2012年3月4日 (日) 掲載

◎「安心ボトル」無料配布へ 函館市、一人暮らしの高齢者1万7000人に

 一人暮らしの高齢者が自宅で倒れたり、災害に見舞われた場合の迅速な救命活動に役立ててもらおうと、函館市は新年度、一人暮らしの65歳以上の高齢者を対象に、医療情報を書いた紙などを入れて緊急時に活用する医療情報キット「安心ボトル」を、無料配布する。ボトルは冷蔵庫の中に入れてもらう考えで、早ければ今秋から送付する。市は「駆け付けた救急隊員らの適切な救命活動につなげたい」と話している。

 安心ボトルは2008年に東京都港区で導入されて以降、全国的に広がっている取り組み。一人暮らしの高齢者の場合、災害時や急病の際に身元確認が困難な場合があるため、いざという時にボトルの中身を確認することで迅速な救助に結び付ける目的。

 ボトルは長さ20センチの円筒状プラスチックケース。この中に名前やかかりつけ医、持病、服用薬などを書いた紙のほか、本人の顔写真や保険証、診察券のコピーなどを入れ、冷蔵庫の中に置いてもらう考え。

 また、救急隊員らにキットの存在を知ってもらうため、専用のシールを作成し、玄関ドアの裏側と冷蔵庫に張ってもらう。シールは北海道コカ・コーラボトリングが作成。同社は3年前に市と包括連携協定を結んでおり、地域貢献の一環として作る。

 市は新年度予算案に関係経費170万円を計上しており、一昨年の国勢調査結果を基に、65歳以上の一人暮らしの高齢者約1万7000人に配布する予定。市介護高齢福祉課は「町会や社会福祉協議会などの協力を得るか、市で自力で配ることが考えられる。配布方法は今後考えたい」と話している。(千葉卓陽)



◎市教委、小学校2校にアフタースクール開設

 函館市教委は新年度に、放課後の子どもたちの自主的な学習を支援する「アフタースクール」を市立小学校2校に設置する。教職員経験者らを配置し、子どもに学習習慣を身につけてもらい、学力向上に結び付けたい考え。市教委は「自宅の学習環境が整っていない子や問題が分からない場合に、助けてくれる人がいない子どもたちの手助けになれば」と話している。

 アフタースクールは工藤寿樹市長が政策に盛り込む一方、市教委が2010年度に実施した学習意識調査で「家で勉強していても、問題が分からないとそのままにしておく」との回答が多数あったことを受け、放課後や長期休業中の自学自習をサポートする目的で設置する。

 アフタースクールは週3回、毎回2時間程度を行い、小学校2校に2人ずつ、退職した教員や元校長・教頭といった人材を置く。子どもたちが自主的に勉強する際に質問に答えたり、分からない部分を個別に教えるなどの活動を予定しており、新年度予算案には関係経費87万円を計上している。

 市は2010年から道退職校長会の協力を得て中島、深堀児童館で寺子屋を開くほか、富岡町1丁目町会では自主事業として寺子屋を開設。さらに市内各所で、元教員や大学生らがボランティアで子どもの学習支援組織を立ち上げるなど、子どもたちに勉強の楽しさを知ってもらう取り組みが広がっている。

 実施校は現段階で未定。市教委はこれらの動向を踏まえ、近く各学校に意向調査を行って新年度の早い時期に実施校を決定する考え。「地域や学校からの要望、施設の状況のほか、すでに自主的な取り組みとして行っている地域とのバランスを考えた上で決定したい」としている。(千葉卓陽)



◎路線バスに防犯啓発コーナー 函館バスと中央署連携

 犯罪の発生状況などを発信し、防犯対策に役立ててもらおうと、函館中央署は函館バスと連携し、同社の路線バス7台に「情報発信スペース」を設けた。バスは5日から運行を開始する。

 同スペースは路線バス降り口付近にある荷物置き場を有効活用。その時点で増加傾向にある犯罪などをまとめた用紙を掲示するほか、啓発チラシやポケットティッシュを、乗客が自由に持ち帰られるようにした。同署は用紙を毎月変える予定で、常にタイムリーな情報の提供に努める考え。

 日ごろから警察業務に協力的な同社が今回の企画に賛同し、スペースを無償提供することが決まった。初回は、今年に入って増加傾向の侵入窃盗、振り込め詐欺などを紹介している。同署では「メール配信などでは情報発信してきたが、高齢者には伝わりづらいという悩みもあった。さまざまな人が乗降する路線バスで有益な情報を発信していきたい」と意気込む。10月31日まで函館市、北斗市、七飯町で運行する。(小杉貴洋)


◎元の生活 まだ遠く 中手さん福島の現状語る

 福島県の子どもたちを一定期間受け入れる保養地としての役割や可能性を探る学習講演会が2日、函館市地域交流まちづくりセンターで開かれた。「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の中手聖一さんが、福島第一原発事故後の1年間の様子を紹介した。

 中手さんは福島市在住。原発事故後に家族を県外に避難させた。同ネットでは、被ばくへの不安を持つ人たちに、自主避難を呼び掛けるなどの活動を進め、現在は、健康管理と医療を受ける権利、避難する権利などを柱とした法律の制定を求めているという。

 県内の現状について、表面上は元の生活を取り戻したかのように見えるが、放射線量の高い地域が依然として存在し、除線も効果的に進んでいないと指摘。健康被害の問題についても、低線量被ばくの問題を過小評価していると主張した。

 昨年秋ごろから、県外への避難の話題がタブー視されているとし、中手さんは「すべての福島の人が現状を受け入れたわけではない。必死で子どもを守ろうとしている親がいる」とした。さらに、「脱原発はエネルギー問題ではない。二度と福島のような思いをさせない社会をつくることが脱原発です」と話した。

 続いて、「東日本大震災市民支援ネットワーク・札幌むすびば」の永田勝之さんが、札幌で準備を進めている福島の学校を児童・生徒、教師を含めクラス単位で一定期間受け入れる「ローテーション保養」の構想について説明した。

 講演会の実行委では、道南で保養地としての仕組みづくりに向け、今後も学習会を重ねる。問い合わせは、NPO法人大沼・駒ケ岳ふるさとづくりセンター電話0138・67・1726(穴沢剛行さん)。(今井正一)


◎春色重ねて艶やか 十二単着付け披露 小林豊子きもの学院

 平安時代から伝わる十二単(じゅうにひとえ)の着付けを実演する「十二単着装披露」が3日、函館市本町の小林豊子きもの学院函館本校で開かれた。この日は「桃の節句」。春を感じさせるピンクや赤の衣が次々に重ねられていき、参加者は艶やかな着物姿に見とれていた。

 同校では毎年春と秋、日本の伝統的衣装に触れてもらおうと、公開講座として着装披露を行っている。この日は約20人が参加。同学院北海道学院長の信田豊愁さんが衣や着装について解説し、NPO法人日本時代衣裳文化保存会の古典宮島流衣紋会の3人が着付けをする衣紋者を務めた。

 十二単には平安朝のものと江戸時代のものがあり、この日は平安朝の装束で行われた。衣紋者は手をアイロンのように使い、衣のしわを伸ばしたりするなど、作法にのっとり約30分で整えた。信田さんはひもの使い方などを細かく説明し、「今日は約12キロの重さだが、苦しくないように着付けをしている」と話した。

 また、衣装を脱ぐ空蝉(うつせみ)や、人形に着せられた平安朝の白拍子水干姿(しらびょうしすいかんすがた)も紹介された。参加した市内の女性は「衣が重なってできた色目が美しく、日本だけの服装文化を楽しく学べた」と話していた。(山崎純一)