2012年3月10日 (土) 掲載

◎スーパーの宅配が人気

 記録的な大雪に見舞われた函館・近郊のデパートやスーパーで、野菜や日用品を消費者宅に届ける配送サービスの利用が増えている。インターネットで商品を注文するイトーヨーカドー函館店(美原1)の「ネットスーパー」は、2月の利用が前年同月比40%増となり、同店は「大雪の翌日や道路状況が悪い日は特に利用が目立った」としている。

 同店は、食品売り場の生鮮野菜やお菓子など、ほぼ全ての商品の注文をネットスーパーで24時間受け付けている。2月8日ごろから利用が増え、1日の受注限度120〜150件に達した日も多く、同店は「こんなことは初めて。トラックの運行台数も限られていて、対応に追われる日が何日も続いた」と驚く。

 入会無料の同スーパー会員は函館・近郊で約4000人。配送エリアは旧4町村地区を除く函館市内と北斗市の一部で、毎日3便運行。注文から最短約3時間で届ける利便性と、4000円以上の注文で配送料が無料になることから、主婦や体の不自由なお年寄りらに好評という。同店は「今後は配送体制を拡充していきたい」と話す。

 スーパー魚長は函館・近郊の13店舗で、各店舗で購入した商品を届ける宅配サービスを展開。60歳以上の市民や妊婦、体の不自由な人は月曜日に限り配送料無料で、2月の利用は前月比200件増の約540件となった。同店担当者は「利用者は店舗の近所から歩いてくる人が圧倒的に多い。重い荷物を抱えたまま雪道を歩くのは困難で、『助かります』という声をたくさんいただいた」と話している。



◎企画【震災を乗り越え 函館朝市復興の軌跡(下)】「市民に愛されたい」

 復興を遂げた函館朝市。確実な集客や生き残りをかけ、今後の方向性を探る動きも活発化している。震災の影響で観光客が一気に引いた昨年春、函館駅二商業協同組合の藤田公人理事長は「観光客だけでは限界がある。もっと市民に愛されたい」と強く感じた。

 きっかけは、観光客が来ない中での試行錯誤で近隣の家庭にチラシを投函した直後のこと。複数の市民がわざわざ足を運んだり、電話注文するなど積極的に利用してくれた。

 「地域で商売している以上は地元の人に愛され、ここぞと言う時に利用され、口コミで紹介してもらうような姿を目指す」と藤田理事長。昨年夏には名物のイカ釣り価格を毎日変わる時価に修正し、安価となる漁期にはより気軽に体験できるよう工夫した。「とにかく市民を近づける努力を今後も続ける」。

 商業施設を建て替えようという活気ある動きもみえてきた。「対面販売の原点」ともいわれる渡島蔬(そ)菜農業協同組合は2012〜13年に、国の補助金などを活用し施設の建て替えを計画中。築50年にもなるドーム状建物の老朽化が目立つためだ。

 最高で事業費の3分の2を国が負担する制度で、新施設に出店者や周辺の商業者、利用者のニーズを盛り込む必要がある。4月に調査に着手する予定で、現在のところ概要や機能などは未確定。半面、夢の施設ができるという未知数の可能性を秘める。

 朝市の役割について坂口雄一組合長は「すでに函館の観光地として位置づけられている」と自負。「観光スポットの要素が強く、それをさらに確固たるものにしたい」と意気込む。狙うのは同組合単独の効果ではなく、朝市全体の集客力アップだ。「波及効果が生まれる」として作業に力が入る。

 「朝市は観光地」という声は根強く、大勢を占める。ただ、この中でも「正月準備など豪華な食材を求める時には市民に利用されるようにしたい」(函館朝市協同組合連合会の井上敏廣理事長)との思いは強まってきた。

 市民を呼ぶ動きの一つとして、どんぶり横丁が2005年から続けるワンコイン(500円)丼がある。毎月第4火曜、各店が限定の丼を提供する。自身も横丁に店を構える井上理事長は「地道に続けることで効果は生まれるはず」と今後も継続の考え。

 同連合会が25日に開催するスプリングフェスタのテーマは「笑って」。ものまねステージやコンテストなどで朝市に笑顔を呼び込もうという気持ちを込めた。「元気でやっているというアピールを続ける」(井上理事長)。それぞれの模索が続く。(斎藤まや)



◎津波検証 市内7町内で浸水…東日本大震災あす1年

 2011年3月11日午後2時46分、太平洋三陸沖を震源として発生し、本道や東北から関東の東日本一帯に甚大な被害をもたらした東日本大震災から11日で1年を迎える。函館市の7日までのまとめによると、西部地区を中心に津波による浸水で死者1人、被害額は住宅や市有施設、漁業・漁船で約14億3783万円に上っている。特に函館朝市などに大きな被害をもたらした津波について検証する。

 気象庁によると、函館市海岸町にある検潮所が観測した津波の第一波は11日午後4時15分で1・9メートル。最大は同11時35分で2・4メートルだった。このほか道南では、森町で最大1・64メートル(午後7時36分)、せたな町で最大24センチ(同7時15分)、江差で最大15センチ(同9時28分)だった。

 函館海洋気象台は14日、職員が函館港周辺で聞き取りによって浸水区域を調べた。最も北は海岸町のJR函館運転所。若松町の函館駅前から国道279号(市電通り)の函館港側で、大手町、豊川町、末広町、大町、弁天町の一部と分かった。同調査では市内大町の海上自衛隊函館基地隊で2・6メートル、弁天町の函館マリーナで2・5メートルの高さだったことも明らかになった。岬の先端や湾の奥などの地形では波が集中するためと思われる。

 函館朝市では、11日午後4時半ごろから浸水が始まり、同5時ごろに一帯が冠水状態となった。時間が経つにつれ浸水は増し、建物の損壊も発生するようになった。ベイエリアのホテルなどでは客や従業員の車両が浸水。市内全体の車両被害は789台で金額は不明。商業施設や飲食店では店内清掃に追われたほか、漏電の復旧工事に時間を要したため、営業再開まで1カ月以上かかるところもあった。

 今月7日現在、市が把握している被害は、床上浸水575棟、床下浸水91棟で被害額は計約12億4182万円。市水産物地方卸売市場(豊川町)が一部損傷するなど、市の施設被害額は約8668万円。漁船は転覆4隻、破損など7隻で約5246万円の被害。養殖コンブなどの漁業被害は約5687万円となった。

 市内の観光関係者は「東北新幹線の全線開通(10年12月)後、卒業旅行などの春の観光シーズンを迎える時期だっただけに、ダメージは大きかった」と話している。(山崎純一、森健太郎、長内健)


◎あす市内で震災追悼行事

 東日本大震災から1年を迎える11日、函館市内ではさまざまな追悼行事などが行われる。一般市民が参加できる主な催しは次の通り。

 ▽「祈りよ とどけ」(午前5時56分ごろ、大森浜海岸)=函館市日乃出町の啄木小公園からグルメ回転寿司函太郎付近までの大森浜海岸沿い約700メートルで参加者が手をつなぎ、日の出時間に33秒間、被災地に向けて黙とうする。その後、「故郷(ふるさと)」を合唱する。問い合わせは渡辺さん電話090・3396・9909。

 ▽「函館ハート・プロジェクトVol・3函館からのおくりもの〜3・11を忘れないために」(午前10時、末広町・金森ホール)=歌やダンスの披露のほか、福島と函館をインターネット中継でつなぎ、応援メッセージを発信する。午後5時からは、函館朝市からベイエリアまであんどん行列を行う。参加希望者は同4時半に函館朝市どんぶり横丁前に集合する。問い合わせはむげん空間小春日和電話0138・83・7721。

 ▽「第18回投げ銭チャリティーコンサート 唄って・笑って・春が」(午前10時、東山1・東本願寺函館別院東山支院)=江差追分会函館声徳会支部主催。復興や希望の思いを込め、「江差追分」「道南口説節」などを披露する。投げ銭で義援金を受け付ける。問い合わせは内村さん電話0138・54・6331。

 ▽「日本財団写真・動画コンクール2012 あれから365日。あなたの目に映るものは」=今年3月11日に撮影した写真や、同日を中心に撮影した10分以内のドキュメンタリー動画を募集する。東日本大震災を連想させる内容を作品に含める。詳細は同財団ホームページhttp://www.nippon-foundation.or.jp/index.html


◎スイーツや美テーマに多彩な催し…「春フェスタ」11日スタート

 函館梁川商興会は、「春フェスタinYanagawa」を初めて企画した。11、18日、25日の日曜日ごとに、同商興会内を会場に、スイーツやセラピー、美をテーマにイベントを開催する。初回の11日には茶会や振る舞い菓子、アート講座などを行い、多数の市民の来場を呼び掛ける。

 同商興会として合同の企画は約15年ぶり。市の「元気いっぱい商店街等支援交付金」を活用して実施する。

 「人と商業者をつなぐ」をテーマにイベント内容を決めた。11日の会場はテーオーデパートで、午前10時15分から午後4時まで、茶会や文字アート、テーブルコーディネートの講座を開催。午前10時、午後1時、同4時の3回、同商興会に加盟する菓子店などのスイーツを合計1500個無料配布する。

 18日の会場はベルクラシック函館で、開催時間は午前11時から午後4時半。「パワースポット梁川で幸運を呼ぶ」と題し、アロマ・カラーセラピーやヨガ体験、占いなどを行う。

 25日の会場はマリエール函館で、午前10時半から午後4時までの開催。「美・フェスタ」をテーマに、美容ジャーナリスト・上田祥子さんのトークイベント(午後1時半から)のほか、各500円でウオーキングやメーク、ヘアーアレンジ、ボディージュエリーなどのプロが講座を行う。

 いずれも入場無料だが、18、25日の一部の講座は有料。参加希望者は直接会場へ。問い合わせは同商興会事務局(テーオーデパート内)電話0138・32・0501。(斎藤まや)