2012年10月2日 (火) 掲載

◎大間原発の建設再開、電源開発が市長に説明

 電源開発(東京)は1日、工事を中断していた大間原発(青森県大間町)の建設を再開したと発表した。同社の渡部肇史常務が同日午後、函館市役所を訪れ、工藤寿樹市長に工事再開を説明。大間原発の重要性や安全性を強調する事業者と、「原発の安全神話は崩壊した」(工藤市長)として建設凍結を求める市側との話し合いは平行線に終わった。

 昨年の東京電力福島第一原発事故以降、着工済みの原発の建設再開は初めて。この日は渡部常務のほか、楠瀬昌作大間現地本部長代理と、阿部健大間原子力建設所所長代理の3人が訪れた。

 渡部常務は、工事再開について政府の「革新的エネルギー・環境戦略」の決定を踏まえ、「建設中の原発の取り扱いが明確になり、事業者として(工事再開を)判断する材料がそろった」と述べ、大間原発を「最新鋭の技術を適用し、安全性、信頼性が高い」と説明した。

 これに対し、工藤市長は「極めて遺憾で、拙速な再開に断固反対する」と述べ、30`圏内の自治体の同意や、函館での説明会開催などで住民理解を得るべきだと主張。国の設置許可については「福島原発事故以前の安全神話に基づいたもの」として、事故後の新基準の安全対策を求めた。

 一方、新たな原発の必要性について渡部常務は「化石燃料や再生エネルギーにすべて頼るのは難しく、今後も一定量の原子力は必要」と強調し、「大間は最新鋭の技術に基づいて造り、サイクル政策なども堅持した上でやっていく」と語った。

 工藤市長は国際海峡の津軽海峡は領海が狭く、あらゆる船が往来できることを危惧し、「テロ対策など日本の安全保障上も問題がある。本当に安全であればエネルギーの送電ロスの少ない消費地の首都圏につくればいい」と、本州最北端の立地にも疑義を呈した。

 会談後の記者会見で、工藤市長は「これまで原発の安全神話を信じ、許容してきた責任は私自身にもある。このことを二度と繰り返してはならない」と脱原発をあらためて主張。15日には近隣自治体の首長や議長らと上京し、政府などに抗議文を手渡し、同社には今回の質疑への回答を求める。

 同社の渡部常務は会談後、報道陣の取材に対し「真摯(しんし)に受け止めたい」と話したが、「市長への説明でお話しした通り」と述べるにとどまった。大間原発の工事進捗(しんちょく)率は37・6%で、昨年3月の東日本大震災後に工事を中断していた。(森健太郎)



◎「本格工事に合わせ提訴」、工藤市長が言及

大間原発建設工事の再開は、函館市など道南の自治体から意見を聴くことなく発表された。市や周辺自治体は「私たちが全く無視された形は到底納得できない」と猛反発し、改めて無期限凍結を求める構え。工藤寿樹市長は会談後の会見で、市が原告となっての工事差し止め訴訟に言及、来春と目される建設工事の本格化に合わせて提訴する考えを示した。

 午後1時半に設けられた電源開発の説明は、市議会会派民主・市民ネットが建設に反対する横断幕を掲げて待ち受け、反対する市民団体のシュプレヒコールが響く、異様な雰囲気の中で行われた。

 渡部肇史常務は「福島の事故を踏まえ、安全強化対策を運転開始まで確実に実施したい」と、平板な説明にとどまった。工藤市長はこれに対し、「建設再開を決めてから責任ある立場の人が来ることは大変遺憾」と批判した上で、@福島の事故を踏まえればさらに原発を造る理由はないA使用済み核燃料の処理体制が整っておらず、大間でも20年しか保管できないB市がUPZ(緊急時防護準備区域)圏内に入るのに、説明会が一切行われていないC国際海峡である津軽海峡での安全対策の有無—など、具体例を挙げて反論した。

 渡部常務からの明確な回答はなく、説明会の開催も「歴史的経緯の中で、市当局を通じて(情報提供したい)と思う」と拒否した。

 工藤市長は同社の対応を「(再開を)ただ言いにきたつもりでいる。私どもの意見も斟酌(しんしゃく)した中で判断すべき問題」と批判、不快感をあらわにする。

 同市長は市民団体による建設工事差し止め訴訟の弁護団と接触。地方自治体として市民の安心・安全を守る「人格権」を主眼に、市が提訴する場合の根拠を模索している。「安全か否かだけでは裁判所も判断しがたい。(福島の事故)以前の工事そのものが始まる時期に合わせるように、検討を急ぎたい」としている。(千葉卓陽)

 



◎五稜郭タワーがピンクに、乳がん検診啓発

 乳がんの早期発見、早期治療を訴えるピンクリボン運動の一環として、函館市内の医療機関などでつくる道南乳腺疾患研究会(代表世話人・木村純市立函館病院長)は1日、五稜郭タワー(五稜郭町43)をシンボルカラーのピンク色にライトアップし、検診の大切さを呼び掛けた。

 タワーのライトアップは今回3回目で、10月のピンクリボン月間初日に合わせて行っている。

 この日は午後6時に点灯を開始し、同研究会の関係者や啓発グループのメンバーがタワーに集まり、淡いピンク色に照らされたタワーを見守った。

 ライトアップに先駆けて、渡島保健所、市保健増進課の職員と、ピンクリボンin函館実行委員会「チームピンク」のメンバーが市内本町の繁華街でチラシを配るなどして啓発活動を実施した。

 同委員会の川村佳子代表は「ライトアップを見て受診のきっかけになれば」とし、木村院長は「がん治療は早期発見、早期治療が大事。そのためにも検診を受けてほしい」と話した。

 全国各地でも同様の取り組みが行われ、市内では国立病院機構函館病院(川原町)も趣旨に賛同し、建物をライトアップした。(鈴木 潤)


◎道南9月の日銀短観、景況感20年ぶりマイナス脱す

 日銀函館支店(中川忍支店長)は1日、9月の企業短期経済観測調査(短観)を発表した。渡島・桧山管内の企業の景況感を示す業況判断DI(「良い」とする割合から「悪い」とする割合を引いた指数)は、前回6月より4ポイント改善し全産業で0となり、1992年3月調査以来、20年ぶりにマイナスを脱した。2期連続の改善で、観光客の増加が全体を押し上げた格好だ。

 マイナスを脱したことについて同支店は「全国的には海外経済の減速の影響を受け、景気は足踏みしている状態だが、道南は内需中心に回復している」とみる。先行きDIは4ポイント悪化しマイナス4と予測。製造業は欧州、中国など海外経済の減速、非製造業は観光客一巡への懸念から慎重な見方を強めている。

 産業別では、製造業が7ポイント上昇しプラス10と、11年12月調査以来の水準に戻した。食料品は0で変動なし。機械は受注の下げ止まりで11ポイント増加しプラス22だった。

 非製造業は4ポイントの改善でマイナス4と、5期連続で改善した。観光客の増加を背景に、宿泊・飲食・サービスが43ポイント上昇しプラス57に、運輸・郵便が22ポイント上昇し0とした。

 一方、建設は12ポイント悪化のマイナス6。震災復興工事のピークが過ぎたことや価格競争などが要因。小売も10ポイント低下しマイナス40だった。

 2012年度の売上高の計画は、製造業が前回調査よりも下方修正した一方、非製造業は上方修正した。

 調査は8月下旬から9月下旬まで道南の102社(製造業30社、非製造業72社)を対象に実施した。(松宮一郎)


◎赤い羽根募金運動始まる

 赤い羽根共同募金運動が1日、全国一斉に始まり、函館市内でも各地で街頭募金活動が行われた。  活動前には高松町の函館空港で赤い羽根の第1便伝達式が行われ、全日空の客室乗務員、高橋志歩さんが、厚生労働大臣と中央共同募金会会長のメッセージ、赤い羽根を市保健福祉部の下中修子次長や同市共同募金委員会(佐藤祐幸会長)の奥野秀雄、木村一雄両副会長に手渡した。

 式後、役員らはボランティアスタッフとともに本町のデパート前で募金活動をし、約30人が募金箱を持って街頭に立った。道行く市民や買い物客らは募金箱に小銭を入れると、スタッフに赤い羽根を胸に付けてもらっていた。

 募金期間は12月31日まで。市委員会の今回の目標金額は約2744万円とし、集まった募金は高齢者や障害者の支援や地域福祉活動に充てられる。(鈴木 潤)