2012年3月30日 (金) 掲載

◎大沼の春 まだ遠く、解氷遅れ厚さ60センチ

 【七飯】今冬の冷え込みで厚い氷の張った大沼の解氷が遅れ気味だ。自然公園財団大沼支部(上野文男所長)によると、毎年、「白鳥台セバット」周辺から解氷が進み、昨年3月29日には小沼側の水面は開けていたが、今年は小沼もまだ3分の2程度。大沼公園内ではスノーモービルなどの営業も継続中で、いつもとは違った春を迎えている。

 公園広場には、雪と氷の祭典の名残もあり、29日もたくさんの雪が積もったままで、雪にはしゃぐ台湾などからの観光客でにぎわいを見せた。1月中旬からスノーモービルなどを提供する大沼合同遊船(堀元社長)の冬季営業は過去最長記録を更新中。「そりツアー」の中間地点にある氷の厚さを計測するポイントでもいまだに60センチもあり、「今年は異常」とする。

 例年であれば、氷上がぬかるみ始め、冬季営業を終えて遊覧船の化粧直しなど運航の準備を進めている時期。同社は「3月下旬に遊覧船を動かし、『温暖化の影響だ』などといった年もあったのだが、今年の運航開始は4月中旬までずれこみそう」と話す。30日も冬季営業を継続し、31日以降は天候状況を見て判断することにしている。

 一方、大沼漁業協同組合(宮崎司組合長)関係者も頭を悩ませる。毎年4月上旬に網走湖からワカサギの卵が届けられ、今年も5000万粒の放流を予定。しかし解氷の遅れもあり、「網走の状況もあるが現時点では予定が立っていない」という。

 4月中旬には旅行会社によるミズバショウの観賞ツアーが組まれ、大沼国際観光コンベンション協会恒例の「駒ケ岳・大沼湖水安全祈願祭」も15日に予定し、本格的な観光シーズンを控える。同財団は「湖水の氷がなくなるのは天候次第だが4月中旬ごろになりそう」としている。(今井正一)



◎鍋田さん26年かけ有朋高通信制を卒業

 七飯町在住のフェリー会社員、鍋田仁志さん(48)が、船員として働きながら道立有朋高校(札幌)通信制課程を26年かけて卒業した。家族や同僚、恩師に支えられての卒業で、28日に同校協力校の函館中部高校の小林雄司校長から卒業証書を受けた。鍋田さんは「中学以来の卒業証書。つらいこともあったが、無事に卒業できたのは支えてくれた人たちがいたから。感謝でいっぱいです」と喜びを語る。

 鍋田さんは函館市内の高校を中退後、函館短期大学付設調理師専門学校に入学。卒業後、18歳で津軽海峡フェリーに調理員として就職した。しかし、同期と給料に差があることを知り、「年齢は一緒でも学歴でスタートラインが違う。社会を知った」と振り返る。その後、仕事を続けるが「高校に通いたい」。そんな思いを抱きつつ、4年後の22歳に転機が訪れた。

 知人の情報で同校を知り、1986年に入学。船員という仕事のため、1カ月ほど船の上で生活を送ることも多く、期限内にレポートを提出できなかったり、中部高校でのスクーリング(登校授業日)の時間数が足りなかったりで進級できない状態が続いた。時には勤務後、苫小牧や室蘭から車で函館に向かい、授業を受けたこともある。

 鍋田さんの長男が父より早く高校を卒業することが考えられ、本年度の卒業を目指し必死になったという。厳しい言葉で励ましの手紙をくれた教諭が亡くなったことや、船長の「乗りかかった船なんだからやり遂げろ」との言葉などすべてが支えとなり、政治経済など未履修の単位を取得。晴れて卒業を果たした。

 鍋田さんは「レポートは仕事の合間に必死でやった。いつも勉強する時はバンダナを巻いて気合を入れた」と笑顔で話し、26年間でバンダナも約30枚にもなった。「次の目標は船や新幹線などで体の不自由な人のサポートをする資格を取ること」と笑顔で話している。(平尾美陽子)



◎砂原漁港、岸壁上屋一部工区が完成

 【森】衛生管理型の漁港として整備が進められている砂原漁港(砂原4)の岸壁改修工事が一部終了し、荷さばき場と岸壁の間に延長約90メートルの上屋が完成した。直射日光や風雨、降雪、カモメなどのふんの付着を防ぎ、鮮度、品質の向上につながる。新年度には残る工区の工事が始まり、完成すれば管内最大となる延長約200bの屋根付きの岸壁となる。

 同漁港の水揚げは年間約2万dで、スケトウダラやカレイ、エビ、ホタテなど、さまざまな漁が1年を通じて行われている流通拠点漁港。水産物の付加価値向上を目的に衛生管理施設として、函館開発建設部函館港湾事務所が整備を進め、本年度から2カ年計画で行われている。

 屋根は、漁船クレーンなどがぶつからないように、岸壁から3b離し、魚箱を積んだり、フォークリフトでの作業のために高さは5b、柱の間隔を17bとした。天井にはカモメなどの侵入を防ぐ防鳥ネットを張った。

 また、改修前は海側に水が流れるようになっていたこう配を逆にし、3カ所にフィルターを設置した排水溝に屋根の雨水とともに流して、水をろ過する。第1工区の終了に伴い、スケトウダラなど同漁港の水揚げの50%以上が衛生管理対象魚種となる。

 29日に同漁港で行われた報道公開には、同開建の橋詰知喜次長、砂原漁協の坂本藤吉代表理事組合長(80)らが出席。同漁協は、新年度に製氷能力日産15d、貯氷能力30dの製氷機や冷蔵施設を整備する予定で、坂本組合長は「衛生管理には日ごろから注意を払ってはいるが、上屋の完成でより安全、安心な水産物の供給ができると確信している。噴火湾産ではなく、砂原産の水産物としてブランド化を進めたい」と話していた。(今井正一)


◎戸井ドンコでフレンチ

 函館市戸井地区で捕れるドンコ(エゾアイナメ)の消費拡大に向け、市内の主婦らでつくる食生活改善推進員を対象にしたドンコ料理講習会が29日、函館短大付設調理師専門学校(柏木町)で行われた。参加した約30人はこの日水揚げされたドンコを使ったフランス料理に挑戦した。

 市水産物地方卸売市場の関係者でつくる魚食普及対策協議会の主催。柔らかい白身魚のドンコは東北では普及しているが、地元での消費はいまひとつ。新たな地元食材として売り出そうと、同協議会などが試食会の開催や学校給食への採用などPRに力を入れている。

 今回は煮付けやフライにすることが多いドンコを西洋風にアレンジ。ジャガイモと合わせてペースト状にしたドンコをパンにのせたり、アサリを加えて白ワインで煮込んだりして華やかに変身させた。講師を務めた同校の吉田徹教頭は「ドンコは身が崩れやすいので丁寧に扱って」とアドバイスしていた。

 参加した高田久美子さん(60)は「見るのも初めてだったが、見た目の割に身が柔らかく繊細。家でも料理に使えるようレパートリーを増やしたい」と話していた。(森健太郎)


◎函館市が道南と青森の広域観光PR冊子

 函館市は、函館を軸とする広域観光ルートを紹介する冊子「ぐる〜と はこだて」を作成した。市内だけでなく、道南18市町や青森県内の情報もふんだんに盛り込み、食や散策、体験など函館観光の「王道」ではない切り口から、新しい滞在型の観光プランを提案している。

 市の冊子で、市外の観光情報まで詳しく提供するのは珍しい。2015年度の北海道新幹線開業を見据え、市は道南全域や青森を「函館観光圏」として捉え、「函館を拠点にエリア全体で観光客の楽しみ方を増やし、長期滞在や消費につなげたい」(観光振興課)と説明する。

 冊子では女性を主なターゲットに設定。フランスの旅行ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」に掲載されたスポットをはじめ、四季折々の自然や温暖で過ごしやすい気候、陸海空の多様な交通アクセスなどを写真、地図、グラフを交えて紹介している。

 市が1年がかりで独自に開発した「観光ルートガイド」は、半日から日帰り、2泊3日まで計40種類の周遊プランを提案。「半日」のコースでは知内町のカキや森町のボタンエビなどグルメを堪能できる行程のほか、福島町の松前神楽などの伝統神事見学や、七飯町大沼の雪上散策などバラエティーに富んでいる。

 青森の下北で大間マグロや恐山を満喫したり、津軽で冬場に地吹雪を体験したりと、一風変わった宿泊型プランも。青函に共通する縄文や温泉、屋台を堪能できる旅も提案している。同課は「地元の人にとって日常の世界まで掘り下げた内容」とPRする。

 A4判オールカラーで40ページ。市が130万円かけて5000部作成し、2月下旬から旅行会社などに配っている。冊子は市観光コンベンション部のホームページで掲載しているほか、市内の観光案内所や市役所で配布している。問い合わせは同課TEL0138-21-3499。(森健太郎)