2012年3月21日 (水) 掲載

◎火災から函館守れ 大火の日前に烈風下想定し訓練

 1934(昭和9)年3月21日の「函館大火」を教訓とする、烈風下を想定した消防訓練が20日、函館市役所正面の東雲広路で行われた。函館市消防本部の職員や近隣町会員など約130人が参加。火災時の連携体制などを確認し、防災意識を高めた。

 函館大火は住吉町から出火。最大瞬間風速約30メートル以上ともいわれる風の影響を受け、火は市内の約3分の1を焼き尽し、死者2166人を出す大惨事となった。

 訓練は大手町方向から火の手が上がり、強風により延焼の恐れがあるとの想定。消防団員は近隣町会員を避難誘導するなどして、人員の安全確保に努めた。市消防職員も水膜を作り延焼を食い止めようと、消防車両7台を出動させ、10本のホースから一斉に放水。飛び火を防止し、被害を最小限にとどめた。

 同本部の荒木克行警防課長は「当時に比べ防火設備は進歩しているが、函館は強い風がよく吹くので、火災には十分注意してほしい」と話していた。(小杉貴洋)



◎主婦の水野さん函教大卒業 学業と家事両立の4年間

 15日に行われた道教育大函館校(函館市八幡町)の卒業式で、函館市柏木町の水野明美さん(49)が卒業証書を受け取った。一度は諦めた教員の夢をかなえるため、4年前に入学。主婦と学生の2役をこなし、勉学に励んだ。4月からの教員の正規採用とはならなかったが、1日も早く教壇に立つ日を待っている。

 水野さんは中学生のころ、教員の夢を抱いたが、家庭の事情で断念し、高校卒業後、情報系の専門学校に進学した。順調に就職し、その後、教員の夫と結婚。歩んだ道に後悔や未練はなかったが、35歳の時、転機が訪れた。

 当時、通っていた英会話スクールで米国・サンディエゴに1カ月ほど留学し、そこで知り合った仲間や学生たちに刺激を受けた。「結婚していようが、働いていようが年齢に関係なく挑戦していた。やろうという気持ちが大切だと実感した」。帰国後、再び教員を目指す決意を固めた。夫の後押しもあり、2007年ごろから受験勉強を始め、社会人入学制度の受験で人間地域科学課程(国際文化・協力専攻)に合格し、08年4月に入学した。

 専攻の科目の他に教員免許取得に必要な科目も履修。1講目から6講目までびっしり講義の日もあり、研究や教育実習などで帰宅が午後9時になることもあったという。講義の合間の空き時間には自宅に戻り、家事や食事の支度をおろそかにすることはしなかった。

 「落とせない科目ばかりでとにかく必死だった。覚悟がなければできなかった」と水野さん。一方で応援してくれた人たちへの感謝の思いも口にする。

 大学で高校、中学の英語、国語と小学校の教員免許を取得。ただ、教員採用試験は資格年齢を超えて受験できなかったため、臨時採用による教職の道を探る。「諦めないことの大切さを伝えることができる教員になりたい。子どもたちが未来へ踏み出す時、力になってあげたい」と、誓いを新たにしている。(鈴木 潤)



◎五稜郭病院 道南初のカプセル内視鏡導入

 函館五稜郭病院(函館市五稜郭町38、老松寛院長)はこのほど、口から飲み込んで小腸内部を撮影する「カプセル内視鏡」を導入した。道南の病院では初めて。体への負担や苦痛が少なく、従来の内視鏡で難しかった小腸検査に効果が期待されている。

 カプセル内視鏡は2007年10月に保険診療の適用となった。高精度カメラが内蔵され、直径1・1センチ、長さ2・6センチ。検査時、患者の腹部8カ所にコードの付いたセンサーを貼り、画像を記録するデータレコーダーを装着したうえで、カプセル内視鏡を飲んでもらう。

 飲み込まれた内視鏡は腸の蠕動(ぜんどう)運動で移動しながら撮影。1秒間に2枚、検査に要するおおむね8時間で約5万7000枚の撮影が可能で、画像はレコーダーに送信される仕組みとなっている。カプセル内視鏡は使い捨てで、排便時に体外に排出される。

 同内視鏡の検査は外来患者向けで、カプセルを飲んだ後、帰宅して通常の生活、仕事もでき、2時間後から水が飲め、4時間後から軽食も可能という。

 保険適用となるのは、上部消化器官(胃、十二指腸など)、下部消化器官(肛門、大腸など)を先に検査して異常がなく、それでも消化管出血の原因が特定できない時。消化管の狭窄(きょうさく)や閉塞がみられる場合や診断済みのクローン病、人工肛門造成術などの外科手術を受けた人、心臓ペースメーカー使用者には使えない。

 小腸の疾患数は他の臓器と比べ少ないが、長さ6〜7メートルで、口からも肛門からも遠い位置にある臓器のため、これまでの検査手法では内部の状態を的確にとらえるのは困難だった。特に粘膜のただれや潰瘍、腫瘍は見つけにくく、カプセル内視鏡はこれらの病変の発見が期待される。

 同病院消化器内科の小林寿久科長は「小腸疾患の診断、治療に有効に活用していきたい」と話している。(鈴木 潤)


◎高齢農家対策「高収益新作物導入を」渡島総合振興局が新年度からモデル事業

 渡島総合振興局は、高齢農家が栽培しやすく収益性が高い新作物の導入に向けたモデル事業を、新年度スタートさせる。農家の高齢化対策で、推進協議会の開催、モデル実証圃(ほ)の設置、新商品の試作などに取り組む。農村の活力維持や、農地の荒廃を防ぐのに役立ちそうだ。

 渡島の農業就業人口に占める65歳以上の割合は43%(2010年農林業センサス)。全道平均(34%)に比べ9ポイント高く、振興局単位でも胆振(45%)に次いで2番目に高い。渡島は道内でも規模が小さく、施設園芸のウエートが高いため、高齢でも営農が継続しやすいとみられる。しかし、高齢化の進展により地域の活力低下や農地の荒廃が進むといった問題を招くことが懸念される。

 同振興局は、12年度の地域政策推進事業(振興局の独自事業)に「高齢化に対応した高収益新作物普及促進事業」を盛り込んだ。3カ年計画で、初年度の予算額は58万7000円。

 具体的には4月中にも市、町、JA、農業改良普及センター、農業試験場で構成する推進協議会を立ち上げ、どんな新作物を栽培するかを検討。実証圃は12年度に1地区、13年度に2地区、14年度に1地区を選定、農家の協力を得て試験栽培する。新品種、新作型の導入も検討していく。新商品の試作は収穫物を使った料理を作り、消費者にPRする考え。

 先進地視察や、新作物の栽培技術を農家に説明する講習会も開く予定。改行 新作物について、同振興局は「ミニダイコンやリーキ(西洋ネギ)、サヤエンドウなど渡島になじみの少ない軽量野菜が想定される」(農務課)とする。

 収益面でのメリットも重視。新野菜はロットが少ない上、知名度も低いため市場出荷はしづらいが、JA新はこだて(畠山良一組合長)が今夏、北斗市内に新設するファーマーズマーケット(農産物直売所)などでの販売を視野に入れる。

 同振興局は「今後一層の高齢化を見据え、新作物の栽培技術を確立しておくことが重要になる」(同課)としている。(山崎大和)


◎2月の函館市 生活保護率 初の46‰台

 函館市の2月の生活保護率は46・0‰(パーミル=人口1000人当たりの被保護者数)となり、初めて46‰台となった。前年同月比は1・3ポイント増、前月比は0・2ポイント増となっており、増加に歯止めが掛からない。要因について函館市福祉事務所は「景気悪化の長期化で、手持ち現金がなくなる人がさらに増えているようだ」とする。

 函館市の保護率は急激な増加を続けており、現在は全道でも2番目の高さとなっている。2月は率のほか保護者数(1万2834人)、世帯数(9214世帯)のいずれもが過去最多を更新した。増加する要因の一つに保護を受けやすい冬期(11〜3月)という理由もあるが、これにとどまらない原因がある。

 保護開始の理由としては、2月は「手持ち現金・預金等の減少・喪失」が、開始世帯全体の63%を占めて最も多い。次いで「世帯主の傷病」は17%と、この2つが8割を占める。受給世帯全体の類型では「高齢」が42%とさほど変化がないのに対し、「傷病」は27%と比較的増加傾向にあるという。

 同市では保護者数は4カ月連続、世帯数は8カ月連続で増えている。今後について市福祉事務所は「3月も同様のペースで相談などが寄せられている」とし、継続して増加すると予測する。

 最新の道南町部の状況(1月=表)は、渡島管内は前年同月比0・1ポイント増の23・2‰、桧山管内は同1・0ポイント増の33・9‰といずれも高くなっている。ただ町別では福島や鹿部、長万部、奥尻など7町が前年を下回った。また道南の自治体で最も高いのは依然として江差で、前月比では0・4ポイント増加している。(斎藤まや)