2012年3月27日 (火) 掲載

◎道新幹線 全トンネル貫通

 【北斗】北海道新幹線新青森—新函館(仮称)間の「新茂辺地トンネル」が貫通し、北斗市茂辺地の坑内で26日、貫通式が行われた。北海道側の新設区間約38キロで最後のトンネル貫通で、これで新設区間がすべて見通せることになった。

 新茂辺地トンネルは、既に貫通した渡島当別、幸連、札刈、泉沢、万太郎に次ぐ貫通で、北海道側のトンネル全6本が貫通した。総延長3345メートルは、渡島当別の8037メートルに次ぐ長さ。

 2007年11月に函館側(東工区)から掘削が始まり、11年8月には青森側(西工区)からも掘削が始まった。月平均100メートルのペースで順調に掘り進め、貫通にこぎつけた。今後は坑内の覆工コンクリート工事や、新幹線が走る盤を整備するなどして開業に備える。橋梁(きょうりょう)などの明かり工事も含め、西工区全体は13年3月の完成を予定している。

 式典には約190人が出席。鉄道・運輸機構北海道新幹線建設局の高瀬昭雄局長や永井正博渡島総合振興局長、高谷寿峰市長らが貫通点で握手を交わし、万歳三唱で貫通を喜び合ったほか、みこしで酒だるが運び込まれ、鏡開きも行った。

 永井局長が「新幹線開業に向け、渡島の食と観光をますます磨き上げ、PRしていくことが必要。地域の経済力アップに努力したい」とあいさつ。高谷市長が「開業に向け新たな一歩を踏み出した。駅舎は13年に工事着手できるのでは。新駅を核として北斗市、道南全体の発展につなげていかなければ」と話した。

 同機構によると、新青森—新函館間(約148キロ)の予算ベースの進捗(しんちょく)率は約50%(11年度末)。(山崎大和)



◎グルメサーカスなど全51事業 函館市制施行90周年

 函館市は今年、市制施行90周年を迎えるにあたり、記念事業を公表した=別表。現段階で主催をはじめ協賛、後援などを含めて51事業を予定。施行記念日の8月1日に市民会館で記念式典を行うほか、9月に食をテーマとしたイベント「はこだてグルメサーカス」を駅前・大門地区で、11月上旬には五稜郭地区で塩ラーメンを中心とした「函館うまいものフェスタ(仮称)」などが開催される。

 市は90周年を迎えるにあたり、2015年度の北海道新幹線開業や中心市街地の活性化を見据えた中で各種イベントをまとめた。

 記念式典は1972年の市制50周年から10年ごとの節目に開いており、今年も1500人規模の参加を予定。式典には昨年姉妹都市提携した高陽市(韓国)など、6カ所の姉妹都市と友好交流都市の代表を招待するほか、市内の友好団体との関連行事を行う。

 飲食関係では、広域からの観光客誘致を図る目的で「グルメサーカス」を開催。グリーンプラザのほか、市役所本庁舎駐車場や朝市を会場に、各エリアに飲食テント100貼を設置する。「うまいものフェスタ」では市内、道内のB級グルメを集めるほか、各地の特産品の販売も。

 文化・芸術関連では旧函館区公会堂でのコンサート(8月25日)や、市制施行時の函館を紹介する写真展(7〜8月)、「平和の日」函館の集い(来年3月3日)などを開催。豪華客船を使用した市民向けクルーズも6、9月の2度行われる。

 スポーツイベントでは日本女子ソフトボールリーグ(6月2、3日)、バレーボールのV・プレミアリーグ(来年3月中旬)など。シンポジウムやフォーラムも多く、「第9回北前船寄港地フォーラム」(5月25、26日、ホテル函館ロイヤル)、「第31回全国城下町シンポジウム」(6月22〜24日、芸術ホールほか)、「第37回全国遺跡環境整備会議」(11月上旬、市内ホテル)などが予定されている。

 市総務部は「市民と広く90周年をお祝いしたい」としており、今後も各団体から協賛や後援の申し出に、積極的に対応していく方針。(千葉卓陽)



◎東部4支所長の権限強化 地域防災計画まとめる

 函館市の災害時の対応や防災対策を担当者レベルで話し合う「第4回市防災会議幹事会」が26日、市役所で開かれ、本年度の計画修正素案をまとめた。本年度中の見直し対象となっていた16項目に加え、新年度以降に着手する予定だった旧4町村地域の機能・権限の強化や、同会議の構成メンバーの追加などを前倒しで盛り込んだ。

 幹事会は市の「地域防災計画」を作成する市防災会議の下部組織で、今回は地元の関係機関から約40人が参加。これまでの協議で同計画の中で見直し対象となった計70項目のうち、今回の修正案では東日本大震災を踏まえて市独自で取り組むことができる計18項目をピックアップした。

 今回、新たな見直し項目として、災害時に東部4支所では、市の災害対策本部とは別に、各支所で「地区対策本部」を設置し、各支所長の判断で避難勧告の発令や警戒区域の設定ができるように改める。同会議の構成委員に函館航空基地長や函館薬剤師会会長、道看護協会道南南支部長の3者を加える。

 また、津波避難ビルについて、新たに函館税関などが入る函館港湾合同庁舎(海岸町24)と民間施設の「ホテルショコラ函館」(大手町1)を追加して計6カ所としたほか、避難や被害などの災害情報放送をFMいるか(元町)に要請することを決定。ただ、いずれも23日までに各機関と防災協定を結んでいたが、26日の公表まで3日以上遅れた。

 今後、市は4月2日から1カ月間、本年度の同計画修正案についてパブリックコメント(市民意見)を募集し、5月下旬から6月上旬の防災会議で最終決定する。新年度以降は道の津波浸水想定区域の見直しなどを踏まえて、残る52項目について優先度を踏まえて見直し着手項目の検討に入る。(森健太郎)


◎繊細「夷酋列像」見て

 松前藩の家老で画家の蠣崎波響が描いた「夷酋(いしゅう)列像」を収蔵している仏ブザンソン市にあるブザンソン市立美術館のエマニュエル・ギゴン館長が26日、函館市を訪れた。夷酋列像は7月に道立函館美術館で公開されることが決まっており、その下見と事前協議のための来日で、29日まで滞在する。ギゴン館長は「たくさんの人に見てもらい、絵の素晴らしさを感じてほしい」と話した。

 夷酋列像は、蠣崎波響(1764—1826)の代表作で、アイヌ民族の指導者12人を描いたもの。作品は複数組描かれたとされ、函館市立中央図書館に2点、もう一組のうち11点がブザンソン美術館が所蔵されている。函館への里帰りは1991年以来、21年ぶり3度目となる。

 前田一男町長らが昨年10月に渡仏し、ブザンソン市と地域連携協定を締結したことがきっかけで今回の里帰りが実現した。27日にギゴン館長が道立美術館で展示場所や方法を協議するほか、松前町の各施設を視察し、同町での展示が可能かどうかを判断する。

 函館に到着したギゴン館長は、函館で展示することについて「不思議な縁からブザンソン美術館で収蔵しているが、みなさんにまた見てもらえることは非常にうれしい。日仏交流の点からも意味がある」と話した。また、「線の繊細さを感じる」と美術的な価値を評価。絵の保管の観点から「ブザンソン美術館にあるのは、絵にとっても幸運だったのでは」と語った。

 同町での展示の可能性について触れ、「警備体制や管理上、絵画は原則、美術館にしか貸し出していない」と前置きしたうえで、「前田町長から展示に向けた情熱を感じている。可能性を探りたい」とし、前向きに検討する考えを示した。同行した前田町長は「一度、絵を松前の空気に触れさせたい」と話していた。

 函館での展覧会は7月25日から9月9日までを予定している。(松宮一郎)


◎簡易放射性物質検査機器を設置 渡島保健所

 道は、渡島保健所(函館市美原4)に簡易放射性物質検査機器を設置した。コメや野菜、肉、魚など食品全般を対象に、放射性物質の有無を調べるスクリーニング検査を行う。渡島だけでなく、江差、八雲、岩内、倶知安の各保健所管内もカバーし、4月下旬から運用を始める。

 「ガンマ線スペクトロメーター」(1台約300万円)で、渡島のほか、帯広、釧路、岩見沢、上川(旭川)、北見の各保健所に4月上旬までに順次設置される。

 渡島保健所には23日に、道内一早く精密検査機器室に設置された。検査対象は飲料水、乳、乳製品を除く食品全般で、1検体当たり30分〜1時間(前処理時間を含む)で放射性セシウムの有無を測定。フードプロセッサーなどで粉砕したサンプルを専用容器に入れて検出器にセットして測る仕組み。職員3人が検査を担う。

 4月からの国の新基準値では、一般食品は1キロ当たり100ベクレルと厳格化されるが、より安全性を確保するため同保健所での検査で50ベクレルを上回った場合は、道立衛生研究所(札幌)へ検体を送り、精密検査を行う。

 道は、年度内に2012年度食品衛生監視指導計画を策定する。同計画では、道内で流通する食品について6保健所で年間計200検体の放射性物質検査を行い、検査依頼は対応しない方針。検査結果については「公表するかどうか検討中」(道健康安全局)としている。(山崎大和)