2011年9月13日 (火) 掲載

◎未来大がギネスに挑戦、100時間 歩けロボット!

 公立はこだて未来大学(中島秀之学長)で12日、「受動歩行ロボット」の連続歩行ギネスチャレンジがスタートした。16日午後5時半までの連続100時間歩行を目指す。

 同ロボットは複雑系知能学科を専門とする三上貞芳教授の研究室学生が7年前から開発。これまで2足歩行ロボットとして一般的とされてきたASIMO(アシモ)などはモーターなどを搭載し、転ばないようにあらかじめプログラミングされているが、同大が開発するロボットは外部動力を使わず、重力と慣性力のみで歩行ができるように設計。この受動歩行システムは、省エネかつ軽量でコストを抑えることができ、次世代の2足歩行ロボットの原理として世界的にも注目されている。これまでの受動歩行ロボットの連続歩行記録は、名古屋工業大学の佐野明人教授を中心としたチームによる13時間45分(2009年ギネス認定)。今回は同記録を大幅に上回る100時間に目標設定した。

 現在、未来大では大学院修士1年の力石直也さん(23)と4年の菅原学さん(22)のほか、研究協力として大学院修士2年の佐々木啓太さん(24)が開発に関わる。5月に岡山で行われた学会で、佐野教授から「頑張ってさらなる記録を作ってほしい」と激励を受けたことから、ギネス記録申請に向けて準備を進めてきた。

 力石さんは「受動歩行の仕組みは、人間の2足歩行の分析にも役立てることができ、価格や歩行時間など現在抱える課題の解決も期待できると思う。このシステムを応用して楽に安定して歩ける被介護者用の靴の開発も進めたい」と意欲。佐々木さんは「長年引き継いできた研究開発で、達成すれば未来大初のギネス記録となるので嬉しい」と笑顔を浮かべていた。(堀内法子)



◎25日に石巻市でバル街、函館の飲食店も協力へ

 東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市で25日、函館発祥の飲食イベント「函館西部地区バル街」を参考にした「ボンバールいしのまきV復興!!」が開かれる。2009年から始まったイベントで、被災した影響が大きく今年の開催が危ぶまれていたが、地域の活気につなげようと先月下旬に開催を決定。函館の飲食店も出店協力し、“バル仲間”を応援する。

 ボンバールは、石巻観光協会の食部会「知産地賞の会」(松本俊彦会長)主催。バル街同様、地域の飲食店をスペイン風の立ち飲み居酒屋「バル」に見立て、各店を“はしご”しながら楽しむ。  09年4月に開かれた函館のバル街を視察した会メンバーが魅力を体感し、ノウハウを吸収。その年、10年と2年連続で開催している。

 3月の大震災で、会場となる中心街は大きな被害を受けた。参加店の中には今だ営業再開のめどが立たない店も多く、開催するかどうかギリギリまで迷い続けたという。

 今回は約30店が出店する予定で、中にはテントを張って参加する店もある。函館からは同バル街実行委員長で、レストランバスクのオーナーシェフ、深谷宏治さんらが参加する。深谷さんは「まちづくりの視点で今後の交流を期待している。これから前へ進もうという気持ちを応援したい」と話す。

 知産地賞の会事務局を担当する小野寺夢津子さんは「まちの復興に希望を持ち、開催を決めた。函館バル街の皆さんに協力していただき、後押しに応えられるよう取り組んでいきたい」と話した。(鈴木 潤)



◎仕分けで廃止判定の交通機関乗車料金助成で市長「全市的な新制度を検討」

 函館市議会第3回定例会は12日も一般質問を継続し、5氏が質問に立った。この中で、今月3日に行われた外部委員による事業仕分けで廃止と判定された交通機関乗車料金助成制度について、工藤寿樹市長は「単純なる廃止の判定ではないと思っている」との見解を示したうえで「全市的に新たな制度を早急に検討したい」と述べた。

 斉藤明男氏(市政クラブ)への質問に答えた。改行 同事業は70歳以上の高齢者と身体障害者に市電・バスの半額・無料利用証を交付するもの。仕分けでは、利用実態調査が5年に1回程度で春、秋の年2回と少なく、2009年度の利用率が7.84%(市電を利用した高齢者)と、05年度から約3%減少している点などについて外部委員が不備を指摘し、現制度の再設計を求めていた。

 斉藤氏は「利用実績を踏まえた透明性の高いものに改めるべき」と指摘。同市長は「利用率などの理論値から助成額が計算され、乗車実績に基づかずに交通事業者に支払われている」とし、そのうえで「利用実績に基づいた方針に変更していくことが可能か検討したい」と答弁。さらなる高齢化を見据え、現制度が適用されていない旧4町村地区も踏まえた、全市的な新制度を検討するとした。

 また、市として仕分けでの数値目標を設定しているのか否かについて、中林重雄副市長は「委員に対してノルマを課すような形となり、判定を誘導する懸念がある」などとして否定するとともに、仕分けは今後10月中旬、11月下旬、来年2月下旬に予定していることを明らかにした。道畑克雄氏(民主・市民ネット)への答弁。

 このほか松宮健治氏(公明党)、本間勝美氏(共産党)、藤井辰吉氏(市政クラブ)が質問に立った。(千葉卓陽)


◎知内にカートレイン基地を、整備促進期成会設立

 【知内】民間が主体となって「カートレイン」基地(ターミナル)の誘致に取り組もうと、知内町内の団体は12日、「町カートレイン等基地整備促進期成会」を設立した。会長に町ふるさとづくり検討委員会の斉藤仁氏を選出。2015年度の北海道新幹線開業を見据え、全町を挙げた誘致運動に乗り出す。  JR北海道は、新幹線開業時の貨物輸送高速化の手段として在来貨物列車をそのまま新幹線に積み込んで運ぶ「トレイン・オン・トレイン」と、車ごと専用列車に積み込む「カートレイン」についての研究開発を行っている。

 これまでは行政主体でJR北海道などへの誘致、要望活動を行ってきたが、町内での誘致の機運を盛り上げるため、各町内会や商工会、商工団体、など町内27団体が参加し、民間主体の期成会を設立することを決めた。

 設立総会で斉藤会長が「4年後の北海道新幹線開業を好機ととらえ、民間も含め運動を盛り上げていこう。知内に誘致できたら、その経済効果は大きい」とあいさつ。大野幸孝町長も「町の活性化の最重要プロジェクトとして、町一丸となっての体制づくりが不可欠。積極的に活動しよう」と述べた。

 総会では規約と事業計画を承認、役員の選出をした。今後の事業として、10月の早い時期にJR北海道に対し、カートレインおよびトレインオン—の整備要請活動を行うほか、11月には町の自治制140周年記念事業と連動して、カートレイン構想をテーマとしたまちづくり講演会を開く予定。(松宮一郎)


◎企画・再生への道 東日本大震災から半年C 行政…防災計画の見直し急ぐ

 未曽有の津波被害を目の当たりにし、函館市内・近郊でも地域の防災体制を見直す動きが加速している。東日本大震災では避難方法や施設の耐震化など地域ごとの課題も浮き彫りになった。各自治体は国や道の計画見直しを待たずして、独自の改定作業を急いでいる。

 函館市は6月に市防災会議を開き、今回の震災対応を踏まえ、4年ぶりに地域防災計画の練り直しに着手した。会議では避難所までの経路が海沿いを通るために危険であったり、広報車による避難勧告が不十分だったりと、災害対応の不備が次々と浮かび上がった。

 市は防災無線を旧市内の一部にも配備する方針で、沿岸部の避難路なども再点検している。だが、国や道の見直し計画との整合性もあり、独自の対応には財源面を含めて限界もある。市総務課の武田忠夫参事は「単に計画を見直すのではなく、万一の際に機能する血の通ったものでなければ」と強調する。

 冠水被害が深刻だった若松地区では、函館湾に面した既存の防潮堤の増設に、10月上旬にも着工する。一方、市内の小中学校など30カ所の津波避難所のうち、震度6強の地震でも倒壊しない耐震基準を満たしている施設は14施設(46.7%)にとどまり、耐震化も急務となっている。

 ◇  七重浜から当別地区まで約20`の沿岸線を抱える北斗市。高台マップの作成や大津波を仮定した避難経路の構築など、いち早く独自の津波対策に乗り出した。市総務課は「沿岸部には住宅も多く、津波や高潮に対する危機感はもともとあった。地域での初動体制をどのように確立するかが大事」とする。

 今回の見直しでは津波の予測を現行の約4倍に当たる「10メートル」と想定。従来は国道228号から南側の沿岸部だった避難地区を、函館・江差自動車道の南側の区域にまで拡大した。同課は「過大な想定かも知れないが、道のシミュレーションがこの規模を下回れば、計画の見直しは進めやすい」と話す。

 市は避難経路となる道道や市道沿いに独自の標識を設置することを決め、年内にも整備する。また、標高差を一目で分かるよう海側から七飯町方向を見た立体的な視点で描いた高台マップの製作も進めている。

                      ◇

 震災以降、地域単位でつくる自主防災組織のあり方も問われている。函館市は2000年から町会単位で設立を呼びかけ、防災機材を無償で貸与しているが、8月末現在、市内全186町会で設立しているのはわずか62町会と全体の3分の1にとどまる。

 背景には組織設立が各町会の任意で、防災に対する町会ごとの温度差、担い手不足がある。また、組織を立ち上げる余力がない町会も多く、組織を立ち上げても活動が形骸化するケースも見られる。

 一方、町会の枠にとらわれずに地域全体で連携を進める動きもある。高丘町会が中心となり、教育機関や福祉施設などで昨年4月に組織化した「高丘町地域防災ネットワーク協議会」では、障害者や高齢者らの避難誘導など要援護者の支援対策を練っている。

 同町内には6つの福祉施設があり、要援護者が他地域と比べ多いため、高丘町会も各施設と防災協定を結ぶ。高丘町会長も務める同協議会の武下秀雄会長は「普段から顔見知りの関係になることがいざという時に大切。近隣の町会同士で連携し、機能を広域化することも必要では」と提起している。(おわり)(森健太郎、今井正一、鈴木潤)