2012年1月1日(日)掲載

◎梅谷さん7日「たこ揚げ会」

 函館市の元高校教諭で、干支(えと)のたこを制作している梅谷利治さん(82)は、2012年の「辰(龍)」を題材にさまざまなたこを完成させた。函館市地域交流まちづくりセンター(末広町4)などで展示しているほか、7日午前11時から緑の島(大町)で新春たこ揚げ会を開き、大空に泳がせる。作業は病を抱えながらだったといい、「市民の皆さんと、さまざまな再生を信じてたこを揚げたい」と参加を呼びかけている。

 梅谷さんは1960年から当時の函館東高校で美術を教え、教材として創作たこを取り入れた。生徒に物づくりの魅力と成果を喜ぶことを教え、88年に退職後もライフワークとして続け、作品は国内外で展示されてきた。

 干支のたこ作りは1976年の辰からで「龍は伝説上の生き物で、創作しやすいので始めた」と話す。76年は描いた龍の口を開けて連結した「北海天龍阿(あ)一世」、88年は龍の口を閉じた「北海天龍吽(うん)一世」を完成させた。「東大寺南大門(奈良)にある阿吽の金剛力士像のように、2体あることでようやく一つとなる」と梅谷さん。2000年には胴体をつけ、横から見ても迫力ある「北海天龍吽2世」を発表(92年に「北海天龍阿2世」を制作)、昨年は4巡目に突入した。

 「約40年も好きなことをやって来たのは、だまって見てくれていた妻のおかげ。そして応援してくれた仲間がいたから」。昨年春、例年通りに制作を始めたころ、東日本大震災もあり“絆”を深く感じてテーマとした。黄金の龍を作り夫婦で揚げようと思ったが、妻・歌代子さん(75)が体調を崩し、新春のたこ揚げは無理と判断。そこで「龍が生まれる前のことを考えたら、ひらめいたのは『登龍門』の言葉だった」と振り返る。中国・黄河上流で急流な所にある門を登りきったコイが龍となることを表現しようと、頭部がコイで胴が龍の連だこ「登鯉翔龍(とうりしょうりゅう)」に決めた。

 しかし、11月、自身が皮膚の疾患にかかり、一部が目の周辺に及んだ。片目での作業となったが無事に完成。「細かい作業で遠近感が取れずつらかったが、中途半端でやめるわけにはいかなかった」とほっとした様子。このほか、2つのたこを横に並べ、糸を途中から「Y」字のように分けてそれぞれに付けることで、たこが離れたりくっついたりしながら空を舞う「北海天龍阿吽3世」を平面と立体で作ったほか、震災復興を願う帆かけ船型もそろえた。

 新春たこ揚げ会を緑の島で行うことについて「海のそばで、ゆったりとした時間の流れが感じられる函館らしさを凝縮している場所だから」と話す。まだ目の状態は完治していないが「病を乗り越えて作った凧に、さまざまな再生への願いを託したい」と意欲的。高齢で家族は体を心配しているが「まだまだ世界にない凧を揚げたい。13年は私の干支である巳(み)で、アイデアはできている。これを揚げる夢が叶うように健康に気を付けたい」と熱い思いを語る。

 2世までの「北海天龍・阿吽」や「登鯉翔龍」はまちづくりセンターで15日まで展示中(3日まで休み)。このほか、旭ケ岡の家在宅ケアセンターベレル(旭岡町78)、函館脳神経外科病院(神山1)でも多彩な凧を展示している。7日のたこ揚げ会は荒天の場合、8日に延期される。当日の問い合わせは同センターTEL0138・22・9700。(山崎純一)



◎企画【JOMON第1部@】三内丸山遺跡

 三内丸山遺跡を象徴する大型掘立柱建物を前に、黄色いジャンパーを着た男性が滑らかな口調で話し始めた。「村のシンボル、祭りの施設、物見やぐら…。考古学専門家の間でも諸説あります」。

 男性は同遺跡のボランティアガイド「三内丸山応援隊」の小泉孝彦さん(60)。案内は約1時間。遺跡の価値を「とにかく分かりやすく伝える」(小泉さん)との使命感を持っている。

 応援隊の発足は早かった。遺跡の一般公開が始まった1995年5月。それまでの発掘調査で見つかった大量の遺物や遺構を調査員に代わって案内しようと、県教委などの呼び掛けに市民ら55人が名乗り出た。現在は50代以上の98人がガイドを務める。

 「当初はガイドの在り方を学ぼうと毎日のように研修を開いていました」。同応援隊の一町田工会長(73)は振り返る。「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の15年度世界遺産登録に向け、ここ数年は研修にバスガイドも招く熱心さ。「接客態度を磨けばおもてなしの心が生まれ、『また来たい』と思ってくれる人が増える。人を相手にする仕事だから当然のこと」と捉える。

 直径80センチの巨大木柱をはじめ、膨大な数の竪穴住居跡や土器などの出土品が見つかった1994年。建設中だった野球場の工事は当時の北村正哉県知事が遺跡保存を表明したことで中止となり計画は一転、県は遺跡整備に向けてかじを切った。

 翌95年には貴重な遺産の保存・活用を理念とする「青森県総合運動公園遺跡ゾーン基本計画」がまとまった。発掘調査結果に基づいて実物を公開展示し、遺構の復元にも努めながら、見学者が「縄文のむら」の雰囲気を体感できる環境整備のためのプランだ。

 「当時から毎年開く子ども対象の土器作り体験会、遺跡広場を会場とした『お月見コンサート』には大勢の市民が来てくれる。皆遺跡の価値を実感しているはず」。そう言い切るのは、県教委文化財保護課三内丸山遺跡保存活用推進室の横山修主幹(53)。段階的な事業拡大も奏功し、95〜2010年度の年間の平均見学者は37万人を超える。

 集客維持に貢献しているのが、2002年に県が建設費40億円をかけてオープンさせた「縄文時遊館」。遺跡見学者が実物の重要文化財を見終え、その足で土器作り体験ができる工房へ流れる定番コースが売りだ。横山主幹は「時代の流れで個人客が多くなるとともに、定番コースの利用者も年々増えている」と実感している。

 三内丸山遺跡が青森県を代表する観光スポットと呼ばれるようになって久しい。その要因の一つについて、一町田会長と横山主幹はこう胸を張る。「県と応援隊は車の両輪=B互いの役割がしっかりかみ合ってきたからこそ、一大観光地にまで大きくすることができた」(長内 健)

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 函館新聞社は今年、4道県が2015年度の世界遺産登録を目指す「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」をテーマに、各地の今を伝えていきます。第1部は各地の取り組みとして6遺跡を紹介します。

 ◆三内丸山遺跡…青森市にある縄文時代前期半ば〜中期半ば(5500〜4000年前)に長期間にわたって定住生活が営まれた大規模な集落跡。道南から北東北にかけて繁栄した円筒土器文化圏の中心地だったと伝えられている。2000年、国の特別史跡に指定された。



◎現実味帯びる年内総選挙

 衆議院は任期満了まで残り1年8カ月となった。消費税率引き上げ路線などで野田内閣の安定感が揺らぎ、昨年末には民主党の若手議員が離党を表明。野党は年明けの通常国会で野田内閣への攻勢を強めるのは間違いなく、年内の解散総選挙も現実味を帯びている。道8区(渡島・桧山管内)でも与野党それぞれが解散総選挙を見据えた動きを進めている。

 道8区選出の逢坂誠二氏(民主党)は昨年、総務大臣政務官を経て党副幹事長に就任。整備新幹線着工に向けた「コアメンバー会議」では副事務局長を務め、北海道新幹線札幌延伸の認可に向けて奔走した。地元でも小規模集会を月1回のペースで開くなどの活動を続けており、次期総選挙に向けた足場固めを進めている。

 小選挙区5連敗中の自民党は昨年12月から、次期衆院選候補となる道8区支部長の公募を開始し、次期衆院選に向けた態勢構築を本格化。03年に無所属で出馬した現松前町長、前田一男氏(45)を推す声が上がっている。前田氏も他薦の動きを認めた上で国政進出への意欲を示している。

 共産党は前回選挙の戦略を改め、300小選挙区すべてで候補者を擁立する方針。民主党政権と全面的に対決する考えで、党函館地区委員会の高橋佳大委員長は「渡島・桧山地区のほか、道委員会を交えて協議中」としている。

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 渡島・桧山管内では今年、松前、木古内、森で町長選、知内で町議選が行われる。

 松前町長選(4月3日告示、8日投開票)は現職の前田氏が態度を明らかにしておらず、進退が注目される。近く後援会に自身の考えを伝え、自民党8区支部長公募に応じるか、3期目に向けて町長選に出馬するか、態度を表明する見通し。

 木古内町長選(4月10日告示、15日投開票)は、現職の大森伊佐緒氏(58)が昨年9月の町議会定例会で4選出馬を表明。現段階で大森氏以外に出馬の動きはない。

 森町長選は10月の予定で、現職の佐藤克男氏(62)は現段階で態度を明らかにしていない。

 知内町議選(3月20日告示、25日投開票)は今回から定数が12から10に削減される。