2012年6月6日 (水) 掲載

◎日中韓の研究者、大沼で気候変動調査

 【七飯】東アジア地域の気候や環境の変化を調べている日本、中国、韓国の合同研究チームが5日、大沼での調査を実施した。柱状の装置を使用し、湖底の地下4b分の堆積物を採取。今後、成分を分析することで、過去数百年分の環境変動を知ることができる可能性がある。

 研究は、金沢大学環日本海域環境研究センター(石川県金沢市)の柏谷健二教授(水文地形環境学)を中心とした3カ国の研究者による合同プロジェクト。各国の状況を比較し、過去1000年分の自然環境の変動を調べている。堆積物の成分を分析し、気温の変化や大雨など自然災害の痕跡、人間の活動が環境に与えた影響などを知ることができるという。

 柏谷教授によると、昨年、大沼から試験的に採取した70〜80a程度の堆積物で、表層から30a程度のところで放射性セシウムが検出された。これは冷戦時代の米ソの核実験で、世界中に放射性物質が放出された影響のピークである1963年と特定できるという。

 また、駒ケ岳は1640年や1929年の大噴火など、噴火の記録が残っているため、火山灰の含有状況で年代特定が可能という。今回の調査では、4b分の堆積物を採取していることから、過去数百年単位の環境変動を知ることが期待される。

 調査をサポートする道教育大学函館校の田中邦明教授(環境科学)は「得られた試料から、1980年代以降の観光開発や草地の開発による表土の流出など、人間の活動が大沼にどう影響したのか知ることができれば」と話す。

 また、柏谷教授は「明治以前のこの辺りは人為的な影響が少なく、自然の変動がはっきり分かるピュアな環境だったはず。湖は地域の環境を知るモニタリング装置であり、堆積物は記録紙の役割を果たしている。今回の調査で、過去の環境変動がはっきり分かることを期待している」と話していた。(今井正一)



◎鯨族供養慰霊祭、自然の恵みに感謝

 【木古内】木古内町で毎年開かれているオフロードバイクの耐久レース「サバイバル2daysエンデューロIN木古内」の実行委は4日、16、17の両日に行う今年の第25回大会をもって、終了することを決めた。ライダーが望む大自然を生かしたコース設定が困難となったことが理由。全国各地からライダーが集結する人気のある大会だったが、28年の歴史に幕を下ろすことになった。

 道南近海のツチクジラ漁(5月25日〜6月30日)に合わせ、第8回鯨族(げいぞく)供養慰霊祭が5日、函館市船見町の称名寺本堂で開かれた。約30人が御霊(みたま)に祈りをささげ、自然の恵みに感謝した。

 函館水産連合協議会(石尾清廣会長)の鯨(くじら)普及部会(利波英樹会長)の主催。今季は5日現在、ツチクジラ4頭が捕獲、水揚げされた。赤肉は市内の鮮魚店などの店頭に並ぶほか、食堂のメニューにもなっている。10頭まで捕獲される。

 同寺の須藤隆仙住職が読経する中、参列者が焼香し、祭壇に手を合わせた。焼香後、須藤住職が「昔からクジラは人間の役に立っており、供養は非常に意義深い」と話した。

 利波会長は「クジラの食文化が薄れてきた。肉の普及を通じ、自然の恵みに感謝する心も伝えていきたい」とあいさつ。慰霊祭後、参列者は鯨族供養塔前で記念撮影も行った。(山崎大和)



◎加藤組土建が放射性セシウム汚染水の浄化システム開発

 建設土木業の加藤組土建(函館市千歳町、加藤健太郎社長)はこのほど、放射性セシウムで汚染された水を浄化するシステムを新たに開発した。5月には原発事故の影響が残る福島県で、汚染されたヘドロと水を分離する実証実験に成功し、新技術の効果を確認。同社は今月中にも工法特許を申請する方針で、今後注目が集まりそうだ。

 同社は7年前に、建設工事で出る汚染水を固めて沈殿させ、浄化した水を排出する「ABCシステム」を開発している。今回は、強力な吸収力を持つゼオライトを用いたセシウム吸着剤をロシアの技術者と共同開発して同システムに装着。福島第一原発から西に約80`離れた福島県西郷村で、村の協力を得て実証実験を行った。

 実験は、高濃度のヘドロが沈殿している村営プールの約500dの水を、セシウムの基準値以内で排水する目的。セシウムは下に沈殿する性質があるため、▽プール底にたまったヘドロをかき混ぜないように、上澄み水をポンプで排水する▽プール底15aのヘドロと水をくみ上げて同システムに送り、汚染水を吸い上げ閉じ込める方法で行った。

 福島での実験では、水のほとんどが排水基準値以内だったが、沈殿した汚泥が1万8000ベクレルを超えており「このまま排水すると汚泥に混じった水が汚染水となる」(同社)危険性があった。このため、水500トンのうち上澄み部分の470dを排水する前処理を行った上で、残りの汚泥部分の水とヘドロを同システムで処理。吸着剤を通して浄化した水からは放射性物質がほとんど検出されなかった。

 これまでの工法ではすべての水を処理する必要があったが、今回の実験では大半の水は処理する必要がないため、工期とコスト削減につながった。

 同社の金田喜久雄常務は「セシウムはγ(ガンマ)線が強く、アルミやコンクリートを通す性質があるが、水で遮蔽されることが確認できた」とし、「汚染水はあらゆる場面で出てくるので、新技術はさまざまな用途で使えるはず」と話している。(千葉卓陽)


◎福島避難者が自立生活へ「ネットワーク函館」発足

 東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の影響で福島県から函館・道南に自主避難した人たちでつくる「福島避難者ネットワーク—函館」(鈴木明広代表)がこのほど、発足した。避難者自らがつくる支援組織は道南では初めて。4世帯15人で立ち上げ、行政機関への支援拡充の要望や避難者の情報共有化を図りながら、避難先での生活再建につなげる活動を進めていく。6日には函館市役所を訪れ、自立生活の支援を求める要望書を提出する。

 要望書では、@災害救助法による民間の借り上げ住宅の3年間延長A雇用・起業への援助B就学支援の条件緩和C甲状腺検診など健康上のサポート—などを盛り込み、市議会にも陳情する。

 鈴木代表(52)は「函館など避難先に縁のない自主避難者の多くは自立した生活に不安を感じている。子供を放射能から守るために避難しても経済的困窮に陥って福島に戻った人もいる。長期的な視点に立った支援を望みたい」と語る。

 道によると、道南には震災以降、函館市117人、北斗市26人、七飯町8人、八雲町9人の計160人(5月末現在)が福島県から避難している。家族と離れて暮らす人の中には生活費の二重出費で悩む人も少なくない。

 今後は避難者に呼び掛け、さらにネットワークを構築していく。道南の支援団体とも連携し、避難者同士が交流する場や保養ツアーも企画したい考えで、「地道に取り組んでいきたい」と鈴木代表。

 同ネットワークに参加する小松幸子さん(46)と橘高由香さん(28)は子どもたちを連れて函館に避難。小松さんは「今は災害救助法などで何とかやっていけるが、いつまで続くかわからず、このままでは生活基盤が成り立たなくなる」と危惧。橘高さんも「雇用が一番の問題。貯金を切り崩す現状では笑うこともできない」とため息をつく。

 2人によると、福島にいる知り合いも金銭面や子どもの進学問題で移住を躊躇(ちゅうちょ)する人たちも多いといい、「避難した当事者が情報提供したり、市などに要望することで少しでも改善につながれば」と話す。

 問い合わせは鈴木代表TEL090-2984-3752。(鈴木 潤、小杉貴洋)


◎函工高出身、楽天の青山投手が月間MVP

 プロ野球セ・パリーグは5日、5月の月間最優秀選手(MVP)を発表し、パ・リーグ投手部門で函工高卒の青山浩二投手(東北楽天ゴールデンイーグルス)が初受賞した。球団所属の投手では田中将大選手、大リーグのシアトル・マリナーズで活躍する岩隈久志選手に続いて3人目となった。

 5月にD・ラズナー投手の登録抹消に伴って抑えを任され、同9日に今季初セーブ。9〜16日に日本タイ記録の6試合連続セーブをマークした。その後も安定した投球で、この1カ月で8セーブを挙げ、防御率も0・00。新守護神として躍進した。

 5日の阪神タイガース戦では9回に失点を許し、今季初黒星が付いたが、ここまで1勝1敗9セーブ。教え子の活躍に同高の小早川賢輔総監督は「成瀬(善久)投手(千葉ロッテマリーンズ)が4勝し、受賞は難しいと思っていたので驚いた。すごくうれしいこと。これからも頑張って、7月のオールスターに選ばれることを願っている」と喜んでいた。(小林省悟)