2012年6月2日 (土) 掲載

◎昨年度の観光客410万人…函館市 震災響き47万人減

 函館市は1日、2011年度の観光客入り込み数(推計値)を発表した。函館を訪れた観光客は前年度比10・4%(47万8000人)減の410万8000人となり、平成元(1989)年以降では最も少なかった。東日本大震災後の上期(昨年4〜9月)の激減が大きく影響し、市は「今後は人数だけではなく、宿泊日数や消費額を伸ばすことも命題」としている。

 市観光振興課によると、比較可能な統計が残る1963年以降、前年度比では有珠山が噴火した00年度の7・9%(42万2000人)の下げ幅が最大だったが、昨年度はそれを上回り、過去最大の減少数、減少率となった。ピーク時の1998年度(539万2000人)に比べて128万4000人も減った。

 上期は前年同期比14・4%減の266万7300人と大幅な落ち込み。4〜6月は前年より各月3割程度減少したが、夏場にはいったん回復。下期(同10月〜翌年3月)は市縄文文化交流センター開館(10月)などで堅調に推移したが、1〜2月の大雪が響いた。

 宿泊率は同3・6ポイント増の66・7%と好調。湯の川地区は同6・2%減だったが、本町、JR函館駅前地区は0・1%増で明暗。同課は「東アジアからの外国人団体客の減少が影響したのでは」とみる。地域別のシェアでは、海外を含む道外客が63・3%と割合を減らしたのに対し、道内客は36・7%と伸びた。

 交通機関別では、最も多いバスが同11・4%減、次いでJRが同8・3%減。乗用車は「休日千円」の高速道路料金割引などの廃止で同13・6%減と大きく落ち込んだ。一方、函館を訪れた修学旅行生は7万5700人と過去最高を記録、「震災で東北地方から切り替えた道央圏や東北地方の学校が多い」という。

 本年度は昨年度の反動増で前年比2〜3割増で推移しているとみられ、市は10年度並みの年間450万人を見込む。同課は「滞在日数やリピーターを増やし、夏場に向けて台湾や関東、道央圏で誘致活動を強化したい」としている。(森健太郎)



◎波響の掛け軸 一般公開…旧相馬邸、17日まで

 函館市元町33の旧相馬邸(東出伸司館長)は1日、開館2周年を記念し、松前藩の家老で画家の蠣崎波響(1764〜1826年)が江戸後期の漢詩人、菅茶山(1748〜1827年)の私塾を描いた掛け軸「廉塾図」の一般公開を始めた。波響研究者は「波響と茶山の親密な交流を物語る貴重な作品」と評し、これまで知られていなかった絵の存在に驚いている。

 茶山は現在の広島県福山市に当たる神辺(かんなべ)を拠点に活動。平易で写実的な表現を得意とし、居宅に私塾「廉塾」を設けて多くの文人を輩出、「漢詩日本一」と伝えられていた。今回の絵は波響晩年の1821(文政4)年制作とされ、東出館長が2年前の秋、京都の美術商から買い取り、自宅で保管していた。

 作品は縦40センチ、横70センチの風景画。田畑や水路、鮮やかな紅葉に囲まれた茶山の居宅と私塾が丁寧な筆遣いで描かれている。2人と親交のあった漢詩人、岡本花亭の絶句も上部に添えられ、素朴な赴きを感じさせている。

 波響研究者によると、波響の作品は偽物も多いが、東出館長が保管している廉塾図は本物という。今年3月に鑑定した道立近代美術館主任学芸員、五十嵐聡美さんは「筆致や色塗り、構図などを総合的に見ても本物に間違いない。茶山に強く憧れていた波響の人となりが読み取れる。大切に保存してもらえれば」と話している。東出館長も「政財界の要人に加え、文化人との強い結び付きを裏付ける風景画。波響のそうした一面を感じ取ってもらえれば」と来場を呼び掛けている。

 掛け軸は、小玉貞良の江差屏風などとともに17日まで展示。その後は広島県立歴史博物館に貸し出し、複製してもらうという。



◎駒ケ岳の登山解禁

 【森】駒ケ岳(1131メートル)の登山が1日、解禁となった。本年度は森町の赤井川登山道からのみ入山が可能で、標高900メートル地点の「馬の背」まで登ることができる。初日は晴天に恵まれ、多くの登山客が絶景を目指してエゾハルゼミの鳴き声が響く道を進んだ。

 火山活動は静穏な状態が続いており、登山解禁は3年目。6合目駐車場では安全祈願祭が執り行われ、森町の佐藤克男町長は「景色の素晴らしさをたくさんの人に知ってもらいたい」とあいさつ。テープカットの後に、続々と登山客が山に入った。

 馬の背までは約1時間程度で、大沼や小沼、遠くに函館山を望むことができるほか、ごつごつした岩肌が目立つ剣が峰や砂原岳を間近に見ることができる。到達した人たちは記念撮影を行うなど、達成感と秀峰からの景色を満喫していた。函館市内から訪れ、十数年ぶりに登ったという瀬川喜一朗さん(51)は「天気も良く、景色もきれい。山の上で食べるおにぎりもおいしいですね」と話していた。

 登山期間は10月下旬までの午前9時から午後3時まで。6合目駐車場で入山を届け出る必要がある。問い合わせは渡島森林管理署電話0137・63・2141。火山に関する問い合わせは森町役場防災交通課電話01374・2・2181。(今井正一)


◎フルマラソン 14年度開催目指す

 「函館ハーフマラソン実行委員会フルマラソン検討部会」(部会長・斎藤利仁函館商工会議所青年部副会長)は1日、2014年度にフルマラソンの開催を目指すと発表した。ハーフとの同時開催や、函館、北斗、七飯の2市1町にまたがる広域コースを視野に入れながら、今後協議を進めていく。

 市役所で開かれた同部会の初会合で、斎藤部会長が明らかにした。

 フル化の構想は、昨年6月に同青年部から函館市に申し入れした。斎藤部会長は開催年度について「北海道新幹線の(新函館駅)開業までに間に合わせたい」と説明。財源や運営スタッフなどの課題がある中、フル化によって大きな経済効果が見込まれるとし、「将来的に1万人規模の大会にしたい」と強調した。

 コースは距離が42・195キロに及ぶため、北斗市や七飯町にまたがることを想定。具体的な案は今後決めていく。また日本陸連の公認大会にすることで、全国各地からランナーを呼び寄せる考えだ。

 現在、道内で開催されているフルの公認レースは「北海道マラソン」「洞爺湖マラソン」「別海町パイロットマラソン」の3レース。このほか、非公認も数レースある。函館で開いているハーフは1991年度から始まり、マラソン人気の高まりを背景に、今年から定員を2倍の4000人に増やすなど規模拡大を図る方向。

 斎藤部会長は「なるべく早い段階でコースを選定したい。スピード感を持って進め、本年度中にある程度の構想を固める」としている。委員は同青年部、道南陸上競技協会、2市1町の教育委員会など13人で構成する。(後藤 真)