2012年11月13日 (火) 掲載

◎箱館戦争「終戦協議の地」知って 亀田八幡宮に記念碑

 箱館戦争(1868〜69年)で、旧幕府軍が降伏する協議を整えたとされる亀田八幡宮(八幡町)に、市民による記念碑が建立され、11日に除幕式が行われた。建立に尽力した市内上湯川町の松山一郎さん(77)は「子供のころの思い出がある亀田八幡宮への恩を返せた」と感無量の表情だった。

 元市職員の松山さんは宮前町で生まれ、同八幡宮を通り、函館八幡小に通った。「亀田八幡宮は人間形成の原風景。報恩を込めて、お返しをしたかった」と記念碑建設を志した。

 松山さんは同小学校などで1年後輩に当たる、南北海道史研究会会員の近江幸雄さんに建立を相談。「箱館戦争降伏式之地」碑とすることを決め、題字は旧幕府軍(榎本軍)の蝦夷島総裁榎本武揚の曾孫・榎本隆充さん(77)が揮ごうした。説明文は近江さんが制作した。

 完成した碑は高さ2メートル、幅90センチで、除幕式には松山さん、榎本さん、近江さんら約15人が出席。同八幡宮の神職が祝詞を奏上し、松山さんらが玉串をささげた。式後には、武揚と新政府軍の陸軍参謀として会談した黒田清隆が、誓約後に冷酒を交わしたことにならい、社務所内に同様の座を設けた。

 松山さんは「“貧者の一灯”を示すことができたのは、皆さんのご支援のおかげ。心から感謝している」、榎本さんは「五稜郭明け渡しの前に、この地で協議があったことを、市民や観光客に知ってもらえる碑となる」と喜んでいた。

 近江さんによると、12月には梁川公園(梁川町)に、軍服姿の榎本像が建立される。近江さんは「箱館戦争の戦跡めぐりに役立ってくれることを願う」と話していた。(山崎純一)



◎函館山ロープウェイ盛況…市民感謝デー

 函館山ロープウェイは11日、ロープウエーを終日無料で運行する「市民感謝デー」を実施した。午前中は晴天に恵まれ、オープン前から待ち望んだ市民の列ができた。夜間は強風となったため、営業終了時間を切り上げたが、延べ1万5500人が来場。晩秋の絶景を楽しんだ。

 日ごろの利用に感謝する毎年恒例の無料開放イベントとして市民にも定着。午前7時台から営業開始を待つ人の姿もあった。1000食を用意した恒例の100円カレーも1時間ほどで整理券配布を終了。FMいるかの開局20周年のイベントも行われ、多くの家族連れらでにぎわいを見せた。

 2年前から約20年ぶりに道南に住み、夫婦で訪れた七飯町の江河千代子さん(55)は「ドックのクレーンがなくなり、漁船も少なくなった気がするが、何度来ても函館山からの景色はきれい」と喜んでいた。

 本間秀行社長は「日ごろからロープウエーを愛していただき感謝している。新幹線開業を見据え、函館観光のシンボルとして、市民の皆さまにも楽しんで利用してもらえるよう取り組んでいきたい」と話していた。(今井正一)



◎3陣営地盤固め着々…強まる衆院解散風

 衆院解散がにわかに強まり、道8区(渡島・桧山管内)から次期衆院選に出馬予定の3氏は決戦に向けて地盤固めを着々と進めている。野田佳彦首相は年内の衆院解散も視野に入れており、各陣営は臨戦態勢を整えるとともに、候補者擁立の構えを見せる「国民の生活が第一」の動向も注視している。

 民主党現職の逢坂誠二氏は週末に函館入りし、会合やイベント会場などへ精力的に足を運ぶ。党道8区総支部は今月3日に合同選対本部(本部長・斉藤博道議)を立ち上げ、街頭ポスターを順次更新するなど準備を整える。道畑克雄幹事長は「一票の格差の違憲状態が解消されない中で選挙を行うべきではないと考えるが、いつ解散となってもいいように備えなくては」と話す。

 自民党新人の前田一男氏は先週末に函館市内のイベント会場を回ったほか、12日は江差町など桧山管内で活動した。16日に自身の後援会と党道8区支部合同の会合を開き、選対本部立ち上げに向けた準備を進める構えで、前田氏は「今でも遅すぎるくらいのタイミング。年内に選挙を行うことで、来年度予算編成など国民生活への影響は少ないのでは」と歓迎の意向を示している。

 共産党新人の高橋佳大氏は今月15、16日に奥尻町を訪れ、管内全市町での街頭宣伝や支持団体との懇談を終える考え。大間原発(青森県大間町)の建設反対などを訴えることで勢力拡大を目指している。高橋氏は「党が示す即時原発ゼロの提言などを伝え、さまざまな団体と一点共闘で進みたい」と意気込みを見せる。

 一方、小沢一郎代表が候補者擁立の意向を示した「国民の生活が第一」の具体的な動きは現段階で見えていない。

 候補者に函館出身の小沢氏の女性秘書が取りざたされており、民主党関係者は「出馬した場合に無党派層の票が流れ込む可能性もある」と警戒。前田氏は「他者の出馬に自分の力は及ばない。政治信条を訴えることに尽きる」、共産党の原田有康道8区選対本部長は「政策の中身は二大政党と同じ。候補者が出ても出なくても、党の思いを伝えることが大事」とする。(衆院選取材班)


◎ホテル函館ロイヤル 改修終え来月新装

 ホテル函館ロイヤル(函館市大森町)は、9月から進めてきた改修工事を11月末で終え、12月1日に新装オープンする。工事は2015年度の北海道新幹線開業で利用客の増加を見込んいることに加え、地域経済のけん引役としての意気込みを示すものだ。同ホテルでは「地場資本、地域密着型のホテルとして、地域経済を盛り上げていく責任がある。函館経済回復の一助になれば」としている。

 同ホテルは魚長食品(豊川町、柳沢政人社長)のグープ企業で、1966(昭和41)年にオープンした老舗。89年に現在の規模に増築。今回の工事はそれ以来の大規模改修。昨年から今年春にかけて計画し、営業を継続したまま9月に工事に着手した。

 1階はロビーやレストランの壁紙を全て交換。2階の宴会場やホールを大幅に改装し、茶色を基調にした落ちついた雰囲気にした。3階の大ホールも床をじゅうたんからカーペットに変えるなどした。

 外壁はタイルの取り替えを行っているほか、客室の一部も改装した。ベッド回りにコンセントを増設するなどして宿泊客の利便性を高めた。

 3年後に控えた新幹線開業で利用客の増加を見込んでいるほか、ここ数年で地場資本によるホテルが減少したことも改修を決断した理由。山野忠則総支配人は「経済の低迷が続いており、改修は地場資本として地域を盛り上げる意味も込めている」と強調。「会議やイベントで訪れる市民により快適な空間を提供したい」と話している。(松宮一郎)


◎「一層の交流促進」…シンガポール訪問団帰国

 函館とシンガポールの交流20周年を記念した「函館・シンガポール友好親善訪問団」(団長・工藤寿樹市長)が11日、帰函した。同国政府観光局のライオネル・ヨウ長官ら幹部の歓待を受け、両地域間のさらなる交流促進を確認した。

 今年は函館国際観光コンベンション協会(渡邉兼一会長)と同局の姉妹提携20周年に当たり、5年ぶりの公式訪問。市や経済界、函館シンガポール協会(山那順一会長)関係者が同局や現地の航空会社を訪れ、函館への送客、チャーター便運航を依頼したほか、函館観光のPRなどを行った。記念式典には、同局の歴代幹部らも出席し、手厚い歓迎を受けた。

 函館空港で取材に応じた工藤市長は「大変盛り上がり、これからの交流を深めていく上で意義深い訪問だった」と総括。同国を拠点にマレーシアやインドネシアなど周辺国からの来訪増加に期待感を示し、「台湾経由の航空路や函館空港が大型機材にも対応していることなどを説明した」と述べた。来年度以降、現地の旅行会社やマスコミ関係者らを招請する事業の検討を進める考えを示した。

 渡邉会長は「式典も和やかな雰囲気で懇親が深まり、長官からは函館を訪問したいと伺った。故・柳沢勝さん(前函館シンガポール協会会長)が築いたパイプが根付いていた」と話す。また、山那会長は「成人式≠終え、今後の関係をどのように発展、充実させるかが課題。函館市民にもシンガポールの魅力を広め、絆を深めていくことに努力したい」と話していた。(今井正一)