2012年1月4日 (水) 掲載

◎駅や空港 終日混雑 Uターンラッシュ

 年末年始を古里や行楽地で過ごした人たちのUターンラッシュが函館でもピークを迎えている。3日は札幌方面行きの列車や東京方面に向かう飛行機が終日満席状態。駅や空港は大きな荷物や土産を抱えた家族連れらで混雑した。

 JR函館駅では、改札口を挟んで乗客と見送りに来た家族、親せきらが、手を振り合ったり、「元気でね」などと声を掛け合いながら別れを惜しむ光景が目立った。

 函館市に帰省した、青森市の公務員工藤香奈さん(26)は「正月らしく家族や友人とのんびり過ごせた。あすから仕事が始まるので気持ちを切り替えて頑張ります」と、見送りに来た両親に元気良く手を振りながらホームに向かっていた。仙台市の女子学生(19)は1週間ほど古里の函館で過ごし、「昨年4月から一人暮らしを始め、古里の良さを改めて感じました。リフレッシュできました」と話していた。

 Uターンの混雑は4日まで続く見通し。JR函館駅によると、4日の札幌行き、新青森行きの特急指定席は一部で空席があるものの、午後の始発列車は満席の状態。航空各社によると空の便は、本州方面に向かう便が5日まですべて満席で、6日以降も一部混み合っている。(鈴木 潤)



◎若者向け「龍俳句会」設立

 函館の俳句結社「弥生俳句会」(会員約25人)を主宰する大江流さん(80)は、若い世代から俳句に興味を持ってもらおうと、「龍俳句会」を立ち上げる。「四季の風情や高尚なことにとらわれず、社会風刺などを気軽に詠み、気晴らしをしてほしい」と参加を呼びかけている。

 大江さんは1970年後半、50代の時から俳句を始め、「当時でも自分は若い方だった」と話す。現代俳句界における重鎮が高齢化し、自身の結社も平均年齢が70代となり「このままでは俳句界が衰退する。若い人に興味を持ってもらわなければ」と考えた。辰(たつ)年の今年、「龍は運気を上昇させる。この機会に」と、若い人向けの俳句会設立を考えた。

 大江さんは「俳句は戦場に向かう武士が、明日へ大きな希望も持つことが難しくなり、そのうっぷんを晴らそうと心境をしたためた。江戸時代に栄えた『俳諧(はいかい)』も同様で、庶民が大胆で滑稽な言葉を使い、世論を風刺し、演劇や寄席で客を笑わせた」と話す。「皮肉にも経済、政治が混迷している現代はわずかな希望しか持てない。そんな中、思い切った言葉で物事を表現することで、自身のプラスになってくれれば」と願う。

 そんな大江さんが考えたのが面白い表現を目指す「GAG(ギャグ)俳句」。「感性を生かし、身の回りのことを作品にしてもらうだけで十分」と話す。新春に合わせ「七福神句合」を作った。「爽やかね風が訪ねて来て語る」(大黒)「橋下のルンペン期待する初日」(蛭子三郎)「原発や未決収監されず冬」(毘沙門)「日本丸積荷はみんな年送り」(弁財)「核家族満つることなし冬の海」(福禄寿)「門松や天然の皮表札に」(寿老人)「年明くるムシの歴史を掘り返す」(布袋)

 大江さんは「興味があるだけでも連絡をいただければ。そのうち句会も開きたい。函館から俳句会が変わってくれれば」と話している。問い合わせは大江さんTEL0138・46・0586。(山崎純一)

 



◎木古内・八雲で成人式

 【木古内、八雲】渡島、桧山管内のトップを切って木古内町と八雲町で3日、成人式が開かれた。スーツや振り袖に身を包んだ新成人は、責任の大きさをかみしめながら大人の仲間入りを果たした。両町では進学や就職で地元を離れている若者が多いため、正月の帰省時期に合わせ成人式を行っている。多くの自治体では8日、函館市は9日に開かれる。

 ●木古内

 木古内町の新成人対象者は60人(男性37人、女性23人)。町中央公民館で開かれた式典では両親や来賓が見守る中、46人が出席した。

 新成人代表の吉田匠さん(20)と藤田捺美さん(19)の2人が町民憲章を朗読。大森伊佐緒町長はあいさつで「新時代を担う若い皆さんの行動力と想像力は無限であり、いつの日かそれぞれの立場で地域社会に貢献してくれるものと期待している。どこにいても、いくつになってもふるさと木古内の発展を応援してほしい」と述べ、新成人の門出を祝った。

 自己紹介では一人ずつマイクに向かって、将来の夢や抱負を発表した。「将来は木古内町に戻ってきます」「親にしっかりと恩返ししたい」などと語ると、大きな拍手が送られた。

 伊藤佳樹さん(19)が「たくさんの失敗やいろんな出会いがある。その過程がわたしたちを一歩ずつ大人にしてくれると信じている」と謝辞を述べ、参加者全員で祝杯を上げた。

 函館の看護学校に通う草彅あゆみさん(20)は「看護師になれるようにしっかり勉強して、立派な大人になりたい」と晴れやかな表情で話していた。

 ●八 雲

 八雲町の新成人は、八雲地域が155人(男性93人、女性62人)、熊石地域が34人。町民センターで行われた八雲地域の式典には117人が参加し、保護者ら大勢の町民から祝福を受けた。

 新成人代表で会社員の佐野将来さん(20)が「仲間と成人を迎えられたことがうれしく、生まれ育ったこの町を誇りに日々頑張りたい」と誓いの言葉を述べた。

 都築享子教育委員長は「若さと柔軟な適応力を持って人生を切り開いてほしい」、川代義夫町長も「古里を大事に若い力を大いに発揮してほしい」と激励した。

 新成人へのメッセージでは八雲高校生徒会長の近藤里美さん(17)が「先輩たちの活躍する姿を見て、私たち高校生も未来に向け頑張りたい」、町内の青年団体、高木美聡さん(23)は「感謝の言葉を忘れず、地域とのつながりを大切に一緒に成長しましょう」と祝った。

 幼少期のスライド上映や新成人バンド、八雲出身でトラベリングバンドひのき屋のワタナベヒロシさんらのライブで盛り上がり、和やかな雰囲気に包まれた。この日は熊石地域でも式典が開かれ、24人が参加した。(松宮一郎、田中陽介)


◎地元の商店街や市場を一冊に ガイドブック発行

 函館市は、市内の商店街や小売市場を紹介する小冊子「はこだて商店ガイド」を作成した。市民や観光客に対面販売の良さを再認識してもらい、商店街の活性化につなげる狙い。人情味や個性あふれる32カ所の「市民の台所」が網羅されている。

 地域に密着した商店街や小売市場の魅力を広く紹介し、にぎわいの創出や商業振興につなげようと、国の緊急雇用創出推進事業の一環で企画。道の補助金約620万円を活用して市内の制作会社に事業を委託し、昨年6月からスタッフ4人が半年かけて取材、編集を進めてきた。

 これまで小売市場を紹介する冊子はあったが、商店街まで取り上げたのは初めて。A5判56ページのオールカラーで、市内を6つのエリアに分け、地図付きで商店街の沿革や店舗、イベント情報などを伝えている。外観や店内などの写真をふんだんに使い、代表者の顔写真とともにPRコメントも掲載している。

 ガイドには各エリアの観光スポットなども紹介。手に持って観光客にも訪れてもらえるよう工夫した。計1万部を発行し、昨年12月下旬から市内の公共施設や観光案内所などで無料配布している。

 市商業振興課は「地元市民でも知っているようで知らない商店も多いはず。商店主らとの出会いや会話も楽しんで買い物してほしい」と話している。冊子の内容は市経済部のホームページでも閲覧、ダウンロードできる。問い合わせは同課TEL0138・21・3306。(森健太郎)


◎企画【JOMON第1部③】大湯環状列石(秋田)

 十和田八幡平国立公園から車で1時間。のどかな果樹園を抜けると、広大な芝生の上に横たわる二重の円が視界いっぱいに広がった。

 「皆すごい遺跡だというのは知っているんだ。ただ、すっかり見慣れているからね…」。「大湯ストーンサークルボランティアガイドの会」の高木豊平代表(76)は、大湯環状列石に目を向けて、そうつぶやいた。

 遺跡発見は1931年。文化庁による発掘調査を経て、特別史跡に指定されたのは56年だ。それから半世紀もの歳月が流れた。ここ7年間の年間平均見学者数は約3万200人。高木代表は、知名度はあっても、「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の世界遺産登録に向けた機運が一向に盛り上がらない要因として「新鮮味のなさ」を指摘する。

 鹿角市教委は、縄文らしさを体感できるよう公園状に整備してきただけでなく、実物を間近で見学できるようにと一部の遺物を露出展示している。

 その典型が「石英閃緑玢岩」。先人が7キロ離れた川から持ち運んだとされるものだ。なぜこの石にこだわったのか─。淡い緑色を放つ無数の石が、想像をたくましくさせてくれた。「復元ではない本物に宿る神秘性はいつの時代も色あせることはない。遺跡の魅力は尽きない」。高木代表は胸を張る。

 ここでは、高木代表も関わる「縄文祭」が、市民団体の手で84年から行われている。

 縄文期に使われていたとされる「楽器」を使ったライブ、土器づくり、火おこし体験…。当時のムードを五感で体験できるとあり、秋田の夏祭りとしても定着しているが、高木代表は「観光客も大勢来るけど、もう一歩踏み込んだ遺跡の活用策を練る必要がある。鹿角や秋田だけでなく、4道県の関連市町全体を結びつけられる交流が生まれれば」と期待を寄せる。

 ただ、遺跡関係者が頭を悩ませるのは地元のムードだけではない。特別史跡を分断する県道の存在だ。

 市街地と温泉郷を結ぶこの県道をめぐっては、考古学専門家らから「縄文文化をほうふつとさせる遺跡の景観とは言い難い」と改善を迫られる一方で、少なくとも遺跡が見つかる80年以上前から、住民の生活道路として長く機能してきた歴史がある。市教委などは、世界遺産登録へ向け4道県が足並みをそろえた2007年から県道移設の是非について議論を重ねているが、いまだ結論は出ていない。

 「市民に不可欠な道路だが、移設になる可能性も否定できない」。遺跡へ迂回(うかい)させる道路整備案と現状維持との板挟みに、市教委生涯学習課の藤井安正政策監(56)は苦渋の表情を浮かべる。「これまで以上に市民、県民に遺跡の価値を深く理解してもらうよう努める。県道については県ともしっかり協議する」。判断までに残された時間は少ない。(長内 健)

 ◆大湯環状列石…秋田県鹿角市にある2つの環状列石を中心とした縄文時代後期(4000年前)の大規模な遺跡。集団墓や祭祀の場に加え、太陽の運行の法則を知るための場所であったと考えられていて、1956年に国指定特別史跡に指定された。