2012年6月15日 (金) 掲載

◎競輪GTが函館初開催、ファン熱狂

 国内最高峰の競輪レース「第63回高松宮記念杯」(GT)が14日、4日間の日程で市営函館競輪場(金堀町10)で開幕した。北海道で競輪のGTレースが行われるのは初めてで、S級以上の上位選手108人が集結。第1レースから地元や全国各地から足を運んだファンを熱狂させた。

 高松宮記念杯は1950年に滋賀県大津市が近江神宮外苑に競輪場を開設する際、同神宮にゆかりのある高松宮宣仁親王殿下から賜杯を与えられたのが始まり。トップレーサーが一堂に集まる年度最初のGTとして伝統、格式が高い。第1回から大津びわこ競輪場で開催されていたが、2011年3月に同場が廃止。全国の45競輪場で持ち回りとなり、昨年は前橋競輪場で開催した。

 50年6月に開設された市営函館競輪場は、過去にふるさとダービー、サマーナイトフェスティバル(ともにGU)などを行ってきたが、よりグレードの高いGTは初めて。多くの地元ファンが待ち望んでいただけに、場内は熱気に包まれていた。

 開会式では6月6日に逝去された三笠宮寛仁親王殿下に黙とうをささげた。主催者を代表して工藤寿樹市長が「多くのファンの支援のもと、初のGT開催ができたことをうれしく思う。名誉ある大会で白熱した素晴らしいレースに期待したい」とあいさつ。地元を代表して道南出身の菊地圭尚選手が選手宣誓を務め、「日ごろ鍛えた成果を発揮し、正々堂々と戦いたい」と高らかに宣言した。

 午前10時42分に第1レースがスタート。選ばれたS級のトップ選手がファンの激励を受けてバンクを快走し、迫力のある勝負を繰り広げた。函館を拠点に活躍し、第31回の高松宮記念杯を優勝した藤巻昇さん(64)は「函館にGTが来ることが夢のような気分。地元以外の人たちも多く来ていてうれしい」と感無量の様子だった。

 新聞報道などでGT開催を知り、初めて競輪場を訪れた山口温子さん(31)は「少し肌寒かったが、思った以上に迫力があって楽しかった。また競輪場に来てみたい」と笑顔で語った。

 17日まで4日間で、抽選会などの多くのイベントを用意。決勝は17日の午後4時半を予定している。(小林省悟、山崎純一)



◎新島襄の志を心に刻む、「海外渡航の地」で碑前祭

 同志社大(京都)を創立した新島襄(1843—1890年)が、1864年(元冶元年)に国禁を犯して脱国、渡米したのを記念した「海外渡航の地」(函館市大町)で14日、碑前祭が行われた。卒業生や市民ら約30人が、原点である函館で新島精神≠あらためて心に刻んだ。

 学校法人同志社の主催、函館市が後援。同志社から大谷實総長、市から片岡格副市長が出席した。讃美歌を合唱した後、大谷総長が「日本の将来のためにあえて国禁を犯し、出国する新島の志が鮮明に浮かび上がる。同志社の原点である函館との連携を強化することは、双方にとって有意義であると確信している」と式辞を述べた。片岡副市長もあいさつした。  カレッジソング合唱後、大谷総長、片岡副市長、同志社校友会函館クラブの濱谷信彦会長が地碑に献花した。

 新島は1864年6月14日夜半、地碑前から小舟で沖に出た後、湾内に停泊していた米国船ベルリン号に乗り込んだとされる。

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 式典後、13日に市役所を訪れ、市が同大に打診している医学部誘致構想について工藤寿樹市長と会談した大谷総長が報道陣の取材に対し、「情報を集めるプロジェクトチームをつくっているが、具体的に検討する段階に至っていない。市長にも説明し、理解してもらった」と述べた。その上で、医学部設置が新島の宿願だったとし「新島の精神を受け継ぎ、できればかなえたいと思っているが、膨大な金がかかる。そう簡単にはいかない」と述べるにとどめた。

 また、関西は医師が充足している現状から、候補地として「関東、北海道、新潟なども考えないといけない。函館、(新島が最期を迎えた)神奈川県大磯町は非常に縁が深いので、候補地として当然考えられる」とし、函館との連携を一層強化していく考えを示した。(山崎大和)



◎道教大、学部再編を14年度に先送り

 北海道教育大学(本間謙二学長)は14日、函館校「人間地域科学課程」と岩見沢校「芸術課程」「スポーツ教育課程」の新学部再編案を見直し、学部設置を2013年度から2014年度に先送りすることを発表した。

 同大は昨年、全道に5カ所あるキャンパスのうち函館校を国際地域創造学部(仮称)に、岩見沢校を芸術・スポーツ文化学部(仮称)に再編する案を発表。13年度の実施を目指し、準備を進めていた。だが、文部科学省が5日、12年〜17年までに実施する大学の改革策をまとめた「大学改革実行プラン」を発表したことで、同大がこれまで検討してきた新学部構想案の見直しが必要となった。

 今後は、新学部設置の趣旨などを再検討し、新学部構想案と今後策定予定の教員養成改革案を取りまとめ、14年度の新学部設置を含めた全学一体の改革実行を目指し協議を重ねていくという。(平尾美陽子)


◎昨年度市電乗客数、14年連続前年割れ

 函館市企業局は、2011年度の運輸実績(速報値)をまとめた。乗客数は前年度比2.3%(13万4216人)減の570万1523人となり、14年連続で前年実績を割り込んだ。夏場以降は盛り返したが、東日本大震災の影響で上期に激減した観光客の落ち込みが響き、現在の路線系統になった1993年以降で最少となった。

 同局管理部によると、11年度の乗客は4月が前年同月比15.7%減、6月が同12.6%減と2桁台の大幅な落ち込みで、大型連休の5月も同7.9%減と苦戦。主に観光客が多く利用する市電・バス共通の1、2日乗車券や、電車専用乗車券などの購入者も前年度比9・2%減と大きく落ち込んだ。

 一方、8月は前年同月比0・3%増、9月は同6.7%増と、夏以降は挽回。今年3月は震災の反動増で同18.2%増と急伸した。8月〜今年2月だけをみると、運賃収入で同0.3%増と前年実績をわずかに上回ったが、今年の大雪の影響で1月が同2・6%減、2月が同4.1%減だった。

 近年は1997年度の843万人をピークに減少傾向に歯止めがかからない。市電沿線の人口や事業所の減少、マイカーの普及、郊外化などマイナス要因が多く、函館競馬場のリニューアルオープンや、東北新幹線の全線開業効果などで好調だった2010年度も、震災による3月の減少分が響き、最終的には同0.4%減と悪化した。

 11年度の交通事業会計の決算見込み(税抜き)では、本業の料金収入が同2.7%減の9億3900万円、広告、物販など雑収入が同10.5%減の4900万円で、経常損益は860万円の赤字となったが、市の一般会計の繰入金8500万円などがあり、純利益は7600万円の黒字を確保した。

 12年度は、高齢者向けの市の交通料金助成制度が大幅に変更。これまでは無制限に運賃の半額が助成されていたが、4月からは専用の乗車カードを購入する際に年間6000円を上限に助成することになった。このため、同局経理課は「4〜5月に販売収入が前年より2〜3割伸びたが、限度額まで使いきった後の動向が読めず、前年度との比較は難しい」としている。(森健太郎)


◎震災がれき受け入れ先に太平洋セメント浮上、七飯は安全性を懸念

 【七飯】第2回定例町議会は14日、一般質問を続行。東日本大震災で発生した災害がれきの処理先として、北斗市の太平洋セメント上磯工場が浮上している件で、中宮安一町長はがれきに含まれる放射性物質に対する安全性が担保されていないとして反対の姿勢を示し、「北斗市から意見を求められる機会があれば、私の基本的な考え方を述べたい」とした。

 佐野史人氏の質問に答えた。

 中宮町長は「被災地のことを考えれば、多くの自治体でがれきを処理することが復興、復旧に寄与すると思われるが、本当にそうなのかとも思う。放射性物質を拡散させることも否定できない」と述べ、国が示した廃棄物処理にかかわる放射性物質濃度の基準値にも疑問を示した。

 その上で、安全、安心の農畜産物の生産環境を守ることが町としての責務であるとし「七飯町の環境を保ち続けることが被災地のためになる。政府や道から処理を求められても毅然(きぜん)とした態度でノーと言う姿勢でいる」と述べた。

 また、佐野氏は、がれきの受け入れを表明している桧山管内から大沼までの最短距離が40キロ圏内であり、雨水による影響なども懸念されると指摘し、町内の放射性物質濃度の現状を把握しておくべきだと提言。中宮町長は地域連携協定を結ぶ函館工業高等専門学校(函館高専)に協力を要請し、町内数カ所の数値を測定をする考えを示した。

 この日は、歳入、歳出に2億7152万円を追加し、総額を94億1417万円とする一般会計補正予算案など議案3件を原案通り可決。一般質問には佐野氏のほか3氏が登壇。主な質疑は次の通り。

 上野武彦氏 通学途中の児童の列に車が突っ込む事故が全国で多発している。登下校時の安全対策は。

 吉田雅幸教育長 通学路の中で、通勤時間帯に交通量が増える場所や、歩道のない場所など、見過ごしている場所がないか各校に調査を指示している。現地確認した上で対策を講じる。

 中川友規氏 地域防災計画の見直しを早急にすべきで、町内には耐震性のない避難所も多い。

 宮田東総務課長 地域防災計画の全面見直しを進めている。東日本大震災の教訓を課題として踏まえて、大野平野の活断層や久根別川を遡上する津波、避難施設の見直し、連絡体制の確立などを盛り込む考え。地域や関係機関に示し、パブリックコメントを実施するなど、年度内に策定したい。

 牧野喜代志氏 函館市は福祉避難所の開設を決めたが、障害者や高齢者ら弱者の避難計画を早急につくるべきだ。

 宮田総務課長 災害時の要援護者の対策として、安否確認や避難態勢の確立に向け、役場や社会福祉協議会、消防の持つ情報を一元化しようとしている。福祉避難所には、障害者用トイレやバリアフリー化されている公共施設を指定し、専門性の高い民間の施設にもお願いをしていく。(今井正一)