2012年3月7日 (水) 掲載

◎【震災1年】自主防災組織拡大の動き 市内各町会で体制強化

 函館朝市などでの津波被害受け、市内西部地区をはじめとする町会で防災体制を強化する動きが広がっている。避難経路の確保や近隣町会との連携強化といった独自の方針を打ち立てており、新年度以降も活動を活発化させていく。

 住吉町会(長谷唯一会長)は昨年11月、地図付きの掲示板を作り、町内6カ所に設置した。現在地に合わせた避難経路のほか、住三吉(すみよし)神社や避難所である青柳小、市青少年研修センターなど高台の位置も示している。町内の大部分が海抜5〜6メートル。掲示板には、いざという時に町民の自主避難を促す願いを込めた。

 長谷会長(78)は「地震が来ればとにかく自分の判断で安全な場所に避難しないと」と力を込め、「住吉町会は市内でも高齢化率が極めて高い。高齢者にできることは限られているが、町民の意識も高まっている。今後は独居老人を救援する体制も考えたい」と語る。

 青柳町会(村本朝次郎会長)は新年度、住吉や宝来など西部地区の近隣7町会との避難訓練実施を目指している。震災当日、村本会長は青柳小で避難住民の受け入れが円滑に進まなかった実態に危機感を感じた。「町会館には毛布や座布団など備品はある。炊き出しも可能だろう。町会の枠を超え、警察や消防、学校も巻き込んだいろんな形の訓練ができるはず」と構想を膨らませている。

 地域単位でつくる自主防災組織も、今回の震災を教訓に立ち上げた町会が出てきた。

 旭町会(四辻陸紀会長)は昨年12月、役員10人を実働部隊として発足させ「まずは避難訓練を始めたい」、2月に立ち上げた東雲町会(島田松一会長)も「今後計画を具体化させたい」と前向きだ。

 しかし、この1年間の設立町会は4町会にとどまった。組織率も今年2月末現在で186町会中65町会と3分の1。市は町会に防災資機材を貸与し設立を勧めるが、担い手の高齢化や関心の温度差が足かせとなり「発足したくてもできないのが実態」(ある町会)という町会も多い。

 一方、旧4町村地区は都市部と違い事情が違うようだ。同地区全町内会を束ねる市町会連合会東部地区協議会会長の熊谷儀一尾札部町内会会長(64)は「いずれの地区も日ごろから防災への役割分担は機能している。震災当日はみんなが自主避難したし、あらためて組織を作るものでもない」と連帯の強さを強調する。

 今回の震災は市街地など海沿い以外の地域も動かした。杉並、松陰、時任、本町の4町会は結束して初の防災訓練を行い、高丘町では町会員を「支援者」とし、体の不自由なお年寄りら「要援護者」を万一の時にどう救護するのかといった準備も着々と進めている。

 市総務部は「各町会の実情に合わせた体制を整えるのが一番だが、町会同士で力を合わせることで、できることは3倍にも4倍にもなるはず」と期待している。(長内 健、柏渕祐二)



◎西部地区 空き家解体に補助 函館市

 函館市は新年度から、西部地区に点在している空き家の解体費用の一部を補助する。国からの補助を得て13年度までの2カ年で50戸の解体を見込んでおり、景観の保全や土地の流動化促進に結び付けたい考え。

 補助は市の都市景観形成地域内にあり、床や柱の破損が著しいなど、国の判定基準に基づいて「管理不良」と判断された建物を対象に、解体費の2分の1以内、上限30万円で補助する。

 市は2002年9月、市景観形成指定建築物のレストランが隣の空き家の出火から類焼したのを契機に空き地・空き家対策を本格化。翌03年に「西部地区空き地・空き家相談室」を開設し、NPOと協働して対応に当たる。

 同地域内の空き家は2003年から本年度までの累計で450戸。解体除去などの相談を受けて約230戸が解体されたが、現在も214戸あり、このうち管理不良の物件が少なくとも約70戸存在する。解体が進まない理由として、NPO団体が昨年行ったアンケート調査では、約6割の家主が「経済的な理由」を挙げているという。

 新年度予算案では関係経費750万円を計上。2カ年で集中的に解体を支援する考えで、すでに数件の問い合わせが寄せられている。個人財産の処分に対する行政の支援措置は異例のケースだが、同部は「西部地区は景観保全の必要性とともに、まちの歴史を伝える地域特性がある。地域に人が住み続けることが重要で、何らかの土地利用が図られるきっかけになれば」と話している。

 6日には市議会個人質問で小山直子氏(民主・市民ネット)が同制度について質問。荒井俊明都市建設部長は「地域経済に配慮し、解体工事の施工は市内業者に限定したい」との意向を示した。(千葉卓陽)



◎「都市規模の問題ではない」江差線負担割合で工藤市長

 函館市議会第1回定例会は6日も個人質問を継続し、2氏が質問に立った。2015年度の北海道新幹線開業に伴ってJR北海道から経営分離される江差線五稜郭—木古内間(37・8キロ)の負担割合に関し、工藤寿樹市長は「都市規模だけで決める問題ではない」と述べ、人口や財政規模に基づいての負担を否定するとともに、道から今後示される提案をもとに北斗市、木古内町と協議する考えをあらためて強調した。

 同区間の3市町の負担割合は、2月14日に開かれた道南地域並行在来線対策協議会で道が8割、沿線3市町が2割を負担する案が示されている。

 小野沢猛史氏(市政クラブ)は、北斗市の高谷寿峰市長が「半分くらいは負担することになるだろう」と述べたことに対する工藤市長の見解を求めた。工藤市長は「一定の意気込みを示したのだろう」と述べた上で、負担割合に関して「函館市がどの程度持つのかという予断は持っていない。道から提示される条件の中で判断したい」と述べるにとどめた。

 また、新幹線の札幌延伸に伴って経営分離される函館—新函館間に関し、小野沢氏は道が主体となって第3セクター会社を設立することや、JRが同区間の運行受託の意向を示している点について「確認書を作成して、担保を取るべきだ」と追及。

 同市長は「JRの社長や知事名で文書をいただいている」として、大枠では担保が取れているとの認識を示すとともに、「市とJRだけで決める問題ではない。道や3セクを構成する他の沿線自治体との中で確認していくことが必要」とした。

 個人質問は小野沢氏のほか小山直子氏(民主・市民ネット)が行い、この日で終了した。市議会は今後、8日に3常任委員会を開催して本年度一般会計補正予算案などを審議、13〜16日に予算特別委員会を開く。(千葉卓陽)


◎受験生 春に挑む 道南公立高で一般入試

 公立高校の2012年度の一般入試が6日、全道一斉に行われた。道南の各校でも学力検査や面接が実施され、渡島管内の全日制2147人、定時制63人、桧山管内は268人(当社調べ)が合格を目指して試験に挑んだ。

 函館水産高校では133人が受験。午前8時の開門を前に数人の受験生が待つ姿も見られ、午前9時20分からの国語を皮切りに、数学、社会、理科、英語の順に行った。試験会場では緊張した空気が漂う中、受験生が一心に問題に取り組んでいた。

 また市立函館と函館中部の2校では、応用力などを重視する問題を選ぶ「学校裁量問題」を取り入れている。

 道南では各校とも大きなトラブルもなく試験を終えた。合格発表は16日午前10時に各校で一斉に発表される。(平尾美陽子)


◎立茎アスパラ 栽培技術確立 道南農業試験場

 道総研道南農試(北斗市本町)は、立茎アスパラガスの道南版として周年被覆ハウスを利用した栽培技術を確立した。周年被覆型は、高収益かつ軽量野菜として特に桧山管内で栽培面積が伸びており、新技術を今後、農家での安定生産に役立てる。同農試は「研究成果を活用すれば、より太い(=高単価)アスパラが10アール当たり3トン取れる」としている。

 立茎アスパラは、春芽だけでなく、茎の数を少なく成長させることで夏芽も収穫できる。冬季にビニールをはがす露地越冬ハウスで渡島、桧山、上川、空知管内などで生産されている。一方、少雪温暖な道南では年中ビニールを張る周年被覆ハウスを導入、特に桧山では町などの支援もあり面積を増やしている。露地越冬ハウスでの栽培法は道総研花・野菜技術センター(滝川市)が既に確立しており、今回道南農試の研究により周年被覆ハウスでの栽培法が初めて明らかになった。

 同農試は2007〜11年度の5カ年計画で、定植時期、最適な春芽収穫日数、窒素施肥量などを探ってきた。同農試のハウス3棟を中心に乙部町、七飯町の農家の協力も得て試験を行った。

 その結果、5月に定植することが最も望ましいことが分かった。6月定植は、2年間収量が低くなる。春芽の収穫日数は2年生株が10〜20日、3年生株が30〜45日、4年生株以降が35〜45日とした。この日数を守って立茎作業をしないと夏芽の収量が減り、春芽の収量も少なくなる。立茎位置のバランスを取り、太い親茎を選ぶことも重要。これにより収量は増えないが、夏芽、春芽ともに太くなる。窒素施肥量は露地越冬ハウスと同じ10アール当たり45キロを投入する。これまで農家は収量を上げるため経験的に50〜60キロほどを施肥していたが、試験により標準施肥量を示した。

 桧山のトップレベル農家が年間10アール3トンを超える量を取っていることや、同農試の試験でも4年生株以降でほぼ3トンをクリアしたことから「目標は春夏合計10アール当たり3トン」と設定した。

 同農試の菅原章人研究主任は「3トン取れれば経済性が非常に良い。施肥量、親茎のバランス、収穫日数を守ることで株を長持ちさせてほしい」と話している。(山崎大和)