2004年4月から毎年春と秋の2回開催していて今回で16回目。前回は東日本大震災の影響でチャリティーイベントに変更したため、本格開催は昨年9月以来、1年ぶり。今回はレストランやバー、居酒屋など65店が参加し、西部地区以外にある店舗や上ノ国、松前町、東北からも出店した。

 各店では、専用のチケットを出すと、特別に用意したピンチョス(つまみ)と飲み物を味わうことができ、職場や友人同士のグループがマップを片手に参加店の“はしご”を楽しんだ。

 また、末広町のアクロス十字街前では、生ハムやチーズ、ワインの振る舞いサービスが行われ、100メートル以上の長い列ができる盛況ぶり。仲間同士がワイングラスで乾杯する光景が見られた。

 このほか、フラメンコのライブや公民館での音楽コンサートなど協賛イベントも多彩に行われ、チンドン屋パフォーマンスで地区を練り歩いた長谷川一座(青森県弘前市)の長谷川清一さん(62)は「市民の方に懐かしさを感じてもらえれば」と盛り上げに一役。

 友人同士という函館市内の金丸恵さん(39)と加藤益美さん(39)は「久々の開催なので楽しみにしていた。バルの常連店を中心に思い存分飲みたい」と言葉を弾ませ、静岡県富士市の深沢悠里さん(29)は「地元のバルイベントに携わっているので視察を兼ねて来た。自分も楽しみながら参考になるものを吸収したい」と話していた。

 10日は午前10時から五島軒本店(末広町4)で、バル街を参考にした全国各地の飲食イベントを行う関係者が集い、バルまち会議を初めて開く。(鈴木 潤)



◎木古内町の大森町長が4選出馬表明

 【木古内】木古内町の大森伊佐緒町長(58)は9日に開かれた町議会第3回定例会で、来年4月の任期満了に伴う次期町長に4選を目指して出馬する意向を表明した。

 平野武志氏の一般質問に答えた。大森町長は「『町財政の健全化』『保健・医療・福祉の充実』『北海道新幹線を活用したまちづくり』の施策に全力で取り組み、課題解決にまい進してきた」とこれまでの3期の実績を強調。

 「残された任期をしっかりと務めていく」とした上で、「新幹線時代を迎えるに当たり、数々の課題にこれまで以上に全力で取り組んでいきたい」と4選への決意を述べた。

 大森氏は就任後、町財政の健全化に着手。医療・福祉の充実を掲げ、老人保健施設の建設、国保病院の改築などを行った。また、2015年度の北海道新幹線開業を見据え、木古内駅を拠点とした渡島・桧山9町連携による広域観光を推進している。

 大森氏は同町出身。銀行員、会社社長を経て、2000年に町長選に初出馬し初当選を果たした。現在3期目。次期町長選では、今のところ大森氏以外に出馬の動きはない。(松宮一郎)



◎「義援船に感謝伝えたい」岩手県久慈市立荷軽部小

 岩手県久慈市立荷軽部(にかるべ)小学校(小保内=おぼない=悟校長、児童16人)の5、6年生5人が修学旅行で15、16の両日来函し、東日本大震災で被災した同市漁協に磯舟228隻を無償提供した函館の漁協にお礼をする。市内5漁協(函館市、銭亀沢、戸井、えさん、南かやべ)を代表し、函館市漁協(橘忠克組合長)が対応。子供たちは義援船を通し両市の絆を再認識する。

 同校によると、修学旅行は1泊2日の日程。子供たちは両市に共通する漁業をテーマに事前学習を重ね、函館から義援船が贈られたことを知った。今月6日には、同校で学習会が開かれ、3年生以上10人が久慈市漁協と同市林業水産課の職員から、同市の水産業の現状や津波被害の状況、義援船が贈られた経緯などについて説明を受けた。義援船提供のきっかけとなった77年前の函館大火の際、久慈市が函館市へ義援金を届けたことも紹介された。

 児童の中に漁師の子供はいないという。小保内校長は「子供たちから『義援船をもらったお礼をしたい』という声が出てきて非常にうれしく思った。子供たちの心を育てる良い機会。久慈と函館の漁業の違いもしっかり学んできてほしい」と話す。

 児童は15日午後、JR函館駅に到着後、市漁協へ向かう。小田島水産食品(弁天町)も訪れる予定。

 また、16日には久慈市立夏井中学校(斉藤真理子校長、生徒79人)の3年生26人も、修学旅行の一環で義援船のお礼のため函館市漁協を訪問する。同校では体験学習として、生徒が実際、義援船を使ったホヤやウニ漁を手伝った様子を収めたDVDも作製している。

 義援船をめぐっては7月下旬、久慈市の山内隆文市長と同市漁協の皀(さいかち)健一郎組合長ら関係者6人が来函。函館市役所や5漁協を訪れ、最大限の謝意を示した。

 同市では、津波で市内登録漁船数の93%に当たる575隻が失われた。義援船は、6月上旬に函館から現地へ運ばれた。(山崎大和)


◎大間原発「安全対策は付け焼き刃的」

 函館市議会第3回定例会は9日から一般質問が始まり、5氏が登壇した。工藤寿樹市長は、建設中断中の大間原発(青森県大間町)が、福島第一原発事故を受けて行うとする安全対策に対し、「今回のケースだけを踏まえた付け焼き刃的な対策で、本当の意味での安全対策がまだまだ行われていない」と述べ、改めて無期限凍結を求める姿勢を強調した。併せて、北電泊原発3号機のプルサーマル計画をめぐる「やらせメール」問題に対して遺憾の意を示した。

 紺谷克孝氏(共産党)の質問に答えた。

 工藤市長は30日に大間原発を初視察。高さ3メートルの防潮壁設置や、高台への非常用発電機設置などの安全対策に関し、事業者の電源開発(東京)から説明を受けた。

 同市長はその上で「津軽海峡を挟み、改めて函館との距離が大変近いと感じた」と所見を述べるとともに、「使用済み燃料を保管する貯蔵用プールが20年後には満杯になるという状況を考えると、果たして本当に万全なのだろうかと思う」と懸念を示した。

 また、北電が08年に後志管内岩内町で行ったシンポジウムでのやらせ問題に関し、紺谷氏が「大間もプルサーマル計画の中核を担う」として見解を求めたのに対しては「世論操作を行ったということであり、あってはならないこと。大変遺憾に思う」と述べた。

 同市長はまた、本年度に配分される地方交付税額が当初予算から7億8900万円少なかった事態を受け、本年度当初予算で22億円が計上された退職手当債(赤字債)について、原則借り入れるべきではないとしながらも「実施可能な対策を講じ、来年度の財政フレームを視野に入れながら総合的に判断したい」と述べ、借り入れに含みを残した。佐古一夫氏(市政クラブ)への答弁。

 このほか斉藤佐知子氏(民主・市民ネット)、工藤篤氏(市民クラブ)、茂木修氏(公明党)が質問に立った。(千葉卓陽、後藤 真)


◎「福祉避難所」指定へ

 函館市は、災害時に高齢者や障害者らを受け入れる「福祉避難所」の設置に乗り出す。現在、市内に要援護者に対応した福祉避難所の指定はなく、9日の定例市議会の一般質問で、川越英雄福祉部長が「関係機関や民間施設などと早期指定に向け協議したい」と述べた。

 斉藤佐知子氏(民主・市民ネット)の質問への答弁。

 福祉避難所は、一般の避難所での生活が困難で、介護が必要な高齢者をはじめ、障害者や妊産婦、乳幼児ら要援護者を受け入れる施設。市内には指定された施設がないのが現状で、避難所生活が長期化する場合に備え、その必要性が叫ばれている。

 市は災害時の要援護者への対応を庁内で協議する「災害時要援護者対策検討委員会」を年内にも開き、地域防災計画の見直しと併せて、指定先や運営方法のほか、必要な設備、人員などを検討する。川越部長は「緊急度や要援護者の程度に応じて、段階的な指定配置が望ましいと考えている」との認識を示した。(森健太郎)


◎企画・再生への道 東日本大震災から半年A 産業…市民の支援大きな力に

 東日本大震災で甚大な被害があったものの、ボランティアなどの力で早期に函館の“顔”を取り戻した函館朝市。一方、徐々に施設機能が回復し、復旧の手応えが感じられる渡島、桧山の水産業。みえてきた明るい兆しに、さらなる努力、支援を訴えている。

 1年で最大の繁忙期となる8月、販売員の声に張りが戻った函館朝市。「正直、予想外だったが、お客さんは例年並みに戻ってきていて安堵(あんど)している。市民から頂いた復興支援の力は大きかった」。函館朝市協同組合連合会の井上敏広理事長(63)は振り返る。

 震災の津波で大きな被害を受けた函館朝市は、市民ボランティアなどの協力を得て、多くの店舗が4月に営業を再開。当初の観光客数は“自粛ムード”の影響もあり、前年の約30%と激減したが、ゴールデンウイークは道内客で活気付き、7月下旬からは本州からの客も大勢戻ってきたという。

 井上理事長は「ある食堂は8月の多い日で何百人も来客があった。市や企業、市民団体の復興支援は大きな力になり、我々の心は確実に前を向いている」と語る。

 函館駅ニ商業協同組合では、4月の売り上げが前年同期比70%減にまで売り上げが落ち込んだ。藤田公人理事長(57)は「観光客減の時、函館市民も大切なお客様ということを教えてくれた。これからは市民へのPR活動や、もてなしも大切にしていかなければ」と指摘する。

 10月14〜16日には「全国朝市サミット2011in函館」を地元としては10年ぶりに開催する。井上理事長は「道内外に函館の顔≠より発信できる好機ともいえる。たくさんの支援を糧にいつも以上に、精いっぱい観光客を出迎えたい」と誓う。

 秋の連休が終われば、冬に向けて閑散期を迎える。ほとんどの店舗は今春、補修に多額の費用が掛かった。この夏の客足は、あくまで例年並みの回復にとどまり、マイナス分を補うまでにはなっていない。厳しい資金繰りを抱える中、「どれだけ客さんが来てくれるか、心配だが頑張らなければ」と各店は気を引き締める。

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 「養殖施設の復旧と並行して9、10月は分散作業(ホタテの稚貝から成長のいい物を選別する)が本格化する。少し先がみえてきた」。日本を代表するホタテ産地・八雲町漁協(大林弘志組合長)の幹部は復旧への手応えを感じ取る。

 震災による同町の漁業被害は道内最大の約72億円。内訳はホタテ養殖施設が約33億円、養殖物が約39億円。震災後は施設損壊のほか、稚貝や成貝の多くが流失し、組合員はぼうぜん自失の日々を送った。現在はロープやアンカー、かごなどの設置を進めており、施設復旧は八雲町漁協が7〜8割、落部漁協(碇貞一組合長)が5割まで進み、漁師も明るさを取り戻しつつある。ただ、ロープやかごなど資材の納品が遅れており、震災の影響も残っている。

 同町のホタテ水揚げ高は、水産業の中では最も多い約40億円に上り、耳づり作業などで収入を得る町民も多い。同町水産課の横山隆久課長は「ことしは当てにしていた耳づりの収入が入らず、街中も不景気になった。水産業が元気になって1日も早い復旧を望む。国の復旧事業が次年度以降も継続することで、地元は頑張れる」と中長期的な対策の必要性を訴える。(長内健、山崎大和)