2012年6月30日 (土) 掲載

◎道新幹線札幌延伸認可、悲願実現に道南歓喜

 道民の悲願だった北海道新幹線の札幌延伸。建設着工が認可されたことを受け、函館市内の経済団体をはじめ、観光業界、一般市民は喜びに包まれた。その一方で、函館が通過駅となる懸念もあり、新函館開業から全線開通までの20年間を函館、道南にとっての正念場と受け止める関係者や市民も多い。

 観光都市・函館をアピールする絶好のチャンスととらえている観光業界からは喜びの声が上がった。函館国際観光コンベンション協会の渡邉兼一会長は「並行在来線の問題もあったが、道民の悲願であり喜んでいる」と話す。今後については「全線開業に向け、一人でも多くの観光客に新幹線を利用してもらい、函館・道南に来てもらえるようにさまざまな取り組みをしていく」と気を引き締めた。

 函館商工会議所の松本栄一会頭も「市場拡大の好機。3年後の新函館開業、その後の20年が地域活性化のカギを握っている」と指摘。

 喜びの声が上がる一方で、函館駅前の顔、朝市を束ねる井上敏広函館朝市協同組合連合会理事長は「これからが難しい時期になる」と不安を隠さない。新函館駅が「通過駅」となることを懸念。「現函館駅や朝市周辺にどう客を呼ぶか、これからやらなければならないことは多い」とした。

 市民にも喜びと不安の思いが交錯。函館市湯川町の会社員小島俊弘さん(42)は「札幌延伸は明るい話題。開通までの約20年で函館と札幌が経済、観光、文化で多くの交流、お互いの発展ができるように考えていかなければならない」と期待を寄せる。

 大川町の主婦小山輝美さん(25)は道負担の財源を心配する一方で「札幌開通までの20年で函館の観光、経済がどれだけ伸びるか期待したい」と語った。北斗市の農業熊倉勇樹さん(51)も「首都圏や札幌圏からの集客が期待でき、チャンスととらえる。そのためには今まで以上に一丸となって魅力を高める取り組みをしていく必要がある」。

 函館が通過点となることを不安視する声は市民からも。富岡町の団体職員、谷口祐介さん(31)は「本州との交流機会がたくさん生まれるのはいいことだが、函館が通過点になり、札幌一極集中が加速してしまうのでは」とし、「札幌延伸よりも、国民が安定して暮らせるよう東日本大震災の復興や景気対策に予算を費やすべきと思う」と提言。田家町の主婦、中野佳子さん(41)も札幌延伸の経済効果を期待しつつも「札幌、東北との経済関係を密にして、函館がただの通過点にならない方法を考えるべき」と力を込めている。



◎「鮨処ひろ季」のおかみ、緋田さん「酒匠」取得

 函館市本町26のすし店「鮨処ひろ季」(緋田広樹代表)のおかみ、緋田(あけた)和美さんがこのほど、3年前に取得した「きき酒師(ききさけし)」の上位資格にあたる「酒匠(さかしょう)」を取得した。日本酒、焼酎、泡盛のテイスティング専門家は函館でただ一人といい、緋田さんは「受かってホッとしている。仕事に生かしたい」と喜んでいる。

 試験は「NPO法人料飲専門家団体連合会」(東京)が毎年3月に東京で実施。酒匠は酒の色や香りを元に原料や銘柄などを見極めることができるとして、「日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会」が認定している。同連合会によると、全国で229人、本道では12人が資格を持っているという。

 仕事に役立てようと2009年に?酒師を取得した緋田さんは、さらに腕を磨こうと受験を決意。銘柄の異なる日本酒や焼酎をそれぞれグラスに注いで何度も練習を重ねたほか、全国の蔵元を訪ね、製法や醸造について学んだ。特にこの半年間は仕事の休憩中や店の閉店後にグラスと向き合ったり、香りが苦手だった焼酎にも積極的に取り組んだりしてきたという。

 今年の試験は3月28日に行われ、1次の筆記以外は最終の5次まで全てテイスティングの実技。酒の特長を的確な言葉で表現しているかや、塾酒、薫酒など4種類ある日本酒の違い、種類別の酒の共通点などが問われた。緋田さんは「練習の成果を発揮できた」と振り返る。

 しかし、焼酎の原料のほか、酒が劣化した要因などを当てる4次を落とした。それでも全体的に高得点だったため再試験のチャンスが与えられ、5月下旬、見事合格した。

 「鮨処ひろ季」は夫の広樹さんとで2003年開業。それ以前は酒が苦手だったが、常連客と向き合う中で知識やテイスティングの必要性を痛感してきたという。

 酒匠の資格を得たことで、日本酒の古酒を増やすなど品ぞろえを増やすことができる。緋田さんは「甘い、辛いなど日本酒は比較対象が多いほど味が楽しめるというもの。どんどん古酒の種類を増やしたい」と笑顔で話す。今後は今年9月に開かれる「世界?酒師コンクール」にも挑戦する予定だ。(長内 健)



◎大沼プリンスホテル、「セグウェイ」で自然散策ツアー

 【七飯】米国製の立ち乗り式二輪スクーター「セグウェイ」を利用した自然散策ツアーが7月1日から営業を開始するのを前に、大沼プリンスホテル(町西大沼温泉、久松慎一郎支配人)で29日、試乗会が行われた。公認インストラクターが丁寧に指導するため、初心者でも自然に操縦方法を身につけることが可能。同ホテルは「大沼の新しい観光アクティビティーとして、楽しんでもらいたい」としている。

 昨年度、七飯町の事業として実施したツアーの実績を元に、日本の販売総代理店「セグウェイジャパン」(本社・横浜市)初の直営ツアーとして展開。同社営業部長の樋口康記さん(37)は「大沼には良い環境でゆっくりと時間を過ごせる空気や景色がある。どのような評価がいただけるのか楽しみ」と話す。

 起伏に富んだ散策コースには、舗装された遊歩道のほか、草原地帯や駒ケ岳を眺めるスポット、沼などが点在。昨年に続き、インストラクターを務める小泉路雄さん(38)は「地元出身の私自身、大沼には景色だけではなく、自然豊かな環境があることを仕事を通じて知った。セグウェイは一つのツールで、その自然を楽しんでもらえるような案内をしていきたい」と話していた。

 ツアーは毎週水曜〜日曜日の午前9時半|正午、午後1時半|午後4時の1日2回。定員は各5人。対象は16歳から70歳くらいまで。料金は1人8600円。申し込みはツアー事務局電話080-3434-8360。(今井正一)


◎函館野外劇7月6日開幕

 国の特別史跡・五稜郭跡を会場にした第25回市民創作函館野外劇が7月6日、開幕する。今年は8月11日までの全12回を予定。壮大な楽曲や迫力の音響、華麗な照明といった舞台装置の中、幾多の困難を乗り越えてきた先人の歴史を数百人の市民が再現する。

 NPO法人市民創作「函館野外劇」の会(フィリップ・グロード理事長)が毎年この時期開催(函館新聞社など後援)。アイヌ民族の時代から第二次世界大戦後までの函館を75分で演じる、全国でも例を見ない歴史スペクタクルだ。

 劇はコロポックルのナレーションに合わせて進行。黒船来航や五稜郭築城、箱館戦争の銃撃戦など見どころはたくさん。今年は新たに同志社大(京都)創立者で、函館から黒船に密航して渡米した新島襄の登場を加えたほか、五稜郭築城シーンで和魂洋才を表現するクラシックバレエも復活する。

 公演は7月6、7、13、14、20〜22、27〜29、8月10、11日の全12回。毎回午後7時40分に開演する。入場料は大人1800円(当日200円増)、高大生900円、小中生400円(それぞれ同100円増)。親子セット券2000円(前売りのみ)。同会事務局や市内各松柏堂プレイガイドなどで販売中。

 問い合わせや申し込みは事務局TEL0138-56-8601。(長内 健)