2012年10月21日 (日) 掲載

◎秋の香り体もぽかぽか せせらぎ温泉で恒例のマルメロ風呂

 【北斗】市健康センター「せせらぎ温泉」(本町4)で20日から、恒例のマルメロ風呂が始まった。入浴客は、黄色の果実が放つ甘い香りを楽しみながら、体の疲れを癒やしている。

 毎年、収穫期に合わせて実施しているサービスで、同温泉は「例年楽しみにしている客も多く、この時期は1〜2割ほど利用者が増える」とする。市営果樹園(市渡)で17日に収穫したもので、果実は午後4時半ごろに入れ替えを行い、1日に約60キロを使用する。

 入浴客はぷかぷか浮かぶ果実を手に取りながら香りを楽しんでいた。週2回は訪れるという市内本町の板倉勝憲さん(78)は「マルメロ風呂は毎年秋の楽しみです。においもいいし、いつもより体が温まる感じがする」と話していた。

 11月4日まで。同温泉の営業時間は午前10時から午後10時まで(月曜休館)。問い合わせはTEL0138・77・7070。また、茂辺地福祉浴場でも実施し、男性は火、土曜日、女性は木、日曜日、営業時間は午後2時から午後8時まで。問い合わせは茂辺地支所TEL同75・2001。(今井正一)



◎節目の歌劇 成功へ一丸 市民オペラ3日に20回公演

 函館市民オペラの会など主催の第20回記念公演(函館新聞社など後援)が11月3日午後3時から、市民会館大ホール(湯川町1)で開かれる。今回は、ベルディ作曲の喜劇「ファルスタッフ」全3幕。節目の公演を成功させようと出演者やスタッフ計120人は、一丸で準備している。

 同会は1990年に発足し、翌年から上演開始。キャスト、オーケストラ、舞台装置制作など、全てアマチュア市民が担い、これまで「椿姫」「フィガロの結婚」など人気オペラを上演してきた。オーケストラ付きのグランドオペラは2年ぶり。

 各セクションの練習は今月からピークに。18日には市芸術ホールで2回目の全幕通し稽古を行い、生演奏に合わせてキャストやオーケストラ、合唱団員が音の響きを入念に確認していた。

 主人公のファルスタッフ役を務める井上治さんは「私も含め登場人物の多様な人間性は見どころ。変化に富んだ音楽も聴き応えがある」と語る。指揮を務める札幌交響楽団ビオラ奏者の遠藤幸男さん(54)も「この時期にしては順調な出来具合。キャストとオーケストラ双方がお互いどんな演奏をしているか理解が進めば、緻密で劇的なアンサンブルができそう」と話している。

 チケットは指定S席2500円、同A席2000円、学生券1500円(当日各500円増)。問い合わせは同会事務局TEL0138・57・3111。(長内 健)

 ◆ファルスタッフ ベルディの最晩年のオペラ。酒飲みの老騎士、ファルスタッフが金持ちの夫人2人に恋文を送るが、自身の従者や夫人は驚き呆れ、それぞれ仲間を集め、懲らしめようと一計を案じる。しっぺ返しを受けたファルスタッフは最後に「人生はみな冗談」とたんかを切って締めくくる。



◎道新幹線高架橋問題 機構「設計ミス、確認怠る」

 【北斗】北斗市開発で建設している北海道新幹線高架橋の橋桁の高さが不足していた問題で、鉄道・運輸機構は20日、北斗鉄道建設所で記者会見を開いた。北海道新幹線建設局の種田昇次長が「設計ミスとその後の設計、施工各段階で現場の確認作業を怠ったことが原因」と説明し、「機構側にも管理・監督責任がある」と陳謝した。道路を掘り下げる工事で対応するが、費用は業者に負担させる方針だ。

 工事ミスがあったのは北斗市と七飯町の境で、道道大野大中山線と交差する開発架道橋。道路から橋桁までの高さは、4・7メートル以上確保しなければならないが、実際は4・135メートルしかなく、約56センチ不足していた。

 問題の地点は、道路を管理する道が2007年度に補修工事を行い、路面が約60センチ上昇した。会見で同機構は「調査設計の業者には伝えたが、補修前の高さのまま設計した」とミスの発端を説明。さらに、「次の実施設計、施工の各ステップで業者が現地の道路の高さを照合、確認しなかったことで発見が遅れた」とした。

 設計、施工には、新幹線工事に実績のある4業者が関わっており、同機構によると、いずれの業者もミスを認め、掘り下げ工事の費用負担に応じる意向を示しているという。金額は未定で、業者間の割合は今後協議する。同機構は管理・監督責任を認めたが契約上、費用は負担しない。

 会見で種田次長は「地元住民をはじめ、多くの方に迷惑をかけることになり、申し訳ない」と陳謝。同機構では関係者の処分を検討しており、「再発防止策を早急にまとめたい」と述べた。

 19日夜に付近の住民を対象にした説明会を開き、掘り下げ工事について方針を説明。理解を得られたことから、来年春に着工する予定。工事は高架橋を中心に160メートルの範囲で行う。(松宮一郎)


◎昭和の教訓を証言交え語る

 「昭和史を語り継ぐ会」を主宰するノンフィクション作家の保阪正康さん(72)による講演会(同会主催)が20日、サン・リフレ函館で開かれた。約50人を前に「歴史としての昭和」と題して熱く語った。

 保阪さんは1939年札幌出身。作家・評論家として活躍し、全国各地で講演会、市民講座を開いている。函館での講演は10年ぶり2度目の開催。

 「昭和史の中に戦争や貧困など人類が体験した全てがあり、昭和には多くの教訓がつまっている」とし、昭和を前期(戦前、戦中)、中期(占領下)、後期(独立後)の3つに区分して説明。それぞれの時期を代表する首相の名前を挙げながら、相違点や共通点、アメリカやソ連など他国との関係性などについて話した。「日本は降伏を決めた後、全国の市町村や軍事組織に戦争に関する記録、資料を焼却する通達を出した。何を考えていたのか」と声を荒げ、以前出会った老人との話を紹介した。

 「彼は整備兵として、泣きだしたり、失神する特攻隊員を飛行機に担いで乗せていた。特攻隊員が勇敢に死んだのはうそだと教えてくれた」とし、昭和史の記録のあいまいさを指摘。「つらい事実でも歴史を語り継ぐための資料を次世代の人に残さなければいけない。それが私たちの責務なのでは」と話した。

 また元函館市史編さん室長の紺野哲也さんと郷土史研究家の細見一夫さんによる講演も開かれた。(平尾美陽子)