2011年9月27日 (火) 掲載

◎津軽海峡縦横断をサポート 年内にも支援団体設置へ

 津軽海峡を遠泳のメッカに—。国内外の遠泳愛好家が注目する、津軽海峡縦横断をサポートしようと、専門家らが遠泳支援団体のNPO法人「津軽海峡横断水泳協会」(仮称)の立ち上げに躍起だ。自治体や漁協など関係機関との協議を詰め、年内にも函館市内に拠点を置いた活動に本腰を入れたい考え。「津軽海峡は世界のスイマーがあこがれる海の一つ。的確な案内役としてサポートし、地域の魅力増大にもつながれば」と関係者は意気込んでいる。

 各地の海峡遠泳をコーディネートする「海峡横断泳実行委」(東京)の石井晴幸代表(58)が中心となって、支援団体発足への構想を練っている。

 津軽海峡は世界でも屈指の複雑な潮流で、遠泳成功には、ち密な計算と準備が欠かせない。石井さんは1975年から津軽海峡での遠泳活動を監督・案内する一方、世界各国でも調整役をこなし、国内外の遠泳仲間から津軽海峡横断への問い合わせを受けることも少なくないという。

 20日には石井さんが責任者となって、豪のパーフリー夫婦の津軽海峡遠泳をサポート。戸井支所や地元漁協、海上保安部、フェリー会社なども全面協力し「支援団体発足への手応えを感じた」と石井さん。

 遠泳活動を応援している吉田崇仁函館市議も「今後の関係機関との詰めに向けて前向きに協力したい。この海は水産物だけじゃなく、遠泳や観光面などにも活用できると思う」と語る。

 津軽海峡は、米国の「世界オープン・ウオーター・スイミング協会」が選ぶ世界の7海峡の一つで、石井さんによると、ドーバー(イギリス—フランス)やジブラルタル(スペイン—モロッコ)など6海峡には遠泳活動を支援する団体があるという。

 石井さんは「この9月の戸井合宿中にも『津軽海峡で泳ぎたい』と各国から10件の連絡があった。2014年まで予約でいっぱいで、支援団体が始動すれば柔軟な対応が可能になる。競技性に力を入れるのではなく、あくまでも津軽海峡を楽しんで泳ぎたいという愛好者のリクエストに応じたい」としている。(田中陽介)



◎縄文文化 肌で感じる「交流センター」1日オープン

 函館市南茅部地区に道内唯一の国宝「中空土偶」を常設展示する「函館市縄文文化交流センター」(臼尻町551)が10月1日、オープンする。周辺の92カ所の遺跡群で発掘された縄文時代の石器や土器など約1200点を展示。26日には報道機関や観光関係者向けの内覧会も開かれ、縄文文化を発信する新たな観光拠点として期待が高まっている。

 同センターは2009年10月に着工し、総事業費は6億7600万円。鉄筋コンクリート造り2階建てで、延べ床面積は1733平方メートルに上る。併設する道の駅「縄文ロマン南かやべ」には24時間利用できるトイレや、道路情報端末なども備える。

 外観は「縄文と現代をつなぐ時の流れをイメージした」(市教委)という流線形の木目のコンクリートが特徴。メーンとなる1階の展示室には自然と共生した縄文人が漁業や狩猟など日常生活で使っていた土器や石皿、漁網などを並べ、漆やヒスイなど交易品も数多く紹介している。

 「中空土偶」は照度や温度が管理されたコーナーにあり、「満月をイメージした」(同)天井からの柔らかなスポットライトの光が幻想的な雰囲気を醸し出す。このほか、亡くなった子どもの足形をかたどったとされる「足形付土版」など、命を大切にした縄文の精神を伝える展示室もある。

 2階の体験学習室では、市埋蔵文化財事業団の職員が講師となり、ミニチュア土器づくりや縄文ペンダントづくりができる。多目的スペースからは眼下に今年2月に国史跡に指定され、世界遺産の暫定リスト入りを目指す「垣ノ島遺跡」が広がり、その先に縄文文化を育んだ太平洋を望むことができる。

 26日の内覧会では、市教委文化財課の阿部千春参事が案内役を務め、生と死の循環をイメージした展示のコンセプトや出土品の歴史的価値などを解説。阿部参事は「縄文文化は日本人の精神の象徴。一人でも多くの方に日本の古き良き心を感じてもらい、縄文文化を核とした観光拠点としたい」と語った。

 視察した五稜郭タワーの中野晋常務は「南北海道の貴重な財産である縄文文化を分かりやすく紹介していて、外国人にも受け入れられそう。広域・周遊型の函館観光にとっても大きな弾みとなるのでは」と話していた。

 10月1日は午前11時25分からオープンセレモニーを行い、一般入場は同35分ごろから。入館料は一般300円、高校生や大学生、函館市外の小中学生は150円、市内の小中学生と幼児は無料。開館時間は午前9時から午後5時(11〜3月は午後4時半まで)。月曜休館。(後藤 真)



◎前市長に質問状送付へ 決算特別委

 函館市議会決算特別委員会(斉藤明男委員長)は26日、民生常任委員会所管分を審議した。国から受け取る介護給付費の事務処理を誤り、欠損金が生じた介護保険事業特別会計に関する質疑が相次いだ中、工藤寿樹市長は総括質疑で「なぜ昨年度中に整理しなかったのか、残念な対応だった」と述べ、前市長の対応を批判した。取材に対し、定例市議会終了後の今月中をめどに、前市長に対し対応に関する質問状を文書で出す考えを明らかにした。

 同特別会計は国からの交付金が1億6274万円少ない額しか交付されず、国が7割を救済したことで4882万円の欠損金が発生。本年度に入り、ソフトの更新を誤った委託業者と市で折半しており、市の負担分は職員厚生会のほか、特別職と前福祉部長らが自主的に寄付して補てんしている。

 これに対し、茂木修氏(公明党)は「本来は昨年度中に決着をつけるべきだった」と指摘、同じ状況にあった他都市との連携についてただした。中林重雄副市長は「明確な方向性は決まっていなかった。前市長と当時の副市長は残り3割を国に求める考えがあり、状況を調査していた」と答弁したが、茂木氏と吉田崇仁氏(市政クラブ)が総括質疑を求めた。

 工藤市長は「間違いを犯さない体制を構築し、起こったことに適切に対処すべき」と述べるとともに「前市長が決断も処理もしなかったことは遺憾に思う。何らかのメッセージがあってしかるべき」とした。同市長は取材に対し、「文書を出して答えをいただく必要がある。金銭的には解決したが、けじめが必要」と話している。

 委員会ではまた、9月の事業仕分けで廃止と判定された交通機関乗車料金助成について、市福祉部は昨年度の決算が、当初予算に対して284万円が残ったことを明らかにした。川越英雄福祉部長は「仕分けでの指摘を踏まえ、利用実績に基づいた全市的な助成方法を検討したい」と述べた。吉田氏、佐々木信夫氏(市民クラブ)、市戸ゆたか氏(共産党)への答弁。(千葉卓陽)


◎犠牲者の冥福祈る 洞爺丸台風事故

 【北斗】1954年9月26日に発生した洞爺丸台風事故の犠牲者をしのぶ慰霊法要が26日、北斗市七重浜の「台風海難者慰霊碑」で開かれた。全国各地から遺族や関係者70人が参列し、秋晴れの下、犠牲者の冥福を祈った。

 洞爺丸台風事故では、青函連絡船「洞爺丸」と4隻の貨物船が台風15号による突風や高波で沈没し、乗客・乗員1430人が犠牲となった。

 法要は、青函連絡船遺族会(渋谷武彦会長)と函館市仏教会、JR北海道、北斗市が中心となって毎年行っている。今年も函館市仏教会の僧侶が読経する中、慰霊碑前で参列者が焼香し手を合わせた。

 あいさつした渋谷会長は「大惨事を風化させず、遺族会のメンバーが元気なうちに次の世代に思いを伝えていかなければならない」、富樫淳次副会長も15歳で船員の父親を亡くした経験を振り返り「苦難を乗り越え、大きな幸せを求めずとも皆と同じ生活ができるようになった。東日本大震災で犠牲になられた方の手本だと思っている。毎年この日を苦難を乗り越えてきた日として供養を続けたい」と語った。

 佐賀県から毎年法要に参列する、唐島佳仁さん(60)は「ここに来ると、ほっと安らいだ気持ちになり、犠牲になった母親と弟、おばへの思いを落ち着かせている」。函館市美原の崎田トシさん(87)は「34歳の夫、6歳の長男、31歳の義理の弟を亡くしたときの絶望感は計り知れず、人前に出たり、笑うこともできなかった。いま長生きし、時を経てようやく振り返ることができる。来年も必ず元気で法要に来たい」と話していた。近くの七宝寺でも法要を行った。(田中陽介)


◎火遊び事故 新型で防止 ライター規制

 子どもの火遊びなどによる事故防止のため、従来型の使い捨てライターの販売が27日から全面禁止される。販売各店では安全対策が施された新型を並べるが、高齢者には「使いにくい」と不評。一方、函館市消防本部は「新型になっても子どもが誤使用する可能性はあるので、幼児の目や手に触れないような場所に保管することが大切」としている。

 今回の販売規制は昨年12月の消費生活用製品安全法の施行令改正に伴うもの。昨年4月、厚沢部町でライターの使用が原因で乳幼児4人が死亡するなど、子どもの死亡事故が続発していたことも要因。今後も、従来型は無料で譲渡したり所持したりすることは認められるが、販売した場合には罰則が科される。

 新型は、点火レバーが固いタイプと火の付け方が複雑な2段階方式の2種類あるが、日本喫煙具協会(東京、加盟77社)によると、多くの高齢者や女性から「使いにくい」との相談が寄せられているという。同協会は「販売規制の目的を知らない人もいる。ライターはたばこ以外にもさまざまな用途で幅広い年代が使うものなので、国は目的をきちんと周知してほしい」と求める。

 函館市宮前町の「函館たばこらんどセラーズ磯」の磯雅晴店長(60)は「お年寄りを中心に手の力が弱い人には不評」と話す。同店の9月26日現在のライターの在庫は、新型70本に対し従来型は約3000本。「(従来型は)10本まとめ買いする人がいたり、この3カ月間で売り上げが3倍になった」(磯店長)ほどで、10箱入りの1カートンを購入した人らに今後も無料配布するという。

 市消防本部によると、ライターによる子どもの火遊びが原因の火災は昨年4件、今年1件あった。いずれもけが人は出ていないが、同本部は「規制により火災の要因は減るだろうが、子どもたちはどんな行動を取るか分からない。くれぐれも注意を」と呼び掛けている。(長内 健、小杉貴洋)