2012年3月1日 (木) 掲載

◎「ハルキ」が福島の幼稚園にジャングルジム寄贈

 【森】製材会社「ハルキ」(町姫川、春木芳則社長)は道南スギを使ったジャングルジムを製作し、福島県内7カ所の幼稚園に寄贈する。福島第一原発事故の影響で、屋外での遊びが制限されている子どもたちへのプレゼントとして、13日から現地入りして設置を行う。春木社長(61)は「東日本大震災1年の節目に何かできればと考えていた。室内でも思い切り体を動かして、少しでも笑顔を見せてもらえたら」と話している。

 ジャングルジムは、同社商品企画課長で道認定の「木育マイスター」鈴木正樹さん(39)が自社の技術と道南スギを活用した木製遊具として考案。大きさは1・4メートル四方、高さ2・8メートルで、柱を登ったり、台座の上に座ることができる。

 昨年9月、東京都内の展示会で木育ブースを設けて、試作品を出品し、その後、町内の幼稚園に寄贈し、好評を得た。活用を模索する中で、屋外活動が制限されている同県内の幼稚園と交渉し、郡山市や福島市、南相馬市など7カ所の寄贈先を決めた。

 鈴木さんは「昨年、義援金活動も行ったが、木材を使った支援ができないかと考えていた。外での遊びができなくても、ジャングルジムは登ったり、飛び降りたりと体を動かしてもらえる」と話す。

 プレカット技術で加工した木材を住宅と同じ金物工法で組み立てるため、木製遊具としての強度は十分で、林産試験場からアドバイスを受けるなどして安全性を確認した。部品を組み替えて形状を変えることも可能で、拡張性も高く、商品化も検討している。鈴木さんは「スギ材の良さを知ってもらい、木のぬくもりを楽しんでもらいたい」と話している。

 また、同社は13〜15日に同県内で行う設置作業への協力も呼び掛けている。現地までの交通手段や宿泊など、すべて自己負担ができることが条件。問い合わせは同社TEL01374・2・2057。(今井正一)



◎新函館—小樽経営不参加、工藤市長「白紙」

 函館市議会第1回定例会は29日、各会派の代表質問が始まり、3氏が登壇した。工藤寿樹市長は、北海道新幹線の札幌延伸に伴ってJR北海道から経営分離される新函館—小樽間(235キロ)に関する市の対応について「協議会の枠組みが示された段階での判断となり、現時点では白紙」と述べた。「新函館以北の経営には参画しない」とする過日の企画部長の発言を事実上撤回して軌道修正を図るとともに、他の沿線自治体に配慮したものとみられる。

 新函館—小樽間をめぐっては、渡辺宏身企画部長が20日の市議会総務常任委員会で「並行在来線ではなく、新函館以北の経営参画には当たらないと考える」と言及。函館—新函館間(17・9キロ)に限って第3セクター鉄道の経営に参画する意向を示していたが、他の沿線自治体からは「なぜ今の時期に」などと、困惑や反発する声が上がっていた。

 道は札幌延伸の認可決定後ただちに、沿線15市町と負担割合などを話す協議会を設置するとしており、吉田崇仁氏(市政クラブ)は「協議会はいつごろ設置されるのか。また新函館以北に関する市長の考えは」とただした。

 同市長は「並行在来線(253キロ)は渡島と後志にまたがる長大なもの。すべてを網羅する一つの協議会として立ち上げるのか、いくつかに分割して個別に協議会を立ち上げるのかといった詳細は、道が主体となって決定していくもの」とし、現時点では枠組みが未確定との認識を示した。

 その上で、新函館以北の経営参画について「現時点では協議会の具体内容が示されていない。今後道や沿線自治体とも協議していく中で市の対応を考える」とした。ただ、経営に参画することについては慎重な姿勢を崩していない。

 代表質問には吉田氏と斉藤佐知子氏(民主・市民ネット)、井田範行氏(市民クラブ)が登壇した。改行 本会議ではこのほか、港町ふ頭分譲地の売り払いに伴う本年度一般会計補正予算など議案3件が追加提案された。本会議終了後には委員8人からなる予算特別委員会を設置し、委員長に北原善通氏(市政クラブ)、副委員長に日角邦夫氏(民主・市民ネット)を互選した。(千葉卓陽)



◎前田氏が自民8区支部長に決定、次期衆院選に出馬表明

 【札幌】自民党本部は29日、党道連(伊東良孝会長)が道8区(渡島・桧山管内)支部長として上申していた松前町長の前田一男氏(45)を、正式に支部長に選任した。前田氏は次期衆院選に党公認で出馬を表明し、「道南の疲弊を感じており、活性化させたい。人を道南に呼び込んで雇用を増やし、若者が残れるまちを作りたい」と意欲を示した。次期衆院選への出馬表明は前田氏が初めて。自民党は今後、次期衆院選に向けた体制構築を本格化させる。

 党道連は8区支部の決定を受け、2月8日の総務会で前田氏の推薦を決定。谷垣禎一総裁や石原伸晃幹事長らとの面談を経て、29日に支部長に決まった。

 前田氏は札幌市内で川尻秀之支部長代行(函館市区選出道議)らとともに会見。民主党政権について「2年半で内政も外交もめちゃくちゃになった」と批判し、「国政レベルでは防衛と保守思想に基づいた経済、政治、教育を訴えていく」と強調。

 その上で、長年の懸案となっている保守一本化に関して「厳しい経済状況の中で分裂と言っていられない。地域の将来を見据え、一丸となりたい」と、議席奪回に向けて団結する必要性を訴えた。

 また、前田氏は松前町長の任期を4月10日まで残しており、「議会が3月14日までなので、きちんと議会を終え、町民に役目を果たしたい」とした。

 前田氏は1966年松前町生まれ。北大工学部卒。2003年に無所属で衆院選道8区に出馬し落選。04年の松前町長選に出馬して初当選し、現在2期目。8区支部が昨年12月から行った支部長公募に自薦で応募していた。(千葉卓陽、藤倉康次郎)


◎イオン北海道、函館圏に出店構想

 大手スーパーのイオン北海道(札幌、柴田祐司社長)が函館圏への出店を検討している。地元関係者間では出店候補地として七飯町峠下地区が取りざたされているが、同地区への出店は都市計画法などでの規制から、現時点では困難な状況。同社は「3年後の2015年ごろまでに道南に出店したい」とし、候補地を函館市とその近郊で探している。

 同社は現在、道内で31店舗を構えているが、道南は未進出で「道内をフルカバーできる最後の地」(同社)と位置付けて15年ほど前から構想を持ち、函館市西桔梗町に部分的に土地を取得した時期もあった。しかし、函館市は地元商業者らの反対を受けて2006年9月と07年12月の2度、同社に対し出店自粛を要請している。

 七飯町峠下地区は、北斗市の北海道新幹線新函館駅(仮称)から至近距離にあり、道央自動車道も七飯インターチェンジまで新直轄方式による延伸が計画され、16年度以降の開通が見込まれるなど、今後交通の利便性が高くなる地域だ。

 同社の既存店は数千〜4万平方メートル規模だが「函館地区の商圏規模から、進出するのであれば1万平方メートルを超える店舗としたい」(同社)との意向。ただ、峠下地区は2007年9月に道が指定した同町仁山から藤城地区に及ぶ準都市計画区域に含まれる。3000平方メートル以上の開発行為には都市計画法の許可が必要で、1万平方メートルを超える大規模集客施設の立地は制限されている。

 中宮安一町長は昨年12月の町議会で、企業誘致にかかわる基本姿勢を問われ、「法律上難しい部分もあるが、地域経済活性化や雇用増の取り組みも必要。立地の意向や相談があれば『ウエルカム』の姿勢で対応したい」とした。

 同社の出店計画については、29日の函館市議会で井田範行氏(市民クラブ)が取り上げて対応をただした。工藤寿樹市長は「都市計画法など法令の規制を鑑みると、実現は極めて難しい」との見解を示し、「市の中心市街地はもとより、函館圏の都市構造に与える影響も大きい」と、慎重に対応する姿勢を見せる。(千葉卓陽、斎藤まや、今井正一)


◎道南農試が水稲、黒大豆の新品種開発

 【北斗】道総研道南農試(北斗市本町)は、いもち病の本田薬剤散布が不要な水稲新品種「空育172号」と、ダイズシストセンチュウ抵抗性が強く、従来より収量が多い黒大豆の新品種「中育63号」を開発した。いずれも道南向けで、172号は「ななつぼし」、63号は「晩生光黒」と「いわいくろ」に代わる品種として期待が大きい。2013年から農家での栽培が可能となる。

 同農試が28日、同市農業振興センターで開いた「第14回道南農業新技術発表会」で、同農試の宗形信也主査が報告。農家やJA職員ら約140人が参加した。

 新品種は、中央農試(空知管内長沼町)との共同研究で育種した。172号は「ふっくりんこ」の子ども。試験の結果、穂いもち病抵抗性は「ななつぼし」の「やや弱」、「きらら397」の「中」に対し、172号は「やや強〜強」だった。道内で栽培される水稲品種の中で最も強いレベルの抵抗性を持つという。割れもみが少なく、食味はななつぼし並みかやや勝り、熟期がやや遅いのも特徴。宗形さんは「減農薬栽培のななつぼしのほとんどに置きかえることで安定生産を行い、クリーン農業を一層推進し、さらに道産米の普及拡大に対する優位性を向上させたい。また、一般栽培のななつぼしの一部に置き換え、いもち病防除のコスト低減を図り、収益性を確保したい」と述べた。普及見込み面積は道南などで3000ヘクタール。

 63号は、道内で栽培される黒大豆で初めてダイズシストセンチュウ抵抗性を持つ。試験では収量は「いわいくろ」より平均8%多い。百粒重量は56・1グラムで、「いわいくろ」(51・5グラム)より大きく、「晩生光黒」(55・4グラム)並みだった。「晩生光黒」のすべて、「いわいくろ」の一部と置き換えて普及、「16年には道南で300ヘクタールに普及したい」(宗形さん)。

 172号の白米の試食もあり、参加者が食味を確かめていた。(山崎大和)