2012年5月24日 (木) 掲載

◎喫茶コーナー 患者らくつろいで…国立病院が月1回開設

 国立病院機構函館病院(函館市川原町18、伊藤一輔院長)は22日から、管理栄養士らによる毎月1回の喫茶サービスを始めた。入院患者をはじめ見舞いに来た家族、外来患者のくつろぎの場にと企画した取り組み。毎月第4火曜日に院内1階の渡り廊下で「喫茶りぼん」と称して菓子や飲み物を用意する。

 メニューは月替わりで提供する菓子とコーヒー、紅茶、ジャスミン茶。無料で、飲み物はおかわりもできる。糖尿病などでカロリー制限中の患者にも安心して食べられるよう菓子類は低カロリーに抑え、調理されている。移動の難しい患者には希望があれば病室に届ける。

 初日は調理師手作りのクッキーを80個用意し、開場と同時に患者らが続々と来場。クッキーや飲み物を味わいながらくつろいだり、患者同士で歓談する光景が見られた。患者からは「リラックスできた」「今度も楽しみしている」などと好評で、栄養管理室の木幡恵子室長は「病室中心の生活になりがちな入院患者の気分転換につながれば。夏に向けてかき氷なども提供していきたい」と話していた。(鈴木 潤)



◎北斗にがれき拒否要請…考える会が市長に申し入れ書提出

 【北斗】「道南がれき問題を考える会」(長谷川昭一代表)は23日、市役所を訪れ、東日本大震災で発生したがれきの受け入れ拒否を求める申し入れ書を高谷寿峰市長に手渡した。長谷川代表(56)は「被ばくリスクの点、被災者支援という人道上の理由、市政の未来を考える上でも根本的問題がある」として、安全な食材供給、避難者受け入れ継続などがれき処理に代わる被災地支援を求めた。

 震災がれきの広域処理をめぐっては、市内の太平洋セメント上磯工場で被災地の木くずをセメント製品の原料や燃料として使用することが浮上。3月末には高橋はるみ知事が同工場などを訪れ、市に協力を要請した。市は、道や同社との間で処理量などの具体的な処理計画をまとめた段階で全市を対象に説明会を開き、市民の意見を聞き、判断する方針を示している。

 懇談には同会の会員10人が参加。長谷川代表ら4人が広域処理にかかわる認識や受け入れに対する健康への影響など不安の声を届けた。

 高谷市長は「不安は十分に理解している。受け入れが進んでいると市民に受け止められているが、市として何も決めていない」と述べ、慎重に検討を進めている段階だとした。同会の要請にも理解を示した上で、幅広く意見を聞く必要があるとし、安全性の問題、住民理解が大きな前提になるとの認識を示した。

 また、仮に同工場で受け入れる場合、がれきからの塩分除去が必要になるとし、高谷市長は「除塩する段階で除染にもなると聞いている。セメント製品になる段階では(放射性物質の濃度は)相当低くなるのでは」と述べた。

 懇談後、長谷川代表は「会としては現時点でノーと言ってもらいたい。危険の可能性があるのであれば避けるといった予防の原則が必要。子どもたちの保養地としてや食糧供給など貢献できることはいっぱいある」と話していた。(今井正一)



◎江差線3セク正式決定…並在協

 北海道新幹線開業に伴いJR北海道から経営分離される並行在来線の江差線五稜郭—木古内間(37・8キロ)の旅客輸送について、道と函館市、北斗市、木古内町でつくる「道南地域並行在来線対策協議会」の第9回会合が23日、渡島合同庁舎で開かれ、第三セクター形態で鉄道を残すことを正式に決めた。2014年4月の三セク会社設立に向け、同協議会を衣替えし、同じ構成員で「道南地域(五稜郭・木古内間)第三セクター鉄道開業準備協議会」を同日、設置した。

 協議会には高井修副知事、工藤寿樹函館市長、高谷寿峰北斗市長、大森伊佐緒木古内町長が出席。51・6億円と試算される開業後30年間の公共負担額(赤字)は道が80%、北斗市が11・2%、函館市と木古内町が4・4%ずつ負担する。赤字経営が予想されるため、5年ごとに利用実態や収支動向を検証し、改善が見込めない場合は事業形態や費用負担割合を見直す。

 三セクは、道が主体となり設立準備をする。本年度に運行基本方針の作成、JRからの譲渡資産の仕分け作業に着手。13年度にダイヤや運賃、利用促進策などを盛り込んだ経営計画を決定。また、国やJR北海道に対し三セク支援に関する要請活動にも取り組む。会合では、各首長から、JRから引き継ぐ路盤の安全対策や赤字縮小のための利用促進、道・3市町の負担軽減などを求める意見が出た。

 取材に対し、高谷市長は「(利用促進に向け)市民意識を高めるフォーラム開催、駅数を増やすこと、観光面の活用を考えていく」と強調。「国は10年間で1000億円(貨物調整金)の財政支援を決定しているが、期間の延長や、さらに手厚い支援を求めていく。われわれの努力も必要だが、道にはリーダーシップを発揮してもらうことを期待したい」と述べた。

 大森町長は「ほかの事業で道、国からの支援をいただいており、トータルで考えることが必要」と説明。「比率は少ないが、比率以上の発言をして赤字額が減るよう地域だけでなく、外から来た人に乗ってもらえる鉄道にしたい」とした。

 工藤市長は「できるだけ利用促進を図りながら、赤字幅、税金の投入を軽減する努力をしていかなければ」と語った。

 高井副知事は「道議会でも協議を進めていく。(当初から)赤字が生じるだけでも順風ではない。利用促進策、国の支援をどう得られるかが課題。他県でも、いろいろな国への支援を求め、ある程度勝ち取れてきた。道としてどういった要請をすべきか判断していきたい」と述べた。(山崎大和、今井正一、千葉卓陽)


◎市が地域防災計画改訂…避難対策など強化

 函館市の災害時の対応や防災対策を話し合う「市防災会議」(会長・工藤寿樹市長)は23日、東日本大震災を踏まえ、津波・避難対策などを見直した「市地域防災計画」の改正案について承認した。改訂は2007年以来5年ぶり。今回は第1弾として市が独自に取り組める15項目を新たに追加修正した。

 防災会議は、市や道警、国の出先機関、ライフライン関連企業など41の防災関連機関の48人で構成。今回は昨年の震災対応への検証を踏まえ、昨年6月から5回の会議などで見直しが必要とされた計70項目のうち、国や道の見直しを待たずにできる項目を盛り込んだ。

 新たな計画では、津波対策として交通規制の範囲を事前に指定することや、津波避難ビルや高台など一時避難場所の確保を明記。東部4支所地域は支所長の判断で避難の勧告・指示ができるよう権限を強化する。備蓄食料も乳幼児や高齢者に配慮し、アレルギー対応品目にも改めることを盛り込んだ。

 また、毎年9月1日の「防災の日」に合わせて行う防災総合訓練は、これまでの会議で「実際の震災対応につながっていない」「地域ごとに実践に即した形にすべき」との指摘を受け、今年は8月28日に関係機関向けと、地域住民向けの訓練を2会場に分けて実施する方針を決めた。

 会議では計画の改訂案について「想定地震の見直しが必要」などと市民5人から19件の意見が寄せられたことも報告された。今後は国の防災基本計画や道の津波浸水想定の見直しを踏まえて、さらに修正を重ねる。工藤市長は「関係機関と連携を図り、市民の生命・財産を災害から守るための対策に取り組みたい」と述べた。(森健太郎)


◎カレンダー益金で被災地支援…大平さん撮影した石巻など使用

 函館在住の全盲のカメラマン、大平啓朗さん(32)がこのほど、東日本大震災の被災地を応援しようと、被災地の生活を撮影した写真で制作した卓上式カレンダー「ありがとう 忘れない忘れないで」を販売する。益金の一部を復興支援に携わる団体に寄付する。

 大平さんは昨年6月下旬、知人でアマチュアミュージシャンの大森吉人さんとともに、被災地の宮城県石巻市や南三陸町で地域住民を交流イベントで楽しませるボランティア活動を行った。3日間の滞在中、被災しても明るく元気に生活する住民や子供たちを撮影した。

 撮影写真を復興支援に役立てたいと考え、昨年12月ごろからカレンダーの制作に取り組み、撮り収めた約200枚の中から15枚ほどをカレンダーやパッケージ用に使った。

 写真は無邪気に太鼓をたたく女の子や大平さんの白杖を持つ兄弟、高齢者ら生き生きとした表情をとらえ、がれきの山など震災の爪痕も収めた。カレンダーは今年の3月11日から来年10日までの1年間とし、各月とも11日を起点に翌月の10日までの1カ月としている。

 カレンダーには、大平さんが作詞した曲「笑顔の絵本」や大森さんの曲「君のために歌う北風」を収めたCDも付いている。

 「ボランティアをさせてもらい、被災地の人たちにありがとうの気持ちを伝えたかった」と大平さん。

 カレンダーは1800円。申し込み、問い合わせは大平さんTEL080・1890・8497。(鈴木 潤)