2012年6月13日 (水) 掲載

◎函館出身の彫刻家 小寺真知子さん死去

 函館出身でローマ在往の彫刻家、小寺真知子(本名・茜ケ久保真知子)さんが10日夜、ぼうこうがんのためローマ市内の自宅で死去した。62歳だった。小寺さんは旧函館東高校、道教育大函館校卒業。1980年からローマに渡り、イタリアや日本で個展を開いたほか「ペリー提督像」(元町)などのモニュメント制作を手掛けた。函館の文化、観光の振興に大きく貢献し、関係者からは悼む声が相次いだ。

 小寺さんは85年にローマ美術アカデミー彫刻課を卒業。同アカデミーでは巨匠クロチェッティらに師事した。89年に第3回現代日本具象彫刻展大賞を受賞。2010年にベネチア宮殿美術館で個展を開いた。当時イタリアの新聞は「西洋の伝統であるブロンズ裸婦像に、日本人らしい甘美さと気品を与え、美しい曲線と量感と均整のある作品」と絶賛した。

 00年、函館市のパブリック・アート第1号として、若松町の旧シーポートプラザ前に「青・海・テティス」が設置された以降、「ペリー提督像」(02年)、五稜郭タワーの創業40周年事業として「五稜郭に立つ土方歳三」(03年)、市中央図書館開館時に「ハーモニー」(05年)のほか、「赤い靴少女像」(09年)など、市内に8つのモニュメントが設けられ、市民や観光客に親しまれている。

 高校時代に美術部長を務めていた時の恩師で、創作凧(たこ)を制作する梅谷利治さん(83)は「常にモチーフの人となりを研究、理解しており、作品から信条が伝わってくる」と話す。09年には小寺さんの尽力で、ローマの日本文化会館で梅谷さんの凧が展示された。

 ペリー提督来航記念碑建立協議会の会長を務めた函館日米協会副会長の加藤清郎さん(77)は「像の設置場所から函館港を見詰め、入港するペリーの心境を考えていた姿を思い出す。ペリー軍服にボタンが一つ無いことまで研究していた」と話す。

 小寺さんは最近、知人らに闘病中であることをメールで知らせていたという。加藤さんは「残念でしょうがないが、ゆっくり休んでほしい」、梅谷さんは「市民、観光客に感動を与えてくれた。心からありがとうと言いたい」と話した。(山崎純一)



◎べこ餅作りに挑戦…大妻高で講習会

 函館大妻高校(池田延己校長)で12日、べこ餅講習会が開かれた。同窓生7人を講師に迎え、家政科の3年生13人が昔ながらのお菓子に挑戦した。

 地方の伝統料理やお菓子の食文化の伝承を目的に、同窓会の協力のもと、調理の授業の一環として実施。講師の指導を受けながら生徒たちは、白砂糖と黒砂糖を混ぜた2種類の生地を作り、木の葉や動物の顔などに形作っていった。

 中にはひよこやチューリップの形をしたユニークなものも。講師や生徒からは「かわいい」「発想が面白い」などの声が上がり、教室は和やかな雰囲気に包まれていた。生徒たちはスプーンなどを使って模様をつけ、さまざまな形のべこ餅を次々と完成させ、最後は形が崩れないよう丁寧に蒸し器の中に入れ、出来上がりを待った。

 岸春夏さん(3年)は「地域の人と一緒に料理ができて楽しい。いい思い出ができた」と話していた。(平尾美陽子)



◎本年度は青ネギ栽培…高齢農家対策モデル事業 渡島総合振興局

 渡島総合振興局は、高齢農家が栽培しやすく収益性が高い新作物の導入に向けたモデル事業で、本年度に取り組む作物を「青ネギ」に決定した。栽培期間が短く、関西市場で安定した需要がある。モデル実証圃(ほ)を設置してデータを集め、栽培マニュアルを作成するとともに、専門学校と連携し料理レシピを作る。省力化と高収益を実現し、高齢者の営農継続につなげていく。

 同振興局や渡島農業改良普及センター、道総研道南農試、七飯町など6団体で構成する「推進協議会」を5月上旬に設置。本年度の作物を青ネギに決め、七飯町藤城の農家1戸に実証圃(ハウス1棟3アール)を設置。年1作で今月中旬に播種(はしゅ)、8月下旬〜9月中旬に収穫予定。栽培マニュアルはJAの生産部会にも説明し、技術を広める。

 苗を作らない直播(ちょくはん)方式で、収穫まで約2カ月と短いので作業負担が少ない。また、同時期に栽培されるホウレンソウの2作採り(1カ月×2回)より収益性が高く、病気にも強い。西日本では薬味として欠かせない食材で、同振興局は「主産地の徳島県は8月下旬〜9月中旬に端境期となるため、関西市場に出せば、確実に良い値が付く」(農務課)と見込む。

 レシピは11月ごろまでに作る。函館調理師養成専門学校(富岡町、能戸秀康校長)の協力で、学生メーンに青ネギを使った和洋中各1点程度の料理を考案してもらう。「道南での販売機会を見据え、レシピがあると食べ方の提案がしやすい」と同課。

 同課によると、管内の青ネギ生産は七飯町で2010年1戸、11年4戸、12年5戸で、道南ではなじみの薄い作物だ。

 同振興局が、本年度から3カ年で取り組む「高齢化に対応した高収益新作物普及促進モデル事業」(振興局の独自事業)。渡島の農業就業人口に占める65歳以上の割合は、全道平均より9ポイント高い43%(10年農林業センサス)。後継者のいない農家の割合は74%(同)に達する一方、新規就農者数(06〜10年の5カ年平均)は17人(同課調べ)にとどまる。農村の活力維持や農地の荒廃を防ぐには、高齢者対策が待ったなしの状況だ。(山崎大和)


◎江差線サイクルトレイン 市長が開業準備協で提言へ…北斗市議会

 【北斗】第2回定例市議会が12日、開会し、会期を15日までの4日間と決めた。北海道新幹線開業後にJR北海道から経営分離され、第三セクター方式で運営される江差線(五稜郭—木古内間)に自転車ごと乗車できる「サイクルトレイン」の導入について、高谷寿峰市長は「自転車を乗せることができれば、通学利用者の利便性は高まる」と、今後の道や沿線自治体で構成する開業準備協議会で提言すると述べた。

 江差線の三セク移行後の利用促進策について、水上務氏質問に答えた。

 高谷市長は「(三セク鉄道は)運行開始とともに赤字であり、収支改善の努力は欠かせない」との認識を示し、サイクルトレインの導入課題として、「車両の改造や改札、ホームの改良も必要。JRが引き続き管理する五稜郭、函館駅が要望を聞いてくれるかにも課題がある」と述べた。

 水上氏は人件費削減の観点から定年退職者の再雇用などの経費削減策を挙げた。高谷市長は先行県で、三セクの経費負担が少ない形でJRからの出向社員を受け入れている事例があるとし、今後の検討課題にするとした。

 一般質問には水上氏のほか2氏が登壇。主な質疑は次の通り。

 高田茂氏 大野川の河川敷や川の中にも雑木や雑草が自生している。低木を植えて景観を整えるなど、適切な管理、整備が必要。

 井口博土木課長 河川の土砂は中州も含め、道の公共土木施設維持管理基本方針の中に、撤去の方針がある。築堤などへの植栽は管理上難しいが、函館建設管理部と協議してまいりたい。

 高村智氏 全国で通学中の児童らが死傷する痛ましい事故が起こった。市内の危険箇所と、今後の対策は。

 吉元正信教育委員長 町内会から歩道設置や道路拡幅の要望がある場所や、歩、車道の段差がない道路などを把握している。道路の整備よる対策もあるが、安全、安心に登下校できる環境づくりも大切。啓発活動の実施、無謀なドライバーへの取り締まり徹底強化を要請したい。(今井正一)


◎温泉熱イチゴ 出荷進む…恵山で順調に生産

 函館市恵山町の市有地で、温泉熱を利用してイチゴ栽培に取り組む「リュド・フレイズ」(小堤文郎社長)が、5月末からイチゴの出荷を始めている。道の駅「なとわ・えさん」や道南地域のスーパーで販売を始めており、生産は順調。温泉熱と温暖な気候を生かした通年出荷を目指しており、同社は「1年間しっかりと栽培、出荷していきたい」と話している。

 同社は建設資材販売の大一興業(函館市昭和2、大越信幸社長)が100%出資し、昨年12月に設立した。

 温泉施設がある恵山市民センター近くの市有地に、3000平方メートルの鉄骨温室1棟を建設してイチゴ栽培に着手。巨大な温室には、3段の棚が40列並び、約6万5000株を栽培しており、「道内では例のない大規模」(同社)。夏場以外は温泉熱のエネルギーを活用し、燃料コストを抑えながら通年出荷を計画する。

 イチゴは「はこだて恋いちご」のブランド名で、大粒でさわやかな甘さが特徴。5月27日の「恵山つつじまつり」のイベント会場で初披露し、200グラムのパックを120パックほど用意したが、イベント開始前に売り切れになる人気ぶりだった。

 現在はなとわ・えさんのほか、6月に入ってからコープさっぽろの道南11店舗で販売。来週からは函館市内の青果店や、全道のイオン31店舗でも取り扱いが始まる。

 出荷が本格化するのは7月になる見通しで、1日あたり200キロ、年間60トンの出荷を目指す。生産が順調に進めば、将来的には温室を6棟まで増やす計画だが、通年出荷に向けては夏場の温度調節が課題となる。

 小堤社長(49)は「秋口から春先にかけては温泉熱が使えるが、夏場はむしろ熱を抑制する必要がある。遮光カーテンを使いながら温度管理に努め、四季を通じてしっかり出荷していきたい」と話している。(千葉卓陽)