2012年1月7日 (土) 掲載

◎道南で受験シーズン到来

 受験シーズン到来—。6日は道教育大学附属函館中学校(相田幸男校長)の入試が行われ、函館市内や近郊から201人の小学6年生が挑戦した。

 同校の今回の受験生は、前年度より11人多く、倍率は例年並みの約2倍。試験は国語、社会、理科、算数の4科目で25分ずつ、作文試験は「附属函館中学校の校訓」をテーマに行われた。中学校3年間でどのように過ごしたいのかなど、それぞれの思いを300字程度で綴った。問題用紙が配られると、受験生たちは一斉に鉛筆を走らせていた。また、午後からは個人面接が行われ、合格を目指して真剣な表情で試験に臨んでいた。

 函館市内の中学校で入試を行うのは同校と、私立では遺愛学院、函館白百合学園、函館ラ・サール。早い学校では昨年12月上旬に前期日程を終え、後期日程は1月下旬から2月上旬に予定している。

 また、市内では14、15日に大学入試センター試験を控え、2、3月には私立高校や公立高校の一般試験、国公立大や私立大の試験もある。3月まで受験生たちの緊張の日々が続く。(平尾美陽子)



◎道南各自治体が仕事始め

 6日は道南の多くの自治体が仕事始めを迎えた。職員は互いに年始のあいさつを交わすとともに、首長からの訓示を受けて気持ちを新たに業務に当たった。

 ○…函館市役所では午前10時から、工藤寿樹市長が課長補佐職以上の約250人を前にあいさつをした。  工藤市長は市長に当選した昨年を「闘う市長として、この8カ月間走り回ってきた」と振り返るとともに、「今年は少し腰を落ち着かせ、本当の意味での函館再建に向けてより具体的に政策を進めていきたい」と抱負を述べた。

 また「私だけが改革と挑戦を実行しても本当の意味での新しい街づくりはできない。市役所は変わったという思いが市民の信頼につながるので、職員一人一人がそのような思いを持って主体的に業務に取り組んでほしい」と職員の意識改革を促した。

 最後に「今年は市制施行90周年という節目の年。街の活性化のために華々しくお祝いし、この1年がみなさんや函館市民に良い1年となるように頑張ろう」と締めくくった。(後藤 真)

 ○…【北斗】北斗市役所では午前8字45分から、職員約100人を前に高谷寿峰市長が訓示。企業誘致の強化や「観光振興元年」と位置付けた観光開発など、北海道新幹線開業を見据えた各種施策の推進に尽力する決意を語った。

 高谷市長は新幹線新駅駅前に特化した企業誘致条例の制定で、ホテルや飲食店などの企業集積を図るとした従来通り、既存の農業、漁業、商工業の振興を基本としながら、観光振興施策にも積極的に取り組むとし、「新年度は観光振興元年。官民の総力を持って取り組む強い思いを持っている」と語った。

 また、JR江差線の並行在来線問題は「旅客鉄道の維持に向け、道と協議を詰めていく」とした。地域の明るい材料として、江差自動車道の茂辺地インターチェンジ開通や、北斗出身でロンドンオリンピック出場に期待が高まるバドミントンの佐々木翔選手の活躍などを挙げ「私たちの背中を押してくれる出来事もあり、今年も市政を推進していきたい」と述べた。(今井正一)



◎食べて病気のない年に きょう七草

 7日の「七草」を前に、函館・近郊のスーパーや青果店では、ゴギョウやセリなど七草を詰めたパック商品がずらりと並んでいる。この日の朝におかゆにして食べると病気にかからないと伝えられ、6日は大勢の客が買い求めた。

 専用の売り場を設けた函館市港町1の「スーパーアークス港町店」(三上公男店長)は、神奈川県産の「春の七草セット」(395円)をメーンに、熱湯をかけて食べられる「春の七草茶漬け」(195円)など全4種類を販売。客足がピークとなる6日の売れ行きは好調で、店内は終日にぎわいを見せていた。

 函館の60代夫婦は「七草は毎年無病息災を願って食べている。今年一年健康で生活したい」と話していた。(長内 健)


◎新幹線木古内駅 高校生がデザイン選び

 【木古内】木古内町は、新幹線木古内駅のデザインを木古内高校(西博道校長、生徒15人)の生徒に決めてもらうことにした。鉄道運輸機構から示されるデザイン案は3点となる見込みで、生徒がその中から1点に絞り込む。3月いっぱいで閉校する同校への計らいで、大森伊佐緒町長は「最後の卒業生となる15人には、どこにいても故郷木古内と駅をPRしてもらいたい」と話している。

 新幹線駅舎のデザイン案は月内に同機構から提示される予定で、町が3月中に同機構に回答することになっている。同校の生徒にデザインを決めてもらうのは大森町長の発案。同校側も快諾した。駅舎デザインの決定は、選定委員会などの組織で選ぶのが一般的。町まちづくり新幹線課では「高校生に選んでもらうというのは全国的にも珍しいのでは」と話す。

 同機構からデザイン案を提示された後、大森町長が同校に出向き、生徒らに新幹線駅と駅周辺整備について説明。デザイン案を生徒に見てもらい、話し合いや投票を計画している。

 新しい町の顔となる駅舎のデザイン選びという大役を任された同校の西校長は「生徒にとって一生の思い出になる。閉校前に生徒に大きな出番をつくってくれて大変ありがたい」と喜んでいる。(松宮一郎)


◎企画【JOMON第1部⑥】鷲ノ木遺跡(森)

 道南に冬の使者が舞い降りた昨年11月中旬。カメラを持つ手がかじかむ寒さの中、鷲ノ木遺跡では森町教委の職員らが、重要な作業を黙々と進めていた。

 「空気が入っちゃうから、もう1個乗せとくか」「風の向きも考えてね」—。7人の職員が、地表に顔を出していた環状列石の一つ一つにウレタン入りの保護シートをかぶせ、その上から土のうでしっかりと固めていく。602個ある列石は、冬場の凍結が一番の大敵だからだ。

 「土のうを密着させないと石に露が付き、空気が入ると水が凍ってひび割れしてしまう。紫外線を防ぎ、雪の重さにも耐えられるような保護が必要なんです」と、森町教委文化財保護担当の本山志郎さん(36)は話す。デリケートな石たちは現代人から手厚い施しを受けて、再び眠りについた。

 鷲ノ木遺跡は「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」15遺跡の中で、世に出た歴史は最も浅い。道縦貫自動車道建設に伴う発掘調査によって発見されたのは、わずか9年前のこと。環状列石と竪穴墓域が見つかって以降も、周辺では2006〜10年にかけて断続的に発掘調査が行われ、縄文後期初頭とみられる竪穴住居跡や、縄文中期から続縄文時代の広い範囲に及ぶ遺物が出土している。

 「ストーンサークルを作った人たちの集落が、まだどこかにあるのではないか。全容解明にはまだまだ時間がかかる」(本山さん)ため、遺跡の保存は現在進行形。新年度以降は石にガラス質の成分を染み込ませ、水を弾く作業を行うことにしている。

 森町では昨年11月26日、念願の高速道路が開通。遺跡はその“障害”だったが、約2㍍下をトンネルでくり抜くことで命をつないだ。町は今後、ストーンサークル周辺を“縄文の森”として史跡公園化を思い描いているが、具体的なイメージを作り上げるのはこれからだ。国からは2720平方㍍が史跡に指定されているが、町教委の世界遺産担当、高橋毅さん(34)は「8万平方㍍まで拡大することが必要。ここだけを史跡公園としても、せっかく残した意味が十分に生きない」と、申請に向けた作業を進めている。

 史跡公園化するうえでモチーフとなるのは、三内丸山(青森)や御所野(岩手)など、東北地方の先進事例だ。「竪穴式住居を復元したり、石を運んだ道を作ったり…。アイデアを出す過程で、民間や他の自治体と考えたい。フォーラムなどに積極的に参加できれば」と高橋さんは語る。細かな作業の積み重ねが、東北と北海道をより強く結びつけていく。(千葉卓陽)

 ◆鷲ノ木遺跡…2002年に道縦貫自動車道建設に伴う埋蔵文化財発掘調査中に発見され、翌年に開始した本調査で、直径約37㍍に及ぶ道内最大規模の環状列石と竪穴墓域(集団墓地)を発見。環状列石は縄文時代後期前半(約4000年前)に造られたとみられ、外側を二重にめぐる配石と中央部の楕円形の石とで構成。当時の墓制や祭祀などの精神世界とともに、東北地方の交流を考える上で極めて重要な遺跡。2006年に国指定史跡に告示された。