2011年9月9日 (金) 掲載

◎洗練された音色楽しむ…大妻高で西川ピアノ演奏会

 函館大妻高校(池田延己校長)にある明治期製造の「西川ピアノ」を使った一般向けの演奏会が8日、柳町の同校で開かれた。函館出身のフルート奏者阿部博光さんとピアニストの高実希子さんが出演。招待された市民ら約60人を洗練されたハーモニーで楽しませた。

 西川ピアノは明治の職人西川虎吉が初めて国産したとされる。同校にあるのは明治半ばに作られた試作品とみられ、故外山茂樹前校長の意向で2009年11月に楽器を復元。以降は年1回学校関係者らを対象に演奏会を開いてきたが、「素晴らしい音色を多くの市民に聴かせたい」と今年8月に希望者を募った。

 阿部さんは高さんの伴奏でモーツァルトの「ロンドニ長調KV373」や童謡の「浜辺の歌」(野田暉行編曲)などを演奏。同じ音を小刻みに奏でる「フラッター」など多彩な奏法を披露した。

 西川ピアノを「自分が表現したい音が出る」と評した高さんは、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」をソロ演奏。繊細な弱音を引き出すと、聴衆はじっと耳を傾けていた。

 池田校長は「大勢の市民が関心を持ってくれて喜ばしい。来年以降もこうした演奏会を続けたい」と話していた。 (長内 健)



◎魅力ある市町村区…函館 今年も全国2位

 民間シンクタンクのブランド総合研究所(東京)が発表した今年の地域ブランド調査で、函館市の「魅力度」は全国の市区町村で昨年に続き2位となった。2年連続首位の札幌市とは僅差で、市企画部は「1位になれなかったの残念だが、函館の高いポテンシャルへの評価が定着してきた」としている。

 調査は2006年から始まり、今年で6回目。7月に全国の20〜60代の男女を対象に、全国1000の市区町村の「魅力度」「認知度」「観光意欲」など計67項目について、インターネットでアンケートを実施。計3万537人から得た回答結果を点数化した。

 函館市は06年3位、07年4位、08年2位、09年1位、10年2位と常に上位をキープしてきた。今年の魅力度は56.7点で前年より1.2ポイント増加。昨年、首位の座を明け渡した札幌市とは前年には1.5ポイント差が開いたが、今年はわずか0.3ポイント差に肉薄した。

 項目別では「情報接触度」が前年比5.1ポイント増の55.1点で、情報の入手経路として「旅やグルメに関する番組」が同7.6ポイント増の44.4%に上り、全国1位だった。同研究所は「情報発信が効果的に奏功し、観光面の意欲や魅力につながっている」と分析する。

 このほか、「食事がおいしい」(45.7%)が全国1位、「魅力的な街並みや歴史的建造物がある」(38.6%)が同4位、「買いたいお土産や地域産品がある」(24.2%)が同2位といずれも前年より順位をアップ。今年から新たに加わった項目の「地元産の食材が豊富」では38%と全国1位で、地域資源や食に対する評価の高さがうかがえる。

 同研究所は「函館市は全国的にイメージ、人気とも高く、数値的には自信を持っていい。札幌など他都市にない既存の地域資源を磨き、うまくPRできれば首位返り咲きも期待できる」とする。函館国際観光コンベンション協会の藤森和男専務理事は「胸を張れる喜ばしい順位。今後も全市一丸でホスピタリティーの向上に努め、さらに上を目指したい」と話している。 (森健太郎)



◎企画・再生への道 東日本大震災から半年@ 観光…上向き 素直に喜べぬ

 この夏、多くの観光業関係者が「観光客はだいたい戻ってきたよ」と明るい声を発していた。東日本大震災は、国際観光都市・函館を含む道南で、外部に大きく依存する観光のあり方を問い直すという大きな試練を課したが、関係者はそれぞれの努力でまずは繁忙期を乗り切った。ただもろ手を挙げて喜べる状況にはなく、たゆまぬ営業努力が今後を左右しそうだ。

 函館湯の川温泉旅館協同組合(金道太朗理事長)に加盟する22軒では、直後にキャンセルが相次いだため、緊急的に道内客向けキャンペーンや連泊プランを提案。人数ベースで3〜4月は例年の5割減だったが、5〜7月は同2割減程度にとどめ、8月には逆に例年より1〜2割増やすことに成功した。

 関東方面からの客が目立つことから金道理事長は、「節電疲れや暑さでストレスがたまった首都圏の人のニーズに連泊型商品がマッチした」と分析する。ただ価格を割安に設定したため、売り上げベースの伸びは8月でも1割以下にとどまり、素直に喜べる状況にはない。9月は連休や週末を中心に既に満室だが、平日の空きも目立ち気を抜けない状況が続くとみる。「完全に戻るまでには来春以降までかかるのでは。今後は原発や東日本の復興次第だろう」とした。

 客が戻ってきた感触は観光地でもみられる。五稜郭タワーと函館山ロープウェイの利用客数は、3月には前年同月比4〜5割減だったものの、7月には2割程度の減少に回復した。このうち五稜郭タワーの8月利用実績は同4・3%減で、同社は「関東、東北からの利用者が多く、福島原発のある東北を避け、涼しい北海道に来ているようだ」とみる。

 9月上旬も同7%程度の減を維持しており、秋の連休に期待する。ただ年間の売上高は前年度比3〜4割少なくなる見込み。同社は「入り込みが多い時期に自粛などが重なったため相当に厳しい。森町の高速インターチェンジの開通やクリスマスファンタジーなどに期待する」と話した。

 観光土産品の売り上げも回復してきた。JR函館駅構内の土産店「POっPO」では、3月の直後は前年の5割減まで落ち込んだが、その後徐々に上向き、8月には前年並みを達成した。同店を運営するジェイ・アールはこだて開発は「厳しい状況が続いたが、本州客を中心に駅に人が戻ってきた」とする。  また震災後に品ぞろえを豊富にした道内客向けの函館・近郊の土産品も好調な売り上げ。今後は「短い期間で見ると上がってはいるが不確定要素は多い」として営業努力は怠らない考えだ。

 関係者が口をそろえる福島原発の影響は、外国人観光客の入り込みに最も顕著に表れた。大韓航空が運航する定期便は震災直後から運休、台湾などのチャーター便も停止。この影響で函館空港のことしの国際線利用客数は、7月までで前年の7割減となった。

 ただアジア圏への積極的なPRが奏功し、台湾などのチャーターは6月には本格的に再開。今後は12月末の大韓航空再開に期待が集まる。また来年度のクルーズ船入港も現在、例年のこの時期と同程度を予定しており、函館市港湾空港部は「原発の状況はさほど前進していないが『北海道は安全』と理解されているのではないか。定期便再開により口コミでさらに伝わってほしい」と期待する。(小泉まや)

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 道南にも大きな被害があった東日本大震災の発生から、9月11日で半年を迎える。観光や一次産業などが受けた被害はどこまで回復し、今後はどうなるか。市民や行政の復興支援、防災体制・意識はどう変化したか、さまざまな面から探る。


◎山の手で受診者増加…巡回健診「気軽に利用を」

 市立函館保健所などが市内の町会館を中心に行っている巡回健診の受診者が、一部の町会で広がりを見せている。同保健所健康づくり推進室によると、山の手町会(門口一広会長)は年々受診者が増える傾向といい、「身近な場所で気軽に受けられるので、他町会の人たちもぜひ利用を」と呼び掛けている。

 函館の巡回健診は、医療施策の推進を定めた1982年の老人保健法制定を受け本格的に開始。各町会の希望に合わせ年1、2回、胃がんや肺がん、大腸がんの検診、特定健診が受けられ、結果は後日、市医師会健診検査センターから個別に送付される。

 同推進室によると、特定健診受診者はほとんどの町会で10〜30人だが、山の手町会は2008年34人、09年57人、10年61人と徐々に増加。定員30人の胃がん検診では、2週間前から予約が相次ぎ「今年は珍しく希望者へお断りせざるを得なかった」という。

 8日は同町会の巡回健診日。午前7時から各種がん検診を組み合わせたりして54人が特定健診を受診、28人が胃がん検診を受けた。高齢者だけでなく40代の男女の姿も目立っていた。

 同保健所とのパイプ役を担う同町会の健康づくり推進員、岸一子さん(74)は「町会のサークルや行事など人が出入りする際に積極的に受診を呼び掛けたり、町会館の玄関近くに大腸がんキットを自由に持ち運びできるよう工夫したりしているのが奏功しているのでは」と分析する。

 同推進室によると、本年度は市内187町会のうち、約55町会が巡回健診を申し込んだ。ただ、町会によって日程の周知方法が違ったりしていて、受診者が伸び悩んでいるのが現状という。

 同推進室の保健師、中村可奈子さんは「巡回健診はがん検診と特定健診が同時に受けられる機会。病院だと半日はかかるが町会館だと比較的短時間で受診できるので、気軽に活用してほしい」と期待している。(長内 健)