2012年3月15日 (木) 掲載

◎3年間は一生の宝物 「遠友塾」卒業式 1期生38人

 戦争や病気で十分な教育が受けられなかった人を対象にした道南初の自主夜間中学「函館遠友塾」(今西隆人代表)の卒業式が14日、函館市総合福祉センターで行われた。卒業生38人は在校生やスタッフに見守られながら、第1期生の誇りを胸に学びやを巣立った。

 函館遠友塾は七飯養護学校の今西教諭が2009年に開設。現在は20代から90代と幅広い年齢層が在籍し、週に1回国語や数学、社会、英語などの教科を習っている。

 卒業式では在校生らから大きな拍手が送られる中、入場。今西代表が一人一人に卒業証書を手渡し、その後それぞれが3年間の感謝の言葉を述べた。スタッフや同窓生、在校生に向け、「一生忘れることのない大切な宝物ができました。3年間ありがとうございました」など言葉を詰まらせながらスピーチした。

 今西代表は「次の目標や夢に向かって頑張ってください」と激励し、送辞では2年生全員が「みなさんはいつまでも私たちの先を行く遠友塾の先輩です。今の情熱をあたため、元気で過ごしてください」とメッセージを伝えた。

 同塾最高年齢の黒田正二さん(92)は「塾で得たものはたくさんあった。勉強だけでなく遠足も楽しかった。この3年間は忘れられないいい思い出」、3年間皆勤賞を表彰された浅川美津子さん(80)は「プレッシャーを感じることなく気楽に来れ、とても楽しい3年間だった。スタッフや仲間のおかげです。春から短大で勉強を頑張ります」と笑顔で話していた。(平尾美陽子)



◎除雪費8億円突破へ 本年度の函館市

 函館市議会の予算特別委員会(北原善通委員長)は14日、経済建設常任委員会所管分を審議した。今季の大雪で市の除雪体制に関する質問が相次ぎ、本年度の除雪費について市土木部は「8億円は超えるのではないか」と述べ、過去最高額に上る見通しを明らかにした。

 市は除雪費として本年度当初予算の3億1000万円(旧4町村を除く)に4000万円の追加補正を決定。さらに本来は道路の整備や維持補修のための「道路橋梁維持費」から8600万円を流用しても追い付かず、予備費から3億5000万円以上を充当する方針だ。

 除雪費は過去最も多かった昨年度の5億3500万円を大きく上回り、雪で市の財政がさらに圧迫された状況に。政田郁夫土木部次長は「苦情が殺到する状況は想定していたものの、ここまでひどくなるとは思っていなかった」と述べた。

 これに対し、阿部善一氏(民主・市民ネット)は市の道路除雪マニュアルが生かされていないことを指摘し「除雪作業が後手後手で、行政の不作為だ」と厳しく批判。今後の予算について片岡格副市長は「マニュアルや予算規模を検証し、足りなくなる場合は速やかに補正していきたい」と答えた。(森健太郎)



◎大型店「函館圏域の問題」 新駅への企業誘致で北斗市

 【北斗】市議会予算審査特別委員会(高田茂委員長)は14日、新年度一般会計予算案の審議を続行。北海道新幹線新函館(仮称)駅前への企業誘致にかかわり、大規模商業施設の出店に関する市の考え方について、永田裕経済部長は「函館圏域として考えなくてはならない。競合するような店舗が来れば、地元の商店街がつぶれ、函館市内の百貨店にも影響が出る可能性がある」と慎重な姿勢を示した。

 白戸昭司委員が七飯町峠下地区の大型ショッピングセンター出店計画を念頭に、新幹線駅前への商業施設誘致の考えをただした。

 市によると、現在、整備が進む新幹線駅前の商業地は1区画5000平方メートル程度で、都市計画法上も1万平方メートル以上の大型店出店は規制されている。周辺に優良な農地が広がっていることや、「市内の大型店は飽和状態」であることから、駅前に大型店は誘致しない考え。

 永田部長は「消費者には非常にいいことかも知れないが」と前置きした上で、大型店出店により、中心市街地の空洞化を招いた苫小牧市の事例を挙げ、地元の上磯駅前や本町商店街だけではなく、函館市内にも影響を及ぼすと答えた。

 この日の審議では、花巻徹委員が観光振興にかかわり、市観光協会の将来像について質問。商工労働観光課の中村淳一参事は2014年度までに法人格を取得し、協会の財政基盤を強化する考えを示した。(今井正一)


◎水産珍味販売高513億円 震災で代替受注増

 函館特産食品工業協同組合(石尾清広理事長、組合員56社)の2011年(1〜12月)の珍味加工品販売高は、前年を8%上回る513億5382万円となった。500億円に達したのは19年ぶりで、1991年(約520億円)、92年(約518億円)に次ぐ過去3番目の金額。東日本大震災の影響による代替受注の増加が数値を押し上げた。

 同組合は函館市、北斗市、知内町の珍味加工業で構成。組合員のうち、前年と同じ48社分を集計した。主力のイカ製品と、タラ・タコ・その他製品を合わせた全体の出荷量は4万5496トン(前年比9%増)となり、出荷量、金額ともに前年より伸びた。

 区分別では、イカ製品が3万842トン(同12%増)、325億5839万円(同14%増)。このうち、塩辛が1万1387トン(同31%増)、66億3443万円(同26%増)と大幅増。また、イカを主としたその他生鮮珍味(イカ飯など)が3045トン(同50%増)、27億6640万円(同64%増)、スルメさきいかが1511トン(同3%増)、29億6610万円(13%増)。

 タラ・タコ・その他製品は1万4654トン(同4%増)、187億9542万円(前年と同額)だった。

 東北の水産加工施設が被災したことで、函館での代替生産が増えたことに加え、震災を受け保存性の高さや調理が簡単な食品に対するニーズが高まったためとみられる。

 ただ、製品平均単価が1キロ当たり1129円となり、前年を9円下回った。91年(1456円)、92年(1404円)と比べても落ち込みが目立っている。(山崎大和)


◎豪快に海へ200人歓声 函館どつく 進水式

 函館どつく函館造船所(函館市弁天町、大村靖夫社長)が建造中の新造船「コアシップ・オーエル」(1万9850トン)の進水式が14日、同造船所で行われた。同社が開発した木材兼ばら積貨物船「スーパーハンディ32」で、同型船としては51隻目。本年度最後となる7隻目の進水で、建造ペースは順調という。

 同社は年間7隻ペースの新造船を予定しており、本年度は計画通りに運んだ。4月以降の次年度も同じ7隻を予定している。

 同型船は喫水を浅く、船体の幅を広くするなどして積載容量、推進力を高めている。船体の全長は約176メートル、最大幅は約29メートル。船主は台湾の海運会社・シーウェイで、船籍はパナマ。

 進水式では、船主が斧で綱を切断すると、大音量の軍艦マーチの中で船は函館港へと滑り出した。この様子を約200人の市民や従業員らが見守った。同船は今後内装工事などを経て4月下旬に引き渡される。

 次回の進水式は5月8日の予定。(斎藤まや)