2012年5月25日 (金) 掲載

◎マイカ漁解禁まで1週間、豊漁願う漁師切実

 今季のスルメイカ(マイカ)漁の解禁(6月1日)まで1週間に迫った。昨年の漁解禁直後は極度の不漁だっただけに、漁業者は出だし好調を願いながら出漁準備を進めている。今年は燃油高も不安要素だ。函館市漁協(橘忠克組合長)の函館小型いか釣部会(佐藤豊次部会長、23人)は26日午前11時から、函館漁港(入舟町)で大漁祈願祭を行う。

 同漁港で24日、第五光洋丸(9.7トン)の整備に取り組んだ山本光夫さん(63)は「本州の日本海側の漁はいいという話を聞かない。漁が少なかったら、燃油も高いし何日か出漁を見合わせるしかない」と厳しい表情だ。解禁直後の漁場は日本海側の松前小島付近で、片道5、6時間かかる。漁業者は船舶操作の工夫や節電などの対策をし、何とか乗り切りたい考えだ。

 同漁協が組合員に販売するA重油の系統価格は1g当たり88.8円(税別、今月16〜31日)で、前年同期より0.7円高い。4月中旬から下げてきたものの、同漁協は「まだ厳しい水準には変わりない。負担が大きい」と頭を悩ませる。半月ごとに改定されるA重油の販売価格は、6月1日には今より2、3円下がるとの見方もある。

 同漁協は「石川、新潟、山形県沖でのイカ漁が遅れている上、漁模様も薄いようだ。函館近海への北上も遅れるのではないか。雪が多くて水温が低いと、ホッケやスルメイカなど回遊魚が影響を受けやすい」という。

 祈願祭では、約100人が神事やもちまきを行い、豊漁と安全操業を祈る。改行 函館では同部会のほか、銭亀沢漁協のイカ釣り漁船7隻も出漁する。函館市水産物地方卸売市場(豊川町)での初せりは2日朝の予定。(山崎大和)



◎上ノ国夷王山で菜の花見ごろ

 【上ノ国】町の風力発電施設がある夷王山(いおうざん、標高159メートル)「風車の丘」で、住民グループが育てる菜の花が見ごろを迎えている。快晴の24日は、黄色い花が青空に映え、日本海からの潮風で、美しい“さざ波”が広がった。

 菜の花畑を観光資源と産業振興に活用する「天の川・菜の花プロジェクト」(柳原直昭代表)が、2009年から栽培を続けている。今年は小高い丘の2カ所計8fで、開花は例年より1週間早く、大型連休終盤から始まったという。

 周辺でのイベントは特にないが、「海、空、新緑の色合いにとけ込むすてきな景色は上ノ国ならでは。年々、ファンも増え、『毎年この時期を楽しみにしているよ』と言ってもらえるのが活動の励み」とメンバー。

 お盆過ぎにナタネを摘み、専門業者で油にし、上ノ国町道の駅もんじゅ(原歌3)で販売予定。住民有志が一連の活動を支え、関係者は「皆で協力しながらプロジェクトの充実を図り、上ノ国の良さを多くの人と共有できれば」としている。

 例年6月上旬まで花々を楽しめる。場所は道の駅から車で5分ほど。(田中陽介)



◎医学部誘致、工藤市長が同志社大に打診

 函館市の工藤寿樹市長は24日の定例会見で、同志社大学(京都)に対し、函館への医学部誘致を打診していることを明らかにした。医学部誘致構想に関し、学校名を明言したのは初めて。国が現段階で医学部新設を認めていないことから、市長は「さまざまな課題があるが、誠意を尽くしながら検討を進めたい」と述べ、全面的に協力する意向を示した。

 工藤市長は今年4月、市民団体との懇談で、関西有名私大に医学部新設構想があり、函館を視察したことを明らかにしたが、具体的な校名の言及は避けていた。

 市は西尾正範前市長時代に公立はこだて未来大学への医学部誘致を検討してきたが、工藤市長は市の財政負担などを理由に撤回。その後、医学部新設の意向を持つ早稲田大など有力私大に対して水面下で接触を図っていた。

 同志社大に対しては今年に入り、札幌で市幹部が関係者と接触。3月に同大の理事が函館を訪問していた。市長は会見で、視察の返礼として今月17日に京都を訪れ、学校法人同志社の八田英二理事長兼学長と会談したことを明らかにするとともに「あくまで市からの動き」と説明した。

 ただ、文部科学省は1979年の琉球大(沖縄)を最後に、医学部の新設を認めておらず、設置する際には附属病院の設置が必要条件とされている。市長はこの2点を課題として挙げた上で、市立函館病院や市内の有力病院に対して「連携病院」としての協力を求める意向を示し、「賛同いただけるなら、お金をかけなくてもできる」と述べた。

 加えて工藤市長は、創設者の新島襄(1843—90年)が函館から米国に渡り、毎年6月に渡航記念祭を行い、学生もキャンプに訪れている点などから「非常に縁のある大学」と強調。ただ、医学部設置には多額の資金がかかることから「同志社側もきわめて慎重。期待を持って進めていくには至っていない」とし、国の動向を見ながら検討を進めていく考えを示した。

 学校法人同志社(京都)は函館新聞の取材に対し「工藤市長と八田理事長が京都で会い、医学部の話をしたのは事実」と説明。学校法人では理事会の下に、文科省の医学部入学定員検討会にかかる情報収集プロジェクトチーム(委員長・八田理事長)を設置し、国の動向を調査中としており「まだ情報収集の段階で、医学部設置の検討自体がなされていない。当面は国の方針を見極める必要がある」(広報課)と話している。(千葉卓陽、山崎大和)


◎震災がれき受け入れ、工藤市長が慎重姿勢崩さず

 函館市の工藤寿樹市長は24日の定例記者会見で、日乃出清掃工場(日乃出町)の焼却灰の放射性物質測定結果について「国の基準を大幅に下回り、人体や食べ物への影響に問題はない」との認識を示し、「測定したから(震災がれきを)受け入れるということではない」と述べ、あらためて受け入れに慎重な姿勢を強調した。

 測定は、東日本大震災で発生したがれきの受け入れを判断するうえでの基礎資料として平常時の放射能濃度を把握する目的。4月と5月の2回、家庭ごみの燃えがらの「主灰」と、集じん機で集めた炉内に飛散する「飛灰」の放射性セシウム濃度を調べた。

 「飛灰」からは4月に1キロあたり81ベクレル、5月に同53ベクレルを検出し、工藤市長は「これまでの核実験やチェルノブイリ、福島の原発事故の積み重ねが影響しているのでは」と推測。がれき受け入れの判断材料としては「直接的に影響するものではない」と、あくまで参考値との見解を示した。

 仮に受け入れた場合、焼却灰が市内の最終処分場に残ることを懸念し「積極的に受け入れますと、手を挙げる考えはない」と現時点で受け入れは困難とした。今後は年に1〜2回、測定を継続し、近く補正予算で同保健所に高度な放射性物質の測定器を導入する意向を示した。

 道内の焼却施設では、平常時の焼却飛灰のセシウム134、137の濃度は、札幌市(4月)で同16〜22ベクレル、苫小牧市(5月)で59〜72ベクレルと、いずれも函館市を下回っている。(森健太郎)


◎東山寺住職・道辻さんがエッセー集出版

 函館市亀田町14の東山寺住職、道辻敏さん(59)が、エッセー集「歴史荒談 ましら酒」を「人間と歴史社」(東京)から出版した。日本の歴史や季節の行事などを現代と絡めながら、“今を思う”をテーマに書きつづっている。道辻さんは「見えないものを見る目を養ってほしい」と話している。

 書店に並ぶ書籍の出版は今回が初めて。シニア層を中心に人気のある月刊誌「百歳万歳」で2006年4月から連載中のエッセー「道辻和尚のなるほどザ・日本!」から、ユニークで分かりやすい65編を抜粋した。

 タイトルの「ましら酒」とは、猿が岩のくぼみに果実を蓄える習性により、自然発酵で作られる“猿の酒”の名称。「さまざまな体験の雑学が、記憶の中で自然と発酵、熟成しているように感じた。十分熟成してないので悪酔いするかも」と道辻さん。

 また、本文の内容に合った挿絵も自身で描き、ユーモアたっぷりの内容とイラストで、歴史の事実や事件を現代の社会に置き換えて説いている。

 道辻さんは「高校生から高齢者まで広く楽しめるような本に仕上がった。これから生きていく中で考えるもの、出会うものがたくさん詰まっているので、ぜひ読んでほしい」と呼び掛けている。

 四六判、207ページ、1575円。全国の書店で販売し、市内では加藤栄好堂美原店(美原3)で取り扱っている。(柏渕祐二)