2011年9月21日 (水) 掲載

◎ペニーさん津軽海峡横断

 世界の名だたる海峡の単独遠泳に挑戦中のオーストラリアの女性スイマー、ペニー・パーフリーさん(49)が20日、津軽海峡縦断に挑み、コースを変更したものの14時間26分かけて成功した。夫のクリスさん(54)も挑戦したが、潮流が激しく棄権。地元関係者は「東日本大震災から復興へと向かう中で、地域を励まし、世界に日本の状況を伝える原動力になったと思う」と2人の勇姿をたたえる。

 ペニーさんは、この日午前4時8分に松前町白神岬からスタート。当初は海原を横断する形で青森下北半島・佐井村経由で戸井汐首岬をゴールする予定だったが、「潮の流れがすごすぎた」(関係者)ためコースを変更。津軽半島を目指し、午後6時34分、今別町の大泊漁港付近に上がった。すぐさま写真撮影に笑顔で応じ、スタッフと津軽海峡縦断成功の喜びを分かち合った。

 クリスさんは、午前6時11分に青森佐井村をたち、戸井を目指したが、太平洋と日本海、陸奥湾の3方向からの潮流がうず巻く難所で3時間進めず。巨大な流木なども目立ち「安全を優先し、リタイアする」とクリスさん自身が決断したという。

 遠泳開始3時間後には函館山、汐首岬を目視で確認でき、懸命に泳いだ。「素晴らしいスタッフと地元関係者、そして船頭さんのおかげで楽しく泳ぐことができた。機会があればまたチャレンジしたい」とクリスさんは話していた。

 クリスさんをサポートした荒川潤子さんは「夫妻の頑張る姿は多くの人に元気を届けてくれると思う。クリスさんは前向きなリタイアで尊敬したい」。遠泳の総括に当たった函館市戸井支所の斎藤章生支所長は「ご夫妻のチャレンジする気持ちが本当に心強く、いまの日本を何より励ましてくれるものとなった。企画準備に携わったスタッフの皆さまの努力にも敬意を示したい」と話していた。

 パーフリーさん夫妻は、世界7海峡「オーシャンズ・セブン」横断遠泳で、ペニーさんがすでにドーバー海峡やジブラルタル海峡など5海峡で成功を遂げ、津軽海峡のクリアで、残るはアイリッシュ海峡(アイルランド—スコットランド)のみとなった。

 夫妻は、24日まで道南に滞在し、東北被災地に足を運んでから帰国する予定という。(田中陽介)



◎渡島20年連続下落 基準地価 道南全地点で

 道は20日、7月1日現在の基準地価(本年度地価調査)を発表した。渡島管内の1平方メートルあたり(以下同)の平均価格は3万円で20年連続の下落。下落率は前年と同じ4・8%で、道南経済は東日本大震災の影響もあり、依然として厳しい状況を抜け出せないでいる。函館市内の商業地の平均価格は7万1600円で3年連続、住宅地の平均価格は3万9000円で14年連続の下落となった。渡島・桧山管内では、渡島76地点、桧山29地点の全地点で下落した。

 渡島管内の1平方メートルあたりの最高価格は、商業地が函館市本町7の21、第一マルカツビルで下落率9・8%の11万円。住宅地は同市本町29の11で同3・2%の7万5500円。

 同市内の商業地の下落率は6・4%。地域経済の低迷、郊外型大型店との競合から需要が減退、特に本町中心部では既存大型店の閉店の影響もあり、下落率が大きくなった。

 同市内の住宅地の下落率は4・2%。中心部、旧市街地は継続的な人口流出が進んでおり、郊外は大規模な分譲住宅の供給圧力を受け安値での取引が見られるなど、全地点で下落。渡島総合振興局は「市内は商業地、住宅地とも若干下落幅が縮まった。だが、プラス要素はない」(地域政策課)とする。

 同市周辺の平均価格は、北斗市の住宅地が2万7000円(下落率3・9%)、商業地が4万9000円(同5・8%)。七飯町の住宅地が1万9000円(同3・5%)、商業地が3万2500円(同5・8%)。その他では、木古内町本町160の1が下落率9・6%と全道で10番目となった。

 桧山管内の最高価格は、商業地が江差町中歌町59の2内の4万2000円(同5・6%)、住宅地が同町豊川町106の1外の1万7800円(同5・3%)。

 全道平均は、住宅地が1万8900円(同3・9%)、商業地が6万円(同5・6%)。道内唯一の上昇地点は旭川市神楽2の7の420の21で、橋の開通により需要が拡大、土地取引が活発化していることが要因。 基準地価は公示地価とともに、一般の土地取引の指標として活用される。(山崎大和)



◎「大間反対」足並みそろう

 【北斗】北斗市議会は20日の市議会定例会本会議で、「原子力発電所の安全対策の強化と新規原発の建設凍結を求める意見書」を全会一致で可決した。「国民的な理解が得られるまで、青森県の大間原発建設は無期限凍結」とする高谷寿峰市長の方針を後押しする形で、福島第一原発事故の一刻も早い事態の収束を求めるとともに、大間を含む新規原発の建設凍結を求めた。

 同趣旨の意見書は、函館市議会、七飯町議会が7月に可決済みで、大間原発建設工事の凍結に向けて、函館近郊3市町の首長、議会の足並みがそろった。

 意見書では「東日本大震災を受け、原発に対する市民の不安が高まっている」とし、「原子力発電所は何より安全性が最優先されるべきもので、国の規制責任が十分果たされることが重要。徹底した安全対策を早急に講じ、不安の払しょくに努めることは重大な責務」とした。

 その上で、▽大間原発や計画段階の原発は国民理解が得られるまで建設を凍結▽福島第一原発事故の徹底した検証結果を踏まえた安全確保に万全の対策を講じ、国民の不安払しょくに努める▽原子力防災対策の見直し▽再生可能エネルギーの開発・導入への支援措置|などを求めた。

 閉会後、高谷市長は「私の考えと同じ方向の内容でありがたい。今後、2市1町の枠組みだけではなく、渡島、桧山の他の自治体との連携拡大も必要」と話していた。(今井正一)


◎6年ぶりヒグマ出没警報

 道環境生活部は、ヒグマが好む木の実などの豊凶を基にした今秋のヒグマ出没予想を発表した。桧山管内では、ヒグマが好んで食べるミズナラやブナの実が並作から凶作と予想され、餌を求めて市街地周辺でも出没や捕獲が多発する可能性が全道的に高く、2005年度以来6年ぶりとなる出没警報を発表した。

 上ノ国町の北海道大学桧山研究林では、ミズナラとサルナシが並作、ヤマブドウが不作、ブナが凶作と予想されている。ミズナラやブナの種子が凶作だった2005年度には、餌を求めてヒグマが市街地や農地周辺に出没するケースが増加。管内では過去最高となる93頭が駆除された。

 管内では本年度、農地や市街地周辺などで年齢が若いヒグマの目撃情報が増加傾向にある。親子連れとみられる目撃情報も多い。4月には、上ノ国町で山菜採りの男性が若いヒグマに襲われて死亡する事故も発生。1990年に同町湯ノ岱で85歳男性がヒグマに襲われて死亡してから21年ぶりの死亡事故となった。

 各町でも「ヒグマの餌条件が悪い場合には、出没が多発する傾向にある」とし、市街地周辺では、ヒグマをおびき寄せる原因となる生ごみや農漁業廃棄物の管理徹底が必要と指摘。登山や山菜採りなどの行楽、農林業などでヒグマの生息域に近づく場合は、人身事故の防止にも注意するよう呼び掛けている。(松浦 純)