2012年2月22日 (水) 掲載

◎過熱水蒸気の加工技術学ぶ…函館産業・技術融合推進事業

 全国で開発された最先端の技術を、地元のものづくり企業に役立ててもらう「函館産業・技術融合推進事業」の技術講習会が21日、函館市桔梗町の道立工業技術センターで開かれた。瀬田興産化工(大阪府摂津市)の内堀義隆工場長が、過熱水蒸気を使った食品加工技術について説明したほか、イカやホッケなどを加熱調理して試食した。

 函館市と函館地域産業振興財団の主催。同事業では新技術と地元企業ニーズのマッチングを図るため交流会、事業化検討会、技術講習会を開いていて、講習会は2010年11月に次いで2回目。この日は水産加工業者ら約30人が参加した。

 内堀さんは、過熱水蒸気が食品加工や殺菌に効果があると強調。生産性向上・コスト削減で自社の利益に結びつくことや、お客に喜ばれる新商品の開発が実現できることを説明した。

 実演ではパン、イカ、ホッケ、ホタテ、タラバガニを過熱水蒸気発生機で加熱調理して試食。内堀さんによると、熱源は電気で、高速に水蒸気を加熱できる「DPH(デュアルパックスヒーター)」という装置で温度を上げ、高温の水蒸気を吹きつけて調理する仕組み。価格は安いタイプで180万円、高いタイプで600万円という。

 試食した小田島水産食品(弁天町)の小田島隆社長は「ホタテは磯の香りが残っていて、貝柱も弾力があって普通に焼いたものとは違う」と話していた。(山崎大和)



◎【「5・6%減」の意味(下)】「子育て」より手厚く

 「高齢者には我慢をお願いすることになるが、子育て支援は今の時代には必要だ」。工藤寿樹市長は、住民福祉サービスの見直しの中で生まれた財源を、子育て支援に充てる政策を取った。

 新年度予算案ではとりわけ、子育て支援や教育振興に関する特徴的な配分が目立った。その一端が子ども医療助成費の対象者拡大。8400万円を増額し、対象を小学生までから中学生へと広げた。高校卒業までを全額助成とする北斗市との“医療格差”の是正を図る狙いだ。

 育児を援助するファミリー・サポート・センターの利用料も、30分一律200円に料金体系を統一した上で負担を軽減した。共働きの増加により、同センターの会員数は本年度末で昨年度比約200人増の約1800人になるなど、子育てを取り巻く環境は一段と厳しくなっているためだ。「少子化を食い止めるためには、少しでも親の負担を軽減させたい」。工藤市長は就任後、繰り返しこの言葉を発してきた。

 子育て支援と連動させるように、教育でも放課後児童へのアフタースクール設置と教材費用の増額など、市長選で掲げた政策を可能な限り実現させた。また新年度までに完了させる学校耐震診断調査なども盛り込んだ。市教委の山本真也教育長は「教育費全体は昨年と比べてマイナスになったが、厳しい財政状況の中で積極的な予算を組んでもらった」と語る。

 一方で、高齢者の負担となる見直しもあった。70歳以上の高齢者を対象とした高齢者交通料金助成は旧4町村にも対象を拡大させる一方、助成上限を設けるなどして7000万円を圧縮し、約2億円とした。

 この見直しについては、市民団体が「拙速すぎる」「市民の声を聞いていない」などと反発。共同で団体を立ち上げ、街頭活動などで6017人分の署名を集める運動を起こしたが、工藤市長は姿勢を変えなかった。中長期的な視野で見据える日本一の福祉都市実現に向け、布石を打つ考えがあったからだ。

 新年度予算で見えるその象徴が、福祉コミュニティーエリアの整備構想だ。日吉4丁目団地跡地に特別養護老人ホームや有料老人ホームなどを整備し、周辺に高齢者や福祉関係者の住宅を設ける考え。このほか、介護をする家族の負担軽減を目指す「介護支援隊」、保育士が子育て家族のサポートを行う「子育て支援隊」などを想定している。数年後の導入に向け、モデル地区への調査費を計70万円盛り込んだ。

 川越英雄福祉部長は「さまざまな事業を見直した結果、各施策のすそ野を広げ、将来を見据えた予算になったと思う」と説明する。

 子育て世代の生活支援が必要な一方で、新年度から介護保険料が約1000円引き上げとなるなど、高齢者を取り巻く生活環境もまた、年々厳しさを増す。少子高齢化時代が加速する中、地域衰退のカーブを少しでも緩やかにするには、継続した福祉施策への目配りが欠かせない。(後藤 真)



◎市立3病院 7700万円黒字に…本年度収支

 函館市病院局は21日、市立3病院(市立函館、恵山、南茅部)の本年度収支が7752万円の黒字となる見通しを明らかにした。黒字計上は2年連続だが、材料費の増加などが響いて、黒字の幅は昨年度比で12億円余り減少すると予測している。  病院事業は2009〜15年度を計画期間とする「市病院事業改革プラン」に基づいて収支改善を図っている。収支見通しは同日開かれた第3回市病院事業経営改革評価委員会(委員長・岩田州夫公立はこだて未来大副理事長)で報告した。

 同局によると、本年度は当初予算で6億6000万円の黒字計上を見込んでいたが、昨年4〜12月の1日あたりの入院患者数(一般)は市立函館で466人と、昨年度比で24・8人下回り、外来患者数も1日あたり1110人と、同23・5人減少している。

 本年度収支予測では、入院収益が3病院合計で当初予算比2億6000万円減の119億4284万円と見込んだ。材料費は46億6079万円と、当初予算比で約3億円増加する見通し。中でも市立函館の材料費は45億2155万円で、昨年度比で約3億3800万円増加。同局は「血液製剤の使用量が増えたほか、抗がん剤など高価な新薬の存在が要因」とみている。

 一方、同局は09年度までに、改革プランで定めた目標額の不足分5億6000万円を一般会計から繰り入れていたが、本年度予算で計上した2億8000万円を減額する。

 また、プラン策定に伴って08年度に発行した公立病院特例債29億2610万円に関し、本来は本年度から5年間で償還するところを全額を償還し、昨年度末で24・9%だった不良債務比率を約7%まで減少させる。同局は「不良債務比率が10%を上回ると、医療器械はリースで対応するため、必要最小限の更新しかできなかった」と説明。10%を下回ると、約50%が地方交付税で措置される企業債の発行が可能となるため「器械の更新など、今後の設備投資を円滑に行っていきたい」としている。 (千葉卓陽)


◎函館の問題点指摘…まちづくり講座

 函館のまちづくりについて考える函館市主催の第22回「まちづくり講座」が21日、ホテル函館ロイヤル(大森町)で開かれた。市民ら約200人が参加し、函館の街並みが抱える問題点や都市形成の変遷などについて東京の大学教授やシンクタンク研究員らが講演した。

 講師は、市内の有識者がまちづくりのコンセプトを検討する「美しいまちづくり検討会」のアドバイザーで、東大副学長・先端科学技術研究センター教授の西村幸夫さんと、日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介さんのほか、同検討会座長の公立はこだて未来大教授の木村健一さんの3人。

 藻谷さんは、全国で高い函館のブランドイメージについて「過大評価」ときっぱり。市の観光ポスターを例に「ピンポイントでは美しい景色があるが、中心市街地は空き地の集まり。函館山からの夜景も市民の生活のにおいがする美しさが年々失われている」として、人が住む市街地の重要性を説いた。改行 また、国立社会保障・人口問題研究所が示す函館の急速な人口減少予測を引き合いに「郊外の環状道路の開発など函館のまちづくりは間違っていた。病院や学校を中心部に戻すなど市街地への人口と機能を再集中させ、細部まで美しいまちづくりが生き残りの鍵だ」と強調した。

 西村さんは開港都市の形成過程に着目し、「港町は横軸の発展が多いが、函館は個性のある縦の坂道が多いユニークなまちづくり。街の中に描かれた物語から景観をつくり、個性豊かに磨き上げて」と述べた。木村さんは同検討会での議論を踏まえ、「函館は動脈が機能しているが、周りの筋肉が落ちている」と指摘し、市街地に人を呼び戻す大切さを訴えた。(森健太郎)


◎大妻高演劇部が28日に自主公演

 函館大妻高校演劇部(白川華部長、部員8人)が28日午後6時から、旅立ちをテーマとした初の自主公演「ホーム」を市芸術ホール・ギャラリー(五稜郭町37)で開く。会場を駅のホームに模様替え≠オ、女子高生が挫折から立ち上がる芝居を熱演する。本番まで一週間を切り、部員たちは一年間の集大成にしようと一丸で猛練習に励んでいる。

 公演開催のきっかけは、昨年10月の高文連道南支部演劇発表大会で全道大会への出場権を落としたこと。初めは落ち込んだが「もう演劇ができないのは寂しい。何かやろうよ」と涙ながらに3年生が立ちあがった。例年は支部大会終了後、新年度まで発表の場はなかったが、顧問の森雪恵教諭とともに脚本の制作を決めた。同校によると、市内の高校演劇部の自主公演は珍しいという。

 「ホーム」は大学受験に失敗し続けている高校3年生の真希が主人公。不合格通知を受けたある日、上京すべく駅へ走ると、ホームでさまざまな事情を抱える3人の女性と出会い、互いに心を通わせ合いながら夢や希望、家族の大切さを再認識していく|というあらすじだ。

 舞台はJR函館駅のホームとの設定。ベンチや待合室のほか、会場入り口も改札口にするなどのこだわりようで、来場者もホームを行き来する「乗客役」になってもらう。

 部員は3年生6人と1、2年生一人ずつ。年明けから台本の読み合わせを始め、4人のキャストを中心に毎日稽古している。

 元不良少女役で出演する白川部長(18)は「緊張しているけどとても楽しみ。私たちと同年代の人にしか分からない気持ちを伝えたい」と張り切る。演出担当の熊谷瞳さん(18)も「シリアスな一方、コメディーな部分も用意している」、主人公役の1年生渡辺美希さん(16)は「難しい役柄だけど精いっぱい頑張る」と話す。

 森教諭は「生徒の情熱が伝わり、お客さんも心から楽しんでもらえる本番になれば」と目を細める。

 入場料250円。問い合わせは同校の森教諭рO138・52・1890。(長内 健)