2012年3月18日 (日) 掲載

◎「箱館はじめて物語」改訂 読みやすく時系列に 電子書籍版も発行

 函館在往の歴史研究家・中尾仁彦(とよひこ)さん(69)は、2010年12月に自費出版した函館の人物や街の歴史について紹介する「箱館はじめて物語」の改訂版をこのほど、市内の出版社「新函館ライブラリ」(大西剛社長)から発行した。同社では電子書籍でも取り扱っており、さらなる函館の魅力発信への期待が高まっている。

 「—はじめて物語」は中尾さんが主宰し、西部地区を歩きながら郷土の歴史を学ぶ「箱館歴史散歩の会」の50回目を記念し、函館の人物や街といったテーマ別に紹介した。1000部を発行したが、分かりやすく、楽しく函館を知ることができるとあって1年で完売。「幻の名著」とされた。

 増版を望む声を受け、今回は函館の歴史を時系列にした。高田屋嘉兵衛から、ペリー来航、箱館戦争、函館公園と推移し、各時代で関連した函館事始めやエピソードを展開している。「内容は初版のままで、組み替えたことで改訂版とした。時代ごとで函館の変化が分かり、読みやすくなったと思う」と中尾さん。

 編集・制作を手掛けた新函館ライブラリの大西さん(52)は、09年から函館の街に魅せられ、11年9月に京都から移住。函館・道南や青森の魅力を全国に広めたいと電子書籍中心の出版社を立ち上げた。採算が合わないなどの理由で、出版社が手掛けないようなコンテンツを発掘、電子書籍化し、地域の文化と活力で「地域密着、脱中央」を目指している。

 大西さんは「中尾さんの本は旅行ガイド誌ではないが、函館の魅力が伝わり、観光客が『次はここを見に函館に来よう』という気持ちになる」と話す。電子書籍の利用者はこれから伸びるとし、「そのためにさまざまなコンテンツを用意したい」と話している。

 本は四六判、208ページ。1000円(税込)で、2000部発行。加藤栄好堂書店などで発売。電子書籍は840円(同)で、http://hakodate.wook.jp/で取り扱っている。問い合わせは大西さんTEL090・1381・1959。(山崎純一)



◎東日本大震災1年 市民意識調査 「生活に影響」43%

 東日本大震災で43%の市民に影響があり、復興支援をしたのは86%、地震で心配なのは津波より火災—。函館新聞社は東日本大震災から1年を機に、函館市内や沿岸部の住民を対象に、震災や防災に関する意識アンケート調査を行った。復興支援をした中で「募金をした」人が81%に上るほか、78%は防災に関して意識や備えをしていることが分かった。津波被害を受け、生活に影響が出たとはいえ、復興に力を合わせたことが垣間見えた。結果を2回に分けて掲載する。

 調査は2月27日から3月16日まで、高校生から80代の150人に対し、用紙での選択と記入形式で行った。質問は「東日本大震災の影響」「復興支援」「防災意識」の流れで7項目。

 「東日本大震災で仕事や家庭で影響がありましたか」の問いに、「あった」と答えたのは64人、「なかった」は86人だった。「影響があった」との回答のうち、津波による建物や車などの物損被害は計9人だった。

 事業主において、売り上げの減少、商品・資材納入の遅れ、業務内容の変更などが17人あった。中には「東北地方の部品製造の下請け業者が被災し、業者を替えたらコストが高くなった」「東北の被災地に職員を派遣するため多忙になった」の意見があった。サークルや文化教室の主宰者でも年間の事業計画に変更があり、震災の影響が各所に及んだことがうかがえる。

 個人として、「家族・親せきが被災した」は3人だった。このほか「旅行が中止になった」「会社の仕事が忙しくなった」のほか、「放射能問題で食品の産地を気にするようになった」(5人)、「日用品不足や物価高騰」(6人)など、日常生活に影響が出たとする人も多かった。このほか「就職活動に影響した」などの意見が聞かれた。

 世代別で「影響のあった」という人の割合が最も高かったのは20代の60%。買い物や仕事に関して幅広く接しているためと思われる。50代以上では37%だったが、「津波による家屋の損壊」を挙げた2人は70代と80代。津波被害のあった西部地区の居住者とみられる。

 なお、アンケート項目は影響を記入してもらう形だったため、「影響がなかった」とした人も、心当たりがあるだろう。

 「この1年間で、東日本大震災の復興で支援したことはありますか」の問いに、「ある」と答えたのは129人(86%)、「ない」は21人だった。

 「ある」と答えた人の内容は記入形式で「募金をした」は105人、「支援物資を送った」は9人だった。中には「募金箱を見掛けるたび、持っていた小銭を入れた」(60代男性)という人も。事業主の中では「工事の資材が足りない状況では仕事にならないので、工事依頼主から承諾を得て、持っているものを被災地に寄付した」とあった。

 個人・団体としてチャリティー事業を開いたのは3人あり、被災地でボランティア活動をしたのは1人だった。復興支援のCDや宝くじ、被災地の地酒を買ったなどの回答もあった。

 一方、支援活動をしなかったという人の理由については、「身内を助けるのに精一杯」「就職活動で忙しい」とあったほか、「何をすれば良いか分からない」「仕事が多忙」との回答があった。

 震災の影響はなく、支援もしていないとするのは12人(8%)。「募金が何に使われるか分からないから」「支援は国が行うこと」との見解があった。



◎函館市、団体からの提案型事業に補助

 函館市は新年度、地域課題の解決に向け、市と協働で事業に取り組むNPOなどの団体を対象とした新たな補助制度を創設する。子育て支援や高齢者介護、地域の防犯などさまざまな事業への補助を想定しており、団体側から提案を受け、最大で5件程度の事業を採択する考え。早ければ5月から事業を公募する。

 市は2000年度から人づくり・まちづくり事業として、まちづくりのリーダーとなる人材育成に向けた「市民自主研修支援補助金」、市民団体の自主的活動を支援する「まちづくり活動支援補助金」、市が設定したテーマに基づく事業を対象とした「市民とつくるまち・縁(エン)パワーメント補助金」を設けて、市民団体に補助金を支出してきた。

 しかし、近年は「単年度で終了するイベントや、申請される分野に偏りがみられる」(市企画部)ことから、人づくり・まちづくり事業を本年度限りで廃止。市民自身やNPOが主体となって公共サービスを提供する「新しい公共」の視点に立った補助制度へと切り替える。

 募集に際しては、▽公益的で、団体と市が協働で取り組むことで課題解決が図られる▽市民生活の満足度が高まり、効果や成果が期待できる▽市と団体の役割分担が明確かつ妥当▽先進性、先駆性などの工夫やアイデアがある—など、6つの条件に当てはまる事業を対象とする。対象団体は5人以上で、1年以上継続して活動していることを条件とする考え。

 4月に要綱をまとめて上限金額などを設定するとともに、学識経験者や市民団体でつくる検討委員会を設置。早ければ5月から事業を公募する方針で、議会の議決を得て補助金を支出する。

 市企画部は「団体の特性を生かした取り組みを提案してもらい、市とともに事業を行っていくことで、団体のスキルアップに役立ててほしい」と話している。(千葉卓陽)


◎127年間 母校よ ありがとう 本年度で休校する上ノ国・小砂子小学校 卒業生ら175人が思い出語る

 【上ノ国】児童数の減少を受け、本年度で休校する町立小砂子(ちいさご)小学校で17日、思い出を語る会(実行委主催)が開かれた。遠くは名古屋や東京から卒業生や関係者計175人が集い、「これからも古里を見守る存在であってほしい」と、愛されてきた母校への感謝を示した。

 同小は1884(明治17)年に小砂子尋常小学校として開校。127年間、地域に根差した学校として親しまれ、最大63人の児童が在籍。卒業生は延べ667人に上る。

 本年度は、この日卒業した斉藤真人君と古川翔創君の6年生2人が在籍。新年度の入学者はいないため、協議の末休校の措置を取り、学校施設は各種文化・スポーツ講座で利用するほか、防災拠点として活用する。

 語る会は卒業式終了後に行われ、斉藤政人・実行委会長が「心の古里である母校の一年でも早い再開を期待し、この思いを若者に託したい」とあいさつ。工藤昇町長は「小砂子小は地区を団結させ、一人一人をつなぐ学校。思い出を語り、明日につなげてほしい」と述べた。

 小川康二校長も30〜40代の漁業者が奮闘する様子を紹介し「漁業の復活が学校の再開につながるはず。若者の夢を地域で応援してほしい」と声を張った。参加者は旧友との再会を喜び、手づくりのそうめんや赤飯などを味わいながら、思い出話に笑顔を浮かべていた。

 最後に全員で校歌を合唱。閉会のあいさつは代表で斉藤君が登壇。「地域との関わりの大切さを、大人になっても大事に生かしていきたい」と語り、大きな拍手を受けていた。(田中陽介)