2011年9月14日 (水) 掲載

◎海藻がバイオポリマーに、道立工技センターなど開発

 大量発生する厄介者のアオサなどの海藻から、バイオポリマーの一つである「ポリ乳酸」と「バクテリアセルロース(BC)」を作り出す技術を、道立工業技術センター(函館市桔梗町)や函館工業高等専門学校(函館高専、同市戸倉町)などの研究グループが確立した。ポリ乳酸はアオサのほか、チガイソ、コンブの商品にならない部分からも生成可能で、未利用海藻を有効活用するユニークな技術として注目される。

 文部科学省の事業「函館マリンバイオクラスター」(2009〜13年度)の一環。研究グループは同センター材料技術科の小林孝紀研究主査、函館高専の清野晃之准教授のほか、北大、東京工業大で構成、未利用海藻の有効活用を研究の主眼とした。

 緑藻類のアオサは、北京五輪のボート競技会場で発生するなど、世界的に異常増殖が問題化。夏の暑い時期には、道南の海岸でも発生が見られるが、食用には向かない。褐藻類のチガイソは道南近海にも生息、養殖コンブと同じ場所に生えて生育のじゃまをするため、駆除が必要。コンブは商品化の際に大きさを整えるなどして切り落とされる部分がある。

 生分解性プラスチックであるポリ乳酸は、一般的にトウモロコシなど穀物のでんぷんから作られる。ゴルフのピンや手術の縫合糸などとして市販されている。しかし、食料と競合するため、脱穀物≠ナポリ乳酸を生成することが課題。小林主査によると、海藻に含まれる多糖類に酵素と乳酸菌を加えて乳酸に変え、化学合成によりポリ乳酸に作り変える。チガイソ3キロから乳酸1`を生成することに成功、この乳酸1キロから800cのポリ乳酸ができるという。

 BCは微生物が作るセルロース。植物由来のため体に優しいが、新規物質で市販されてはいない。研究では褐藻類から生成できることを確認、緑藻類でも実験中。将来的には、創傷被覆剤や血管の接合剤などに活用が期待される。小林主査によると、海藻に酵素を加えて分解、それを微生物に食べさせる。微生物の体内で生成されたBCを、細胞を壊して取り出す。

 2年後の商品化研究を進めるが、コスト面の課題をクリアしなければならない。ポリ乳酸は海藻を使った場合、生成コストは1キロ当たり2000円程度。トウモロコシなどを原料としたポリ乳酸の販売価格は同数百円と、圧倒的に安い。

 小林主査は「脱穀物につながる技術で、食料と競合せずに医療を含む工業材料を作ることが可能。今後はコスト低減や、ポリ乳酸は高付加価値な医療用材料への応用を目指したい」と話している。(山崎大和)



◎子宮頸がんワクチン、函館の接種率72%

 函館市議会第3回定例会は13日、一般質問を継続し、5人が登壇した。市立函館保健所は、中学1年から高校2年の女子を対象に公費で全額助成している子宮頸(けい)がんワクチンの接種率が7月末時点で72%に上ることを明らかにした。工藤寿樹市長は「(事業の継続について)国の動きを注視しながら適切に対応したい」と述べた。

 池亀睦子氏(公明党)への答弁。

 同保健所健康増進課によると、ワクチンの公費助成は今年1月から開始し、7月末現在、対象者4718人のうち3397人が接種を受けた。接種は計3回必要で、各自治体では国と費用を折半する形で負担しているが、国の助成は本年度までとなっている。

 市内で1回でも接種を受けた人の割合は道内平均の31%に比べて高く、高2で79.7%、高1で67.6%、中3で72%。ただ、中学1年生についてはワクチンの在庫不足で7月20日まで接種を中断した影響で7%にとどまった。

 公費助成は道市長会などが国に対して定期予防接種化を要望し、国でも継続や延長を検討している。来年度以降の助成の継続について問われた工藤市長は「函館の接種率は高く、効果もある」と言及。同保健所は本年度内に3回の接種を終えるには、今月末が実質的な期限となるため、早期の接種を呼びかけている。  工藤市長はまた、来年度に子ども施策の関連部署を集約した「子ども未来部」(仮称)の設置を検討していることをあらためて示した。核家族化や少子化、児童虐待など課題が多い現状を受け、「出生から青少年まで、幅広い分野の施策を総合的に推進する体制が必要」と述べた。市戸ゆたか氏(共産党)、見付宗弥氏(民主・市民ネット)の質問に答えた。

 このほか日角邦夫氏(民主・市民ネット)、工藤恵美氏(市政クラブ)が登壇した。(森健太郎、千葉卓陽)



◎全盲の大平さん、ユニバーサルデザイン体験のツアーガイド企画

 北斗市総合文化センターで16〜18日に開かれる第6回北海道ユニバーサル上映映画祭に合わせて、函館市内で写真撮影や音楽活動に取り組む視覚障害者の大平啓朗さん(32)が、障害の有無を問わずに誰でも利用可能な「ユニバーサルデザイン」を体験するツアーガイドを企画した。視覚以外の感覚で景色を体感する観光プログラムもあり、大平さんは「普段では気付くことのない感覚を楽しんで」と話している。

 大平さんは一昨年6月から沖縄を皮切りに1年間、民泊しながら47都道府県を巡る1人旅を行った。旅先で撮影活動をしながら地元の人たちと交流を深め、その経験を糧に新たな分野での活動に意欲を見せている。

 今回のツアーガイドはその活動の一環で、「全盲の旅写心家と巡る4感で感じる函館ツアー」と称して、旅行会社の協力を得ながら企画した。

 大平さんは視覚以外の触覚や聴覚、嗅覚、味覚を研ぎ澄まして写真撮影を行っており、ガイドを通じてその感覚を少しでも体感してもらうことが目的。

 同映画祭は、視覚や聴覚があっても誰もが映画を楽しめるよう音声ガイドや字幕、要約筆記などを装備したユニバーサルデザインを取り入れている。大平さんは「映画祭の趣旨を観光にも応用した。視覚に障害があっても臭いや温度、風で心地よさを感じることができ、そのお手伝いができれば」と話す。

 ガイドは17日に行い、視覚、聴覚障害者、車いす利用者ら数人が参加する予定。映画観賞の合間に行うユニバーサルデザインを体験するワークショップを体験するほか、夜間には函館山を訪れ、夜景を楽しむ。函館山では参加者にアイマスクをしてもらい、視覚以外の感覚で風や音だけで景色を楽しむプログラムも用意し、「地上と頂との空気感の違いを感じてもらえれば」と話す。

 参加者は募集中で、参加費1人3000円。申し込み問い合わせはツーリストサービス北海道函館営業所TEL0138-22-7701。(鈴木 潤)


◎斎藤さん、たばこ消火具で特許取得

 函館市富岡町2の斎藤勝弘さん(66)が手掛けた、たばこ消火具がこの夏、特許庁から実用新案登録を受けた。たばこの火が消えた際に出る独特の臭いを防ぎ、再び同じたばこに火をつけて吸っても「新鮮な味わいを楽しめる」と評価された。斎藤さんは自宅の工房で商品づくりに取り組み、この秋から営業活動も本腰を入れて展開する予定で「愛煙家や禁煙を目指す人にとって重宝されるものづくりに励みたい」としている。

 この消火具は高い消臭能力を持つ、特殊剤を小形ポットに固め込んだもので、中央部の穴に火のついたたばこをそっと置くと10秒ほどで火が消える仕組み。たばこを押しつけて、フィルターを折らない限り、効果がある。斎藤さんは、建築業に携わっていた経験を生かし、体に無害な吸着剤や空気量の割合を計算。1年前から試作品をつくっては、知人や飲食店関係者に配り「1本のたばこを長く、大事に吸える。たばこ代が半分になった。禁煙に成功することもできた」という声も。

 周囲の反応に手ごたえを感じ、6月28日に実用新案を出願、8月17日に登録となった。商品名は「スピ—ル」で、楽譜の休符にちなみ「至福の一服を楽しんでももらいたい」と願いを込めた。

 斎藤さんは「この商品をまずは市内の有名土産店などで扱ってもらえるように売り込みを頑張りたい。また、この特許を活用した新商品づくりにも力を入れていきたい」としている。値段は1個1300円、自宅の工房で販売中。  問い合わせは斎藤さんTEL0138-41-6831。(田中陽介)


◎100歳以上、道南214人

 「老人の日」(15日)を前に、渡島総合振興局、桧山振興局、函館市は13日、本年度の管内長寿者(100歳以上)の概要をまとめた。道南全体では214人(女性187人)で、前年度比31人増(同28人増)。内訳は函館市を除く渡島が63人(同56人)、桧山が41人(同37人)、函館市が110人(同94人)となった。

 9月1日現在の取りまとめで、本年度中に100歳に到達する人には内閣総理大臣から祝状と記念品が伝達(各自治体で実施)される。該当者は渡島28人、桧山20人、函館市48人。

 最高齢は、男性は渡島が仲上仁市さん(木古内町)の106歳で道内5位に入り、桧山が非公表希望者(江差町)の102歳、函館市が川村沢蔵さんの101歳。女性は渡島が非公表希望の107歳、桧山が非公表希望者(せたな町)の105歳、函館市が太田嘉受子さんの106歳。

 桧山では、奥尻町の鎌田由雄さん、ミエさん夫妻(どちらも100歳)が管内初となる夫婦での100歳を達成した。

 道内全体の100歳以上は男性346人、女性1832人の計2178人となった。(山崎大和)